狼の巫女 全国版

湯殿たもと

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狼の巫女 全国版 7 ろ号作戦

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狼の巫女 全国版 7


「え?明日?」

緊迫した空気がいきなり張りつめ始める。

「何時だ?」

「・・・・・・午前四時」

「まじかよ、あと八時間しかないじゃないか!」

「瑞穂は来れるのか?」

「電話してみるよ・・・・・・」

今度は沈黙が部屋を包む。狼の喧嘩の前の沈黙とは違う、嫌な嫌な沈黙。

「出ない」

「仕方ない、ここに今いる俺たちだけでなんとかしよう」

「場所さえ解れば幻聴幻覚で足止めできるからね、うまくやれば撤退させられる」

「よし、決まりだ。ろ号作戦、発令!」

狼の山での攻防戦が始まろうとしていた。山を戦いで荒らされるのは嫌だけど、ある程度は仕方ない。私の役割は、山に入れないこと。

午前三時。山に入って待ち伏せ。まだ調査団は到着していない模様。ふるさとの山の景色は何度見ても懐かしくて新しい。風で雪が木から舞い落ちる。そんな変化が景色をどんどん変えてゆく。

「わふ(お、久しぶりだな)」

「わふ(お久しぶりです。おはこんばんちは)」

「わふわふ(元気かい?)」

「わふ。わふわふー(元気です、でも大変なんです)」

「わふ(どうした)」

「わふーわふー!(人間が調査にやってくるのです、見つかったら捕まってしまいます)」

「わふーっ!!?わふわふ!(何ッ?早く伝えないと)」

「わふわふ(お願いします)」

「わふわふわふ(分かった、俺は行く、達者でな)」

久しぶりの仲間との再会はあわただしく終わってしまった。でも、まだ私を仲間と思ってくれてるのが分かった。これで、もっと頑張れる。

冬の夜明けは遅いけど、それを過ぎても調査団は来ない。来ないのはいいけど、どうしたんだろう。

結局、朝になっても来なかったので帰ることにした。帰ってみるとお姉さんがニコニコしている。

「瑞穂くんが足止めしてくれたらしいよ」

「なかなかやるな瑞穂」

瑞穂さんが協力してくれたらしい。朝御飯を食べて、うとうとしていつの間にか眠ってしまった。疲れたのかなぁ。その日の夢は狼の仲間の夢だった。


続きます。



狼の巫女全国版 7.5


「来ましたよ」

暗闇に走る二台の自動車。ワゴンが二台。

「行けーっ八代の誇りを見せてやれ!」

若い女性が指揮をとる。その人は他ならない、八代家トップツー、長女、八代さくら。

一人が車の前に出て強制的に止めさせると、鋭い刃物で他の人たちがタイヤを破裂させてゆく。

「こら、何者だ!?」

「やれっ」

中にいた人たちに毒ガスを浴びせる。そんなことして良いのかとは思うが、命令だ。全員沈黙すると撤退。人を殺すようなガスではなく、気絶させるだけだというが、まあどうなのだろうか。

「お兄ちゃんに送っといて、トラトラトラって」

「わかりました」

~東京~

「さくら様から報告です」

「読み上げてくれ」

「トラトラトラ、以上です」

「詳しい情報送ってほしいな、記事にできないじゃないか。でもさくららしいや」

「変わっておられませんね」

爺やが笑う。

「雪音たちの助けになると良いな・・・・・・」


翌朝、この事件が新聞に乗ったが、表題は「暴徒化した環境保護団体!調査団を襲う!」

「わ!お兄ちゃん汚ねっ!悪魔の思想だよこれ。やっぱり八代の当主だよ」



続きます。
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