転生した大英雄は今世でモテたいと叫ぶ(切実) -童貞のまま人生を終えてたまるかよぉ!-

日之影ソラ

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6.清楚な姉、腕白な妹

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 身体が浮く体験をしたことはあるだろうか?
 意識的に飛んだのとは訳が違うぞ。
 ふわっと浮かんだと思ったら真横にドゴーンと吹き飛ばされた。

「ごっ、ぶへ」

 受け身を取り損ねて頭を地面にぶつけ、車輪のごとく転がってうつ伏せに倒れ込む。

「うごっ、ふっ……」

 咄嗟に魔力による肉体強化を施したおかげで外傷はない。
 俺じゃなかったら死んでたね、これ。
 最低でも大怪我してたぞ。
 ただし、怪我はしていないだけで衝撃はダイレクトに伝わっている。
 つまりは……。

「いったぁ……」

 全身痛い。
 とにかくいたい。
 特に蹴られた?左のわき腹がめちゃくちゃ痛い。

「大丈夫お姉ちゃん? 怪我とかしてない?」
「ちょっ、ちょっとリール、いきなり何をしてるの!」
「何って助けに来たんだよ! おいそこの変態!」

 突然現れたショートカットの少女は俺に指をさす。
 いや、俺を指さしているように見えるだけだ。
 なぜなら俺は変態じゃないから。

「おいお前だよ! 銀髪の変態」
「……」

 俺だった。
 銀髪は俺しかいないから確定した。
 俺はゆっくりと起き上がり、身体についた砂や泥をはたいて落とす。
 予期せぬ事態に陥ったが、モテる男は動揺しない。
 ここでもクールに決めようじゃないか。

「ふっ、俺の不意を衝くとは中々やるじゃないか」
「何あの決め顔……キモ」
「……」

 キモイと言われてしまった。
 普通にショックを受ける。
 彼女はガルルルと狼みたいに威嚇していた。
 どうやら色々と誤解を生んでいるらしい。
 ここは冷静に、一つずつ誤解を解いていこう。

「おほんっ、君は大きく二つ勘違いをしている。まず一つ、俺は男に絡まれている君のお姉さんを助けただけだ。断じて変態ではない」
「嘘つくなよ! さっき変態みたいな顔でお姉ちゃんの手を掴もうとしてた癖に!」
「へんっ、あれは彼女の怪我を治癒させたかっただけだ。あと変態じゃない」
「そんなわかりやすい嘘に騙されるわけないだろ! 怪我を治すって、どこにも怪我なんてしてないじゃん!」

 彼女は姉の全身をパッと確認して自慢げに言う。
 そう、彼女は怪我をしていない。
 そのことに彼女が、姉本人が一番驚いていた。
 
「あ、あれ……?」
「どうしたの? お姉ちゃん」
「腫れが治ってる……? さっきまで真っ赤だったのに」
「え? ほ、ホントに怪我してたの? 大丈夫なの?」
「う、うん。もう全然痛くないよ」
「当然だ。俺が治癒させたんだからな」

 二人は息ピッタリで俺のほうへ振り向く。
 どちらも目を丸くして驚いていた。
 あの一瞬、蹴り飛ばされる直前に俺の指は、彼女の患部に触れていた。
 酷い怪我じゃなかったからな。
 治癒させるのに時間はかからなかったよ。

「これで一つ目の誤解は解けたかな? じゃあ二つ目だ。こっちのほうが重要……極めて深刻な間違いを正しておかなければならない」

 俺の今後のためにも。
 この誤解だけは解消しなければならないんだ。

「……な、なんだよ」

 俺は呼吸を整える。
 そして、言い放つ。

「俺はキモくない」
「……」
「俺は、キモくない」
「い、いや聞こえてるから」

 よかった。
 いきなり耳が遠くなったのかと心配したぞ。

「あ、え? そこ重要?」
「重要なことだ! 命に匹敵する重要度だと言っても過言ではない! 俺の将来に関わることなんだぞ!」
「ご、ごめんなさい」

 感情が高ぶってつい大声を出してしまった。
 そのせいで妹のほうを萎縮させてしまったようだ。
 乱暴とはいえ相手は女の子。
 反省しなければ。

「すまない。取り乱した。改めて、誤解は解けてくれたかな?」
「……」
「リール」
「わ、わかってるよ。えっと、誤解してすみませんでした。さっきはいきなり蹴ったりしてごめんなさい」

 姉に諭され妹が頭を下げる。
 少々不満げな顔をしていたが、しっかり謝罪はしてくれた。
 あとは俺の気の利いたセリフで、彼女が罪の意識を感じないようにすれば完璧だ。

「気にしなくていい。あの程度の蹴り、いくら喰らっても怪我ひとつしないからな」
「っ……やっぱムカつく」
「リール!」
「だってお姉ちゃん、やっぱりこいつ変だよ!」
「そ、それは……ちょっと思うけど」

 どうやら姉のほうにも変だと思われていたらしい。
 変態、じゃないだけマシなのか。
 下手に格好つけるのは逆効果なのかもしれないな。
 それにこれをずっと続けるのは疲れる。
 最初の掴みは十分だし、ここからはなるべく自然体で行こう。
 俺は小さく息を吐く。

「あの、さっきは助けてくれてありがとうございます。私はラナ・シレイルです。こっちは妹の」
「リール・シレイル……です」
「ラナとリール、うん、覚えた。俺はレインだ。ここにいるってことは、ラナも試験を?」
「はい。レインさんも、ですよね?」
「呼び捨てでいい。たぶんそんなに年齢も離れていないから」

 俺は今年で十七になる。
 試験を受けられるのは満十五歳以上だから、少なくとも離れていて一つだ。
 十も二十も離れていなくて、同級生というものになるなら畏まる必要はないだろう。
 
「ちょっと、あたしもなんだけど」
「ん?」
「あたしも、試験を受けに来たって言ってんの」
「……え?」

 あまりの驚きに勢いよくリールのほうへ視線を下げる。

「姉の付き添いじゃなくて?」
「なんで付き添いがいるんだよ! あたしも受験者だ!」

 リールの見た目はラナによく似ている。
 髪の色はラナよりも淡い金色で、長さは短いが揃えればそっくりだろう。
 ラナも決して身長が高いほうじゃない。
 そんな彼女の隣で、リールは頭一つぶんくらい小さい。
 てっきり十五歳未満だとばかり思っていた。
 
「単純に身長が低いだけだったのか」
「身長の話はするなぁ!」
「ぐほっ!」
「ちょっとリール!」

 今日はよく腹を蹴られる日だなぁ……。
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