月夜の椿

湯殿たもと

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月夜の椿ネクスト

月夜の椿ネクスト5

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月夜の椿ネクスト 5


金曜日。

もう朝か。朝か。安積永盛。長森牛乳。となんとなく妙なことを考えつつ布団を出る。今日は朝御飯をゆっくりたべられそうだ。食パンにジャムをゆっくり塗ってゆっくり食べる。うーん、優雅だ。時計を見る。優雅に食べていると時間切れになりそうだ。急ぐか。

学校に着くとクラスメイトは皆おしゃべりに夢中だった。俺もだれかと喋ろう。ちょうど後に教室に入ってきた委員長に話しかける。

「おはよう委員長」

「おはよ、今日は早いね」

「寝坊しなかったからな」

「毎日これくらいの時間にきて欲しいね、それで私に何か用でもあるの?」

「特にないけど、特に無いのに話しかけるという用があった」

「ややこしいわね」

委員長はあきれている。なんかこのクラスには冗談を言いまくる生徒が多いわと嘆く。


昼休みは適当に菓子パンで済ませる。パンのおまけにシールが入っていて、しばらく集めているうちに膨大な数に膨れ上がってきたな、と思ってもさもさ食べていると牡丹に声をかけられる。

「ずいぶん集めたんだね」

「そうだな、被りがたくさんあるから分けてあげようか」

「電気ネズミある?」

「あるよ」

「ありがとう」

牡丹の隣に椿がやって来て飯を食べ始めた。意外によく食べる。椿の顔を見ながらもしゃもしゃと食べていると、謎の好奇心が沸き立ってくる。

「どうしたの」

「今日一緒に勉強しよう」

「なんだろう、なんとなく疑わしいよ、ね、椿」

「別の目的がありそう」

「なんでもないよ」

もちろん勉強は口実で、実際には「魔女」の生態を知りたくなったのだ。

「別にきてもいい」

「それじゃ、帰りに一緒にきてね」

放課後。ふたりについていくと迷いの森の中にまるで童話のように、とんがり屋根の家がたっていた。ここがふたりが住む家だという。

「おじゃまします」

居間に案内されると、そこにはこたつとテレビと、いかにも変哲のない空間だった。ここでゆっくりしててね、準備してくるから、と牡丹は引き上げていった。入れ替わりに歯ブラシを持った椿がやってくる。

「何時くらいに帰るの」

「六時には出るかな」

「わかった」

そういうとまたどこか別の部屋にいってしまった。洗面所か。また入れ替わりで牡丹がやってくる。せっかく勉強という名目で来たのだからわからないところを教えてもらおう。

「本当に勉強する気できたんだね」

「どういうこっちゃ」

「椿か私に興味があるのかと思って」

「そりゃ魔女、には興味があるな」

「それじゃ椿が魔法使いなのは知ってるんだね」

「マジか、やっぱりそうなんだ」

「えっ」

どうやら牡丹は俺が椿が魔女であることを確信してしていた、と思っていたようだ。もっと聞いてみよう。

「椿は空を飛べるのか?」

「飛べるよ」

「魔法でものを動かしたりできるのか」

「この前してたよ」

「すごいな」

「あまり人に喋らないでね、なにか大変なことになるかもしれないから」

「わかった」


牡丹と一緒に勉強して、わからないところを聞いたりしているうちに六時。どこからか椿が現れた。眠そうにしている。

「そろそろ行かなくちゃ」

「椿、大丈夫?眠そうだけど」

「大丈夫」

椿が送ってくれるというのでしばらく玄関で荷物をまとめて待っていると、外から準備できたと言われ、外に出る。そこにはカンテラをもった椿が立っていた。

「今から箒でとんで送るから」

飛ぶのか!?まさか自分が体験できるとは。椿の後ろに、子供みたいにわくわくしながら箒にまたがる。ちゃんとつかまった?と聞かれ、大丈夫だと答えると箒はふわりと浮き上がった。森の木々の高さまで上がると水平に飛行する。空は非常に寒かった。魔女が大きい帽子を被って、黒っぽい格好をしているのは防寒のためだったか。あっという間に森を抜けた。

「家はどのあたりにある?」

「学校の近くのスーパーの裏だ」

「わかった」

椿は夜空を飛びそこへ降りた。家の前。

「ありがとう、夜で暗いのに悪いな」

「昼間より目立たないからいい、またね」

そう言って飛んでいった。確かに空に昇ってしまうと、そこにいると知っていなければまったくわからないくらい闇に紛れていた。


続きます。

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