借金まみれの貧乏令嬢、婚約者に捨てられ王子様に拾われる ~家を再興するため街で働いていたら、実は王子様だった常連に宮廷へスカウトされました~

日之影ソラ

文字の大きさ
3 / 11

3

しおりを挟む
 意気消沈しながら、私はマルク様に尋ねる。

「周りの……方々は?」
「ああ、彼女たちかい? 君と婚約を破棄する話をしたら、自分が婚約者になりたいと言ってくれた女性たちだよ」
「……」

 私より先に、見知らぬ女性たちにこの話をしていたらしい。
 不謹慎で、不誠実だ。
 少しだけ苛立ちを覚える。

「まったく困ったものだよ。第二、第三夫人でも構わないというんだ」
「私は、私を一番に思って頂けるならそれでいいと思っています」
「と、彼女も言ってくれていてね。そんなつもりはなかったんだが、僕は多くの女性を虜にしてしまっていたらしい」
「罪な人ですね。でもそこも含めて素敵です」

 目の前で抱き寄せ合い、いちゃいちゃと見せつけてくる。
 レティシア公爵令嬢以外の女性も、我よ我よとマルク様の周りに群がってくる。
 マルク様はとても嬉しそうな表情を見せていた。
 私はこの人のことが好きで、信じていたけど、こんな光景をマジマジとみせられれば心は冷えていく。
 どうしてこんな男を好きになっていたのか……疑問すら浮かぶ。
 やがて疑問は怒りに代わり、ふつふつと煮えたぎる様に沸き上がる。

「……いつから、お考えになられていたのですか?」
「この話かい? そうだね。君の家が没落してからかな?」
「五年も……ならどうして、その時におっしゃってくれなかったのですか!」

 私は思わず叫んでしまった。
 彼を信じたこの五年間は、一方通行でしかなかった私の思いは、一体何のためにあったのかと。
 遊ばれていただけだったことに気づかされ、私は声を荒げる。
 そんな私に少し驚いたマルク様は、ニヤリと笑みを浮かべて言う。

「それはもちろん、君が可哀想だったから仕方なくだよ」
「――!」
「だってそうだろう? 突然両親が病死、独りぼっちになった君を見ていられなかったんだよ。これでも長い付き合いだから情くらい湧くさ」
「まぁ、なんてお優しい。そのマルク様の御心に気づけないなんて……最低ですね」

 レティシアさんが私のことをギロっとにらむ。
 最低など、どの口が言うのか。
 本気で心配していたわけじゃないことくらい、マルク様の表情を見れば一目瞭然だ。
 思えばあの時から、マルク様は私に隠れて他の女性と遊ぶようになっていた。
 きっと好機に思ったのだろう。
 私の両親がいなくなり、監視する目が減ったことで、自由に逢瀬できるのだから。
 心配したというのもテキトーだ。
 どうせ世間体を気にして、婚約者だったから仕方なく付き合い続けただけだろう。
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

「お前を愛することはない」と言った夫がざまぁされて、イケメンの弟君に変わっていました!?

kieiku
恋愛
「お前を愛することはない。私が愛するのはただひとり、あの女神のようなルシャータだけだ。たとえお前がどんな汚らわしい手段を取ろうと、この私の心も体も、」 「そこまでです、兄上」 「なっ!?」 初夜の場だったはずですが、なんだか演劇のようなことが始まってしまいました。私、いつ演劇場に来たのでしょうか。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【短編】記憶を失くした令嬢が、二度目の恋に落ちるまで

夕凪ゆな
恋愛
 ある雪の降る日の朝、ヴァロア伯爵家のリディアのもとに、信じられない報せが届いた。  それは、愛する婚約者、ジェイドが遠征先で負傷し、危篤であるという報せだった。 「戻ったら式を挙げよう。君の花嫁姿が、今から楽しみだ」  そう言って、結婚の誓いを残していったジェイドが、今、命を落とそうとしている。  その事実を受け入れることができないリディアは、ジェイドの命を救おうと、禁忌魔法に手を染めた。

ベッドの上で婚約破棄されました

フーツラ
恋愛
 伯令嬢ニーナはベッドの上で婚約破棄を宣告された。相手は侯爵家嫡男、ハロルド。しかし、彼の瞳には涙が溜まっている。何か事情がありそうだ。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

「華がない」と婚約破棄されたけど、冷徹宰相の恋人として帰ってきたら……

有賀冬馬
恋愛
「貴族の妻にはもっと華やかさが必要なんだ」 そんな言葉で、あっさり私を捨てたラウル。 涙でくしゃくしゃの毎日……だけど、そんな私に声をかけてくれたのは、誰もが恐れる冷徹宰相ゼノ様だった。 気がつけば、彼の側近として活躍し、やがては恋人に――! 数年後、舞踏会で土下座してきたラウルに、私は静かに言う。 「あなたが捨てたのは、私じゃなくて未来だったのね」

わたくしが代わりに妻となることにしましたの、と、妹に告げられました

四季
恋愛
私には婚約者がいたのだが、婚約者はいつの間にか妹と仲良くなっていたらしい。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

処理中です...