6 / 11
6、悪夢
しおりを挟む
(ここはどこ?)
何も見えない真っ暗な空間を、行く当てもなくフラフラと彷徨う。
すると、遥か遠くに微かな光が見えた。
(光だ!)
駆け寄ろうと、足を上げる。
しかし、どんなにめいいっぱい力を振り絞っても、足がピクリともしない。
不思議に思って、自分の足を見下ろす。
足首に、赤黒いぐちゃぐちゃとした何かが纏わり付いていた。
「ひっ!」
ひどい異臭を放つそれをなんとか振り解こうと、もがく。
もがいてももがいても、一向に離れる気配がない。それどころか、足を動かそうとする度に呑み込まれて行く感覚がする。
暫くすると、ぐちゃぐちゃの泥状の何かから、段々と人の形に変わって、見覚えのある顔が浮かび上がった。
「…お母さん?」
そう認識した時、彼女は唐突に喋り出した。
「……ーーね」
「な、何?」
「…」
ぼそぼそと発せられる僅かな音を捉えようと、彼女の顔へ耳を傾けた瞬間。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
つん裂くような罵倒に、耳鳴りがし、恐怖を覚え、身体がガクガクと震えた。
逃げなきゃ!!!!
本能的にそう確信した時には、もう既に彼女によって皮膚がえぐられ腹わたが飛び出し腹から下が無くなっていた。
ぐちゃぐちゃと気持ちの悪い咀嚼音を発しながらケタケタと笑う彼女は、耳元でこう言った。
「お前はいらない子なんだよ。」
その言葉が、容赦なく心を突き刺した。
痛い。痛い痛い痛い。
激しい苦しみに耐えられず、意識が遠のいて行く。
すると、何処からか力強い声が聞こえた。
「…ン!ワン!!」
ハッとすると、目の前にはソラの顔があった。
優「…夢か。」
祖母の家に来てからと言うもの、優はほぼ毎晩悪夢にうなされていた。
額の汗を拭いながら、深呼吸をし乱れた呼吸を整える。
「クゥーン。」
優「大丈夫だよソラ。ありがとう。」
心配そうに見つめるソラを撫でながら、心を落ち着かせる。
サラサラと流れるように綺麗な毛並みに、優しく触れてゆく。
すると、次第に心が安らぐような気がした。
(ソラを撫でてると安心する…。)
悪夢を頻繁に見ているという事を、祖母は知らない。
心配をかけまいと、優が隠し通しているのだ。
この言い様のない不安と恐怖を何処にも吐き出せず、自分の奥底に詰め込む事が優の毎日の日課だった。
ところが、今日からは違う。
ソラがいる。
いつもなら自力で悪夢から脱しなければならなかった優は、ソラの声に導かれて目を覚ます事が出来た。
この時からソラは、優にとって唯一不安を打ち明けられるかけがえの無い存在となる。
何も見えない真っ暗な空間を、行く当てもなくフラフラと彷徨う。
すると、遥か遠くに微かな光が見えた。
(光だ!)
駆け寄ろうと、足を上げる。
しかし、どんなにめいいっぱい力を振り絞っても、足がピクリともしない。
不思議に思って、自分の足を見下ろす。
足首に、赤黒いぐちゃぐちゃとした何かが纏わり付いていた。
「ひっ!」
ひどい異臭を放つそれをなんとか振り解こうと、もがく。
もがいてももがいても、一向に離れる気配がない。それどころか、足を動かそうとする度に呑み込まれて行く感覚がする。
暫くすると、ぐちゃぐちゃの泥状の何かから、段々と人の形に変わって、見覚えのある顔が浮かび上がった。
「…お母さん?」
そう認識した時、彼女は唐突に喋り出した。
「……ーーね」
「な、何?」
「…」
ぼそぼそと発せられる僅かな音を捉えようと、彼女の顔へ耳を傾けた瞬間。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
つん裂くような罵倒に、耳鳴りがし、恐怖を覚え、身体がガクガクと震えた。
逃げなきゃ!!!!
本能的にそう確信した時には、もう既に彼女によって皮膚がえぐられ腹わたが飛び出し腹から下が無くなっていた。
ぐちゃぐちゃと気持ちの悪い咀嚼音を発しながらケタケタと笑う彼女は、耳元でこう言った。
「お前はいらない子なんだよ。」
その言葉が、容赦なく心を突き刺した。
痛い。痛い痛い痛い。
激しい苦しみに耐えられず、意識が遠のいて行く。
すると、何処からか力強い声が聞こえた。
「…ン!ワン!!」
ハッとすると、目の前にはソラの顔があった。
優「…夢か。」
祖母の家に来てからと言うもの、優はほぼ毎晩悪夢にうなされていた。
額の汗を拭いながら、深呼吸をし乱れた呼吸を整える。
「クゥーン。」
優「大丈夫だよソラ。ありがとう。」
心配そうに見つめるソラを撫でながら、心を落ち着かせる。
サラサラと流れるように綺麗な毛並みに、優しく触れてゆく。
すると、次第に心が安らぐような気がした。
(ソラを撫でてると安心する…。)
悪夢を頻繁に見ているという事を、祖母は知らない。
心配をかけまいと、優が隠し通しているのだ。
この言い様のない不安と恐怖を何処にも吐き出せず、自分の奥底に詰め込む事が優の毎日の日課だった。
ところが、今日からは違う。
ソラがいる。
いつもなら自力で悪夢から脱しなければならなかった優は、ソラの声に導かれて目を覚ます事が出来た。
この時からソラは、優にとって唯一不安を打ち明けられるかけがえの無い存在となる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる