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13.告白
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月明かりが湖面に反射して幻想的な散歩道を二人で歩く。
等間隔で置かれたやわらかな灯りが、足元を照らしてくれる。
お互いの顔は、薄暗さに隠され、表情がみえない。
今は それが救いだった。
北川は凪紗の腰に手を回すと、
逃がさない、とばかりに 引き寄せた。
それは記憶にある貴族のエスコートにのようで、侍女だったフィーナには経験の記憶はないが、見慣れたものだった。
これ、恥ずかしいな…
散歩道を外れ、少し開けた湖畔で足を止める
なだらかな丘を背に静かに水を湛える湖は、記憶の中の風景のようだった
いけない、いけない
憧れの北川さんとこんな雰囲気で現実逃避しちゃった
北川はひと言も喋らない
それをいいことに 凪紗はドキドキを誤魔化すため フィーナの記憶に浸ってしまった。
つまり 現実逃避、だ。
公爵邸の庭園には湖があり、なだらかな丘をくだったとこにあった。
湖は本邸から離れていて、木立が衝立のように広がっていたので、本邸からは湖面しか見ることができない。
ウィリアスとフィーナの密会には最適な場所。
ボート乗り場の近くには休憩用に東屋があり、そこが待ち合わせ場所だった。
殿下がステファニアと過ごす時間の中で、ウィリアスが席を外せる僅かな時間が、フィーナが過ごせる時間だった。
いつも待っていた。
あの東屋は鳥籠。
いつも愛しの人を待っている。
待ちわびた 愛しい人が訪れれば、気を引きたくて一心に囀る。
愛しい人がわずかな時間で背を向ければ、次の訪れに期待する。
フィーナは、鳥籠に囚われた小鳥だった。
今思えば、おかしな関係だったよねぇ。
まるで家庭のある人との逢瀬のよう
あの世界では身分差は絶対的だ。
ウィリアスと結ばれる望みがないからこそ、その瞬間に全てをかけて
身を焦がしたのかもしれない━━━
不意に後ろから抱き込まれ、凪沙の思考が遮られた
北川の吐息が首筋にかかり、ぞわり と凪沙の背に何かが 走った
凪沙の首筋に顔をうずめ、北川は 抱く腕に力を込めた。
息苦しさに鼓動が早まる
突然のことに 呼吸を忘れ、乱れた呼吸に大きく息を吐き出した
そんな凪沙に構うことなく、温かいものが首筋を撫でてゆく
それが 北川の唇の感触とわかり、凪沙の顔がみるみるうちに 朱に染っていった
「…!!」
「…ねぇ、ウィリアスにもされたの?」
!!!
トンデモ発言に耳を疑った。
凪紗の身体が震え強ばったのを、北川は見逃さなかった。
「…フィーナ」
名を呼ばれて、凪紗の思考は停止した。
どうゆうこと!?
「…オレにもあるんだよ ━━ 記憶が」
耳元で囁かれれば、かかる息に身体が熱を帯びる。
だが、それ以上に北川の言葉が凪紗を翻弄した。
ききたい、でも声が出ない。
その沈黙を肯定と捉えたのか、耳元に寄せた唇を首筋に添わせ、強く吸った。
チクリ、とした感覚に凪紗の口から吐息が漏れる。
「…感じてるの?」
慌てて首をを振る凪紗の動きを止めるかのように、北川は顔を埋めた。
「フィーナ、ずっと待っていたんだ。
君の記憶が戻るときを。
長い#時間_とき__#をかけて
…何度も転生して、このときを…
…オレのこと、解るか?」
北川は凪沙を自分の方へ向かせると、両手で頬を包み込み、俯いた顔をあげた。
二人の視線が絡み、みつめあう。
月明かりに照らされた淡いブラウンの瞳、口元のホクロ…月光に輝く黒髪は白銀に映った。
「…キースさま…?」
掠れた声で紡がれた己の名に、北川はひざが崩れ落ち、両手で顔を覆い天を仰いだ。
「…やっと…やっとだ…。あぁ、神よ…」
立ち尽くす凪紗の身体を抱き締めて、その胸に顔を埋めた。
震える北川の肩を擦りながら、凪紗も混乱していた。
何故、サフレイト王国のことを知ってるの?
私にフィーナの記憶があることを知ってるの?
北川さんがキースの記憶持ちなの?
力強い腕に腰を抱かれて身動きが取れない。
嗚咽を堪えて 肩を震わす北川を放ってはおけず、肩を撫で、背をさする。
恋心を抱く相手との抱擁だが、悦びよりも戸惑いが勝り、凪紗の盛り上がりはゼロ、むしろマイナスだった。
「…あのぉ…?」
肩の震えが治まってきたのを見計らって、思い切って声をかけた。
凪紗のキョトンとした表情に、自分との温度差を感じて北川は うちから湧き上がる嫉妬を抑えられなかった。
凪紗を横抱きに抱えると、足早に歩き出す。
いきなりのお姫さま抱っこは心臓に悪い。降ろしてください、と懇願するが聞き入れられらることは無く、
「… 黙ってろ、舌噛むぞ」
低い声で そう返し、無言を貫いた。
明かりの落ちたコテージのひとつに押し込められて、ようやく凪紗は開放された。
内鍵をかけると、自動で灯りが点った。
雰囲気のあるルームライトはぼんやりと室内を照らす。
恋人たちには素敵なシチュエーションだが、凪紗にとっては全く嬉しくない。
「北川さん、こんなの困ります」
凪紗は勇気を総動員して北川に告げた。
いきなり 貞操の危機ですか!?
いくら好きな相手でも、いきなりこれは、ない。
凪紗の抗議も無視して、北川は凪紗強く抱き締めた。
「…ごめん、無理。我慢できない、もう少しこうさせて」
北川の執拗な抱擁に執着すら感じ、凪紗は身震いした。
どうしてこうなった?
「…長い話になる。きいてほしい」
永遠と思われた長い抱擁の後、
ようやく紡がれた北川の言葉に、凪紗は頷いた。
等間隔で置かれたやわらかな灯りが、足元を照らしてくれる。
お互いの顔は、薄暗さに隠され、表情がみえない。
今は それが救いだった。
北川は凪紗の腰に手を回すと、
逃がさない、とばかりに 引き寄せた。
それは記憶にある貴族のエスコートにのようで、侍女だったフィーナには経験の記憶はないが、見慣れたものだった。
これ、恥ずかしいな…
散歩道を外れ、少し開けた湖畔で足を止める
なだらかな丘を背に静かに水を湛える湖は、記憶の中の風景のようだった
いけない、いけない
憧れの北川さんとこんな雰囲気で現実逃避しちゃった
北川はひと言も喋らない
それをいいことに 凪紗はドキドキを誤魔化すため フィーナの記憶に浸ってしまった。
つまり 現実逃避、だ。
公爵邸の庭園には湖があり、なだらかな丘をくだったとこにあった。
湖は本邸から離れていて、木立が衝立のように広がっていたので、本邸からは湖面しか見ることができない。
ウィリアスとフィーナの密会には最適な場所。
ボート乗り場の近くには休憩用に東屋があり、そこが待ち合わせ場所だった。
殿下がステファニアと過ごす時間の中で、ウィリアスが席を外せる僅かな時間が、フィーナが過ごせる時間だった。
いつも待っていた。
あの東屋は鳥籠。
いつも愛しの人を待っている。
待ちわびた 愛しい人が訪れれば、気を引きたくて一心に囀る。
愛しい人がわずかな時間で背を向ければ、次の訪れに期待する。
フィーナは、鳥籠に囚われた小鳥だった。
今思えば、おかしな関係だったよねぇ。
まるで家庭のある人との逢瀬のよう
あの世界では身分差は絶対的だ。
ウィリアスと結ばれる望みがないからこそ、その瞬間に全てをかけて
身を焦がしたのかもしれない━━━
不意に後ろから抱き込まれ、凪沙の思考が遮られた
北川の吐息が首筋にかかり、ぞわり と凪沙の背に何かが 走った
凪沙の首筋に顔をうずめ、北川は 抱く腕に力を込めた。
息苦しさに鼓動が早まる
突然のことに 呼吸を忘れ、乱れた呼吸に大きく息を吐き出した
そんな凪沙に構うことなく、温かいものが首筋を撫でてゆく
それが 北川の唇の感触とわかり、凪沙の顔がみるみるうちに 朱に染っていった
「…!!」
「…ねぇ、ウィリアスにもされたの?」
!!!
トンデモ発言に耳を疑った。
凪紗の身体が震え強ばったのを、北川は見逃さなかった。
「…フィーナ」
名を呼ばれて、凪紗の思考は停止した。
どうゆうこと!?
「…オレにもあるんだよ ━━ 記憶が」
耳元で囁かれれば、かかる息に身体が熱を帯びる。
だが、それ以上に北川の言葉が凪紗を翻弄した。
ききたい、でも声が出ない。
その沈黙を肯定と捉えたのか、耳元に寄せた唇を首筋に添わせ、強く吸った。
チクリ、とした感覚に凪紗の口から吐息が漏れる。
「…感じてるの?」
慌てて首をを振る凪紗の動きを止めるかのように、北川は顔を埋めた。
「フィーナ、ずっと待っていたんだ。
君の記憶が戻るときを。
長い#時間_とき__#をかけて
…何度も転生して、このときを…
…オレのこと、解るか?」
北川は凪沙を自分の方へ向かせると、両手で頬を包み込み、俯いた顔をあげた。
二人の視線が絡み、みつめあう。
月明かりに照らされた淡いブラウンの瞳、口元のホクロ…月光に輝く黒髪は白銀に映った。
「…キースさま…?」
掠れた声で紡がれた己の名に、北川はひざが崩れ落ち、両手で顔を覆い天を仰いだ。
「…やっと…やっとだ…。あぁ、神よ…」
立ち尽くす凪紗の身体を抱き締めて、その胸に顔を埋めた。
震える北川の肩を擦りながら、凪紗も混乱していた。
何故、サフレイト王国のことを知ってるの?
私にフィーナの記憶があることを知ってるの?
北川さんがキースの記憶持ちなの?
力強い腕に腰を抱かれて身動きが取れない。
嗚咽を堪えて 肩を震わす北川を放ってはおけず、肩を撫で、背をさする。
恋心を抱く相手との抱擁だが、悦びよりも戸惑いが勝り、凪紗の盛り上がりはゼロ、むしろマイナスだった。
「…あのぉ…?」
肩の震えが治まってきたのを見計らって、思い切って声をかけた。
凪紗のキョトンとした表情に、自分との温度差を感じて北川は うちから湧き上がる嫉妬を抑えられなかった。
凪紗を横抱きに抱えると、足早に歩き出す。
いきなりのお姫さま抱っこは心臓に悪い。降ろしてください、と懇願するが聞き入れられらることは無く、
「… 黙ってろ、舌噛むぞ」
低い声で そう返し、無言を貫いた。
明かりの落ちたコテージのひとつに押し込められて、ようやく凪紗は開放された。
内鍵をかけると、自動で灯りが点った。
雰囲気のあるルームライトはぼんやりと室内を照らす。
恋人たちには素敵なシチュエーションだが、凪紗にとっては全く嬉しくない。
「北川さん、こんなの困ります」
凪紗は勇気を総動員して北川に告げた。
いきなり 貞操の危機ですか!?
いくら好きな相手でも、いきなりこれは、ない。
凪紗の抗議も無視して、北川は凪紗強く抱き締めた。
「…ごめん、無理。我慢できない、もう少しこうさせて」
北川の執拗な抱擁に執着すら感じ、凪紗は身震いした。
どうしてこうなった?
「…長い話になる。きいてほしい」
永遠と思われた長い抱擁の後、
ようやく紡がれた北川の言葉に、凪紗は頷いた。
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