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23.再会
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「まずいですよ先生。彼女が帝都へ向かったのは」
「わかってるわ」
私の過去を見てしまった彼女は、興奮を抑えきれず帝都へ向かってしまった。
復活の喜びで、とかなら微笑ましかったのに。
彼女の抱いた感情は間違いなく怒りだった。
魔女狩り令は、唯一無二の親友を侮辱する行いだと。
私が同じ立場でも、彼女のように怒っただろう。
「私の責任ね」
「先生」
「ううん、今はそんなこと言ってる場合じゃないわね。彼女が暴れてしまう前に止めましょう」
「はい。下手をすれば国家間同士の戦争になる。そんなことは姫様も望んでいませんから」
問題は、どうやって彼女を諫めるのか。
相手はドラゴン、いかに私たちでも戦いになれば強引に止めるのは難しい。
だからこそ暴れる前に会話で説得するしかないか。
それから……
「ちょうどいい機会だし、過去の清算もしてしまいましょう」
私を裏切ったフレール殿下。
今は国王になった彼と、彼が治める帝国に。
復讐というほど大それたものじゃないけど、この十年分のつけは返してもらおう。
「転移するわよ」
「はい」
◇◇◇
帝都上空に浮遊するフィアンマ。
彼女は人々を見下ろし、怒声交じりに言い放つ。
「この国を治める愚かな王よ! ワシは主に用があるのじゃ!」
「私か……」
フレールは微かな声で呟いた。
その声と動揺を感知したフィアンマが、ギロっと彼に視線を向ける。
「そこか」
「――!?」
フィアンマの姿が消える。
とほぼ同時に、フレールたちの眼前に転移した。
身構えるフレールと、彼を守るように前へ出る三魔女。
「主がこの国の王じゃな」
「……ええ、その通りですよ。貴方は本当にドラゴンなんですか?」
「そう言ったじゃろう? なんじゃ聞こえておらんかったか? それとも理解できんかったか? どちらにせよ滑稽じゃな」
「貴様! 陛下に対して……」
怒るアクアが前のめりになる。
忠誠心が最も高い彼女は、フレールを侮辱され頭に血が昇る。
フィアンマを睨むアクア。
そんな彼女をフィアンマは鼻で笑う。
「ふっ、主らが愚かな王に従う魔女三人か。見たところ若すぎるのう。これでは三人合わせてもあの娘一人にすら届かん」
「何を……」
「生憎じゃがのう。ワシが話したいのは主らではない。邪魔じゃ」
「「「――!?」」」
冷たく重い一言には魔力が込められてた。
言葉による支配。
魔法ではなくドラゴンが持つ特性の一つ。
彼女たちは言葉に魔力を込めることで、強制力をもって相手を従わせることができる。
三人はフィアンマの言葉の前に、なすすべもなく地にひれ伏す。
「なっ……ぐ」
「お、お前たち! 何をしている!?」
「責めてやるな。ワシの言葉に従いこそすれ、意識を保っているのは見事じゃ。とは言え許しはせんがのう」
「……貴方は一体」
フレールの額から汗が流れ、頬をつたり落ちる。
圧倒的強者を前にはこざかしい策も通じない。
人生最大の焦りを感じているフレールに、フィアンマは問いかける。
「ワシがなぜここに来たかわかるかのう?」
「さぁ、なんでしょうね? 挨拶ですか?」
「挨拶か、当たらずと言えど遠からず……じゃのう。礼をしに来たのじゃ」
「礼? お礼ですか? 貴女にお礼をされるようなことはしていませんよ?」
「しておるじゃろう? 魔女狩り令……我が友への侮辱じゃ」
静かな怒りを瞳に宿し、怒鳴りもせず言葉で発露する。
フィアンマが放つ殺意を前に、フレールの全身は震え上がる。
その恐怖は一瞬にして、彼に死を直感させるほど。
「ただでは済まさんぞ。お主も、主に賛同した愚か者共も、ワシの手で粛清してやろう」
「っ……」
「――お待ちください! フィアンマ様」
彼女が怒りのまま手を下そうとした時、それを止める声が現れる。
突然現れた二人の姿にフレールは驚愕する。
「魔女リザリ―?」
「お久しぶりですね。フレール殿下」
「わかってるわ」
私の過去を見てしまった彼女は、興奮を抑えきれず帝都へ向かってしまった。
復活の喜びで、とかなら微笑ましかったのに。
彼女の抱いた感情は間違いなく怒りだった。
魔女狩り令は、唯一無二の親友を侮辱する行いだと。
私が同じ立場でも、彼女のように怒っただろう。
「私の責任ね」
「先生」
「ううん、今はそんなこと言ってる場合じゃないわね。彼女が暴れてしまう前に止めましょう」
「はい。下手をすれば国家間同士の戦争になる。そんなことは姫様も望んでいませんから」
問題は、どうやって彼女を諫めるのか。
相手はドラゴン、いかに私たちでも戦いになれば強引に止めるのは難しい。
だからこそ暴れる前に会話で説得するしかないか。
それから……
「ちょうどいい機会だし、過去の清算もしてしまいましょう」
私を裏切ったフレール殿下。
今は国王になった彼と、彼が治める帝国に。
復讐というほど大それたものじゃないけど、この十年分のつけは返してもらおう。
「転移するわよ」
「はい」
◇◇◇
帝都上空に浮遊するフィアンマ。
彼女は人々を見下ろし、怒声交じりに言い放つ。
「この国を治める愚かな王よ! ワシは主に用があるのじゃ!」
「私か……」
フレールは微かな声で呟いた。
その声と動揺を感知したフィアンマが、ギロっと彼に視線を向ける。
「そこか」
「――!?」
フィアンマの姿が消える。
とほぼ同時に、フレールたちの眼前に転移した。
身構えるフレールと、彼を守るように前へ出る三魔女。
「主がこの国の王じゃな」
「……ええ、その通りですよ。貴方は本当にドラゴンなんですか?」
「そう言ったじゃろう? なんじゃ聞こえておらんかったか? それとも理解できんかったか? どちらにせよ滑稽じゃな」
「貴様! 陛下に対して……」
怒るアクアが前のめりになる。
忠誠心が最も高い彼女は、フレールを侮辱され頭に血が昇る。
フィアンマを睨むアクア。
そんな彼女をフィアンマは鼻で笑う。
「ふっ、主らが愚かな王に従う魔女三人か。見たところ若すぎるのう。これでは三人合わせてもあの娘一人にすら届かん」
「何を……」
「生憎じゃがのう。ワシが話したいのは主らではない。邪魔じゃ」
「「「――!?」」」
冷たく重い一言には魔力が込められてた。
言葉による支配。
魔法ではなくドラゴンが持つ特性の一つ。
彼女たちは言葉に魔力を込めることで、強制力をもって相手を従わせることができる。
三人はフィアンマの言葉の前に、なすすべもなく地にひれ伏す。
「なっ……ぐ」
「お、お前たち! 何をしている!?」
「責めてやるな。ワシの言葉に従いこそすれ、意識を保っているのは見事じゃ。とは言え許しはせんがのう」
「……貴方は一体」
フレールの額から汗が流れ、頬をつたり落ちる。
圧倒的強者を前にはこざかしい策も通じない。
人生最大の焦りを感じているフレールに、フィアンマは問いかける。
「ワシがなぜここに来たかわかるかのう?」
「さぁ、なんでしょうね? 挨拶ですか?」
「挨拶か、当たらずと言えど遠からず……じゃのう。礼をしに来たのじゃ」
「礼? お礼ですか? 貴女にお礼をされるようなことはしていませんよ?」
「しておるじゃろう? 魔女狩り令……我が友への侮辱じゃ」
静かな怒りを瞳に宿し、怒鳴りもせず言葉で発露する。
フィアンマが放つ殺意を前に、フレールの全身は震え上がる。
その恐怖は一瞬にして、彼に死を直感させるほど。
「ただでは済まさんぞ。お主も、主に賛同した愚か者共も、ワシの手で粛清してやろう」
「っ……」
「――お待ちください! フィアンマ様」
彼女が怒りのまま手を下そうとした時、それを止める声が現れる。
突然現れた二人の姿にフレールは驚愕する。
「魔女リザリ―?」
「お久しぶりですね。フレール殿下」
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