本物の恋、見つけました ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとか無理です~

日之影ソラ

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第一章

11.格好良すぎです

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 その場が静まり返り、全員の視線が一か所に集まる。

「ユート……」
「貴様かぁ? 僕の邪魔をしたのは!」

 ユートがブロア様の攻撃を止めてくれた。
 方法はわからないけど、彼の言葉が聞こえた途端に魔術が無効化されたし、間違いないと思う。
 ユートは呆れた表情でため息を漏らす。
 そんなユートに敵意むき出しで、ブロア様が詰め寄る。

「なぜ邪魔をした? 返答した次第では、貴様もその女と同罪ぞ」

 ブロア様は今にも彼に襲い掛かりそうな姿勢だ。
 対するユートは冷静で、顔色一つ変えずに答える。

「学園の敷地内で、許可なく魔術を使用することは禁止されている」

 ユートの言葉にピクリと反応するブロア様。
 この学園では独自のルールがいくつか存在する。
 そのうちの一つが、今ユートが口にした学園の敷地内における魔術使用の制限だ。
 制限なしに魔術が行使できるのは、教員と国家魔術師の資格を持つ者だけ。

「これはルールだ。貴族だろう関係なく適応されるはずだが?」
「ぅ……」

 言い淀むブロア様。
 学園内でのルールに抵触することは、そのまま成績に影響される。
 それは学業の優秀さや、家柄の良さとは関係ない。
 もちろん、バレなければ処罰はされないし、ブロア様ほどの家柄なら多少は誤魔化せるだろう。
 ただ今回の場合は、公衆の面前で明らかな敵意を見せていた。
 もし発動していれば、いかにブロア様でも処罰は免れなかっただろう。

「同罪とか言ってたけど、この場合罪に問われるのはそっちだろ? それを止めてあげたんだから、むしろ感謝してほしいな」
「……貴様ぁ……」

 歯ぎしりの音がこちらまで聞こえてくる。
 ユートの挑発気味な発言に対して、ブロア様の怒りは沸点に達しようとしていた。
 しかし残念なことに、周囲には多くの人の目がある。
 ブロア様はもう、何も出来ない。

「それから、彼女はこの後俺と予定があるんだよ」
「なっ、何だと?」

 ブロア様の視線が私に向けられる。
 疑いと怒りの混ざり合った視線だった。
 とても怖いはずなのに、ユートが傍にいるだけで、全然怖いとは思わない。
 私は堂々と見せびらかす様にユートの腕に抱き着く。

「はい!」
「くっ……」

 ブロア様はとびきり悔しそうな表情を見せた。
 私はそれを見て、心の奥でスカッとした気持ちを覚える。

「では行きましょうか? ユート」
「ああ」

 そのままブロア様の横を通り過ぎる。
 彼は悔しそうにしているだけで何もしてこない。
 もう大丈夫だと、ホッと胸をなでおろそうとした時、彼は口を開く。

「待て」

 ビクッと反応する私と、変わらず冷静なユートは立ち止まり、その場で後ろを振り向く。

「まだ何か?」
「貴様……名前は何だ?」

 ブロア様が見ているのは私ではなくユートだった。
 名を尋ねられたユートは、少し間をあけてから答える。

「ユート・バスティアーノ」
「バスティアーノ……その名前忘れないぞ」
「そうか? 俺はお前の名前なんて、早々に忘れたいけどな」

 そう言ってユートは不敵に笑う。
 ブロア様は大きな舌打ちを響かせ、ドンと地面を踏みつける。
 悔しそうなブロア様の表情……

 それよりも――

 格好良い……
 格好良すぎて、もう本当に無理……

 私はユートのことが気になって仕方がなかった。


 その後私とユートは、二人で商店街までやってきた。
 学園を出て歩くこと約ニ十分。
 道にならぶ露店、お客さんでにぎわう飲食店や、おしゃれな服が並ぶ服屋さん。
 色々なお店が並ぶ商店街も、王都の魅力の一つとされている。
 人通りも多く賑やかで、たくさんの人の声が飛び交っていて、どこかせわしない。

「相変わらずこの時間は混んでるな」
「そうですね。あ、あのユート……さっきはありがとうございました」
「別にいいよ。あのまま放っておくほうが問題になりそうだったし。それに……」

 ユートは不意に小さく笑う。

「君に本心を打ち明けられた時の、あの男の反応は面白かった。あれは傑作だったな」

 ユートは笑いながらそう言った。
 私は自分の言ったことを思い出し、今さら恥ずかしくなる。

「ごごめんなさい! は、はしたない所をお見せして……」
「いやいや、上級貴族相手に堂々と文句が言える奴なんてそういない。君はやっぱり面白いな」

 そう言って、ユートは私に笑いかけてくれた。
 彼の笑顔に胸がキュンとなる。
 心臓が飛び出しそうなくらい、ドクンドクンと鼓動を鳴らす。

「そ、それは反則です……」
「え?」

 たった数分の出来事で、私の恋はもっと深くなってしまったようです。
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