生徒会の仕事はVRMMOでした

くもつき

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一章

ギルドにて

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 予想に反してギルドには人が少なかった。

 僕達が集まっている間にみんなギルドでの受付を済ませてしまっていたらしい。

 チュートリアルを最速で終わらせて俺がこのゲームのトッププレイヤーになるんだ!って奴らが殆どだろう。
 分かる。分かるよその気持ち。

「次の冒険者の方。どうぞ」

 受付のお姉さんから笑顔が消えている。
 そりゃそうだ。何百人と同じ作業を繰り返していればこの顔にもなる。

「どうも…大変そうですね」

「…分かりますか?」

「良ければ話、聞きますよ」



 今まで来た人の殆どがロクにお姉さんの話を聞いてくれなかったらしい。
 「必要な情報だけ話せ」とか「説明はいいから話したって事にしていい?」だとか。
 ひどい奴らも居たものだ。お姉さんをNPCとしか考えていないのか。

「聞いてくれてありがとうございます。気が楽になりました」

「それは良かったです」

 まさかゲームの中で悩み相談をすることになるとは…。いい事なんだけどね!

 スッキリした様子のお姉さんは手のひら大の水晶を取り出してきた。

「ではこの水晶に手を当ててください」

 手を当てると、手のひらから何かが少しだけ吸い取られた感覚があった。
 すると、お姉さんがカードを差し出してきた。

「これ…なんなんですか?」

「身分証ですよ。…まさかチュートリアルを読んでないんですか?」

「…はい」

「ちゃんと読んでおいてくださいね」

 怒られてしまった。やっぱりみんなチュートリアル見てるものなのかな。


「では、依頼の受け方についてですね。
依頼はあそこにある掲示板から依頼表を取って、この受付に持ってくるだけです。
依頼を失敗した時は罰金が発生するので、受ける時は慎重に、ですよ。チュートリアルを読まないような人は特にですね」

「ご忠告ありがとうございます」

「現在イベントは行われていませんが、行われる時にエントリーをするのもギルドになります」

「最後にスキルに関してです。
スキルはですね、欲しいスキルの行動をすればGETすることができます。
例えば剣術スキルなら、剣を振る。槍術スキルなら槍を振ると言った感じです」

 スキルに関しては目を瞑りたい。
 何故かって?あのクソ称号が付いてるからさ。

「でも!でもですよ。ここ大事です。
スキルって言うのには適正があって、向き不向きがあります。適性がなければいくら剣を振っても剣術スキルは得られません。
適性にも良し悪しがあって1分剣を振ればスキルを手に入れられる人もいれば、1週間剣を使い続けてやっと手に入れられる人もいます」

 なんなんだ。その世知辛いシステムは…。
 ていうか適性ってどうやって知るんだ?

「適性に関しては現実世界で得意なこと、好きなことが反映されることが多いです。なので、自分ノプレイスタイルはある程度作れると思いますのでご安心ください」

 ふむふむ。現実世界で得意なことか。……クソ称号の謎が解けた気がする。


「これでチュートリアルは終わりです。
ここからは貴方の自由なので、気ままに第二の人生を楽しんでください。貴方の活躍を楽しみにしています」

「はい。お姉さんも頑張ってくださいね。また会いに来ます」

「…プラム」

「?」

「私の名前です」

 お姉さんは笑っていた。

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