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第一章 転生したけど死にそう
男嫌いな騎士①
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某日夜。
夜に散歩をしていた一人の少女が行方不明となった。
その翌日、別の女性が夜道に消える。
さらに三日後。
子供たちと一緒に夕飯を食べて帰宅途中だった家族が何者かに襲撃され、男だけが無慚な姿で発見された。
ギルド、および王国騎士団は一連の事件の犯人が咎落ちであると仮定し、捜査を開始する。
「……で、また俺が疑われていると?」
「そうみたいですね! 噂になってますよ!」
いつものように冒険者ギルドに顔を出したら、周囲の視線が痛々しい。
変態どころか犯罪者を見る目が集まる。
「絶対あいつだろ。だって狙われているのが女子供だけだぞ」
「大人の男は殺されちゃったのよね? 酷い話だわ」
「でも見て、首輪は消えていないわよ?」
「馬鹿。自分で手を下すわけないだろ? 部下にやらせて、自分は咎落ちを防いでいるんだよ」
「ずる賢い……サイテーね」
嫌でも聞こえてくる声に耳を傾けた。
ちょっと待て。
さすがに妄想が過ぎるんじゃないか?
「俺じゃないのに……」
「どいつもこいつ勝手だよな! タクロウがそんなことするわけないのにさ」
「カナタは信じてくれるんだな」
「当たり前だろ? それにここ数日、夜も一緒にいるんだぞ? あたしが証明してやれるよ!」
カナタがとんと自分の胸を叩いてそう言ってくれた。
彼女が同じ宿屋に移ってから、当然のごとく夜は一緒に過ごしている。
未だ童貞のままではあるが、夜を過ごす度、徐々にだけど前進している実感はある。
この世界に転生してから十八日目。
童貞卒業という短期目標の達成は、ついに見えるところまで来たぞ。
「でも怖い事件ですねー。タクロウが犯人じゃないなら、誰なんでしょうか?」
「俺が犯人候補みたいな言い方するな。お前も知ってるだろ」
「え? ぐっすり寝ているので何してるかなんて知りませんよ? はっ! まさか寝ている私に悪戯とかしていませんよね?」
「するわけないだろ。自意識過剰か」
俺は小さくため息をこぼす。
しかしサラスの言う通り、恐ろしい事件ではある。
夜道は俺たちもクエスト終わりでよく歩くし、ギルドから宿屋までは距離がある。
暗い道だって通らないといけない。
「俺たちも気をつけないとな」
「大丈夫だろ? そんな奴が出てきたら、あたしが追い払ってやるよ!」
「なんて頼もしい」
「男なのに情けないですね」
「レベル差的に仕方ないだろ? これでも上がった方なんだぞ」
ここ数日、ちゃんとクエストを受けている。
モンスターとの戦闘も経験し、着実にレベルが上がっていた。
カナタはレベル38になり、俺はレベル15、サラスがレベル12になった。
「ん? そういえば、なんで俺とサラスでレベル差が出始めたんだ? 同じ相手としか戦ってないはずなんだが」
「結婚したからですよ。結婚して夫婦でパーティーを組むとボーナスが入るんです」
「そういう特典もあるのか」
離婚したら十年再婚不可だったり。
夫婦以外で性行為をしたら人権を剥奪されたりと、愛に対して厳しい世界である反面、結婚することのメリットも大いにあるようだ。
「ってことは、今後もレベル差は広がるってことか」
「ふふん! 安心してください! 私もついに支援魔法を覚えましたから! 今日からは私の支援にこうご期待あれ!」
「あ、そうか。頑張ってくれ」
「反応薄いですね!」
正直今までのことがあるから、そんなに期待していないんだよな……。
支援以上にやらかしが増えないか心配だ。
「まっ、とにかく気をつけるということで、今日のクエストを選ぼうぜ」
「おう! どれがいいかなー」
「待て、ヒビヤタクロウ」
「――! またあんたかよ」
振り返る前に声でわかった。
声をかけてきたのはジーナだ。
怖い表情で俺を睨んでいる。
このパターン……流れている噂からして想像にたやすい。
俺は先手を打って否定する。
「言っとくけど、今回の件も関係ないからな!」
「それは今から事情聴取して判断する」
またそれか……。
悲しさよりも呆れのほうが増して、再び盛大にため息をこぼす。
最初は戸惑ったり少し怖かったけど、今は違う。
自分が犯人じゃないことは自分が一番わかっている。
確固たる自信に加え、俺のことを信じてくれる奥さんの存在が大きい。
「いいですけど、すぐ終わらせてくださいね? クエスト受けにきたんで」
「そうだぞ! 大体なんでタクロウばっかり疑うんだよ! 男なら他にもいるだろ!」
「彼が一番、動機があると判断したからです。複数の女性と結婚する権利を持ち……いえ、結婚しなければならないあなたなら」
「――なっ!」
なぜ中間目標のことを知っている。
俺がその話をした現地人はカナタ一人だけだ。
他に知っているのは……。
視線を向ける。
彼女は目を逸らす。
「おいポンコツ天使、ちょっと話を聞こうか」
「な、なんでしょうか?」
「お前……勝手に話してないよな? 聞かれたから素直に答えたとかそんなこと……ありえないよな?」
「き、記憶にございません」
「どこ政治家だてめぇは! またやりやがったのか! プライバシーの侵害って言葉知らねーのかよ!」
「だっていっぱいお酒驕ってくれたんですよー!」
こいつ!
俺の知らぬ間に酒で買収されてやがったのか?
信じられないポンコツぶりだ!
これで天使?
こんな奴はさっさと世界の裏側で働かせておけよ!
「彼女を責めるのはやめるんだ。私が聞いたことだ」
「だからいいわけじゃないんだよ。言っとくけどな? その理由があるからって、誰彼構わず襲ったりしないぞ」
「どうかな? 私は男を信用していないんだ。だから貴様のことも信用していない」
ついに言い切りやがったなこいつ……。
やっぱり男にトラウマでもあるのか?
「反論したければ無実を証明してもらおう」
「証明って……また俺たちに働けって言うのか? しかも今度は犯人探しって」
「安心しろ。今回は私も協力する」
「――! へぇ」
驚いたな。
てっきりまた丸投げをされるとばかり思ったんだが。
そうなったら街を捨てて逃げることも視野に入れていた。
勝手に疑われて危険な目に合うのは割にあわない。
「今日の夜から見回り捜査を行う。貴様たちにも同行してもらうぞ」
「えぇ……夜まで働くんですかぁ」
「昼間はクエストがあるんだ。毎日はきつぞ」
「そうだよ! あたしらだって生活するためにお金がいるんだからな!」
「ふむっ、ならばギルドと相談して、夜の見回りに報酬が出るように私が掛け合おう。それなら問題ないな?」
そんなことまでしてくれるのか?
思ったよりも良心的な提案に、俺たちは顔を見合わせて驚いていた。
「金がもらえるなら、まぁいいけど」
「ではそうなるように手配はしておく。夜七時にギルド前に集合してくれ」
「わかった」
そう言い残し、ジーナはギルドの受付へと歩いて行った。
離してすぐギルドに交渉へ言ってくれたようだ。
俺たちは彼女の様子を遠目に見ながら話し合う。
「なんかあいつ、ただの悪い奴に見えないよな」
「ああ」
まぁ騎士って肩書があるし、正義のために頑張っています、だとは思うけど。
男が嫌い、目の敵にしているくせに、妙に律儀なところがある。
心から男を毛嫌いしているわけじゃないのか?
「さっぱりわからん」
「どうします? このままクエスト探しますか?」
「そうだな。簡単に終わるのだけ受けて、早めに戻ってくるか」
「そうしよ!」
夜に散歩をしていた一人の少女が行方不明となった。
その翌日、別の女性が夜道に消える。
さらに三日後。
子供たちと一緒に夕飯を食べて帰宅途中だった家族が何者かに襲撃され、男だけが無慚な姿で発見された。
ギルド、および王国騎士団は一連の事件の犯人が咎落ちであると仮定し、捜査を開始する。
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「絶対あいつだろ。だって狙われているのが女子供だけだぞ」
「大人の男は殺されちゃったのよね? 酷い話だわ」
「でも見て、首輪は消えていないわよ?」
「馬鹿。自分で手を下すわけないだろ? 部下にやらせて、自分は咎落ちを防いでいるんだよ」
「ずる賢い……サイテーね」
嫌でも聞こえてくる声に耳を傾けた。
ちょっと待て。
さすがに妄想が過ぎるんじゃないか?
「俺じゃないのに……」
「どいつもこいつ勝手だよな! タクロウがそんなことするわけないのにさ」
「カナタは信じてくれるんだな」
「当たり前だろ? それにここ数日、夜も一緒にいるんだぞ? あたしが証明してやれるよ!」
カナタがとんと自分の胸を叩いてそう言ってくれた。
彼女が同じ宿屋に移ってから、当然のごとく夜は一緒に過ごしている。
未だ童貞のままではあるが、夜を過ごす度、徐々にだけど前進している実感はある。
この世界に転生してから十八日目。
童貞卒業という短期目標の達成は、ついに見えるところまで来たぞ。
「でも怖い事件ですねー。タクロウが犯人じゃないなら、誰なんでしょうか?」
「俺が犯人候補みたいな言い方するな。お前も知ってるだろ」
「え? ぐっすり寝ているので何してるかなんて知りませんよ? はっ! まさか寝ている私に悪戯とかしていませんよね?」
「するわけないだろ。自意識過剰か」
俺は小さくため息をこぼす。
しかしサラスの言う通り、恐ろしい事件ではある。
夜道は俺たちもクエスト終わりでよく歩くし、ギルドから宿屋までは距離がある。
暗い道だって通らないといけない。
「俺たちも気をつけないとな」
「大丈夫だろ? そんな奴が出てきたら、あたしが追い払ってやるよ!」
「なんて頼もしい」
「男なのに情けないですね」
「レベル差的に仕方ないだろ? これでも上がった方なんだぞ」
ここ数日、ちゃんとクエストを受けている。
モンスターとの戦闘も経験し、着実にレベルが上がっていた。
カナタはレベル38になり、俺はレベル15、サラスがレベル12になった。
「ん? そういえば、なんで俺とサラスでレベル差が出始めたんだ? 同じ相手としか戦ってないはずなんだが」
「結婚したからですよ。結婚して夫婦でパーティーを組むとボーナスが入るんです」
「そういう特典もあるのか」
離婚したら十年再婚不可だったり。
夫婦以外で性行為をしたら人権を剥奪されたりと、愛に対して厳しい世界である反面、結婚することのメリットも大いにあるようだ。
「ってことは、今後もレベル差は広がるってことか」
「ふふん! 安心してください! 私もついに支援魔法を覚えましたから! 今日からは私の支援にこうご期待あれ!」
「あ、そうか。頑張ってくれ」
「反応薄いですね!」
正直今までのことがあるから、そんなに期待していないんだよな……。
支援以上にやらかしが増えないか心配だ。
「まっ、とにかく気をつけるということで、今日のクエストを選ぼうぜ」
「おう! どれがいいかなー」
「待て、ヒビヤタクロウ」
「――! またあんたかよ」
振り返る前に声でわかった。
声をかけてきたのはジーナだ。
怖い表情で俺を睨んでいる。
このパターン……流れている噂からして想像にたやすい。
俺は先手を打って否定する。
「言っとくけど、今回の件も関係ないからな!」
「それは今から事情聴取して判断する」
またそれか……。
悲しさよりも呆れのほうが増して、再び盛大にため息をこぼす。
最初は戸惑ったり少し怖かったけど、今は違う。
自分が犯人じゃないことは自分が一番わかっている。
確固たる自信に加え、俺のことを信じてくれる奥さんの存在が大きい。
「いいですけど、すぐ終わらせてくださいね? クエスト受けにきたんで」
「そうだぞ! 大体なんでタクロウばっかり疑うんだよ! 男なら他にもいるだろ!」
「彼が一番、動機があると判断したからです。複数の女性と結婚する権利を持ち……いえ、結婚しなければならないあなたなら」
「――なっ!」
なぜ中間目標のことを知っている。
俺がその話をした現地人はカナタ一人だけだ。
他に知っているのは……。
視線を向ける。
彼女は目を逸らす。
「おいポンコツ天使、ちょっと話を聞こうか」
「な、なんでしょうか?」
「お前……勝手に話してないよな? 聞かれたから素直に答えたとかそんなこと……ありえないよな?」
「き、記憶にございません」
「どこ政治家だてめぇは! またやりやがったのか! プライバシーの侵害って言葉知らねーのかよ!」
「だっていっぱいお酒驕ってくれたんですよー!」
こいつ!
俺の知らぬ間に酒で買収されてやがったのか?
信じられないポンコツぶりだ!
これで天使?
こんな奴はさっさと世界の裏側で働かせておけよ!
「彼女を責めるのはやめるんだ。私が聞いたことだ」
「だからいいわけじゃないんだよ。言っとくけどな? その理由があるからって、誰彼構わず襲ったりしないぞ」
「どうかな? 私は男を信用していないんだ。だから貴様のことも信用していない」
ついに言い切りやがったなこいつ……。
やっぱり男にトラウマでもあるのか?
「反論したければ無実を証明してもらおう」
「証明って……また俺たちに働けって言うのか? しかも今度は犯人探しって」
「安心しろ。今回は私も協力する」
「――! へぇ」
驚いたな。
てっきりまた丸投げをされるとばかり思ったんだが。
そうなったら街を捨てて逃げることも視野に入れていた。
勝手に疑われて危険な目に合うのは割にあわない。
「今日の夜から見回り捜査を行う。貴様たちにも同行してもらうぞ」
「えぇ……夜まで働くんですかぁ」
「昼間はクエストがあるんだ。毎日はきつぞ」
「そうだよ! あたしらだって生活するためにお金がいるんだからな!」
「ふむっ、ならばギルドと相談して、夜の見回りに報酬が出るように私が掛け合おう。それなら問題ないな?」
そんなことまでしてくれるのか?
思ったよりも良心的な提案に、俺たちは顔を見合わせて驚いていた。
「金がもらえるなら、まぁいいけど」
「ではそうなるように手配はしておく。夜七時にギルド前に集合してくれ」
「わかった」
そう言い残し、ジーナはギルドの受付へと歩いて行った。
離してすぐギルドに交渉へ言ってくれたようだ。
俺たちは彼女の様子を遠目に見ながら話し合う。
「なんかあいつ、ただの悪い奴に見えないよな」
「ああ」
まぁ騎士って肩書があるし、正義のために頑張っています、だとは思うけど。
男が嫌い、目の敵にしているくせに、妙に律儀なところがある。
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