~他の異世界に召喚されたけど自由気ままに旅しよう~

Tkayuki 冬至

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第十一話

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あのギルドマスターとのやり取りから一週間が過ぎた。

その一週間の間に依頼をこなしていた。

だが殆どが薬草の採集だが……。



ちょっかいを出してきた奴等もいたが前にもやった様に目の見えない速さで顎を殴って脳震盪を起こさせて倒していた。

ちゃんと後遺症が残らないように力加減もしているしこっそり治療術で治したりしているので問題ない。



だがやはり例えSランク冒険者でも勝手に失神した様にしか見えない。

何故かシキに近づいたら失神するが起きたら体調が良くなるというふうに広まってしまったのだ。

それでも黒いローブを着て顔が見えないシキに不用意に近づこうとしたものはいなかったが……。



「(さて、調べたいことも大体終えたな。他の国へ行ってみるのもいいか?)」



シキは今、ギルドの近くにある宿屋にある一部屋で止まっている。一泊食事つきで大銀貨1枚と中銀貨5枚だ。まだ所持金には余裕がある。加えて依頼の報酬金も貯めてある。



依頼を終えた後は図書館的な場所でこの世界の情報収集をしてきた。



この世界には人間や魔族以外にも獣人やエルフ、ドワーフ、竜人等がいるらしい。

そして『魔王』という存在は魔族の王意外にも悪魔の『魔王』やモンスターの『魔王』がいる。多い順で並べるとモンスターの『魔王』、悪魔の『魔王』、魔族の『魔王』だ。ちなみにこの三つの『魔王』は全て同じ様に人々を苦しめる存在ということだ。



だがギルドマスター、ダスクから聞くと『魔王』というのは一種の災害みたいなものらしい。日本で言うと台風や地震等という認識でいいみたいだ。



あと女神ルティアナについてはこの世界のルティアナ教と呼ばれる宗教があり、それは世界四代宗教の一つらしい。

ルティアナ教以外の宗教の名はバルロウナ教、ヘルアテス教、ティールバ教がある。



それぞれ女神の名前がついた宗教だ。



ルティアナ教はここ大陸ディアムラに広まっており、そこから北の大陸イスティリマはバルロウナ教、南の大陸ローゼムはヘルアテス教、西の大陸サリルバはティールバ教が信仰しているらしい。ついでに言うとこの四柱の女神は姉妹であるらしく、宗教間では仲が良いらしい。



最後に過去に召喚した勇者がいたかと調べたが……。



「(過去に『勇者』は召喚されていた。だがその当時の『勇者』の情報が全く無い。誰かに消されたか?……いや、まだそうと判断するには早いな。)」



あの召喚に使用された魔法陣は何処にも載っていなかったので、夜に王宮に忍び込んで書物庫の中を調べ尽くしたが召喚の魔法陣についての説明しかなかった。



ついでに朝比奈達を見てきたがどうやら訓練や勉強を頑張っていた様でぐっすりと眠っていた。



「(どうするか……。)」



ーーーコンコンッ!



「お客さ~ん!朝食の時間ですよ~!」



扉から幼そうな声が聞こえてくる。



この宿屋は夫婦で経営しておりその娘も手伝っているのだ。

娘の年齢は確か13位。

この世界では成人が男女共に15歳、あと二年で成人の仲間入りだ。

名前はサラだ。



「(飯、食うか……っとその前に)」



今止まっている部屋は1Kで、その床には空間庫にあった紙とペンで情報収集の結果を書かれていた紙が散らばっていた。



「お客さん?まだ寝てるんですか?入りますよ~?」



とりあえずシキは散らばった紙を空間庫へと仕舞うのと同時に扉が開かれた。



「あ~、起きてるんですね。(せっかくシキさんの寝顔を見れたのにな~)」

「今起きたんだ。朝食に向かう。」

「わかりました。……シキさん、お願いがあるんですけど……」

「どうした?」

「シキさんの素顔が見たいんです!」

「嫌だ」

「何でですかー!あんなかっこよくてかわいいのに勿体ないじゃないですか~!」

「(……くそっ、あの時は不覚だった。)」



今のやり取りでわかると思うがサラはシキの素顔を一度見てしまっているのだ。

初めて見たのはシキが朝食の時間になっても起きてこなかったからだ。その時は夜遅くまで作業を行っていたからなのだが、まさか部屋の鍵を開けて入ってくるとは思わなかった。



サラは興味本心で熟睡していたシキのフードを脱がし長い金髪を退かしてしまい、シキの素顔を見てしまった。

しかも10分近くも眺めていたのだ。



やっと起きたシキはサラに素顔を見られてしまった事に反省をしていた。



サラはシキの素顔をについては誰にも話していない。本人からしてみれば自分だけが知っている特別な事だと思っているらしい。



「(あ~、一生の不覚だ)」

「シキさん、駄目ですか?」



瞳を潤ませて願うサラにシキは仕方がなくフードを脱ぎ、前髪をかき上げた。

その幼さが残りつつ美しいそのシキの顔を見て惚けてしまうサラは頬を赤く染めて少し甘い吐息をしていた。



「(あぁ……シキさん、凄いよぉ。男の人なのに凄く美人で肌も白くて綺麗……。)」

「もういいだろ?朝食に行く」

「あっ……」



フードを被り直すとサラは名残惜しそうにしているがシキはそれを無視して食堂にある一階へと降りて行ったのだった。





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