虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~

日之影ソラ

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 周囲から聞こえてくるヒソヒソ声。
 遠くてよく聞き取れないけど、内容はよくわかる。
 どうせ私のことを憐れんでいる。
 視線を合わせるとすぐ逸らして、またヒソヒソ声で話し始める。
 料理は美味しいけど、ここはやっぱり居心地が悪い。
 チラッと父とエレナへ視線を向ける。
 二人とも人だかりに消えてから戻ってきていない。
 
「まだ時間がありそうね」

 私はこの場にいてもいなくても関係ない。
 だったら会場の外にいたって、誰も気に留めないでしょう?
 終わる時間になったら戻ればいい。
 最悪、一人で帰ったって父も文句は言わない。
 問題さえ起こさなければいいのだから。

 私はひっそりと会場を抜け出し、王城の中庭を訪れた。
 大きな噴水を囲うように植えられた木々。
 昼は木陰になっているであろう場所の椅子に座り、のんびりと夜空を見上げる。

「ふぅ……邪魔者扱いするくらいなら、最初から私を連れてこなければよかったのに」

 なんて愚痴を漏らす。
 エレナの引き立て役として連れてきたのだろうけど、逆効果だったから引き離した。
 たぶんそんなところでしょうね。
 
「エレナも大変ね」

 あの人だかりの中を思い出す。
 第一王子のエリクシール様は、現国王候補で最も王になる可能性が高い。
 貴族や国民からの支持が最も多い人物だ。
 それ故に競争率は激しい。
 あれだけの人数の中で目立ち、寵愛を受けるなんて私には無理ね。
 仮に立場が逆だったとしても……。

「そういう意味で、王族も大変そうね」

 どれだけ今の地位があろうとも、国王になれなければ意味はない。
 重圧は、貴族が抱えるものよりずっと大きいはずだ。
 どんな人が王になるのか。
 少し気になりはするけど、私には関係なさそうだ。

「しばらくここで……」
 
 じっとしていていよう。
 そう思った直後、近くからガサガサと音がする。
 複数の人の気配だ。
 私は咄嗟に立ち上がり、気配の方角へと視線を向ける。

「そこにいるのは誰?」
「――ちっ! こんなところに人が」
「気づかれたか」
「……」

 パーティーに参加している貴族じゃない。
 服装や振る舞いが明らかに違う。
 全身真っ黒で顔を隠し、武器も装備している。
 明らかに招かねざる客……。
 パーティーで王城の出入りが楽になったタイミングを狙ったのだろう。
 さしずめ、王族を殺しに来た暗殺者といったところだろうか。

 私には関係なさそうね。

「見られたからには仕方がない。貴様に恨みはないが死んでもらうぞ」
「……って、そんなわけにもいかないわね」

 見られたのなら当然、口封じのために命を奪う。
 このまま穏便に見逃すはずもない。
 暗殺者たちは剣を抜き、私に向けて明確な殺意を放つ。

「しね」
「――仕方ないわね」

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