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開戦の幕開け
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「な、何をするのですか!?これは許されることではありませんよ……!」
「カロナイラ家直々の命令です。申し訳ありませんが、多少強引にでも調べさせていただきます」
ここ、王都では現在カロナイラ家が王都にいる貴族、またその周辺にいる貴族の取り調べを行っており、今は王都にいる貴族を取り調べをしている。
その貴族が全員、ペレク家の者と繋がっているという共通点を持っており、数日前に起きたアクセル毒殺未遂にイベルアート家が関わっていたことやそしてその家族であるアルマンの助言をきっかけに本格的に動き始めたのだ。
「ナーシャ様!この家にもペレク家と繋がっているであろう物が…!」
騒々している内にまた新たに見つかったようだ。その言葉を聞いてナーシャは心の中でため息をついてしまう。
(これで何軒目でしょうか……アルマン様からいただいた助言や資料を元に調べた貴族は全員黒……全て、的を射ていますね…)
そう、アルマンはペレク家と繋がっている貴族を彼の思いつく限りに推測し、そして調べた物を彼女らに報告。
本当ならばユニーレ達が持っているであろう資料に全てあるのだが、彼はあのアクセルの毒殺未遂をきっかけに王都にいる間、その半分を自分自身で調べ上げた。
流石神童と言われる男、そう思わさせる程の実力がそこにはあった。
「…その者達を牢屋に連行しなさい。それとその証拠はカロナイラ家が管理を。絶対に無くしてはいけません」
「はっ…!」
ナーシャによる命令がされた途端、そこにいた貴族とそれに関連する者達が連行される。
なにか戯れ事を言っていたが、今のナーシャには何も届かない。
そして、次の家に赴こうとした時、それは目に映った。
「…ん?これは……?」
ナーシャは疑問に思い、それ触れる。何かの薬なのだろか?すると近くにいた騎士の一人が答えてくれた。
「あぁ、それもこの家に見つかった物ですね。ただ何やらそれを見た途端、彼らが青ざめていたので何かの証拠かと……」
その言葉を耳に入れながら、ナーシャはその物をマジマジと見る。
(彼らが見て青ざめた…?それならばこれもあの家と繋がっている物の証拠として可能性が高い…何かの薬物?いやそれにしては反応が大袈裟すぎます……)
その時、ナーシャにある可能性を思いつく。
そう、自分が興味本位で調べた、とてつもなく埃の被った本の中に似たような物………それは確か………。
(……まさか!)
するとナーシャの顔は真っ青と言われるぐらい青ざめ、そして目的の物を待ち、ある場所に向かおうとする。
その突然の行動に騎士達も驚いたようで声をかけた。
「ナーシャ様!?一体どちらに…?」
すると、声をかけられたナーシャは即時に命令を下す。それも先ほどの少し憂いたような声ではなく、緊迫感のある声で。
「貴方達はそのままその者達を連行!絶対に逃してはなりません!終わったのならそこで待機を!それと、一人だけ私と一緒に来てください、急いで!」
その迫力と焦りじみた様子を見て、彼らも只事ではないと分かったのだろう。すぐに動き出す。そしてそのうちの騎士と共にナーシャはある場所に向かった。
◇
「……!ありました!!」
彼らが向かったのは王都でも限られた者にしか出歩くことができない、王立図書館。
そして今、彼女が持っているのは…おそらく誰も見なかったであろう、埃の被った本だ。
「ナーシャ様?それは…?」
「遥か昔、幾千の偉人者達が書き記した物だと言われています。5人の英雄、異界の勇者………混沌の魔女」
「ッ!」
その単語に息を飲んでしまう。前者2つはこの王都でも御伽話の元としても有名だ。だが、最後の一つ、混沌の魔女。
これはその単語を聞くだけで呪い死ぬと言われている。それぐらい禁句の言葉なのだ。
そんな偉人も、化け物の事もこの古びた本に載っているとなると……とても恐ろしいと彼女は感じてしまう。
そうしている間に、ナーシャはどうやら探していた事を見つけたようで目を見開いた。
「……!」
その内容を見て彼女は…手元に持っている瓶を開け、そしてその中に入っている液体に指をつけ、ペロリと舐める。
「な、ナーシャ様!?」
その行動にさらに驚愕してしまう。普段も少し抜けている所や頭のネジが抜けているのではと思うほどの行動を数々見てきたが、今回はその中でも上位に迫る程の行動をしてきた。
なんとか止めようとするが、時すでに遅し。彼女はその液体を舐めた途端、ものすごく顔を顰めている。
「……もの凄く、苦いです……やはり」
そして、それだけ確認すると彼女はその本と液体の入った瓶を持って行こうとする。
「な、ナーシャ様!流石に王立図書館の本を持っていくのはまずい気が…!」
「なら貴方は、管理人さんにこのページの写し絵を貰ってきてください。私は急いで父の所に向かいます」
本を騎士に渡し、それだけ呟いて彼女は急いで出て行った。
そのページを見た騎士は不思議に思いながらも、彼女の言われた通りにすることにした。
「…魔法薬?」
——その単語だけ静かに吐いて。
◇
現在、レステンクール領では引き続いてソフィアの捜索に明け暮れていた。だが、一向に彼女が見つかる気配がなく、その様子に彼らは精神的にやられていた。
「…はぁ、本当ならこんな事に挫けるわけにはいかないのだけど…どうやら私は想像以上に家族のことが大事なようだ」
あの事件以降、良くない事ばかりが続いてる気がする。
マリアはまだマシになったものの、未だに回復せず、ジークはソフィアの失踪後、自分に責任を感じだと思ってるのか、更に自分を追い込んでいる。
そして、その様子に住民は不安に思っているのか、最近だとここにはいないアクセルはもう死んだのではという噂ばかりだ。
「あまりよくない状況ですね。母上も最近だと元気が出ない様子ですし…」
アルマンもここ最近寝てないのか、父マエルと同じようにクマが出来ている。
彼も彼とてあまり心の余裕がなかった。
「…ともかく、まずは街の住民の不安を取り除くのが先だ。今は疲労が限界ということもあり、騎士達を一度休めさせているが、早く見つけねば…」
我も休んだらすぐに出向かねば……とソファにもたれかかって座っているローレンスが彼らに言う。
ユニーレもソフィアの捜索と同時に奴らの後ろにいる奴らの足取りを追うが、進歩はなし。どうやら相手は想像以上の手練れのようだと思わざるおえない。
(…まずいかもしれんな。アクセルが意識を戻らず、ソフィアが見つからなかったら……住民の不安が一気に爆発する。そしてそれに伴い、奴らは仕掛けてくるはずだ……我らのコンディションは最悪と言ってもいい……奴らの裏にいる者達は未だ分からずにいる……くっ!嘗て混沌の魔女と呼ばれてた癖して、情けない…!)
ローレンスは今の状況と彼に任された事が何一つ出来ずにいる自分のことを情けなく感じてしまう。
時間が勿体無い。そう思ってそろそろ立ち上がり、いつも通りに彼女らのケアをしようとした時だ。
バンッ!
そんな音とともに、扉が開かれた。
三人が凝視するとそこには大量の汗をかきながらゼェゼェと膝をついている騎士の姿が見えた。
「ま、マエル様!!大変です!!」
その様子に只事ではないと感じた三人は先ほどの余裕がない様子を消して、今から来るであろう言葉を身を構える。
そしてその言葉は彼ら三人の耳に届いた。
「——現在、魔物と盗賊らしき者たちがここレステンクール領に進行中でございます!!」
「「「ッ!」」」
その言葉を聞いた途端…彼らはすぐに動いた。
「アルマン、今動かせる者は全員外へ。私達は街の住民の避難を…」
「はい、すぐに避難勧告をしていきます。後はマリアとジークにこのことをすぐに報告していきます。ローレンス様は……」
「言われんでも分かっておる。すぐに向かう」
三人がそれぞれ、その出来事を予感したような動きに目の前の騎士はポカンとしてしまう。
「そこの者よ。このことを他の誰かに報告したか?」
「えっ?いや……まだ、皆様方にしか…」
「ならばすぐに駐屯地に向かい、周りの者達にすぐに報告せよ。一応アルマンも向かうがお主が向かった方が早いだろう」
「は、はいっ!」
その命令を受けた騎士はすぐに動き始めた。
それを見送った瞬間、ローレンスはありったけの魔力を込めて、空間結果を張る。そして自分の下に魔法陣を展開…すぐに持ち場に向かう。
(……アクセル…‥我、頑張るぞ…!だから…必ず……!!)
「…帰ってきてくれ」
その言葉と共に彼女は、その部屋から霧の如く消えていった。
◇
「ゼノロア様!見たところ、奴らが動き出したようです…!」
その報告を受け、ゼノロアはふっと鼻を鳴らしながらも口元をニヤリと歪めた。
「よし、ならばお前らはそこで待機を。奴らからの合図が来たらすぐに動き出すぞ」
「はっ!」
それだけ命令して、彼の部下である騎士はテントから出て行った。
「……魔族よ。貴様らに証明してやるぞ……この世界で一番恐ろしいのは…人間であるということをな」
思い出されるのは数日前に忠告してきたあの忌々しい魔族。
下劣な種族でありながら、非常に人間の姿に似ており、それも気に食わなかった。
だが、利用できる物は利用する主義であるゼノロアはそいつをレステンクールの奴らの懐に潜入させる。
ここまで奴を使ってやったのに…あの言葉。
——呑気なものっすね。
「ッ!黙れっ!」
再び、目の前にある長机に自分の拳を叩きつける。
ドンっ!とその空間に衝撃が鳴り響く。
だが、怒りに変えた顔は束の間、再び顔を歪めさせる。
「……だが、これで終わりだ…この祭りが終結した後…次は、お前らだ……!」
「だから、俺の足枷となってくれるなよ?我が宿敵……レステンクール家よ」
だが、彼は知らない。
そもそもこれは線の通った物語に過ぎない。
これから始まるのは…そんな線から逸脱した
全く別の物語だ。
そして今から蹂躙されるのは……紛れもなく、彼なのだと。皮肉にも、それが本人に知ることなどなかった。
◇
「はぁ…はぁ……い、急がなければ…でなければ…皆様が…!」
ナーシャは全力疾走とも言えるスピードで自分の家まで向かっていた。彼らの後ろにいる者について分かったのだ。そしてそれは…到底彼らの太刀打ちできる相手ではない。
彼女に出来ることがあるとすればそれはこの最悪を自分の父である、バレロナに報告をすること。
(……もし、ここで間に合わなければ…あの人に、会う顔がない…!)
そう思ってるうちにどうやらその部屋の前まで着いたようだ。心を落ち着かせるように胸に手を置き、そして落ち着いた所で部屋に入ろうとした瞬間だ。
「…君は大した人間だ」
父の声が聞こえる。誰かと話しているのだろうか?だが、今は大事なことが……そうナーシャが思った時、もう一人、自分と同年代の、それも確かな意思が籠った声がナーシャの耳に入った。
「いえ、バレロナ様程ではありませんよ」
「……え?」
呆気に取られてしまった。聞こえるはずの無い声が自分の耳に入ったからだ。聞きたくても聞こえない、だって今は神殿にあるベットに寝ているはずなのだから。
ドキッとした。心臓が痛いと思うほどにだ。彼と関わる時にしか感じたことのない鼓動が今感じる。
開けるのが怖い。これがもし、自分の幻聴だとしたら…立ち直れる気がしない。
でもそれ以上に……会いたくて会いたくて仕方がなかった。
ナーシャは震えるその手でそっとドアを握り締め……息をふぅ…と吐きながら、しっかりと開いた。
バンッ!
だが、予想以上に落ち着いていなかったのだろう。ドアの音がバレロナの部屋に轟響いた。
そして二人は何事かと驚愕な目でこちらを見ている。
こんな姿、普段なら見せるつもりなんてなかった。
だが、仕方ないではないか。
……自分が今、最も会いたかった人物が今、目の前にいるのだから。
「……アクセル……様?」
その言葉に反応するように、彼は…アクセルはナーシャの様子に驚きながらも、しっかりと答えてくれた。
「…な、ナーシャ様?」
それは…幻覚でも幻聴でもない。
正真正銘アクセル・アンドレ・レステンクー
ル。
毒という天災と言われる物を取り込んでも尚、悲劇の悪役と呼ばれている彼は再び現地へと返り咲いた。
「カロナイラ家直々の命令です。申し訳ありませんが、多少強引にでも調べさせていただきます」
ここ、王都では現在カロナイラ家が王都にいる貴族、またその周辺にいる貴族の取り調べを行っており、今は王都にいる貴族を取り調べをしている。
その貴族が全員、ペレク家の者と繋がっているという共通点を持っており、数日前に起きたアクセル毒殺未遂にイベルアート家が関わっていたことやそしてその家族であるアルマンの助言をきっかけに本格的に動き始めたのだ。
「ナーシャ様!この家にもペレク家と繋がっているであろう物が…!」
騒々している内にまた新たに見つかったようだ。その言葉を聞いてナーシャは心の中でため息をついてしまう。
(これで何軒目でしょうか……アルマン様からいただいた助言や資料を元に調べた貴族は全員黒……全て、的を射ていますね…)
そう、アルマンはペレク家と繋がっている貴族を彼の思いつく限りに推測し、そして調べた物を彼女らに報告。
本当ならばユニーレ達が持っているであろう資料に全てあるのだが、彼はあのアクセルの毒殺未遂をきっかけに王都にいる間、その半分を自分自身で調べ上げた。
流石神童と言われる男、そう思わさせる程の実力がそこにはあった。
「…その者達を牢屋に連行しなさい。それとその証拠はカロナイラ家が管理を。絶対に無くしてはいけません」
「はっ…!」
ナーシャによる命令がされた途端、そこにいた貴族とそれに関連する者達が連行される。
なにか戯れ事を言っていたが、今のナーシャには何も届かない。
そして、次の家に赴こうとした時、それは目に映った。
「…ん?これは……?」
ナーシャは疑問に思い、それ触れる。何かの薬なのだろか?すると近くにいた騎士の一人が答えてくれた。
「あぁ、それもこの家に見つかった物ですね。ただ何やらそれを見た途端、彼らが青ざめていたので何かの証拠かと……」
その言葉を耳に入れながら、ナーシャはその物をマジマジと見る。
(彼らが見て青ざめた…?それならばこれもあの家と繋がっている物の証拠として可能性が高い…何かの薬物?いやそれにしては反応が大袈裟すぎます……)
その時、ナーシャにある可能性を思いつく。
そう、自分が興味本位で調べた、とてつもなく埃の被った本の中に似たような物………それは確か………。
(……まさか!)
するとナーシャの顔は真っ青と言われるぐらい青ざめ、そして目的の物を待ち、ある場所に向かおうとする。
その突然の行動に騎士達も驚いたようで声をかけた。
「ナーシャ様!?一体どちらに…?」
すると、声をかけられたナーシャは即時に命令を下す。それも先ほどの少し憂いたような声ではなく、緊迫感のある声で。
「貴方達はそのままその者達を連行!絶対に逃してはなりません!終わったのならそこで待機を!それと、一人だけ私と一緒に来てください、急いで!」
その迫力と焦りじみた様子を見て、彼らも只事ではないと分かったのだろう。すぐに動き出す。そしてそのうちの騎士と共にナーシャはある場所に向かった。
◇
「……!ありました!!」
彼らが向かったのは王都でも限られた者にしか出歩くことができない、王立図書館。
そして今、彼女が持っているのは…おそらく誰も見なかったであろう、埃の被った本だ。
「ナーシャ様?それは…?」
「遥か昔、幾千の偉人者達が書き記した物だと言われています。5人の英雄、異界の勇者………混沌の魔女」
「ッ!」
その単語に息を飲んでしまう。前者2つはこの王都でも御伽話の元としても有名だ。だが、最後の一つ、混沌の魔女。
これはその単語を聞くだけで呪い死ぬと言われている。それぐらい禁句の言葉なのだ。
そんな偉人も、化け物の事もこの古びた本に載っているとなると……とても恐ろしいと彼女は感じてしまう。
そうしている間に、ナーシャはどうやら探していた事を見つけたようで目を見開いた。
「……!」
その内容を見て彼女は…手元に持っている瓶を開け、そしてその中に入っている液体に指をつけ、ペロリと舐める。
「な、ナーシャ様!?」
その行動にさらに驚愕してしまう。普段も少し抜けている所や頭のネジが抜けているのではと思うほどの行動を数々見てきたが、今回はその中でも上位に迫る程の行動をしてきた。
なんとか止めようとするが、時すでに遅し。彼女はその液体を舐めた途端、ものすごく顔を顰めている。
「……もの凄く、苦いです……やはり」
そして、それだけ確認すると彼女はその本と液体の入った瓶を持って行こうとする。
「な、ナーシャ様!流石に王立図書館の本を持っていくのはまずい気が…!」
「なら貴方は、管理人さんにこのページの写し絵を貰ってきてください。私は急いで父の所に向かいます」
本を騎士に渡し、それだけ呟いて彼女は急いで出て行った。
そのページを見た騎士は不思議に思いながらも、彼女の言われた通りにすることにした。
「…魔法薬?」
——その単語だけ静かに吐いて。
◇
現在、レステンクール領では引き続いてソフィアの捜索に明け暮れていた。だが、一向に彼女が見つかる気配がなく、その様子に彼らは精神的にやられていた。
「…はぁ、本当ならこんな事に挫けるわけにはいかないのだけど…どうやら私は想像以上に家族のことが大事なようだ」
あの事件以降、良くない事ばかりが続いてる気がする。
マリアはまだマシになったものの、未だに回復せず、ジークはソフィアの失踪後、自分に責任を感じだと思ってるのか、更に自分を追い込んでいる。
そして、その様子に住民は不安に思っているのか、最近だとここにはいないアクセルはもう死んだのではという噂ばかりだ。
「あまりよくない状況ですね。母上も最近だと元気が出ない様子ですし…」
アルマンもここ最近寝てないのか、父マエルと同じようにクマが出来ている。
彼も彼とてあまり心の余裕がなかった。
「…ともかく、まずは街の住民の不安を取り除くのが先だ。今は疲労が限界ということもあり、騎士達を一度休めさせているが、早く見つけねば…」
我も休んだらすぐに出向かねば……とソファにもたれかかって座っているローレンスが彼らに言う。
ユニーレもソフィアの捜索と同時に奴らの後ろにいる奴らの足取りを追うが、進歩はなし。どうやら相手は想像以上の手練れのようだと思わざるおえない。
(…まずいかもしれんな。アクセルが意識を戻らず、ソフィアが見つからなかったら……住民の不安が一気に爆発する。そしてそれに伴い、奴らは仕掛けてくるはずだ……我らのコンディションは最悪と言ってもいい……奴らの裏にいる者達は未だ分からずにいる……くっ!嘗て混沌の魔女と呼ばれてた癖して、情けない…!)
ローレンスは今の状況と彼に任された事が何一つ出来ずにいる自分のことを情けなく感じてしまう。
時間が勿体無い。そう思ってそろそろ立ち上がり、いつも通りに彼女らのケアをしようとした時だ。
バンッ!
そんな音とともに、扉が開かれた。
三人が凝視するとそこには大量の汗をかきながらゼェゼェと膝をついている騎士の姿が見えた。
「ま、マエル様!!大変です!!」
その様子に只事ではないと感じた三人は先ほどの余裕がない様子を消して、今から来るであろう言葉を身を構える。
そしてその言葉は彼ら三人の耳に届いた。
「——現在、魔物と盗賊らしき者たちがここレステンクール領に進行中でございます!!」
「「「ッ!」」」
その言葉を聞いた途端…彼らはすぐに動いた。
「アルマン、今動かせる者は全員外へ。私達は街の住民の避難を…」
「はい、すぐに避難勧告をしていきます。後はマリアとジークにこのことをすぐに報告していきます。ローレンス様は……」
「言われんでも分かっておる。すぐに向かう」
三人がそれぞれ、その出来事を予感したような動きに目の前の騎士はポカンとしてしまう。
「そこの者よ。このことを他の誰かに報告したか?」
「えっ?いや……まだ、皆様方にしか…」
「ならばすぐに駐屯地に向かい、周りの者達にすぐに報告せよ。一応アルマンも向かうがお主が向かった方が早いだろう」
「は、はいっ!」
その命令を受けた騎士はすぐに動き始めた。
それを見送った瞬間、ローレンスはありったけの魔力を込めて、空間結果を張る。そして自分の下に魔法陣を展開…すぐに持ち場に向かう。
(……アクセル…‥我、頑張るぞ…!だから…必ず……!!)
「…帰ってきてくれ」
その言葉と共に彼女は、その部屋から霧の如く消えていった。
◇
「ゼノロア様!見たところ、奴らが動き出したようです…!」
その報告を受け、ゼノロアはふっと鼻を鳴らしながらも口元をニヤリと歪めた。
「よし、ならばお前らはそこで待機を。奴らからの合図が来たらすぐに動き出すぞ」
「はっ!」
それだけ命令して、彼の部下である騎士はテントから出て行った。
「……魔族よ。貴様らに証明してやるぞ……この世界で一番恐ろしいのは…人間であるということをな」
思い出されるのは数日前に忠告してきたあの忌々しい魔族。
下劣な種族でありながら、非常に人間の姿に似ており、それも気に食わなかった。
だが、利用できる物は利用する主義であるゼノロアはそいつをレステンクールの奴らの懐に潜入させる。
ここまで奴を使ってやったのに…あの言葉。
——呑気なものっすね。
「ッ!黙れっ!」
再び、目の前にある長机に自分の拳を叩きつける。
ドンっ!とその空間に衝撃が鳴り響く。
だが、怒りに変えた顔は束の間、再び顔を歪めさせる。
「……だが、これで終わりだ…この祭りが終結した後…次は、お前らだ……!」
「だから、俺の足枷となってくれるなよ?我が宿敵……レステンクール家よ」
だが、彼は知らない。
そもそもこれは線の通った物語に過ぎない。
これから始まるのは…そんな線から逸脱した
全く別の物語だ。
そして今から蹂躙されるのは……紛れもなく、彼なのだと。皮肉にも、それが本人に知ることなどなかった。
◇
「はぁ…はぁ……い、急がなければ…でなければ…皆様が…!」
ナーシャは全力疾走とも言えるスピードで自分の家まで向かっていた。彼らの後ろにいる者について分かったのだ。そしてそれは…到底彼らの太刀打ちできる相手ではない。
彼女に出来ることがあるとすればそれはこの最悪を自分の父である、バレロナに報告をすること。
(……もし、ここで間に合わなければ…あの人に、会う顔がない…!)
そう思ってるうちにどうやらその部屋の前まで着いたようだ。心を落ち着かせるように胸に手を置き、そして落ち着いた所で部屋に入ろうとした瞬間だ。
「…君は大した人間だ」
父の声が聞こえる。誰かと話しているのだろうか?だが、今は大事なことが……そうナーシャが思った時、もう一人、自分と同年代の、それも確かな意思が籠った声がナーシャの耳に入った。
「いえ、バレロナ様程ではありませんよ」
「……え?」
呆気に取られてしまった。聞こえるはずの無い声が自分の耳に入ったからだ。聞きたくても聞こえない、だって今は神殿にあるベットに寝ているはずなのだから。
ドキッとした。心臓が痛いと思うほどにだ。彼と関わる時にしか感じたことのない鼓動が今感じる。
開けるのが怖い。これがもし、自分の幻聴だとしたら…立ち直れる気がしない。
でもそれ以上に……会いたくて会いたくて仕方がなかった。
ナーシャは震えるその手でそっとドアを握り締め……息をふぅ…と吐きながら、しっかりと開いた。
バンッ!
だが、予想以上に落ち着いていなかったのだろう。ドアの音がバレロナの部屋に轟響いた。
そして二人は何事かと驚愕な目でこちらを見ている。
こんな姿、普段なら見せるつもりなんてなかった。
だが、仕方ないではないか。
……自分が今、最も会いたかった人物が今、目の前にいるのだから。
「……アクセル……様?」
その言葉に反応するように、彼は…アクセルはナーシャの様子に驚きながらも、しっかりと答えてくれた。
「…な、ナーシャ様?」
それは…幻覚でも幻聴でもない。
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おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
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