本物の恋、見つけました ~僕らの恋は偽物だったと言った癖に今さらやり直そうとか無理です~

日之影ソラ

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第一章

14.決闘を申し込む

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「チャンスをあげようじゃないか!」
「……」

 公衆の面前で堂々と私に言うブロア様を見て、呆れ顔になるのは仕方がない。
 豪快に恥をさらしたのは昨日のこと。
 まさか翌日から、こうも太々しい態度で来られるとは思わなかった。
 しばらくは静かにしているものと思っていたのに……
 急に呼び止められて何かと思えば、まったくこりていない様子。

「チャンスとはどういう意味でしょう?」
「昨日のことは水に流すと言っているのだよ。君が僕との婚約を素直に受け入れてさえくれれば……ね」

 ね、じゃないわよ。
 どうしてこうも上から目線なのかしら。
 まだ自分のほうが命令できる立場だと思っているのもムカつくわね。

「失礼ですがブロア様、それはありえませんのでお引き取りください」
「うっ……また冗談を言う」
「冗談ではないと、昨日ハッキリ申し上げたはずですが?」
「……君の両親も僕との再婚約を望んでいると思うが?」

 やっぱりブロア様が根回ししていたのね。
 わかっていたことだけど、本当によくやるわ。

「ええ」
 
 ブロア様はニヤリと笑う。
 そのニヤけ面に、私は剣を突き刺すように言い放つ。

「ですが私は望んでいないと伝えました! お父様とお母様も、それなら仕方がないと受け入れてくださいましたよ」
「なっ……」

 事実ではないけど、嘘でもない。
 二人とも、私に関してはもう放っておくことにしたようだ。
 これ以上揉めても、いい結果を生まないと判断したのだろう。
 他にも裏で動いているそうだけど、私には関係のないことだと思っている。

「なぜ断る? 僕との婚約は君にとっても利点は多いはずだ」
「理由ならブロア様が最初におっしゃったことと同じです」
「最初?」
「はい。私たちの恋は偽物でした。私はもう、本物の恋を見つけましたので、あんたとは一緒にいられません」

 あの日の当てつけに、同じセリフを口にする。
 ブロア様は怒りを我慢して、額に血管が浮き出ているのがわかる。

「そう……我儘を言うな」
「はい。私はとっても我儘な女なのです。知りませんでしたよね?」

 プチンと、ブロア様も限界を迎えたのだろう。
 彼は右腕を大きく振り上げている。
 言い過ぎたと思った時には、もう彼の拳は振り下ろされて――

「止まれ」

 私は目を瞑っていた。
 その声が聞こえて、すぐに後ろを振り向く。

「ユート!」
「やれやれ、眼を離すとすぐこれだ」

 呆れながらユートが歩み寄ってくる。
 ブロア様は彼の言葉通り動きを止め、中途半端な姿勢で固まっていた。

「また貴様かぁ……」
「魔術を使わなきゃ良いってわけじゃないだろ? 女性に手をあげるなんて、男として最低だな」

 ユートはパチンと指を鳴らす。
 すると、動けなかったブロア様が解放され、倒れそうになった身体を慌てて立ち直る。

「ユート・バスティアーノ……」
「何かな? ブロア・ロストロール坊ちゃん」
「そうか貴様だな? エミリアをたぶらかした男は」
「いや、別にたぶらかしてはないんだが」
「ふざけるな! 妙な魔術でも使ったのだろう!」

 凄い言いがかりをつけている。
 いつの間にか、標的が私からユートに代わっていた。

「妙な魔術ねぇ……それはどっちかな?」
「っ……貴様」
「どうした? 汗なんてかいて」

 不穏な空気が流れる。
 不敵に笑うユートと、なぜか焦っているブロア様。
 それからブロア様は大きく舌打ちをして、ユートを指さす。

「そうかわかったぞ! 全て貴様の所為だな」
「何でそうなる」
「黙れ! 貴様さえいなければ僕は……くっ! ユート・バスティアーノ! 君に決闘を申し込む!」
「は?」
「決闘ですって?」

 唐突な提案に、私もユートも疑問符を浮かべる。
 続けてブロア様は宣言する。

「エミリアをかけた決闘だよ! 勝者が彼女と婚約し、敗者は二度と彼女には近寄らないという制約を交わすんだ!」
「何を言い出すかと思えば……そんなの受けるわけないだろ?」
「逃げる気か?」
「逃げるも何も、そんな決闘を受ける理由はない。そっちが勝手に盛り上がってるだけだ」

 そう言いながら、ユートは私に視線を送る。
 私は頷き答える。

「ええ。私もそんな決闘を望んでいません」
「くっ……貴様ら」
「では失礼します。ごきげんよう、ブロア様」

 私は最低限の一礼をして、ブロア様に背を向ける。
 隣を歩くユートに、私は謝罪する。

「ごめんなさいユート、また助けてもらって……」
「気にするな。それより気を付けたほうが良いぞ。あれは相当しつこいタイプだ」
「はい……そうでしょうね」

 加えて貴族の権力者だ。
 私を追い込む方法はいくらでもある。
 そう考えると、とんでもない相手を敵に回したと思う。

「だから、しばらく俺と一緒にいろ」
「えっ?」
「そのほうが安全だ」
「ユート……ありがとうございます!」
「べ、別に他意はないぞ」

 やっぱりユートは優しくて素敵だわ。
 だけどやっぱり、巻き込んでしまうことへの申し訳なさは感じていた。
 そして、翌日――

「そう来たか」
「何ですか? これは……」

 学園の掲示板に、ブロア様とユートの公式な決闘が行われるという張り紙を見て、私はしばらく声も出さず驚いていた。
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