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アナザーエピソード 〜ローレンス②〜
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気づいた時にはもう目の前の光景に呆然とするしかなかった。
我はさっきまでいた研究所ではなく、何故か我の故郷ライファス聖王国にいた。
何故かという疑問なんてその光景を見ただけで何処かへ飛んで行った。
まるで炎が生き物のように人々に襲ってきておりそれから逃げるように走ってくる人の姿。聖王国の象徴かのように聳え立っていた城はまるで、天から見放されたかのようなボロボロの姿に変貌しており、まさに今のこの国の末路と言っても過言ではない。
そんな感想を我は取り乱す事なくただ淡々と思っていたのだ。
本当なら泣き叫ぶところなのだろう。どうして滅ぼされなきゃいけないんだと嘆くところだろう。
だがこの時の我はもうなにも感じなかったのだ。
いや違う……我が思ったのは……。
我は思い出す。数ヶ月前の今まで出来事を。
……本当なら楽しい思い出も、あるはずなのに……本当なら幸せな日常も、あったはずなのに………今思い出してるのはそんな甘々なことじゃない。
嫉妬と憎悪の対象として我に向けられた兄と姉。
突拍子もない、ありえない噂を信じて化け物だと、我を罵倒した民衆。
そして……娘の事など信じず、我を捨てていった……家族の姿。
………それしか、思い浮かばなかった。
そして思ったのだ。
「『ざまぁみろ』」と。
その後我は人々が恐るる「混沌の魔女」になったらしい。
我はもう、どうでもいいのだ。
……もうこんな世界《ところ》居ても意味ないんじゃないかな?
我を追ってくる奴はいるし、どこまで行っても罵倒されるし、どこに行ったって誰も我を…「ローレンス」を見てくれない
……我は、国をもしかしたら滅ぼしたかもしれない。でも…なんで、なんだろう。
我が儘なのかな?弱いと言われるのかな?
……でも、やっぱり、辛いのだ
我はただ頑張りたかった。好きなことに突き進みたかった。それなのに……それ、なの、に………我だけが悪いのかな??
国を滅ぼした罪なら、償う……だから我を、混沌の魔女としてでなく、ローレンスとして見て欲しい……。
…そんな存在がいないなら……我は、もう……。
『………い…生き…て………』
「!!」
…振り返っても、誰もいない。でも…そうなの、だな。
……我はあのかつての盟友の為に、生きなきゃいけないんだ。
我は我を繋いでくれた命を無駄にしようとしてしまったのだ。
……これが罪なら、しっかり償わなければいけない…たとえもう、我がこの先独りでも。
「見つけたぞ!!混沌の魔女だ!!」
あぁ…分かったのだ。それなら…我はこの道を進むとしよう。
大勢いる兵士達《ゴミ共》に我はついに真正面から受けて立つことにした。
我の中にいるもう1人の力を借りて……もう、突き進まなきゃ行けないんだ。
我々に味方などいないのだから。
…あの後決意を固めた我は、我に襲いかかってくるゴミ共を葬ってやった。もう我は止まることなど出来なくなった。一度決めたら止まらない性格のためなのだ。
我に話しかけた奴もいた。もしかしたら、また我を見てくれるかもしれない。そう思ってしまうが、束の間だ。結局我に恐れ逃げ、国に報告するというなんともまぁ情けない話だ。
そんな奴らも全員滅ぼしてやった。
その過程で混沌の魔女は世界でも共通の敵として認識されたらしい。
当たり前なのだ。これだけ、害とみなした相手を滅ぼしまくったのだ。仕方ないと思う。
…だが、そんな我の長い旅も終わりを迎えようとしていた。
のちに5人の英雄と呼ばれる存在。
そんな奴らの相手をしていたのだが、実力が均衡していて中々倒せない。
こんな体験中々なく、我は少し油断してしまったのだ。
1人の魔導書使いが、奇妙な魔導書を開いて黒い禍々しい塊を我に向けて放ってきたのだ。
我はそれを魔法で相殺しようとしたのだが、
なんとぜんぶ吸収され、驚いて避けるのを失敗して我はその塊の中に吸収されてしまったのだ。
恐らくこれが後の禁句の魔導書と呼ばれる存在なのだろう。
こうして我は自由すら奪われてしまったのだ。
◇
そこは何もない空間であった。
なにも存在しない。声も聞こえない。音すら、光すら存在しない。
ここから脱出しようと我は様々な魔法を試した。
試しに空間にゲートを開けて見ても、魔素が発散して消えてなくなる
その代わりに何故かは分からないが、この空間に城のような物が出てきた。
なるほど、我が魔法を使えば使うほどここはより形ある何かになるという訳だな。
そう理解した時、全身から力が抜けた。
当たり前だ。休息も最低限しか取らずただただ、逃げたり、戦うのに全力を注いだのだ。
何もしなくていいと考えた時、もう何もする気がなくなった。
……もう、いいんだな?もう我は…楽になっていいんだな?
かつて生きなきゃいけないと必死になった我はこの何もない空間で死んでもいいと思い始めた。
……そして、我は自分に魔法をかけて自殺しようとした。これでもう楽になれると考えて……………。
…………だが、現実は残酷だ。
我は確かに魔法を放った。それで一度死んだ。だが、その後まるで、何事も無かったかのように、元通りになっていた。
……ははっ、ここまで我を地獄に留まらせたいんだな。
理解するのに、そう時間がかからなかった。
…なんで?どうして?我はもう頑張ったのだ。これ以上苦しめというのか?
それとも、もう我にはどんなことをしたって救われないのか?……我はもう、許されないのか?
その後我が何をしたか覚えてない。
一つ分かることは我の意識が戻った時には
初めの何もない空間から一変して一つの世界が出来ていた。
…こんなところ、壊してしまおうか?
そんなことも考えた。でも、もしかしたら我の所に来てくれる誰かが来るかもしれない
そう考えたらとてもじゃないが、破壊なんてすることが出来なかった。
だから我は待ち続けた。どんなに苦しくても、寂しくても死にたいと思っても
ただ待とうと、そんな淡い期待を込めて——。
——どれだけの時間が経ったのだろうか?
もう何も覚えてない。ただ玉座に座って何もない空を眺めながら考えていた。
もう、だめだ……そんな時に現れたのだ。
我が待っていた存在が——。
我はいつも通り玉座に座っていた。
だが、正直なところもう限界に近かった。
我が精神的に死んだら我の中にいる奴が暴走しかねない。
でももうそれもいいんじゃないかとそう思っていた時だった。
その大きすぎると表現していいほどの扉が開いたのだ。
そして目の前には.....人がいた。
血まみれで特徴的な剣のようなものを腰にかけているが、間違いなく人間だった。
だが、きっと恐れられるに決まっている。そう思い我は少し圧を出して目の前の人を見た。
....だが、その人は我を恐れなかった。初めてだった。混沌の魔女という異名があるにも関わらず我を恐れないでしっかりと見てくれる人は。
だから、その人に興味がでた。こやつのことを知りたい。どうして平気でいられるのかを。
「……驚いた。まさかこんな場所に人間がいるとは…くくっ歓迎しようぞ、人間。我の名はローレンス・アンドレ・ライファス
この空虚なき世界を作り出し、その頂点に立つ王である」
だが、長年人を恐れさせるために考えた口調で話しかけてしまった。
....また恐れられてしまうだろうか、そんな心配は杞憂に終わる。
「私も貴方に会えて光栄ですローレンス様。そして初めまして、アクセル・アンドレ・レステンクールでございます」
ただそこには我に会いたかったという思いが嘘偽りなく伝わった。
何故か我には、人の嘘が敏感になってしまい、それで相手が嘘をついてるのかが分かるのだ。
だからこそ嬉しかった。本心で我を恐れずそんな思いを伝えてくれたことを。
色々な疑問はあったが、そんなのどうでも良かった。
ただ、こやつと遊んでいたい、もっと一緒に話したい、遊びたい、隠し事があろうが、無かろうが、どうでも良かった。
最初こそ、他人口調で我と距離を開けてるかのような話し方で辛かったが、お願いしたら彼は素の姿で我と関わってくれた。
その時、明確にはっきりしたのだ。
あぁ、彼こそ....アクセルこそが我が待ち望んだ存在なのだと。
だから、彼が帰ると言ったとき頭の中が真っ白になった。
また我を一人にするの?またこの世界で罪を償わなきゃいけないの?
...もしかしたら、前の我なら耐えれたのかもしれない。
でももう精神的に限界だった我はもう彼から離れるのは凄く怖くなった。
少ししか時間が経ってないのに、それほど我の中でアクセルの存在は大きくなった。
....嫌だ....嫌だ.......。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ......。
....でも、本当は別の理由があってここから離れたくなかったかもしれない。
それを彼の発言で明確にされた時、我は暴走した。
怖くて何が悪いのだ、もう何も奪われたくない。
また独りになるのは嫌なのだと。
その発言を聞いたアクセルはなんの疑問もなく我の発言を訂正してくる。
「独りじゃない、俺がいる」
その発言は凄く心にきた。
そんな言葉を言ってほしかった。独りじゃないんだと、一緒にいるんだと。
でも、裏切られた我はその勢いでアクセルにひどいことを言った気がする。
...これで嫌われただろう。一瞬そう思った時だ
「……俺だって全部奪われたさ」
...え?
おぬしも、なのか?アクセルも、奪われたのか?彼にもそんな経験があるのは驚いた。それならどうしてそんなに平気なのだ?
我はおかしくなりそうなのに...いや彼が強いのだな。
その疑問はいとも簡単に打ち砕いた。そうだ彼は強いそれだけなのだ。
だから彼は.....。
「だから、お前の裏切られたって気持ちだけは痛いほど分かるさ……それを含めて言ってやる。俺はお前を裏切らないし、独りになんかにさせない」
......こんな弱い我を、救ってくれるんだな。
混沌の魔女とか、世界が恐れる存在とか彼には関係ないのだ。
彼はただ、助けてと叫んでいる我を助けるだけなのだ。
あぁ、アクセルお主はほんとに...ほんとに......。
「たとえ世界を敵に回しても、俺はお前を守り続ける」
......ほんとうに、我の心を救ってくれる救世主《ヒーロー》だ。
でもそれでも我は躊躇する。また我の思いと裏腹に奪われるんじゃないかと、そう感じた時とても怖くなった。
でもアクセルはそんな我の背中を押してくれた。
それだけじゃない。彼は長い間待ってくれた。
....彼がここまでしてくれたんだと思うと嬉しくて、そして答えないとそう思った。
我の本音を.....。
「…………わ、我は……我はアクセルと一緒にここを出たい!!!我、ほんとは凄く怖い…でも…ここでずっと独りになるのはもっと怖い!!もっと世界を見てまわりたい。美味しいものを食べたい!あの世界で暮らしたい!どんなに辛くて険しい道でも我は……アクセルと一緒にいたい!!!」
やっと言えたな。そんな声が聞こえた気がした。
アクセルの方を見ると彼は優しそうな顔をして我を全部包んでくれるような手を出して。
「なら握れ、お前がそれを望むなら今はそれだけでいい」
....我に差し伸ばしてくれた。
我はもうたくさん感情が溢れて、その手を握ろうとして――――。
―――ダメよ?―――
我の中の奴がそう呟くようにその瞬間、我は身体を乗っ取られそうになった。
あぁ、アクセルこんな我を許してほしい。傷つけたくない、死なせたくない。
でももしこの願いが叶うなら.....お願いだ。
―――もう一人の我を助けてあげて、我を救ってくれたように。
そして我の意識は失うのだった。
◇
目が覚めるとそこは真っ暗な空間だった。
ただ、あの禁句の魔導書のなかではないと勘で分かった。
我は死ぬのか?アクセルと約束したのに.....死にたくないなぁ。
いつの間にか死にたがりの我は生きたいと思い始めた。
そんな変化に驚くと同時に目の前が光り始めた。
「........レン.....」
!!
聞こえる.....聞こえる!
我は走り出した。行かなきゃ、我はその光に手を伸ばす。もう離さないと決めたのだ。
独りじゃない、彼がいてくれる。
そんな思いが我を生きたいという思いを強くさせる。
「...レン....ス....!」
だんだんと聞こえる。そうだよ!ここに、我はいるよ!!
「ロー....レンス...!」
......アクセル!!
「ローレンス!!!」
そして彼の手をつかんだ時、いつの間にか我は彼の腕の中にいた。
「....遅いのだ...待ちくたびれたぞ?」
弱々しく声を出しながら彼に声を掛けた。
「......悪いな、少し時間かかったわ」
―――申し訳なさそうなアクセルの顔を見ながら我は笑ったのだった。
「ただいま....アクセル」
我はさっきまでいた研究所ではなく、何故か我の故郷ライファス聖王国にいた。
何故かという疑問なんてその光景を見ただけで何処かへ飛んで行った。
まるで炎が生き物のように人々に襲ってきておりそれから逃げるように走ってくる人の姿。聖王国の象徴かのように聳え立っていた城はまるで、天から見放されたかのようなボロボロの姿に変貌しており、まさに今のこの国の末路と言っても過言ではない。
そんな感想を我は取り乱す事なくただ淡々と思っていたのだ。
本当なら泣き叫ぶところなのだろう。どうして滅ぼされなきゃいけないんだと嘆くところだろう。
だがこの時の我はもうなにも感じなかったのだ。
いや違う……我が思ったのは……。
我は思い出す。数ヶ月前の今まで出来事を。
……本当なら楽しい思い出も、あるはずなのに……本当なら幸せな日常も、あったはずなのに………今思い出してるのはそんな甘々なことじゃない。
嫉妬と憎悪の対象として我に向けられた兄と姉。
突拍子もない、ありえない噂を信じて化け物だと、我を罵倒した民衆。
そして……娘の事など信じず、我を捨てていった……家族の姿。
………それしか、思い浮かばなかった。
そして思ったのだ。
「『ざまぁみろ』」と。
その後我は人々が恐るる「混沌の魔女」になったらしい。
我はもう、どうでもいいのだ。
……もうこんな世界《ところ》居ても意味ないんじゃないかな?
我を追ってくる奴はいるし、どこまで行っても罵倒されるし、どこに行ったって誰も我を…「ローレンス」を見てくれない
……我は、国をもしかしたら滅ぼしたかもしれない。でも…なんで、なんだろう。
我が儘なのかな?弱いと言われるのかな?
……でも、やっぱり、辛いのだ
我はただ頑張りたかった。好きなことに突き進みたかった。それなのに……それ、なの、に………我だけが悪いのかな??
国を滅ぼした罪なら、償う……だから我を、混沌の魔女としてでなく、ローレンスとして見て欲しい……。
…そんな存在がいないなら……我は、もう……。
『………い…生き…て………』
「!!」
…振り返っても、誰もいない。でも…そうなの、だな。
……我はあのかつての盟友の為に、生きなきゃいけないんだ。
我は我を繋いでくれた命を無駄にしようとしてしまったのだ。
……これが罪なら、しっかり償わなければいけない…たとえもう、我がこの先独りでも。
「見つけたぞ!!混沌の魔女だ!!」
あぁ…分かったのだ。それなら…我はこの道を進むとしよう。
大勢いる兵士達《ゴミ共》に我はついに真正面から受けて立つことにした。
我の中にいるもう1人の力を借りて……もう、突き進まなきゃ行けないんだ。
我々に味方などいないのだから。
…あの後決意を固めた我は、我に襲いかかってくるゴミ共を葬ってやった。もう我は止まることなど出来なくなった。一度決めたら止まらない性格のためなのだ。
我に話しかけた奴もいた。もしかしたら、また我を見てくれるかもしれない。そう思ってしまうが、束の間だ。結局我に恐れ逃げ、国に報告するというなんともまぁ情けない話だ。
そんな奴らも全員滅ぼしてやった。
その過程で混沌の魔女は世界でも共通の敵として認識されたらしい。
当たり前なのだ。これだけ、害とみなした相手を滅ぼしまくったのだ。仕方ないと思う。
…だが、そんな我の長い旅も終わりを迎えようとしていた。
のちに5人の英雄と呼ばれる存在。
そんな奴らの相手をしていたのだが、実力が均衡していて中々倒せない。
こんな体験中々なく、我は少し油断してしまったのだ。
1人の魔導書使いが、奇妙な魔導書を開いて黒い禍々しい塊を我に向けて放ってきたのだ。
我はそれを魔法で相殺しようとしたのだが、
なんとぜんぶ吸収され、驚いて避けるのを失敗して我はその塊の中に吸収されてしまったのだ。
恐らくこれが後の禁句の魔導書と呼ばれる存在なのだろう。
こうして我は自由すら奪われてしまったのだ。
◇
そこは何もない空間であった。
なにも存在しない。声も聞こえない。音すら、光すら存在しない。
ここから脱出しようと我は様々な魔法を試した。
試しに空間にゲートを開けて見ても、魔素が発散して消えてなくなる
その代わりに何故かは分からないが、この空間に城のような物が出てきた。
なるほど、我が魔法を使えば使うほどここはより形ある何かになるという訳だな。
そう理解した時、全身から力が抜けた。
当たり前だ。休息も最低限しか取らずただただ、逃げたり、戦うのに全力を注いだのだ。
何もしなくていいと考えた時、もう何もする気がなくなった。
……もう、いいんだな?もう我は…楽になっていいんだな?
かつて生きなきゃいけないと必死になった我はこの何もない空間で死んでもいいと思い始めた。
……そして、我は自分に魔法をかけて自殺しようとした。これでもう楽になれると考えて……………。
…………だが、現実は残酷だ。
我は確かに魔法を放った。それで一度死んだ。だが、その後まるで、何事も無かったかのように、元通りになっていた。
……ははっ、ここまで我を地獄に留まらせたいんだな。
理解するのに、そう時間がかからなかった。
…なんで?どうして?我はもう頑張ったのだ。これ以上苦しめというのか?
それとも、もう我にはどんなことをしたって救われないのか?……我はもう、許されないのか?
その後我が何をしたか覚えてない。
一つ分かることは我の意識が戻った時には
初めの何もない空間から一変して一つの世界が出来ていた。
…こんなところ、壊してしまおうか?
そんなことも考えた。でも、もしかしたら我の所に来てくれる誰かが来るかもしれない
そう考えたらとてもじゃないが、破壊なんてすることが出来なかった。
だから我は待ち続けた。どんなに苦しくても、寂しくても死にたいと思っても
ただ待とうと、そんな淡い期待を込めて——。
——どれだけの時間が経ったのだろうか?
もう何も覚えてない。ただ玉座に座って何もない空を眺めながら考えていた。
もう、だめだ……そんな時に現れたのだ。
我が待っていた存在が——。
我はいつも通り玉座に座っていた。
だが、正直なところもう限界に近かった。
我が精神的に死んだら我の中にいる奴が暴走しかねない。
でももうそれもいいんじゃないかとそう思っていた時だった。
その大きすぎると表現していいほどの扉が開いたのだ。
そして目の前には.....人がいた。
血まみれで特徴的な剣のようなものを腰にかけているが、間違いなく人間だった。
だが、きっと恐れられるに決まっている。そう思い我は少し圧を出して目の前の人を見た。
....だが、その人は我を恐れなかった。初めてだった。混沌の魔女という異名があるにも関わらず我を恐れないでしっかりと見てくれる人は。
だから、その人に興味がでた。こやつのことを知りたい。どうして平気でいられるのかを。
「……驚いた。まさかこんな場所に人間がいるとは…くくっ歓迎しようぞ、人間。我の名はローレンス・アンドレ・ライファス
この空虚なき世界を作り出し、その頂点に立つ王である」
だが、長年人を恐れさせるために考えた口調で話しかけてしまった。
....また恐れられてしまうだろうか、そんな心配は杞憂に終わる。
「私も貴方に会えて光栄ですローレンス様。そして初めまして、アクセル・アンドレ・レステンクールでございます」
ただそこには我に会いたかったという思いが嘘偽りなく伝わった。
何故か我には、人の嘘が敏感になってしまい、それで相手が嘘をついてるのかが分かるのだ。
だからこそ嬉しかった。本心で我を恐れずそんな思いを伝えてくれたことを。
色々な疑問はあったが、そんなのどうでも良かった。
ただ、こやつと遊んでいたい、もっと一緒に話したい、遊びたい、隠し事があろうが、無かろうが、どうでも良かった。
最初こそ、他人口調で我と距離を開けてるかのような話し方で辛かったが、お願いしたら彼は素の姿で我と関わってくれた。
その時、明確にはっきりしたのだ。
あぁ、彼こそ....アクセルこそが我が待ち望んだ存在なのだと。
だから、彼が帰ると言ったとき頭の中が真っ白になった。
また我を一人にするの?またこの世界で罪を償わなきゃいけないの?
...もしかしたら、前の我なら耐えれたのかもしれない。
でももう精神的に限界だった我はもう彼から離れるのは凄く怖くなった。
少ししか時間が経ってないのに、それほど我の中でアクセルの存在は大きくなった。
....嫌だ....嫌だ.......。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ......。
....でも、本当は別の理由があってここから離れたくなかったかもしれない。
それを彼の発言で明確にされた時、我は暴走した。
怖くて何が悪いのだ、もう何も奪われたくない。
また独りになるのは嫌なのだと。
その発言を聞いたアクセルはなんの疑問もなく我の発言を訂正してくる。
「独りじゃない、俺がいる」
その発言は凄く心にきた。
そんな言葉を言ってほしかった。独りじゃないんだと、一緒にいるんだと。
でも、裏切られた我はその勢いでアクセルにひどいことを言った気がする。
...これで嫌われただろう。一瞬そう思った時だ
「……俺だって全部奪われたさ」
...え?
おぬしも、なのか?アクセルも、奪われたのか?彼にもそんな経験があるのは驚いた。それならどうしてそんなに平気なのだ?
我はおかしくなりそうなのに...いや彼が強いのだな。
その疑問はいとも簡単に打ち砕いた。そうだ彼は強いそれだけなのだ。
だから彼は.....。
「だから、お前の裏切られたって気持ちだけは痛いほど分かるさ……それを含めて言ってやる。俺はお前を裏切らないし、独りになんかにさせない」
......こんな弱い我を、救ってくれるんだな。
混沌の魔女とか、世界が恐れる存在とか彼には関係ないのだ。
彼はただ、助けてと叫んでいる我を助けるだけなのだ。
あぁ、アクセルお主はほんとに...ほんとに......。
「たとえ世界を敵に回しても、俺はお前を守り続ける」
......ほんとうに、我の心を救ってくれる救世主《ヒーロー》だ。
でもそれでも我は躊躇する。また我の思いと裏腹に奪われるんじゃないかと、そう感じた時とても怖くなった。
でもアクセルはそんな我の背中を押してくれた。
それだけじゃない。彼は長い間待ってくれた。
....彼がここまでしてくれたんだと思うと嬉しくて、そして答えないとそう思った。
我の本音を.....。
「…………わ、我は……我はアクセルと一緒にここを出たい!!!我、ほんとは凄く怖い…でも…ここでずっと独りになるのはもっと怖い!!もっと世界を見てまわりたい。美味しいものを食べたい!あの世界で暮らしたい!どんなに辛くて険しい道でも我は……アクセルと一緒にいたい!!!」
やっと言えたな。そんな声が聞こえた気がした。
アクセルの方を見ると彼は優しそうな顔をして我を全部包んでくれるような手を出して。
「なら握れ、お前がそれを望むなら今はそれだけでいい」
....我に差し伸ばしてくれた。
我はもうたくさん感情が溢れて、その手を握ろうとして――――。
―――ダメよ?―――
我の中の奴がそう呟くようにその瞬間、我は身体を乗っ取られそうになった。
あぁ、アクセルこんな我を許してほしい。傷つけたくない、死なせたくない。
でももしこの願いが叶うなら.....お願いだ。
―――もう一人の我を助けてあげて、我を救ってくれたように。
そして我の意識は失うのだった。
◇
目が覚めるとそこは真っ暗な空間だった。
ただ、あの禁句の魔導書のなかではないと勘で分かった。
我は死ぬのか?アクセルと約束したのに.....死にたくないなぁ。
いつの間にか死にたがりの我は生きたいと思い始めた。
そんな変化に驚くと同時に目の前が光り始めた。
「........レン.....」
!!
聞こえる.....聞こえる!
我は走り出した。行かなきゃ、我はその光に手を伸ばす。もう離さないと決めたのだ。
独りじゃない、彼がいてくれる。
そんな思いが我を生きたいという思いを強くさせる。
「...レン....ス....!」
だんだんと聞こえる。そうだよ!ここに、我はいるよ!!
「ロー....レンス...!」
......アクセル!!
「ローレンス!!!」
そして彼の手をつかんだ時、いつの間にか我は彼の腕の中にいた。
「....遅いのだ...待ちくたびれたぞ?」
弱々しく声を出しながら彼に声を掛けた。
「......悪いな、少し時間かかったわ」
―――申し訳なさそうなアクセルの顔を見ながら我は笑ったのだった。
「ただいま....アクセル」
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本当に、ありがとうございます。
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