月夜の椿

湯殿たもと

文字の大きさ
9 / 21
月夜の椿ネクスト

月夜の椿ネクスト3

しおりを挟む
月夜の椿ネクスト その3


・・・・・・

・・・

朝か。よっと。時間は・・・・・・まずい。

急いで支度を始める。今までで一番遅く起きたかもしれない。着替えてパンを流し込んで学校へ行く。時間は・・・・・・どうか。走らないと危ないかもしれない。自転車組がすいすい抜いていく。羨ましい。それでも雨ではなくてよかったかもしれないと思っていると脇の道から牡丹と椿が歩いてくるのが見えた。このふたりはいつもギリギリだけど遅れてくることはまず無いから安心できる。

「おはよ翼くん」

「おはよ」

「おはよう」

牡丹は愛想よく、椿はいつも通りの落ち着いた挨拶。俺はというと走ってきたから息を切らしている。

「今日は遅いね、寝坊?」

「そんなところ」

「昨日歩き疲れたんでしょ、きっと」

「だろうな」

普段は早く起きられる体質だからそうなのだろうと思う。おしゃべりしているうちに学校へ。下駄箱のところで鐘が鳴る。やはりギリギリだけど間に合った。


昼休みは小栗と昨日の反省会を行う。道に迷うという現実に起きた怪奇現象。目印が消えたから勘違いとかそういう類いでもないのだ。

「氷室さんはすんなり森の外に出ててまったく迷っている感じじゃなかったけどいったいどうしてなんだろうね」

「それは、例えば迷いの森の仕組みを知っているとかだろう。どこをどう進めばいいのか知っていたら、一見不可解に見える現象が起きても大丈夫じゃないの」

「僕は別の意見だよ、あの迷いの森自体を氷室さんが作っているって考えてる」

「またすごい発想だ」

「目印が消える、ってよっぽどのことだよ。それくらい不思議なことが起きてるんだからそれくらいでもおかしくはないよ」

「作り出すっていうのもな・・・そうだ、こんなのはどうだ?どこからか電波を受け取ってそれでナビゲーションされてるっていうのはどうだ」

「それもあるかもしれないね」

パンをもしゃもしゃと食べながら議論する。椿本人がこれを聞いたらどう思うだろうか。違う、と一言で否定してくるかもしれないな。議論はたくさんしたけど、結局のところ真相はわかるはずが無かった。


放課後はゆっくりと帰る。昨日の雨はすっかりどこかへ消えてしまったが寒さは残していったらしい。着実に冬に近づいていく。なんとなく森の方へ歩いてきてしまった。流石にあんな目に遭いたくないし入るのは躊躇する。それに森は昨日の雨を蓄えていて入ったらびしょ濡れになりそうだ。・・・・・・帰るか。テストも近いし。家に帰ってしっかり勉強しなくちゃね。と思ってだらだらやって寝た。


夢か。また小さい頃の記憶。妙に細かく再現されている夢を見ると思う。細かいところは実際はあやふやに覚えているだろうけど。小学生の頃の牡丹の姿が見える。暗い顔だった。僕は何かを探している。何を探しているんだったっけ。そうだ、何か動物を捕まえて見せてあげようと思ったのだ。森の近くで探していると猫が向こうを歩いていた。捕まえようとするとやはりというか、逃げてしまった。動物を捕まえるのは難しい。猫が歩いていたってことを教えてみたけれど反応はそこまで無かった。もしかして、あまり動物が好きじゃないのかなと思うと、無理に捕まえることもなかったか。

牡丹の好きなものをよく知らなかったから、何で元気になるのかをたくさん考えていた。


続きます。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...