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正しいのはどっち?④
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暗い路地を進む。
地下には下水道があり、古くなって使われていない管理施設があった。
コトンと、足音が響く。
「潜伏場所としては最適ってことか」
「――! お前たちは!」
たどり着いた先に、屋敷を襲ったレジスタンスの面々がいた。
屋敷で見かけた連中もいれば、それよりも若い子供や、年老いた獣人の姿もある。
暗くてハッキリは見えないが、生活感もある空間だ。
ここで隠れて暮らしているのだろう。
武器をもった獣人たちが集まってくる。
警戒されている。
当然だろう。
「どうやってここを……」
「匂いを辿ったんだよ。僕は鼻がいいから」
「――! お前はあの時……その姿は――」
アルカは獣人の姿に変身していた。
感情の高ぶり以外にも、自分の意志で姿を変えられる。
獣人は人間よりも五感が鋭く、身体能力も高い。
今さらながら、彼女のパワーは獣人由来のものだと理解した。
そして、犬といえば嗅覚だ。
「俺たちは戦いに来たわけじゃない。話を聞きにきたんだ」
「……何のために? お前たちは領主の手下だろ!」
「違います。私たちは勇者パーティーです」
「勇者……だと?」
「はい」
エリカは続ける。
「あの場にいたのは依頼があったからです。レジスタンスを名乗る者たちが、領主や街の人に危害を加えていると」
「街の住人には何もしてないぞ!」
「そうですね。その辺りの話をお聞かせいただけませんか?」
「……」
まだ警戒はされている。
しかし、彼らの視線はアルカに向けられていた。
獣人である彼女が一緒にいる。
彼女の存在が、彼らの警戒心を少しだけ和らげる。
「……わかった。ただ、これ以上は近づくな。子供たちが怯える」
「ありがとうございます」
俺たちは距離を保ち、彼らからの情報に耳を傾ける。
わかったことは二つ。
一つは彼らの目的だ。
「領主から同胞を解放することが、あなた方の目的なのですね?」
「そうだ」
エリカの問いかけに、ハッキリと答えた。
まっすぐな視線と意思を感じる。
嘘はついていないだろう。
「あの男は……俺たち獣人を遊びの道具にしている! 使用人に雇っているのは表向きだ。奴隷として何十人も屋敷のどこかに監禁している」
「事実なのか?」
「間違いない! 奴隷を扱っている商人を捕まえて聞いた。あいつに獣人の売ったって!」
「……エリカ」
「ええ」
奴隷商法は禁止されている。
いかに貴族と言えど、奴隷を売買することはこの国では罪だ。
事実なら罰を与えなければならない。
「問題は、どこにその人たちがいるか……でしょう」
「そうだな。場所はわからないのか?」
レジスタンスのリーダーは首を振る。
「匂いが多すぎるんだ。匂いが強い場所はわかっても、それ以上はわからない」
「僕にも同じだよ。あの屋敷は、獣人の匂いでいっぱいだから」
匂いでの探索は難しいのか。
場所がわからないと、闇雲に探せば怪しまれるし、対策もされるだろう。
「あの倉庫の地下でござるよ」
「え?」
唐突に、小次郎が意見した。
聞こえているのは俺だけだから、俺だけ驚く。
俺は小声で尋ねる。
「なんでわかるんだよ」
「見て確認したでござるよ」
「は?」
「拙者、幽霊ゆえ。壁や地面はすり抜けられるでござる」
レジスタンスとの戦闘中。
小次郎は地面の下から気配を感じて、勝手に俺の身体から離れて地面に潜っていた。
その先には廊下と広い空間があり、獣人たちがいたという。
「先に言えよ!」
「ソウジ君!?」
「あ、いや、なんでもない」
「いや、聞かれなかった故」
聞くわけないだろ!
根本的に領主が獣人の奴隷を隠してるなんて知らなかったんだからな!
こいつ……優秀なのか抜けてるのかどっちなんだ。
「あの倉庫の地下に空間がある」
「――! 本当か?」
「わかるの? ソウジ君!」
「あ、ああ、勇者だからな!」
これで誤魔化そう。
エリカには伝わってくれるはずだ。
「それなら地下に行きましょう。余が明ける前に……今なら公爵も眠っているはずよ」
「よし! 行くぞ!」
「うん!」
公爵の悪事をばらして、獣人たちを解放する。
なんだかこれ、異世界の勇者パーティーっぽいイベントだな。
不謹慎なのはわかっているが、少しワクワクする。
◇◇◇
「本当に地下があった」
「あなたが言ったんでしょ?」
地下へと続く階段を歩きながら、エリカが小声でぼやいた。
お前は見つけたのが俺じゃないことわかるよな?
小次郎に地面へ潜ってもらい、入り口を見つけて侵入した。
見つかるとは思っていなかったのだろう。
警備もなく、すんなり入ることができた。
小次郎がいれば閉じた部屋も入り放題だな。
「悪いことには手を貸さないでござるよ」
「わかってるよ」
「見て! 明かりがある!」
アルカが指をさす。
階段の終わりに、小さく灯りが漏れていた。
この先は長い廊下がある。
慎重に扉を進み、廊下までたどり着く。
以前として警備はない。
アルカの鼻は、廊下の先に同胞たちの気配を感じたらしい。
「この先にいるよ! あと、変な匂いがする」
「変な?」
「うん。ツーンとする感じ」
警戒しながら進む。
近づくにつれ、嗅覚が普通の俺にも感じられるようになった。
刺激臭だ。
おそらく何らかの薬品の匂いだろう。
扉に差し掛かり、ゆっくりと開ける。
「なっ……」
絶句した。
地下に広がっていたのは実験場だった。
獣人たちが牢屋に閉じ込められている。
それ以上に、黄緑色の液体に入った気色の悪い生物が目立った。
見るからにマッドサイエンティストのラボだ。
「これ……魔物か?」
「正解ですよ。勇者様」
「――! お前は……」
俺たちの前に、ニヤついた悪徳公爵が姿を見せた。
地下には下水道があり、古くなって使われていない管理施設があった。
コトンと、足音が響く。
「潜伏場所としては最適ってことか」
「――! お前たちは!」
たどり着いた先に、屋敷を襲ったレジスタンスの面々がいた。
屋敷で見かけた連中もいれば、それよりも若い子供や、年老いた獣人の姿もある。
暗くてハッキリは見えないが、生活感もある空間だ。
ここで隠れて暮らしているのだろう。
武器をもった獣人たちが集まってくる。
警戒されている。
当然だろう。
「どうやってここを……」
「匂いを辿ったんだよ。僕は鼻がいいから」
「――! お前はあの時……その姿は――」
アルカは獣人の姿に変身していた。
感情の高ぶり以外にも、自分の意志で姿を変えられる。
獣人は人間よりも五感が鋭く、身体能力も高い。
今さらながら、彼女のパワーは獣人由来のものだと理解した。
そして、犬といえば嗅覚だ。
「俺たちは戦いに来たわけじゃない。話を聞きにきたんだ」
「……何のために? お前たちは領主の手下だろ!」
「違います。私たちは勇者パーティーです」
「勇者……だと?」
「はい」
エリカは続ける。
「あの場にいたのは依頼があったからです。レジスタンスを名乗る者たちが、領主や街の人に危害を加えていると」
「街の住人には何もしてないぞ!」
「そうですね。その辺りの話をお聞かせいただけませんか?」
「……」
まだ警戒はされている。
しかし、彼らの視線はアルカに向けられていた。
獣人である彼女が一緒にいる。
彼女の存在が、彼らの警戒心を少しだけ和らげる。
「……わかった。ただ、これ以上は近づくな。子供たちが怯える」
「ありがとうございます」
俺たちは距離を保ち、彼らからの情報に耳を傾ける。
わかったことは二つ。
一つは彼らの目的だ。
「領主から同胞を解放することが、あなた方の目的なのですね?」
「そうだ」
エリカの問いかけに、ハッキリと答えた。
まっすぐな視線と意思を感じる。
嘘はついていないだろう。
「あの男は……俺たち獣人を遊びの道具にしている! 使用人に雇っているのは表向きだ。奴隷として何十人も屋敷のどこかに監禁している」
「事実なのか?」
「間違いない! 奴隷を扱っている商人を捕まえて聞いた。あいつに獣人の売ったって!」
「……エリカ」
「ええ」
奴隷商法は禁止されている。
いかに貴族と言えど、奴隷を売買することはこの国では罪だ。
事実なら罰を与えなければならない。
「問題は、どこにその人たちがいるか……でしょう」
「そうだな。場所はわからないのか?」
レジスタンスのリーダーは首を振る。
「匂いが多すぎるんだ。匂いが強い場所はわかっても、それ以上はわからない」
「僕にも同じだよ。あの屋敷は、獣人の匂いでいっぱいだから」
匂いでの探索は難しいのか。
場所がわからないと、闇雲に探せば怪しまれるし、対策もされるだろう。
「あの倉庫の地下でござるよ」
「え?」
唐突に、小次郎が意見した。
聞こえているのは俺だけだから、俺だけ驚く。
俺は小声で尋ねる。
「なんでわかるんだよ」
「見て確認したでござるよ」
「は?」
「拙者、幽霊ゆえ。壁や地面はすり抜けられるでござる」
レジスタンスとの戦闘中。
小次郎は地面の下から気配を感じて、勝手に俺の身体から離れて地面に潜っていた。
その先には廊下と広い空間があり、獣人たちがいたという。
「先に言えよ!」
「ソウジ君!?」
「あ、いや、なんでもない」
「いや、聞かれなかった故」
聞くわけないだろ!
根本的に領主が獣人の奴隷を隠してるなんて知らなかったんだからな!
こいつ……優秀なのか抜けてるのかどっちなんだ。
「あの倉庫の地下に空間がある」
「――! 本当か?」
「わかるの? ソウジ君!」
「あ、ああ、勇者だからな!」
これで誤魔化そう。
エリカには伝わってくれるはずだ。
「それなら地下に行きましょう。余が明ける前に……今なら公爵も眠っているはずよ」
「よし! 行くぞ!」
「うん!」
公爵の悪事をばらして、獣人たちを解放する。
なんだかこれ、異世界の勇者パーティーっぽいイベントだな。
不謹慎なのはわかっているが、少しワクワクする。
◇◇◇
「本当に地下があった」
「あなたが言ったんでしょ?」
地下へと続く階段を歩きながら、エリカが小声でぼやいた。
お前は見つけたのが俺じゃないことわかるよな?
小次郎に地面へ潜ってもらい、入り口を見つけて侵入した。
見つかるとは思っていなかったのだろう。
警備もなく、すんなり入ることができた。
小次郎がいれば閉じた部屋も入り放題だな。
「悪いことには手を貸さないでござるよ」
「わかってるよ」
「見て! 明かりがある!」
アルカが指をさす。
階段の終わりに、小さく灯りが漏れていた。
この先は長い廊下がある。
慎重に扉を進み、廊下までたどり着く。
以前として警備はない。
アルカの鼻は、廊下の先に同胞たちの気配を感じたらしい。
「この先にいるよ! あと、変な匂いがする」
「変な?」
「うん。ツーンとする感じ」
警戒しながら進む。
近づくにつれ、嗅覚が普通の俺にも感じられるようになった。
刺激臭だ。
おそらく何らかの薬品の匂いだろう。
扉に差し掛かり、ゆっくりと開ける。
「なっ……」
絶句した。
地下に広がっていたのは実験場だった。
獣人たちが牢屋に閉じ込められている。
それ以上に、黄緑色の液体に入った気色の悪い生物が目立った。
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