偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ

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 ノーマン公爵家は代々、聖女の役割を担っている名家だった。
 先代の聖女も、先々代の聖女もノーマン家の出身。
 故に現代でも同様に、ノーマン家の血筋から聖女が誕生するはずだった。
 誰もがそう思っていた。
 しかし、実際に聖女に選ばれたのは、ノーマン家とは縁もゆかりもない村娘の私だった。
 誰もが驚いた。
 ノーマン家の人間も、国王様も、何より私自身が驚いた。
 どうして私が聖女に選ばれたのかは、今になってもわからない。
 けれど現実として、聖女の力は私に宿っている。

「きっと一時的なものさ。神様もいずれ必ず気づくだろう。聖女に相応しいのは誰なのか……ね」
「ライゼン様……はい。そうであることを願っていますわ」

 私は八歳の頃、ノーマン公爵家の養子として迎え入れられた。
 代々ノーマン家から聖女は生まれる。
 国民もそれを知っているため、余計な混乱を防ぎ、伝統を守るために私がノーマン家の一員になった。
 村でも孤児で身寄りもなく、優しい老夫婦に育てられた私は、誰に引き留められることもなく、流れるようにノーマン家で暮らすことになった。
 それから大変だった。
 貴族としての振る舞いを覚えさせられ、毎日のようにお勉強。
 元から勉強は好きじゃなかったから、逃げ出したくなるほど辛かった。
 けれど幼い私は逃げられず、貴族令嬢としての教育と並行して、聖女としての振る舞い方も身につけた。
 
 そうして十年後の現在、私は立派に聖女として、人々の悩みに応えている。
 皆が望んだように。
 それなのに、未だに私のことを認めてくれない人が多い。
 特にノーマン公爵家の人間と、王族の彼らは頑固で、貴族でもない村娘が聖女になったのは間違いだと、今も口をそろえて言っている。
 もうわかると思うけど、ノーマン家にも、この王都にも、私の居場所はない。
 自由時間なし、安らげる場所もなし、助けてくれる味方もいない。
 あるのは聖女としての地位と、減ることのない聖女としてのお仕事だけだ。

「聖女が君であったなら、堂々と愛し合うことができたのに……残念だよ」
「私もです。ライゼン様」
「……」

 私が目の前にいるのに、気にせず悪口を言ったり、イチャイチャする二人を見ていると、どうしようもなくため息をこぼしたくなる。
 そんなに好きならさっさと婚約破棄して、マリィと婚約すればいいのに。
 言ってやりたい気持ちはあっても、口には出せなかった。
 私だって間違いだと思う。
 どうして自分が聖女に選ばれたのか。
 私でなくてもよかったのに……。

 この頃はつくづく思うようになった。
 聖女の役目から解放されて、自由のこの世界を生きたい。
 叶わぬ願いだと知りながら、穏やかで心地いい日々を夢想する。
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