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12.金曜の夜
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うわっ!
凪紗は飛び起きた。
なんか凄く怖い夢を見た。
全身汗びっしょり。
なにかを叫んでいたのか声も枯れている。
金曜日の目覚めは最悪だった。
一昨日までは快調に 文字通りの甘い夢をみて、それを脚色してネット小説にあげていた。
あの謎解きメッセージ以降、イニシャルKからのメッセージはない。
心の重荷が無くなったこともあり、今週のウィリアスとフィーナはいい感じ。
結婚の約束を交わし、いよいよな感じのところまで盛り上がっていた。
気分は最高!
恋する乙女は絶好調だった。
なのに。
なぜか昨日の夢は違った。
キースとのやり取りのあと、何かがあったんだよね。
わたし、必死に叫んでた。
でも、馬車に乗せられたところから覚えていない。
何かがあった気がする。
とりあえず、昨日の夢に 妄想という脚色をして、キースをウィリアスに変えて胸焼けしそうなくらい甘くしてみた。
そうしたら、よくわからない気持ち悪さが軽くなる、そんな気がした。
何かを思い出すことを避けるように、今までにないくらい執拗に脚色して仕上げて投稿した。
終業まであと少し。
気怠い身体に鞭打って、なんとか今日をやり切った。私、偉い!
同期に飲みに誘われたが、断った。
夢見が悪かったこともあって早く家に帰って休みたかったのだ。
いそいそと私物をまとめ 職場を後にする。ビルのエントランスを抜けるところで、背後から名前を呼ばれた。
振り返ると、北川がスーツケースをお供にこちらに手を振っていた。
そういえば、金曜 帰社って書いてあったっけ。
あまりの気怠さに忘れてました、ごめんなさい。
「お疲れ様です。今、戻りですか?」
凪紗も足を止めて声を掛けた。
北川は真っ直ぐ凪紗に近づいてくると、自身のスーツケースを凪紗に押し付けて、
預かって。
すぐに終わるから 飯でも食おう。
一方的に言い放ってエレベーターに消えた。
いやいや、帰って休みたいんですけど。
はぁ、と溜息をつき 置いてけぼりのスーツケースと共にエントランスの隅に移動した。
ビルの外はまだ明るい。
お土産も頼んでたしね。
北川が相手なら気を使うことも少ない。
食事くらいは付き合いますか。
誘われたことは嫌じゃないし。
即 帰宅モードから頭を切りかえて北川を待つ。20分ほどで息を切らした北川が、戻ってきた。
エレベーターの中で走ったのかしら?
疑問が顔に出てたのか、汗を拭きつつ、微笑んだ。
途中まで階段を降りたんだよ、高海さんが帰っちゃいそうだったからさ、
と殺し文句をサラリと言ってくれた。
金曜の街は賑やかだ。特に歓楽街でもないのに、街は華やいでいた。
その華やぎが、かえって凪紗の気分を重くする。
重症だわ…。
大体、こんなに気分が乱高下するようになったのは、前世の記憶をネットでバラしてからだ。
早く小説を完結させてこの負のスパイラルから脱出しよう。
そんな決意を一人固めていると、北川はスーツケースをコインロッカーに預け、身軽になって戻ってきた。
「お疲れなんじゃないですか?」
私に付き合わず 休んだ方がいいんじゃないか、という思いを込めて言葉をかけると、不機嫌そうに眉を寄せて、俺とじゃ嫌なの?と距離を詰めてきた。
どうしたの、今日の北川さん変だよ?
変といえば出張前からおかしかったか。
「そういうつもりじゃないんです。単に心配で きいただけです」
慌てて訂正すると、ふーん、と納得しきれない様子を隠そうともせず、タクシーを停めた。
「乗って。行きたいところがあるんだ」
凪紗を押し込めるように乗せると、聞き覚えのない店の名前と住所を告げた。
タクシーが着いたのは、山の中のコテージレストランだった。
湖畔に幾つかのコテージがあり、その中央にレストランがあった。
どこか既視感を覚える湖畔の風景。
それにしても立派な建物なんですけど…
北川さん、ちょっとメシ食おう、なんて場所じゃないよね?
ここは、ちゃんと予約して身なりを整えて挑むところでは?
決して、流行りの無いスーツに薄化粧でやってきていい場所ではない気がしますよ。
そんな心の動揺も、北川には通じないらしく、凪紗の腕を掴むと、迷いなくレストランへと進んだ。
案内されるままに席に着く。
そこは湖畔を見渡せる窓際の席だった。
月光が水面に映り、反射する。
囲む森をぼんやりと浮き立たせ、幻想的な風景を作り出していた。
なんだか緊張してきた。
突然、なんでこんな店にきたの?
いつものような肩肘張らない庶民のお店が私の好みなんですけど?
「もしかして…誕生日ですか?」
北川の誕生日なら納得だ。
「…誰の?」
「え…北川さんの?」
違うよ、素っ気ない答えが返ってきた。
じゃぁ、一体なんなんだ??
食事はとても美味しかった…と思う。
小洒落た洋食は創作料理らしく、見た目も芸術的だ。
でも、
北川の射るような視線を感じながら食べる食事は、猛獣に睨まれているようで落ち着かない。
味もわからない。
いつもなら弾む会話も今日はなんだかトゲがある気がするし…
恋する人との夢のようなディナー
素敵なシチュエーション のはずなのに…
全然甘くないっ!
本当にどうしちゃったの?
恋人たちの甘い時間とはかなりかけ離れたディナーが進んでゆく。
精神鍛錬を兼ねた食事が終わる。
食後のコーヒーに口をつけると
「少し散歩しないか?」
と、湖に視線を向けた。
あぁ、腹ごなしですか…。
構いませんが、と答えた途端に手を掴まれて、
行こう、
と席を立たされた。
えっ?
そんなに散歩したかったの…?
凪紗は飛び起きた。
なんか凄く怖い夢を見た。
全身汗びっしょり。
なにかを叫んでいたのか声も枯れている。
金曜日の目覚めは最悪だった。
一昨日までは快調に 文字通りの甘い夢をみて、それを脚色してネット小説にあげていた。
あの謎解きメッセージ以降、イニシャルKからのメッセージはない。
心の重荷が無くなったこともあり、今週のウィリアスとフィーナはいい感じ。
結婚の約束を交わし、いよいよな感じのところまで盛り上がっていた。
気分は最高!
恋する乙女は絶好調だった。
なのに。
なぜか昨日の夢は違った。
キースとのやり取りのあと、何かがあったんだよね。
わたし、必死に叫んでた。
でも、馬車に乗せられたところから覚えていない。
何かがあった気がする。
とりあえず、昨日の夢に 妄想という脚色をして、キースをウィリアスに変えて胸焼けしそうなくらい甘くしてみた。
そうしたら、よくわからない気持ち悪さが軽くなる、そんな気がした。
何かを思い出すことを避けるように、今までにないくらい執拗に脚色して仕上げて投稿した。
終業まであと少し。
気怠い身体に鞭打って、なんとか今日をやり切った。私、偉い!
同期に飲みに誘われたが、断った。
夢見が悪かったこともあって早く家に帰って休みたかったのだ。
いそいそと私物をまとめ 職場を後にする。ビルのエントランスを抜けるところで、背後から名前を呼ばれた。
振り返ると、北川がスーツケースをお供にこちらに手を振っていた。
そういえば、金曜 帰社って書いてあったっけ。
あまりの気怠さに忘れてました、ごめんなさい。
「お疲れ様です。今、戻りですか?」
凪紗も足を止めて声を掛けた。
北川は真っ直ぐ凪紗に近づいてくると、自身のスーツケースを凪紗に押し付けて、
預かって。
すぐに終わるから 飯でも食おう。
一方的に言い放ってエレベーターに消えた。
いやいや、帰って休みたいんですけど。
はぁ、と溜息をつき 置いてけぼりのスーツケースと共にエントランスの隅に移動した。
ビルの外はまだ明るい。
お土産も頼んでたしね。
北川が相手なら気を使うことも少ない。
食事くらいは付き合いますか。
誘われたことは嫌じゃないし。
即 帰宅モードから頭を切りかえて北川を待つ。20分ほどで息を切らした北川が、戻ってきた。
エレベーターの中で走ったのかしら?
疑問が顔に出てたのか、汗を拭きつつ、微笑んだ。
途中まで階段を降りたんだよ、高海さんが帰っちゃいそうだったからさ、
と殺し文句をサラリと言ってくれた。
金曜の街は賑やかだ。特に歓楽街でもないのに、街は華やいでいた。
その華やぎが、かえって凪紗の気分を重くする。
重症だわ…。
大体、こんなに気分が乱高下するようになったのは、前世の記憶をネットでバラしてからだ。
早く小説を完結させてこの負のスパイラルから脱出しよう。
そんな決意を一人固めていると、北川はスーツケースをコインロッカーに預け、身軽になって戻ってきた。
「お疲れなんじゃないですか?」
私に付き合わず 休んだ方がいいんじゃないか、という思いを込めて言葉をかけると、不機嫌そうに眉を寄せて、俺とじゃ嫌なの?と距離を詰めてきた。
どうしたの、今日の北川さん変だよ?
変といえば出張前からおかしかったか。
「そういうつもりじゃないんです。単に心配で きいただけです」
慌てて訂正すると、ふーん、と納得しきれない様子を隠そうともせず、タクシーを停めた。
「乗って。行きたいところがあるんだ」
凪紗を押し込めるように乗せると、聞き覚えのない店の名前と住所を告げた。
タクシーが着いたのは、山の中のコテージレストランだった。
湖畔に幾つかのコテージがあり、その中央にレストランがあった。
どこか既視感を覚える湖畔の風景。
それにしても立派な建物なんですけど…
北川さん、ちょっとメシ食おう、なんて場所じゃないよね?
ここは、ちゃんと予約して身なりを整えて挑むところでは?
決して、流行りの無いスーツに薄化粧でやってきていい場所ではない気がしますよ。
そんな心の動揺も、北川には通じないらしく、凪紗の腕を掴むと、迷いなくレストランへと進んだ。
案内されるままに席に着く。
そこは湖畔を見渡せる窓際の席だった。
月光が水面に映り、反射する。
囲む森をぼんやりと浮き立たせ、幻想的な風景を作り出していた。
なんだか緊張してきた。
突然、なんでこんな店にきたの?
いつものような肩肘張らない庶民のお店が私の好みなんですけど?
「もしかして…誕生日ですか?」
北川の誕生日なら納得だ。
「…誰の?」
「え…北川さんの?」
違うよ、素っ気ない答えが返ってきた。
じゃぁ、一体なんなんだ??
食事はとても美味しかった…と思う。
小洒落た洋食は創作料理らしく、見た目も芸術的だ。
でも、
北川の射るような視線を感じながら食べる食事は、猛獣に睨まれているようで落ち着かない。
味もわからない。
いつもなら弾む会話も今日はなんだかトゲがある気がするし…
恋する人との夢のようなディナー
素敵なシチュエーション のはずなのに…
全然甘くないっ!
本当にどうしちゃったの?
恋人たちの甘い時間とはかなりかけ離れたディナーが進んでゆく。
精神鍛錬を兼ねた食事が終わる。
食後のコーヒーに口をつけると
「少し散歩しないか?」
と、湖に視線を向けた。
あぁ、腹ごなしですか…。
構いませんが、と答えた途端に手を掴まれて、
行こう、
と席を立たされた。
えっ?
そんなに散歩したかったの…?
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