この治癒術師には秘密がある ~400年隠していた正体がロクデナシ王子にバレて万事休す……え、王宮に来ないか? さよならブラック冒険者ギルド~

日之影ソラ

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 何なのこの人?
 乱暴だし意味不明だし、こんな人本当に信用していいのかな……。
 まぁ手は放してもらえたし、最悪逃げれば良いよね。
 よく考えたら明日に指名手配とか不可能だし。
 いくら魔女が危険だからって、ただの一般人の証言だけじゃ弱い。
 国が動き出すにも時間がかかるだろうし、その間に名前を変えて新天地を見つければなんとかなる。

「お前、今逃げれば良いとか思ったりしただろ?」
「うっ……」
「図星だな。どうせお前、すぐに噂が広まることはないから、そのうちに何とかしようって思ってるんだろ?」
「ううっ……」

 なんでこうも正確にわかるの?
 この人もしかして、他人の心が読めるとか?
 私より魔女なんですけど。

「で、でも事実でしょ? 君一人が騒いだって、本当かどうか信じてもらえないよ」
「それはないな。俺が言えば確実に国が動く。断言してやろう」
「な、なんでそんな自信満々に……」

 そういえば、この人の服装ってどこかで見たような……。
 なんだか見覚えのある紋章がついてるし。
 剣にも装飾があって、あれは確か王家の紋章?

「ま、まさか……」
「ふっ、自己紹介がまだだったな? 俺の名はユーリ・ユーステッド。この国の第三王子だ」
「お、お、王子!?」
「おう。よろしくな? 生意気な魔女さん」
 
 可能性あるとして貴族か何かだと思ったら王族!
 斜め上どころか突き抜けたよ!
 しかも第三王子って確か、あのロクデナシって噂の?
 国事に全く関心がなくて国王の命令も聞かず、昼間はお城から一歩も出ない。
 夜に遊び回ってるっていう第三王子?
 さ、最悪だ……よりにもよって、一番バレたくない相手にバレた。

「いやー今日は運が良かったな~。なんとなく王都を出て隣街まで来て正解だったぜ」
「お、終わった……」
「おいおい落ち込むなよ。むしろ見つかったのが俺で良かったぞ? 他の奴らなら間違いなく大事になってただろうしな」
「もう十分大事なんだよ。私の中では大惨事なんだよ」

 最悪だ最悪だサイアクだ。
 王族なんていっちばんバレちゃいけない相手なのに。
 しかもその中でもロクデナシって噂の王子でしょ?
 色々終わった。
 きっと話っていうのもロクでもないことなんだ。
 私を脅して言うことを聞かせるつもりなんだ。

「あーもう! せっかく最悪な職場も我慢してたのにぃ! 今より酷い環境とかないと思ってたのに!」
「お、おいあんま大声出すなって。というか何だ? そんな酷い職場なのか?」
「酷いなんてものじゃないよ。あの人たちは私を奴隷か何かと勘違いしてる。絶対そう!」
「ふぅーん……ちょっと気になるな。話してみてくれない?」
「え……まぁ良いけど」

 どうせもう終わりだし、話したところで怒られないだろう。
 私は諦めてギルドでの仕事っぷりを彼に教えた。

「なんだそのクソ環境。ほぼ虐めじゃないか」
「そうだよ虐めだよ! 私ばっかりこき使ってさ? 労いの言葉もないんだよ?」
「随分溜まってるな。酒もないのにそんだけ愚痴が出てくるなんて」
「まったくだよ。本当は飲んで全部ぶちまけたい気分なのにさ」

 結局、最後の隅々まで彼に話してしまった。
 今まで押し殺していた感情も一緒に解き放って、どこかスッキリした気分だ。
 バレてしまったことは災難だけど、こうして愚痴を言える機会を貰えたのはラッキーだったかもしれない。
 そんなことを考えていると、彼はクスリと笑って言う。

「ふっ、そっか。なら丁度良いかもな」
「え、何が?」
「俺が今からする話だよ。きっとお前にとっていい話だぜ」
「いい……話?」

 今この状況で良い話なんてあるの?
 パッと思いつくとしたら、全部忘れてくれることくらいだけど……。
 それも結局は元の生活に戻るだけなんだよね。

「いい話って、どうせそっちにとってでしょ?」
「いいや互いに利がある。少なくとも、今のお前の環境より何十倍も好待遇だぞ」
「……どういうこと?」
「スカウトだよ。なぁお前、王宮で働かないか?」
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