ワールドコントラクター ~辺境育ちの転生者、精霊使いの王となる~

日之影ソラ

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第一章 世界の精霊『  』

20.ブタベスの洞窟道

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 家名を名前の後ろにつける。
 それが許されているのは、この世界では貴族だけだ。

「え、二人とも貴族?」
「あーそうだぜ。つっても辺境の小さい家だから、あんまり貴族って感じでもないけどな」
「ですので普通に接してくれると嬉しいです」
「俺もだ。敬われるほど偉くもないし」

 赤い短髪の青年がアルマ。
 水色のサラッとした長い髪の彼女がロエナ。
 二人から精霊の存在が感じ取れるし、さっきの精霊使いだという発言は本当のようだ。
 それに貴族みたいだけど、平民に対する偏見とかはない様子。
 サバサバしていて接しやすそうだ。

「俺はエルクト」
「リルカよ」
「お嬢の契約精霊ドカドカだぜ~」
「うおっ、それただのぬいぐるみじゃなかったのかよ!」
「誰がぬいぐるみだ!」

 いやいや、見た目はただのぬいぐるみだよ。

「言葉を話す精霊なんて初めてみた……」
「ああ。上級に近いんじゃないのか?」
「ふっははは! そうだもっと俺を崇めていいんだぞ!」
「調子に乗るな」
「ぐへ、痛い痛い痛い!」

 初対面の人たちの前でも二人はいつも通りだ。
 
「今から出発するけど、二人は構わないかな?」
「おう!」
「はい。よろしくお願いいしますね」

 ニコッと微笑むロエナ。
 それに笑顔で返した俺を見て、リルから不機嫌オーラを感じ取る。

「リル?」
「何でもないわ。いくなら早くしましょう」
「そうだね。二人とも後ろに乗って。出発するよ」

 二人が馬車へ乗り込み、街の出口へ進む。
 その途中で商人に何度か声をかけられた。

「おい君たち、そっちは危ないよ」
「大丈夫です。俺たちは精霊使いなので」
「え、精霊使い?」
「はい。なのでご心配なさらず」

 そうは言っても子供だし、心配という表情がみてとれる。
 あまり街で時間を使うと引き留められてしまいそうだ。
 俺は馬車の速度を速め、早々に街を出た。
 街を出た後は一本道を進んでいく。
 正面には大きな山々が並んでいて、洞窟道はこの山脈を超えるために造られた。
 しばらく進むと、洞窟道の入り口が見えてくる。

「待ってエル、帝国の兵隊がいる」
「本当だ」

 洞窟道の入り口を封鎖しているようだ。

「あれ通してくれるかな?」
「無理じゃない。だってすごく怖い顔でこっち見てるわよ」
「う~ん……」

 弱ったな。
 警備されてる可能性は考えたけど、どうするかまでは考えてなかった。
 事情を説明して通してくれるかどうか。
 もめ事にでも発展したら面倒だしなぁ……

「いっそ倒しちゃう?」
「いや駄目でしょ!」

 リルは時々豪快なことを言う。

「どうかしたのか?」
「あー実は入り口を兵隊が封鎖してて」
「うわ、マジだ。あれは通してくれそうにないぞ」
「うん。だと思って悩んでたんだ」

 俺とアルマは二人でうーんと考える。
 すると、アルマの隣からひょっこり顔をだしたロエナが提案する。

「だったらこういうのはどうでしょう?」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 入り口を警備する兵隊。
 そこへ鳴り響く轟音。

「な、何だ!?」

 山の一部が崩れ、近くに土砂が流れ落ちていた。
 彼らが警備している場所には届かないが、衝撃で足元が揺れる。

「お、おい何だよ今の」
「一応確認はしておこう」
「そうだな」

 兵隊の数名が土砂のほうを確認しに行く。
 一時的に警備する人数が減り、馬車一台位が通れる道が出来た。

「ん?」
「どうした?」
「いや、今何か通ったような気が……気のせいか」

 もちろん気のせいではない。
 警備の目を掻い潜り、ロエナの精霊の力で透明になっていた馬車がさっそうと通り過ぎていた。

「よーし! 抜けたぜ!」
「鮮やかな手口だったな……」
「……そうだね」

 何をしたのかというと、ます土砂崩れを起こしたのはリルだ。
 大きな騒ぎを起こせば兵隊の注意をひけるし、一時的に警備が緩くなるかもしれない。
 そこをロエナの力で覆われた馬車で駆け抜ける。

「これ完全にアウトだよね……あとで怒られないかな」
「大丈夫ですよ。穢れがいる洞窟道の中まで警備はしていないでしょうし。バレなければ問題ありませんから」
「そ、そっか……そうだね」

 お淑やかなお嬢様のように見えて、ロエナはリル以上に豪快だな。
 こうも人に対するイメージが一瞬で変わることも珍しいよ。
 まぁでも、お陰で洞窟道の中に入ることが出来た。

「聞いてた通り暗いわね」
「うん。それに……」

 暗闇の奥から、ずーんと穢れの気配を感じる。
 おそらくこの先へ進めば、穢れとの戦闘が待っているだろう。

「どうせなら、全部の穢れを祓ってしまいたいな」
「ええ。無理して通った分、貢献しないと罰が当たりそうね」
「うん。慎重に進もう」

 そうして俺たちは洞窟道を進んでいく。
 地面は整備されているけど、凹凸も所々あって揺れる。

「きゃっ」
「おい大丈夫か、ロエナ」
「ええ、ありがとうアルマ」

 馬車が揺れた。
 それと一緒に別の物も揺れた。

「いやー大変そうだな~ お嬢にはないむっ――うごぇ」
「これを囮にすればよかったわね」
「ははは……」

 本当にブレないな、ドカドカは。
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