4 / 35
試し切りしたら異世界きちゃった②
しおりを挟む
鞘に納めた妖刀を抱き抱えながら、ソファーに座り込む。
ふかふかで気持ちがいいソファーだ。
この感覚のリアルさも、これが現実である証明になっていた。
「はぁ……」
この際、ここが異世界であることは認めよう。
そうじゃないと次のことを考えられない。
次……すなわち、どうやったら元の世界に戻れるのか。
王城の人たちは勇者を召喚する儀式の最中だったらしい。
そこで現れたのが俺だったみただが、今なら断言してもいい。
俺は勇者なんかじゃない。
だって聖剣とか持ってないし。
王女様が説明してくれたことだけど、勇者に選ばれる人間は女神様から聖剣を授かるそうだ。
そんな機会はなかった。
女神様なんて会ったことも聞いたこともない。
俺が手にしていたのは、通販で偶々購入した妖刀だけ。
「こいつの力で異世界に飛ばされたってことだよな?」
そして偶然にも、勇者召喚の儀式の最中だった。
要するに不慮の事故だ。
「そんなことある?」
実際そうなったのだから仕方がない。
ドッキリの種明かし待ちで好待遇にあやかったけど、今から本物の勇者じゃないことをカミングアウトするべきか。
いや、その前に試してみよう。
俺は立ち上がり、妖刀を構える。
「こいつで空間が斬れたんだ。同じことをすればまた――!」
元の世界に戻れるかもしれない。
俺は思いっきり刀を振るった。
直後、空間に黒い亀裂が走る。
「よし!」
やっぱりできた!
このまま空間に吸い込まれたら戻れる。
「よっしゃああ!」
大喜びで空間の亀裂に飛び込んだ。
この世界の人たちには悪いが、勇者召喚は改めてやってもらおう。
そうすれば本物の勇者が現れて、世界を救うだろう。
さようなら異世界。
短い間だったけど、いい体験ができたよ。
「痛っ!」
またしりもちをついた。
落下からの衝撃は変わらず痛い。
「でもこれで元の世界に――いや何でだよ!」
戻っていなかった。
視界が開けて飛び込んできたのは、相変わらず豪華な部屋の内装だ。
ちょっと雰囲気は違うけど、間違いなくエトワール王国の場内だとわかる。
王国の紋章が壁に描かれているから。
「くっそ! 戻れたと思ったのに……」
失敗なのか?
もう一度試そう!
同じように刀を振るった。
そして空間が裂けて、穴に飛び込む。
「またかよ!」
失敗した。
また違う部屋に移動しただけだ。
そうじゃない。
俺は引っ越したいんじゃなくて、元の世界に戻りたいんだ。
その後も何度も試して、失敗を繰り返す。
「はぁ……はぁ……」
十回目くらいだろうか。
一気に疲れて刀を振るうことすらできなくなった。
汗を流してしゃがみ込む。
「なんで戻れないんだよ」
空間を斬って移動はできる。
しかし何度やっても、エトワール王国の王城から抜け出せない。
加えてこの力、かなり体力を消耗するらしい。
たかが十回振っただけなのに、もう腕が上がらない。
「やっぱり妖刀……」
「それは聖剣ではないのですね?」
「そりゃそうだろ? 俺は勇者じゃないんだから」
「――そうですか。あなたは勇者ではなかったのですね」
「だからそうだっ……え?」
俺は一体、誰と会話をしているのか。
気がついた時には、彼女と視線があっていた。
「お、王女様!?」
「おはおうございます」
「お、おはようございます……じゃなくて! なんでここに?」
「なぜって、ここは私の部屋ですよ?」
「え!?」
俺は慌てて周囲を見渡す。
よく見ると俺が借りていた部屋と全然違う。
何が違うかというと、女の子の部屋っぽいのだ。
ベッドも天井付のおしゃれなやつだし、カーテンも可愛らしいガラがついている。
何より王女様の存在が、彼女の部屋であることを証明していた。
「す、すみません! わざとじゃないんです!」
「いえ、私も驚きましたが、それだけです。謝らないでください」
王女様はニコリと微笑む。
元の世界なら女性の部屋に無断で入った時点で犯罪成立なのだが。
王女様の優しさに感謝しなければ。
「ところで、先ほど興味深いことをおっしゃっていましたね?」
「え、あ……」
「勇者ではないと。どういうことでしょう?」
「そ、それは……」
しまった。
聞かれているとは思わず、つい秘密を口にしてしまった。
勇者でないことばバレたら怒られるんじゃ……。
いやでも、王女様は優しそうだし、素直に相談したら協力してくれたり……?
チラッと王女様を見る。
ニコッと微笑んでくれた。
よし、話そう!
「じ、実はですね」
俺は素直に、事の経緯を伝えた。
王女様は真剣に、静かに聞いてくれた。
そして最後まで語り終えて、王女様は頷く。
「なるほど。つまりは不思議な剣の力で世界を渡ったと」
「はい。たぶん……」
「そうですか。それは……いいことを聞いたわ」
「へ?」
なんだ?
急に口調と雰囲気が……。
「要するにあなたは勇者じゃなくて、偽者ってことね」
「あ、まぁそうなりますね。でも、そもそも勇者じゃないから偽者でもないような?」
「そうね。けど、お父様も皆も、あなたが勇者だと思っているわ」
「それは誤解なので、ちゃんと説明しないといけないなと」
「説明? そんなことしたら、あなた間違いなく死刑よ?」
「し、死刑!?」
驚きすぎて叫んでしまった。
王女様は耳を塞ぎ、嫌そうな顔をする。
「うるさいわね。外に聞こえたらどうするの?」
「うっ、すみません……」
さっきから何なんだ?
優しくてお淑やかな雰囲気だった王女様が、急に態度が変わった。
トゲトゲしいというか……テキトーな感じに。
ふかふかで気持ちがいいソファーだ。
この感覚のリアルさも、これが現実である証明になっていた。
「はぁ……」
この際、ここが異世界であることは認めよう。
そうじゃないと次のことを考えられない。
次……すなわち、どうやったら元の世界に戻れるのか。
王城の人たちは勇者を召喚する儀式の最中だったらしい。
そこで現れたのが俺だったみただが、今なら断言してもいい。
俺は勇者なんかじゃない。
だって聖剣とか持ってないし。
王女様が説明してくれたことだけど、勇者に選ばれる人間は女神様から聖剣を授かるそうだ。
そんな機会はなかった。
女神様なんて会ったことも聞いたこともない。
俺が手にしていたのは、通販で偶々購入した妖刀だけ。
「こいつの力で異世界に飛ばされたってことだよな?」
そして偶然にも、勇者召喚の儀式の最中だった。
要するに不慮の事故だ。
「そんなことある?」
実際そうなったのだから仕方がない。
ドッキリの種明かし待ちで好待遇にあやかったけど、今から本物の勇者じゃないことをカミングアウトするべきか。
いや、その前に試してみよう。
俺は立ち上がり、妖刀を構える。
「こいつで空間が斬れたんだ。同じことをすればまた――!」
元の世界に戻れるかもしれない。
俺は思いっきり刀を振るった。
直後、空間に黒い亀裂が走る。
「よし!」
やっぱりできた!
このまま空間に吸い込まれたら戻れる。
「よっしゃああ!」
大喜びで空間の亀裂に飛び込んだ。
この世界の人たちには悪いが、勇者召喚は改めてやってもらおう。
そうすれば本物の勇者が現れて、世界を救うだろう。
さようなら異世界。
短い間だったけど、いい体験ができたよ。
「痛っ!」
またしりもちをついた。
落下からの衝撃は変わらず痛い。
「でもこれで元の世界に――いや何でだよ!」
戻っていなかった。
視界が開けて飛び込んできたのは、相変わらず豪華な部屋の内装だ。
ちょっと雰囲気は違うけど、間違いなくエトワール王国の場内だとわかる。
王国の紋章が壁に描かれているから。
「くっそ! 戻れたと思ったのに……」
失敗なのか?
もう一度試そう!
同じように刀を振るった。
そして空間が裂けて、穴に飛び込む。
「またかよ!」
失敗した。
また違う部屋に移動しただけだ。
そうじゃない。
俺は引っ越したいんじゃなくて、元の世界に戻りたいんだ。
その後も何度も試して、失敗を繰り返す。
「はぁ……はぁ……」
十回目くらいだろうか。
一気に疲れて刀を振るうことすらできなくなった。
汗を流してしゃがみ込む。
「なんで戻れないんだよ」
空間を斬って移動はできる。
しかし何度やっても、エトワール王国の王城から抜け出せない。
加えてこの力、かなり体力を消耗するらしい。
たかが十回振っただけなのに、もう腕が上がらない。
「やっぱり妖刀……」
「それは聖剣ではないのですね?」
「そりゃそうだろ? 俺は勇者じゃないんだから」
「――そうですか。あなたは勇者ではなかったのですね」
「だからそうだっ……え?」
俺は一体、誰と会話をしているのか。
気がついた時には、彼女と視線があっていた。
「お、王女様!?」
「おはおうございます」
「お、おはようございます……じゃなくて! なんでここに?」
「なぜって、ここは私の部屋ですよ?」
「え!?」
俺は慌てて周囲を見渡す。
よく見ると俺が借りていた部屋と全然違う。
何が違うかというと、女の子の部屋っぽいのだ。
ベッドも天井付のおしゃれなやつだし、カーテンも可愛らしいガラがついている。
何より王女様の存在が、彼女の部屋であることを証明していた。
「す、すみません! わざとじゃないんです!」
「いえ、私も驚きましたが、それだけです。謝らないでください」
王女様はニコリと微笑む。
元の世界なら女性の部屋に無断で入った時点で犯罪成立なのだが。
王女様の優しさに感謝しなければ。
「ところで、先ほど興味深いことをおっしゃっていましたね?」
「え、あ……」
「勇者ではないと。どういうことでしょう?」
「そ、それは……」
しまった。
聞かれているとは思わず、つい秘密を口にしてしまった。
勇者でないことばバレたら怒られるんじゃ……。
いやでも、王女様は優しそうだし、素直に相談したら協力してくれたり……?
チラッと王女様を見る。
ニコッと微笑んでくれた。
よし、話そう!
「じ、実はですね」
俺は素直に、事の経緯を伝えた。
王女様は真剣に、静かに聞いてくれた。
そして最後まで語り終えて、王女様は頷く。
「なるほど。つまりは不思議な剣の力で世界を渡ったと」
「はい。たぶん……」
「そうですか。それは……いいことを聞いたわ」
「へ?」
なんだ?
急に口調と雰囲気が……。
「要するにあなたは勇者じゃなくて、偽者ってことね」
「あ、まぁそうなりますね。でも、そもそも勇者じゃないから偽者でもないような?」
「そうね。けど、お父様も皆も、あなたが勇者だと思っているわ」
「それは誤解なので、ちゃんと説明しないといけないなと」
「説明? そんなことしたら、あなた間違いなく死刑よ?」
「し、死刑!?」
驚きすぎて叫んでしまった。
王女様は耳を塞ぎ、嫌そうな顔をする。
「うるさいわね。外に聞こえたらどうするの?」
「うっ、すみません……」
さっきから何なんだ?
優しくてお淑やかな雰囲気だった王女様が、急に態度が変わった。
トゲトゲしいというか……テキトーな感じに。
8
あなたにおすすめの小説
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる