3 / 26
第一章
3.運命の出会い
しおりを挟む
本物の恋って何だろう。
思えば私はずっと、誰かに恋をしたことがないのかもしれない。
決められた相手と決められたレールに乗って、ただ進んでいただけに過ぎないのだから。
今、こうして自由になって、何を求めればいいのだろうか。
「エミリア、この後私予定があって、その……」
「気を遣わなくて良いわ。レオン君のところでしょう? 彼、あんまり待たせると不機嫌になるわよ」
「そうなのよ! この間も一分遅れただけで帰ろうとするし――ってごめん!」
「気にしないでって。ほら、早く行ってあげて」
「うん。また後でね」
システィーは申し訳なさそうな顔をして、教室を出て行った。
今はお昼休みの時間だ。
いつもなら、ブロア様の所に行って、手作りのお弁当を一緒に食べるけど。
「もう必要ないのよね……」
私の手には、二人分のお弁当がある。
癖というか、慣れというか。
朝起きてからの習慣で、いつもみたいに二人分作ってしまった。
完成して詰めるまで気付かないなんて、自分に呆れてしまう。
でも、昨日の今日で忘れられるほど、短い関係でもなかったから。
それに……
「あれってブロア様に用意したお弁当かしら」
「エミリアさん可哀想」
「健気に尽くしてたのにねぇ」
周りが当分忘れさせてくれないだろう。
同学年はもちろん、上級生下級生にも私たちのことが知れ渡っている。
廊下を歩いていても、中庭にいても、授業中でも時折聞こえる憐みの声。
幸いなのは、私が一方的に捨てられた可哀想な女の子、という認識で広まっていることだ。
陰口を叩かれないだけマシだと思おう。
でもどうしよう。
ここじゃ落ち着いて食事も出来ないわね。
もう一つのお弁当もどうするか考えなきゃ……
一先ず私は、教室を出ることにした。
ここは特に人の目が気になってしまう。
知り合いが多い所はダメだ。
食堂はもちろん、校舎のどこにいても目立ってしまう。
だから外へ、まずは中庭に向った。
「……人、多い……」
思った以上に人がいて呆然と立ち尽くす。
何より辛いのは、男女で仲睦まじく食事をしている率の高さだ。
彼らが私に気付いて、申し訳なさそうな顔をして目を逸らす。
ここは教室以上に居心地が悪い。
早々に逃げ出して、道なりに進んでいく。
王国一の学園だから、敷地はとても広くて自然も取り込んでいる。
小さな林とか池なんかもあるし、探せば一人でゆっくりできる場所にたどり着く。
「何だか……罪人の気分だわ」
ふと、そんなことを想ってしまった。
途端に悲しくなって、瞳から涙が溢れそうになる。
一日中泣いて、もう枯れてしまったと思っていた涙の泉は、想像以上に深いようだ。
「あれ……ここどこ?」
適当に歩いていたら、見たことのない場所に来ていた。
広すぎる敷地内は、一年経っても全てを見飽きることがないと言う。
周りは木々に囲まれていて、校舎も見えない。
どっちから来たのか朧げになり、迷ってしまった私は立ち止まって考える。
すると――
ペロッ
本の頁をめくる音が、風に乗って微かに聞こえた。
誰かがいるとわかった途端、胸の中に芽生えてきた不安は薄れて消える。
私は音が聞こえた方向にかけた。
そこには、一本の大きな木が生えていた。
周りを木々に囲まれながら、そこだけが開けていて、真ん中に一本の緑が若い木が生えている。
その木陰に、一人の男子生徒が腰を下ろし、本の頁をめくっていた。
闇に溶け込んでしまいそうな黒髪が風になびく。
瞳は赤く宝石のようで、肌は女性みたいに白く綺麗だ。
この学園の制服を着ているし、生徒なのは間違いないだろう。
私のことに気付いていないのか、彼は本に夢中だった。
誰なんだろう?
見たことないし、同じ学年じゃないわよね?
もしかして上級生の先輩かしら。
色々な考えが頭に浮かぶ中、その全てが吹き飛ぶような風が吹く。
強い風は彼の髪を大きくなびかせた。
乱れた髪を直す彼のしぐさを見て、別の風が私にだけ吹き抜けていく。
「格好良い――」
一目ぼれなんて言葉がある。
まさしくれそれは、今目の前で起きていた。
たった一度見たしぐさから、名前も知らない彼に惹かれている自分がいる。
婚約破棄されたとか、周りの目がどうだとか。
そんなことはどうでも良くなって、気づけば私は歩み寄り――
「あ、あの!」
彼に話し掛けていた。
「ん? 君は誰だ?」
「は、初めまして! 私はエミリア・シエルと言います!」
感情が高ぶっている。
名前が知りたい。
一緒に昼食をとってほしい。
考えだけがいくつも浮かんでは消え、自分でも何をしたいのかわからないほど、勝手に口と身体が動く。
「もし……もしよろしければ、私の婚約者になってくださいませんか!」
考えていた全てをすっ飛ばして、私は心の奥にあった願いを口にしていた。
たぶん、これが本当の恋と出会った瞬間だと思う。
思えば私はずっと、誰かに恋をしたことがないのかもしれない。
決められた相手と決められたレールに乗って、ただ進んでいただけに過ぎないのだから。
今、こうして自由になって、何を求めればいいのだろうか。
「エミリア、この後私予定があって、その……」
「気を遣わなくて良いわ。レオン君のところでしょう? 彼、あんまり待たせると不機嫌になるわよ」
「そうなのよ! この間も一分遅れただけで帰ろうとするし――ってごめん!」
「気にしないでって。ほら、早く行ってあげて」
「うん。また後でね」
システィーは申し訳なさそうな顔をして、教室を出て行った。
今はお昼休みの時間だ。
いつもなら、ブロア様の所に行って、手作りのお弁当を一緒に食べるけど。
「もう必要ないのよね……」
私の手には、二人分のお弁当がある。
癖というか、慣れというか。
朝起きてからの習慣で、いつもみたいに二人分作ってしまった。
完成して詰めるまで気付かないなんて、自分に呆れてしまう。
でも、昨日の今日で忘れられるほど、短い関係でもなかったから。
それに……
「あれってブロア様に用意したお弁当かしら」
「エミリアさん可哀想」
「健気に尽くしてたのにねぇ」
周りが当分忘れさせてくれないだろう。
同学年はもちろん、上級生下級生にも私たちのことが知れ渡っている。
廊下を歩いていても、中庭にいても、授業中でも時折聞こえる憐みの声。
幸いなのは、私が一方的に捨てられた可哀想な女の子、という認識で広まっていることだ。
陰口を叩かれないだけマシだと思おう。
でもどうしよう。
ここじゃ落ち着いて食事も出来ないわね。
もう一つのお弁当もどうするか考えなきゃ……
一先ず私は、教室を出ることにした。
ここは特に人の目が気になってしまう。
知り合いが多い所はダメだ。
食堂はもちろん、校舎のどこにいても目立ってしまう。
だから外へ、まずは中庭に向った。
「……人、多い……」
思った以上に人がいて呆然と立ち尽くす。
何より辛いのは、男女で仲睦まじく食事をしている率の高さだ。
彼らが私に気付いて、申し訳なさそうな顔をして目を逸らす。
ここは教室以上に居心地が悪い。
早々に逃げ出して、道なりに進んでいく。
王国一の学園だから、敷地はとても広くて自然も取り込んでいる。
小さな林とか池なんかもあるし、探せば一人でゆっくりできる場所にたどり着く。
「何だか……罪人の気分だわ」
ふと、そんなことを想ってしまった。
途端に悲しくなって、瞳から涙が溢れそうになる。
一日中泣いて、もう枯れてしまったと思っていた涙の泉は、想像以上に深いようだ。
「あれ……ここどこ?」
適当に歩いていたら、見たことのない場所に来ていた。
広すぎる敷地内は、一年経っても全てを見飽きることがないと言う。
周りは木々に囲まれていて、校舎も見えない。
どっちから来たのか朧げになり、迷ってしまった私は立ち止まって考える。
すると――
ペロッ
本の頁をめくる音が、風に乗って微かに聞こえた。
誰かがいるとわかった途端、胸の中に芽生えてきた不安は薄れて消える。
私は音が聞こえた方向にかけた。
そこには、一本の大きな木が生えていた。
周りを木々に囲まれながら、そこだけが開けていて、真ん中に一本の緑が若い木が生えている。
その木陰に、一人の男子生徒が腰を下ろし、本の頁をめくっていた。
闇に溶け込んでしまいそうな黒髪が風になびく。
瞳は赤く宝石のようで、肌は女性みたいに白く綺麗だ。
この学園の制服を着ているし、生徒なのは間違いないだろう。
私のことに気付いていないのか、彼は本に夢中だった。
誰なんだろう?
見たことないし、同じ学年じゃないわよね?
もしかして上級生の先輩かしら。
色々な考えが頭に浮かぶ中、その全てが吹き飛ぶような風が吹く。
強い風は彼の髪を大きくなびかせた。
乱れた髪を直す彼のしぐさを見て、別の風が私にだけ吹き抜けていく。
「格好良い――」
一目ぼれなんて言葉がある。
まさしくれそれは、今目の前で起きていた。
たった一度見たしぐさから、名前も知らない彼に惹かれている自分がいる。
婚約破棄されたとか、周りの目がどうだとか。
そんなことはどうでも良くなって、気づけば私は歩み寄り――
「あ、あの!」
彼に話し掛けていた。
「ん? 君は誰だ?」
「は、初めまして! 私はエミリア・シエルと言います!」
感情が高ぶっている。
名前が知りたい。
一緒に昼食をとってほしい。
考えだけがいくつも浮かんでは消え、自分でも何をしたいのかわからないほど、勝手に口と身体が動く。
「もし……もしよろしければ、私の婚約者になってくださいませんか!」
考えていた全てをすっ飛ばして、私は心の奥にあった願いを口にしていた。
たぶん、これが本当の恋と出会った瞬間だと思う。
4
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる