本物の恋、見つけました ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとか無理です~

日之影ソラ

文字の大きさ
13 / 26
第一章

13.嘘だと言ってくれ(手遅れ)

しおりを挟む
 その出会いは運命と呼ぶべきものだった。

「こんにちは、ブロア様」

 彼女の名前はローランという。
 今年入学したばかりの一年生で、平民ながら四組に選ばれた秀才だ。
 ただそれだけだ。
 地味な茶色い髪の女性……特徴という特徴はこれといってなく、印象としては薄かった。
 そのはずなのに、なぜだか僕は彼女から目が離せなくなっていた。
 小さなしぐさに目が行き、ニコリと微笑む笑顔に胸が高鳴る。
 出会ってから毎日、彼女と話すことが待ち遠しくて、彼女の顔を見るのが待ち遠しかった。

 そうか!
 これが本物の恋なのか!

 僕には生まれてすぐ、エミリアという婚約者がいた。
 家同士が勝手に決めた相手だが、中々美人で僕のために尽くそうとしてくれる。
 気に入ってはいたんだ。
 だけど、ローランと出会って、彼女との間に本物の恋を見つけた途端、全てが砂の城のように吹き飛んだ。
 エミリアの笑顔が、ローランの笑顔に上書きされ消えていく。
 悲しいかな、彼女と過ごした数年間よりも、ローランと過ごした数日のほうが勝っていたらしい。
 だから僕は、これ以上無駄な時間を過ごさないよう、エミリアに言ったんだ。

「僕は本当の恋を知ったんだ! それでわかったのさ。君との恋は偽物でしかないと……それがわかってしまったら、もう君と一緒にはいられない」
「そんな……」

 エミリアはとても悲しそうな表情をしていた。
 僕としても心苦しいのだよ。
 だがこれは善意なんだ。
 僕が君と過ごす時間を無駄だと気づいたなら、君にとってこれからの時間は無駄になる。
 あえて辛いことも言おう。
 もちろん本心で思っていたことだけどね。

 そうしてエミリアと別れた僕は、ローランを新たな婚約者にする。
 はずだった……

「ローラン……今日は来ていないのか?」

 エミリアと婚約破棄した翌日。
 いつものように学園に登校した僕だったが、ローランの姿が見当たらない。
 昼休みは予定を合わせて、二人でランチを楽しんでいたのに、この日は来なかった。
 体調でも壊したのかと心配になり、彼女のクラスを訪ねてみたのだが……

「すまない君、ローランは今日休みかい?」
「ローラン? そんな子いませんけど」
「は? 何を言っているんだ!」
「い、いえそうおっしゃられても困ります……」

 奇妙なことに、そのクラスの誰に聞いても、ローランのことは知らないと答えるばかりだった。
 まさかローランが僕に嘘をつくはずもない。
 きっと平民だからと、集団でいじめを受けているのだろう。
 だとすれば腹立たしい限りだ。
 次に会って真実を確かめたら、この者たちには制裁を与えなくてはな。

 しかし、次の日になっても、その次の日も……彼女は学園に現れなかった。
 さすがに不信になった僕は、屋敷の使用人を使って調査を依頼した。
 その結果――

「非常に申し上げにくいのですが……ローランという女性とは、あの学園には在籍しておりません」
「な、何だと!? どういうことだ!」
「申し訳ありません。詳しいことはまだ調査中でして」
「くっ……すぐに調べ上げろ!」

 そんなはずはない。
 何かの間違いだと毎秒考え続けた。
 しかし、決定的な証拠が見つかってしまう。

「大変です坊ちゃま! 屋敷の宝物庫が空に!」
「なっ……」
 
 警備は万全で、屋敷の宝物庫の鍵や仕掛けは、一部の人間しか知らない。
 屋敷の誰も、盗まれるなど思ってもいなかった。
 心当たりがあったのは僕だけだ。
 
「まさか……」

 教えていた。
 僕は彼女に、宝物庫について話していたんだ。
 屋敷を見たいと言われ、案内してあげた時に……
 後になって思えば、どうして教えてしまったのかも理解できない。
 おそらく、魔術的催眠にかけられていたのだろうと、今ならわかる。
 そう、僕は騙されていたんだ。

「ありえない……ありえないありえない! この僕が騙されたって言うのか!?」

 地面をたたき、ガラスを割り、駄々をこねても変わらない。
 僕は騙されていた。
 それを理解しながら、認めるまでには時間がかかった。
 同時にこうも思った。
 
 何とかしなくてはならない。
 騙された事実を帳消しにして、貴族としての威厳を保たねば……
 
 そのために必要なことを考えた時、まっさきに思い浮かんだのは彼女のことだ。

「そうだ! エミリアと再婚約すれば良い」

 もう一度よりを戻せば、一先ず婚約者を失ったという事実は元通りになる。
 あとは宝物庫だが、あれは僕個人の持っていた財産の一部に過ぎない。
 痛手ではあるが、バレないように隠ぺいするのは容易いこと。
 まだどうとでもなる。
 そう考えた僕は、すぐに行動を起こした。
 エミリアもショックを受けていたし、僕が呼びかければ応えてくれるだろうという考えで……

 しかし実際に帰ってきた言葉は、想像を絶するほどの不満と暴言だった。
 挙句の果てに、どこの馬の骨かもわからない男と一緒にいて、公衆の面前で恥をかかされるとは……

「絶対に許さないぞ」

 彼女の家にも直接再婚約の話をしておいた。
 逃げられないようにしてやる。
 意地でも捕まえて、二度と僕に逆らえないようにしてやろう。
 僕の頭の中は、それ以外なかった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

mios
恋愛
「さあ、侯爵家に関係のない方は出て行ってくださる?」 父の死後、すぐに私は後妻とその娘を追い出した。

婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~

ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。 そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。 自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。 マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――   ※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。    ※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))  書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m    ※小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...