転生した大英雄は今世でモテたいと叫ぶ(切実) -童貞のまま人生を終えてたまるかよぉ!-

日之影ソラ

文字の大きさ
20 / 20

20.モテたいんだよ

しおりを挟む
「なんだ?」
「はぁ……」
「なんだなんだそのため息は! 見たことないぞ!」
「初めてだからねぇ……ここまで拍子抜けしたのは」

 イクサは空気の抜けた風船のようにしぼんでいく。
 彼はやれやれと首を横に振り、呆れた顔をあげて俺に言う。 

「君のことだから、転生までするなんて相当な理由だろうと……そんな君と同じ時代に転生できたことに運命的なものすら感じていたのに、その理由がモテたいって」
「重要なことだろう?」
「そうかな? 僕はそう思わないんだけど」
「それはお前がモテていたからだろうがぁ!」

 俺は大声をあげる。
 イクサも驚いてパチッと両目を見開く。
 この時の俺は、前世での記憶を呼び起こしていた。
 共に戦う仲間たち。
 激しく辛い日々の中笑い合った最高の友。
 そんな彼らと過ごした日々は忘れるはずもない。
 だからこそ鮮明に覚えている。

「どこにいっても女にモテまるり! 世界を救った後もより取り見取りでハーレム状態! そんな奴に俺の気持ちがわかるまい!」
「えぇ……そんな風に思ってたのかい?」
「当たり前だ! 俺はモテなかった! モテるお前が羨ましい!」
「清々しいな……」

 イクサは小さめなため息をこぼして口を開く。

「それは君がそういうことに興味を示さなかったからだろう?」
「興味の有無じゃない! 仮にあっても俺に言い寄る女は一人もいなかったじゃないか!」
「……やっぱり気付いていないんだね。彼女も報われないな」
「ん? 何がだ?」
「君を好きな女性ならずっと近くにいたんだよ」
「……え?」

 三秒、俺の思考はフリーズした。
 俺は時間が動き出したように身を乗り出し、イクサの両肩を掴む。

「本当かぁ!?」
「ちょっ、声でかいよ。僕が嘘をついたこと、一度もなかっただろ?」
「それはそうだな。え、いたのか? 誰だ? 俺が知っているやつか」
「知ってるも何も、ずっと傍にいてどうして気付かなかったんだって思うよ」

 イクサは呆れを露にしたまま俺の顔を見ていた。
 勿体ぶって名前を教えてくれない。

「教えてくれ! 誰なんだ!」
「はぁ……本当に君は鈍感だね。あれだけ一緒にいてわからなかったのかい? ルイーナだよ。彼女は君に恋をしていた」
「ル、ルイーナが!?」
「そう。正確には今も恋をしている。彼女は一途に君を思っている」

 【神祖】ルイーナ・パラマイン。
 英雄の紅一点。
 その妖艶な美しさは見る者すべてを虜にすると言われた美女。
 
「ルイーナが? で、でもあいつ、俺のことよく罵倒してたぞ! あんたなんか別に好きじゃないとか言われたぞ!」
「それは彼女の照れ隠しだよ」
「一緒にいたくないって言われたんだが?」
「じゃあどうして、旅の中で片時も離れなかったんだい? 君は知らないと思うけど、魔神を倒した後君が一人でどこかに行ってしまった時、彼女ひどく落ち込んでいたんだぞ?」

 そうだったのか?
 ルイーナが俺を……。
 知らなかった。
 いや、気づかなかった。
 ずっと一緒にいたのに。

「そ、そんな……俺はモテていたのか? そんなチャンスを棒に振っていたというのか!」
「後悔しているなら、今から会いに行けばいいじゃないか。彼女も会いたがっている」
「そうだな! そうしよう。今すぐ行こう! おいイクサ案内してくれ!」
「はいはい。まったく君は相変わらずだね」

 そう言ってイクサは笑う。
 どこか懐かしさを感じるトーンで。

  ◇◇◇

 学園の最上階に彼女はいる。
 襲撃も全て、そこで見ていた。
 わかった上で傍観していた。
 彼女は知っていたのだ。
 俺の存在を、イクサがいることを。
 この地が決して、犯されることがないことを。

 知っていた……否、信じていた。
 
 そして俺が、この扉を開けることも。

「ルイーナ」
「――久しぶりね。レオ……なんて顔してるのよ」
「はぁ……千年ぶりの再会だよ。もっと品のある顔をしたらどうだい?」
「誰のせいだと思ってるんだ」

 俺は自分でもわかるくらいニヤついた顔をしていた。
 再会した彼女は昔と変わらない。
 あの頃の、俺たちと共に旅をした彼女のままだった。
 だけど今は、懐かしさ以上に興味が先行する。

「なぁ、ルイーナ、一つ聞きたいんだが」
「何かしら? 今日までのことならゆっくり話してあげるわよ」

 知りたくて仕方がない。
 もう止まれない。

「お前、俺のこと好きだって本当?」
「……」
「……」

 期待に胸が膨らむ。
 早く返事をくれと心が叫ぶ。
 そして――

「そ、そんなわけないでしょ! なんで私があんたなんか好きなのよ!」
「ぐほっ!」

 言葉という名の暴力によって心がへし折られた。
 ああ、懐かしい。
 この罵倒は彼女らしい。

「何? 久しぶりにあって勘違いしちゃった? あんたに会いたくて千年待ってたと思ったの? うぬぼれんじゃないわよ!」
「……う、う、うわああああああああああああああああああ」

 俺は逃げ出した。
 扉をぶち壊す勢いで、涙で前が見えないよ。

  ◇◇◇

「あ、ちょっ……」
「あーあ、何してるんだい?」
「だ、誰のせいだと思ってるのよぉ!」
「ちょっ、首絞めないで!」

 彼が去った後の部屋で、ルイーナは涙目になってイクサを責める。

「あんたでしょ余計なこといったの! どうしてくれんのよ!」
「どうもこうもないよ。せっかく機会をあげたのに、素直になれないのは君が悪いんだろ?」
「そんな簡単に素直になれるなら千年前にとっくに告ってるわよ!」
「……それもそうだったね」
 
  ◇◇◇

 俺は一人で夜道を帰る。

「うぅ……ぐすん」

 本気で泣いたのは初めてじゃないか。
 女の子にフラれるってこういう気分になるのか。
 死ぬより辛いじゃないか。

 学園を出ようとしたとき、ふいに声をかけられる。

「レインさん!」
「やっと見つけた!」
「え?」

 振り返った先に二人はいた。

「無事なら無事ってちゃんと言えよ」
「心配しましたよ。……レインさん?」
「どうして二人が、待ってたのか? こんな時間まで?」
「そりゃ待つだろ! いきなりいなくなってどれだけ心ぱ……いなんてしてないけど」

 そうか。
 ラナもリールも俺のことを心配して……。

「レインさん?」
「なんだよ。泣いてたのかよ」
「……いいや、嬉しかっただけだ」

 そうだな、そう、ここはもう千年前じゃない。
 俺はレイン、レオンじゃない。
 過去は過去として受け止めて、思い出にしまえばいいんだ。
 第一忘れたか?
 俺がなんのために転生したのか。

 モテるため、だろ?

 だったら昔の女にフラれたくらいで諦めるな。
 俺はモテる男になる。
 今日までしてきたように、明日からも。

 ただそのために、俺はここにいるんだから。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

本作はこれにて完結とします。

新作第二弾投稿しました!

『用済み勇者、捨てられたのでスローライフな旅に出る ~勇者はやめても善行はやめられないみたいです~』

ページ下部にリンクがありますのでぜひ!
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

hyperclockup
2022.07.30 hyperclockup

一気読みしました。(まぁ短編ですし汗)
面白かったです。

ただ、ここから本番というところで終わってしまったのが残念です。
最強の主人公がフラれまくる(誤解を含めて)という展開がもっとみたかった。
主人公も全力を見せてくれなかったし。

続きがあるのでしたら読みたいです。
楽しい時間をありがとうございました。、

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。