1 / 4
はじまり
しおりを挟む
世界に、一柱の獣が舞い降りた。
その獣は、本来この世界には居ない筈の存在。この世界ではない何処かでは、神々をも恐れさせる存在であった。
だが、何故そのような存在がこの世界へやってきたのか。
まず訂正すべきは、やってきたのではない。上手く連れ去られてきたのだ。神々をも恐れさせる存在を、誰が、どうやって誘拐したか。
それは簡単、既にこの獣は天寿を全うし死んだのだ。その魂そのものをこの世界の主神たる女神が無断で回収し、この世界に放った。肉体は本来無い筈であり、霊体の筈なのだが無意識に肉体を生成し顕現したのだ。
「……………………?」
その獣は、見知らぬ土地をキョロキョロを目を動かして辺りを確認する。
辺りは何処かの草原。
見知らぬ大地に途方に暮れた獣は、その場で座り込む。丁度生い茂る草が絨毯代わりとなったのだが、それでも不満らしく己の十二の尻尾で自身の身体を包み込む。
金色の毛並みを持ち、十二の尻尾を有するその獣は、その風貌からして狐だ。だが、狐よりも一周り二周り大きい為、大狐と言う方が正しいだろう。
「……………」
ここは何処だ。
大狐は何もないこの場から問う。
この世界にとって、大狐は異分子だ。善し悪し関係無く、未知のウイルス。
それが単なる人間なら何も起こらなかっただろう。例え、異世界の人間や動物でも、ゆっくりと食べ物を消化するが如くこの世界に溶け込む。
しかし、この大狐は違う。
単なる獣ではない。
それ故に、現れるのだ。
創造神ではなく――――――――この星を生み出した【星生之神】が、この異常事態を逸早く察知し、大狐の目の前に顕現したのだ。
「!」
顕現した姿は、まさしく【龍】。
単なる龍ではなく、その背中からはその巨大な身体を包み込める程の鷲の翼を三対六枚生やしていた。天使や神かの如き神々しさはこの地母神でもある。それ故にこの世から生まれた存在は反抗する事は出来ない。
爬虫類の様な目、ではなく模様地味た真紅の瞳を見おろし、大狐を視界に捉えた。
『我は【別天津神アルケー】。この星の化身である。其処の者よ、何者だ。何故にこの世界へやってきた』
“……気付いたら、ここにいた”
『気付いたら、だと?バカを抜かすな。大凡、この世界を攻めてきたか、侵略者め』
“侵略者、ではない”
『戯け。この世界の神ではなく、他の世界から来た神は侵略者だ。容赦はせぬぞ……!』
“話を――――――”
完全に敵として、外からの侵略者として認識されてしまった大狐は止む終えなく臨戦態勢を取ることになる。
アルケーは光線を放ってくるのだが、大狐は十二の尾で吹き飛ばす。その衝撃波により、辺りの時空は油上天候は不安定になり、地震が起こってしまう。先程までにいた草原は、まるで別世界に移動してしまったかの様に荒地となってしまった。
“っ!?”
『まさか、防ぐか。致し方が無い――――――冥府の闇に落ちよ、《冥府の深淵》!』
“殺す気か――――――《聖域》!”
大狐を取り囲む様に、大地から禍々しい闇が襲い掛かる。それは冥府に存在する、“死”という概念そのものだ。その闇に触れてしまえば、魂は奪われ肉体は朽ちていく。生命体ならば、確実に致命的だ。
『ほぅ?アイギス、とな。懐かしい単語だ。しかし、今はどうでもいい。侵略者よ、ここで――――――終わりだ、侵略者!!!《無限氷之牢獄》!!!』
“―――――――!”
アルケーを中心に、この世界の終わりを発動する。それはあまりにも残酷であり、この世の生命の事など考えてはいない。この《無限氷之牢獄コキュートス》は最初に大狐がいる一帯を氷漬け。そこから徐々に全世界へ広がっていくのだ。
“させるか、《絶対聖領域》!”
しかし、それを阻止するは大狐。世界が凍ってしまう、という偽善的な理由ではなくただ己の身を守る為に辺りを聖域に変えたのだ。その聖域は広範囲絶対防御であり、尚且その聖域は永久的に継続されていく。アルケーの《無限氷之牢獄》は《絶対聖領域》により完全に防ぐ事に成功する。その結果が、世界中の生命を救った事になるのだが、そんなこと大狐が知る由もない。
『よもや……《無限氷之牢獄》を防ぐか』
“容赦無いの、貴様は”
両者共に拮抗した大規模な戦いを繰り広げ、三日三晩続いた。後にこの戦いは人々から【原初の聖戦】と語り継がれる程、その規模は巨大で近くにいた人々が目撃していたのだ。
炎の海を生み出し、大地を揺らす大地震と噴火を起こす。更には天候は雨風嵐と不安定になり、雷霆を轟かせる。人々からすれば、人類を超越する二つの存在の戦いはこの世界にとって“最古の神話”として後世に伝えられていく。
その獣は、本来この世界には居ない筈の存在。この世界ではない何処かでは、神々をも恐れさせる存在であった。
だが、何故そのような存在がこの世界へやってきたのか。
まず訂正すべきは、やってきたのではない。上手く連れ去られてきたのだ。神々をも恐れさせる存在を、誰が、どうやって誘拐したか。
それは簡単、既にこの獣は天寿を全うし死んだのだ。その魂そのものをこの世界の主神たる女神が無断で回収し、この世界に放った。肉体は本来無い筈であり、霊体の筈なのだが無意識に肉体を生成し顕現したのだ。
「……………………?」
その獣は、見知らぬ土地をキョロキョロを目を動かして辺りを確認する。
辺りは何処かの草原。
見知らぬ大地に途方に暮れた獣は、その場で座り込む。丁度生い茂る草が絨毯代わりとなったのだが、それでも不満らしく己の十二の尻尾で自身の身体を包み込む。
金色の毛並みを持ち、十二の尻尾を有するその獣は、その風貌からして狐だ。だが、狐よりも一周り二周り大きい為、大狐と言う方が正しいだろう。
「……………」
ここは何処だ。
大狐は何もないこの場から問う。
この世界にとって、大狐は異分子だ。善し悪し関係無く、未知のウイルス。
それが単なる人間なら何も起こらなかっただろう。例え、異世界の人間や動物でも、ゆっくりと食べ物を消化するが如くこの世界に溶け込む。
しかし、この大狐は違う。
単なる獣ではない。
それ故に、現れるのだ。
創造神ではなく――――――――この星を生み出した【星生之神】が、この異常事態を逸早く察知し、大狐の目の前に顕現したのだ。
「!」
顕現した姿は、まさしく【龍】。
単なる龍ではなく、その背中からはその巨大な身体を包み込める程の鷲の翼を三対六枚生やしていた。天使や神かの如き神々しさはこの地母神でもある。それ故にこの世から生まれた存在は反抗する事は出来ない。
爬虫類の様な目、ではなく模様地味た真紅の瞳を見おろし、大狐を視界に捉えた。
『我は【別天津神アルケー】。この星の化身である。其処の者よ、何者だ。何故にこの世界へやってきた』
“……気付いたら、ここにいた”
『気付いたら、だと?バカを抜かすな。大凡、この世界を攻めてきたか、侵略者め』
“侵略者、ではない”
『戯け。この世界の神ではなく、他の世界から来た神は侵略者だ。容赦はせぬぞ……!』
“話を――――――”
完全に敵として、外からの侵略者として認識されてしまった大狐は止む終えなく臨戦態勢を取ることになる。
アルケーは光線を放ってくるのだが、大狐は十二の尾で吹き飛ばす。その衝撃波により、辺りの時空は油上天候は不安定になり、地震が起こってしまう。先程までにいた草原は、まるで別世界に移動してしまったかの様に荒地となってしまった。
“っ!?”
『まさか、防ぐか。致し方が無い――――――冥府の闇に落ちよ、《冥府の深淵》!』
“殺す気か――――――《聖域》!”
大狐を取り囲む様に、大地から禍々しい闇が襲い掛かる。それは冥府に存在する、“死”という概念そのものだ。その闇に触れてしまえば、魂は奪われ肉体は朽ちていく。生命体ならば、確実に致命的だ。
『ほぅ?アイギス、とな。懐かしい単語だ。しかし、今はどうでもいい。侵略者よ、ここで――――――終わりだ、侵略者!!!《無限氷之牢獄》!!!』
“―――――――!”
アルケーを中心に、この世界の終わりを発動する。それはあまりにも残酷であり、この世の生命の事など考えてはいない。この《無限氷之牢獄コキュートス》は最初に大狐がいる一帯を氷漬け。そこから徐々に全世界へ広がっていくのだ。
“させるか、《絶対聖領域》!”
しかし、それを阻止するは大狐。世界が凍ってしまう、という偽善的な理由ではなくただ己の身を守る為に辺りを聖域に変えたのだ。その聖域は広範囲絶対防御であり、尚且その聖域は永久的に継続されていく。アルケーの《無限氷之牢獄》は《絶対聖領域》により完全に防ぐ事に成功する。その結果が、世界中の生命を救った事になるのだが、そんなこと大狐が知る由もない。
『よもや……《無限氷之牢獄》を防ぐか』
“容赦無いの、貴様は”
両者共に拮抗した大規模な戦いを繰り広げ、三日三晩続いた。後にこの戦いは人々から【原初の聖戦】と語り継がれる程、その規模は巨大で近くにいた人々が目撃していたのだ。
炎の海を生み出し、大地を揺らす大地震と噴火を起こす。更には天候は雨風嵐と不安定になり、雷霆を轟かせる。人々からすれば、人類を超越する二つの存在の戦いはこの世界にとって“最古の神話”として後世に伝えられていく。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜
早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。
食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した!
しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……?
「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」
そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。
無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる