88 / 91
6章
たんさく
しおりを挟む
1.裕次郎たちは、砦に敵兵が隠れていないか探索することにした。
建物の中を一軒一軒確認していく。小さな砦だったせいか、兵士は家族を連れてきてはいなかったようだ。
少し安心しながも、気を抜かないように注意する。
「パパ~、だれもいないね?」
「そうだね・・・ママが全部ぶちのめしちゃったからね・・・」
「ママつよいんだね!」
「そうだね・・・」
「パパは・・・つよくないの?」
「えっ!?」
裕次郎は予想外の攻撃を受け、うろたえる。
『強くないの?』って訊かれるってことは、強くないって思われているってことなのかな?
確かにあんまり良いとこ見せてない気がするし・・・ここは父親としての面子を保たないと。
「い、いや、パパはまだ本気だしてないだけだよ。本気だしたら町が壊れちゃったりするかもしれないからね」
「そうなの? じゃあつよいの?」
「うん。めっちゃ強いよ。腕振っただけで地面えぐれたりするし」
「そっか! パパよわいかとおもった! よかった!」
「うっ・・・良かったね」
裕次郎はちょっとだけ心が痛んだが、顔には出さなかった。
嘘はついてないし。
右手封印されてなかったらイザベルよりも強かったし!
まあ、ぶっちゃけサキが一番強いと思うけどね。裕次郎はサキの頭の上に生えている角を見ながらそう思った。
2.「・・・ふむ。敵兵の姿も無いようだし、異常も無しか」
砦内部を全て確認し、裕次郎たちとイエリスは再度合流した。
行動不能が解けた味方の兵士たちも続々と砦へと入ってくる。捕らえた敵兵は、全て一ヶ所に集め、備え付けてあった牢にぶちこんだ。
イザベルは、『よく燃えそうですし、焚き火にしましょう!』とか意味不明な提案をしていたが、当然イエリスに却下されていた。
味方の疲れを癒すため、砦の食料庫から目ぼしいものを持ち出し、宴会をすることになった。
しかし、やってることは占領に略奪、まるで盗賊みたいだな・・・本当、戦争って恐い。
裕次郎は改めて戦争の恐ろしさを再認識する。
今回は奪う側だったから痛いこともあんまりなかったけれど、奪われる側だったら拷問とかされるかもしれないし、さっきの隊長みたいにボコボコにされるかもしれないし・・・痛いのは嫌だなぁ・・・
少しだけ憂鬱な気分になっていると、上機嫌のイザベルが話しかけてきた。
「どうした裕次郎! 勝利を勝ち取ったというのに浮かない顔をしているなぁ! ほら! 飲め! 飲め!」
イザベルは裕次郎の口を無理矢理開き、なにやら液体を注ぎ込んだ。
「・・・ゲホッ! ゴホッ!」
その液体を飲んだ瞬間、喉が焼けるように痛む。
「え!? 何飲ませたの!?」
「・・・・・・えー? 何か言ったか?」
イザベルはその液体をごくごくと飲み干していた。周りをみてみると、みんなジョッキ片手にうかれている。
ヤコはずっとニャハニャハ笑っているし、イザベルはふらふらと足取りがおぼつかない。そのせいで鎧がガッシャンガッシャン騒音を立てている。
イエリスは、何故か飲みながら泣いていた。心配した裕次郎は側に行ってみた。
「・・・うう・・・なんで結婚できないのよ・・・わたしよりよわいおとこがわるいんじゃないの・・・けっこんしたいなぁ・・・」
「・・・・・・」
裕次郎は、無言でイエリスから離れた。
3.「うう・・・きもちわるい・・・」
イザベルから無理矢理飲まされた裕次郎は、ふらつきながら建物の中へと入った。
「あれぇ!? ここどこだっけぇ!?」
ふらふらと入ったその中は食料庫だった。宴会で半分以上飲み食いしたせいで中はガランとしている。
「うまいものあるかな・・・」
裕次郎はごそごそと食料を漁る。
すると突然、『ガタン!』と何かが倒れたような音がした。振り返ると、大きな樽がゴロゴロと転がっていた。
「おぉ! 美味しいものはそこかなぁ!?」
裕次郎はよろよろと樽に近づくと、蓋を力任せに引っ張った。よほど固く閉まっているのか、なかなか外れない。
仕方なく腰に挟んでいた雷刀を抜き、スイッチを入れる。
・・・今回の戦争で初めて斬るのが樽かよ。そう思いながら蓋を切り裂いた。
蓋はあっけなく切断される。裕次郎は上機嫌で中を覗き込んだ。
「何かな~、何かな~」
中には、プルプル震えている人間が入っていた。
続く。
※後書き。ファンタジー小説大賞の投票券、『持ってるけどいらないなぁ。何に使おうかなぁ』と思っている方、投票してみてください。(ちなみに今の順位は580位くらいです)
投票して下さったら、もれなく私のモチベーションがあがります。あがるだけです。
建物の中を一軒一軒確認していく。小さな砦だったせいか、兵士は家族を連れてきてはいなかったようだ。
少し安心しながも、気を抜かないように注意する。
「パパ~、だれもいないね?」
「そうだね・・・ママが全部ぶちのめしちゃったからね・・・」
「ママつよいんだね!」
「そうだね・・・」
「パパは・・・つよくないの?」
「えっ!?」
裕次郎は予想外の攻撃を受け、うろたえる。
『強くないの?』って訊かれるってことは、強くないって思われているってことなのかな?
確かにあんまり良いとこ見せてない気がするし・・・ここは父親としての面子を保たないと。
「い、いや、パパはまだ本気だしてないだけだよ。本気だしたら町が壊れちゃったりするかもしれないからね」
「そうなの? じゃあつよいの?」
「うん。めっちゃ強いよ。腕振っただけで地面えぐれたりするし」
「そっか! パパよわいかとおもった! よかった!」
「うっ・・・良かったね」
裕次郎はちょっとだけ心が痛んだが、顔には出さなかった。
嘘はついてないし。
右手封印されてなかったらイザベルよりも強かったし!
まあ、ぶっちゃけサキが一番強いと思うけどね。裕次郎はサキの頭の上に生えている角を見ながらそう思った。
2.「・・・ふむ。敵兵の姿も無いようだし、異常も無しか」
砦内部を全て確認し、裕次郎たちとイエリスは再度合流した。
行動不能が解けた味方の兵士たちも続々と砦へと入ってくる。捕らえた敵兵は、全て一ヶ所に集め、備え付けてあった牢にぶちこんだ。
イザベルは、『よく燃えそうですし、焚き火にしましょう!』とか意味不明な提案をしていたが、当然イエリスに却下されていた。
味方の疲れを癒すため、砦の食料庫から目ぼしいものを持ち出し、宴会をすることになった。
しかし、やってることは占領に略奪、まるで盗賊みたいだな・・・本当、戦争って恐い。
裕次郎は改めて戦争の恐ろしさを再認識する。
今回は奪う側だったから痛いこともあんまりなかったけれど、奪われる側だったら拷問とかされるかもしれないし、さっきの隊長みたいにボコボコにされるかもしれないし・・・痛いのは嫌だなぁ・・・
少しだけ憂鬱な気分になっていると、上機嫌のイザベルが話しかけてきた。
「どうした裕次郎! 勝利を勝ち取ったというのに浮かない顔をしているなぁ! ほら! 飲め! 飲め!」
イザベルは裕次郎の口を無理矢理開き、なにやら液体を注ぎ込んだ。
「・・・ゲホッ! ゴホッ!」
その液体を飲んだ瞬間、喉が焼けるように痛む。
「え!? 何飲ませたの!?」
「・・・・・・えー? 何か言ったか?」
イザベルはその液体をごくごくと飲み干していた。周りをみてみると、みんなジョッキ片手にうかれている。
ヤコはずっとニャハニャハ笑っているし、イザベルはふらふらと足取りがおぼつかない。そのせいで鎧がガッシャンガッシャン騒音を立てている。
イエリスは、何故か飲みながら泣いていた。心配した裕次郎は側に行ってみた。
「・・・うう・・・なんで結婚できないのよ・・・わたしよりよわいおとこがわるいんじゃないの・・・けっこんしたいなぁ・・・」
「・・・・・・」
裕次郎は、無言でイエリスから離れた。
3.「うう・・・きもちわるい・・・」
イザベルから無理矢理飲まされた裕次郎は、ふらつきながら建物の中へと入った。
「あれぇ!? ここどこだっけぇ!?」
ふらふらと入ったその中は食料庫だった。宴会で半分以上飲み食いしたせいで中はガランとしている。
「うまいものあるかな・・・」
裕次郎はごそごそと食料を漁る。
すると突然、『ガタン!』と何かが倒れたような音がした。振り返ると、大きな樽がゴロゴロと転がっていた。
「おぉ! 美味しいものはそこかなぁ!?」
裕次郎はよろよろと樽に近づくと、蓋を力任せに引っ張った。よほど固く閉まっているのか、なかなか外れない。
仕方なく腰に挟んでいた雷刀を抜き、スイッチを入れる。
・・・今回の戦争で初めて斬るのが樽かよ。そう思いながら蓋を切り裂いた。
蓋はあっけなく切断される。裕次郎は上機嫌で中を覗き込んだ。
「何かな~、何かな~」
中には、プルプル震えている人間が入っていた。
続く。
※後書き。ファンタジー小説大賞の投票券、『持ってるけどいらないなぁ。何に使おうかなぁ』と思っている方、投票してみてください。(ちなみに今の順位は580位くらいです)
投票して下さったら、もれなく私のモチベーションがあがります。あがるだけです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
75
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる