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第一章 転生したけど死にそう
男嫌いな騎士③
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結局、初日の見回りでは何も得られなかった。
例の誘拐事件が起きるわけでもなく、怪しい人物を見つけるわけでもない。
成果はなかったが、抑止力になっているならそれでもいい。
俺たちは翌日、翌々日と見回りを行った。
だが――
「また誘拐事件が起きたんだって?」
「聞いたよ。昨日の夜だろ? マジで物騒になったな」
「でもよ? 確かあの胸のでかい騎士のねーちゃんが見回りしてるんじゃなかったか? 見回りしてんのに事件起きるとか、意味ねーじゃん」
「だな。性獣と一緒らしいし、夜の街で旺盛してんじゃねーの?」
夕刻のギルドで下品な笑い声が響く。
噂話、陰口はしっかりと本人の耳にも届いていた。
「あんまり気にすんなよ」
「……いいや、彼らの意見はもっともだ。見回りをしているのに事件を防げないなんて……」
「そういうこともあるだろ? こんだけ広い街なんだからさ」
「そうですよ! 元気出してください!」
最初はいがみ合っていた俺たちだが、なぜか今は彼女を慰めている。
さすがに可哀想になっていた。
毎晩必死に、真面目に見回りをしている姿を、誰よりも近くで見ているから。
彼女は真面目過ぎて融通が利かないだけで、根は悪い奴じゃない。
きっとこの場にいる俺たち以外は誰も、そのことを知らないだろう。
俺はジーナに提案する。
「見回りのルートを変えたほうがいいんじゃないか?」
「そうだな。事件が起こるようになったのは、私たちの行動を予測しやすくなったからかもしれない。今日から逆のルートで見回ろう」
俺たちが出発しようとすると、一番近くのテーブル席に座っていた男性冒険者が茶々を入れてくる。
「お! 今夜も見回りにいくのか。頼むぜ~ 見回りくらいできないんじゃ、優秀な姉貴に怒られちまうぞぉ~」
「……」
ジーナが悲しそうな表情をする。
あの酔っ払い。
こっちだって真面目に見回りしてるんだぞ?
何もせず酒だけ飲んでヤジ飛ばしてるゴミに言われたくないんだが?
無性に腹が立った俺は身を乗り出す。
「ちょっと文句言ってくる」
「大丈夫だ」
そんな俺の肩をジーナが掴んで止めた。
「彼の意見はもっともだ」
「どこがだよ。お前は頑張ってるじゃないか」
「いいや、結果が出ていないなら意味はない。このままでは姉上を失望させてしまう……それはダメなんだ」
「ジーナ……」
彼女の中で優秀な姉の存在は、どれほど大きいのだろうか。
目標や憧れといったポジティブな存在には、話を聞いていて思えなかった。
どちらかというと……鎖だ。
彼女は姉の存在に縛られている……ような気がする。
「ありがとう。私のために怒ってくれて感謝する」
「べ、別にそんなんじゃねーし」
「何照れてるんですか? 男のそういうのはキモイだけですよ」
「くっ……なぁジーナ、提案なんだが今夜はこの馬鹿を囮に使うのはどうだろう?」
「絶対にダメですよ! 何かあっても見捨てるきじゃないですか!」
さすが、付き合いも長くなって俺の思考がわかるようになったか。
もちろんそのつもりだった。
という感じに場を和ませて、俺たちは今夜も見回りに赴く。
しかし、この日も事件は起きてしまった。
翌日の昼。
作戦会議のために冒険者ギルドに集合した。
ギルドには暇そうな冒険者が昼間から酒を飲んでいる。
「おいおいおい、まーた事件が起こったのかよ! 見回りの目ん玉曇ってんじゃねーか!」
「もしくはついてねーとかな!」
酒に酔った男たちは豪快に悪口を叫んでいた。
もちろん俺たちの耳にも届いている。
昼間から酒を飲むポンコツどもを一発ぶん殴ってやりたい。
そんな俺をいち早く察し、ジーナが制止する。
「いいんだ。事件を未然に防げていないのは事実だから」
「ルート変えたのになぁ。なんでだろ?」
カナタが首をかしげている。
昨夜は初めて、大幅にルートを変えて見回りをした。
決めたのは当日だし、前々からそうする予定だったわけじゃない。
俺たちの考えが見破られていたのか。
それとも、どこかで聞かれていた?
あの話をしたのは冒険者ギルドの中、つまりここだ。
この中に、事件と関わりのある人間がいる……考えたくないな。
「――失礼、少しいいですか」
考えをめぐらせていると、一人の男性が俺たちに声をかけてきた。
高身長で整った顔立ち、服装もどこか清潔感があって、冒険者とは雰囲気が違う。
いわゆるイケメン男性という感じがした。
俺が嫌いなタイプっぽいな……。
視線は俺ではなく、ジーナのほうに向いている。
「何か用か?」
「ジーナさんですね。私はパーク、王国騎士団から派遣された騎士です」
「――騎士?」
「はい。ジーナさんと同じく」
なるほど。
冒険者じゃなくて騎士だったのか。
よく見ると腰に剣を携えていて、いかにも騎士っぽい服装だった。
パークは続けて説明する。
「騎士団の命令により、私も今回の事件捜査に協力させていただきます」
「援軍ということか? 聞いていないぞ」
「そうでしょうね。急遽決定したことですので、伝令が間に合っていないのでしょう。ただ騎士団も、この状況をよくないと考えています。早急に事件を解決するため、僕を派遣したのです」
「……そうか」
ジーナは複雑な表情を見せている。
援軍が来たということは、彼女一人の力では不足だと騎士団が判断したという証明だ。
本当は自分の力で解決したかったのだろう。
「では僕は、夜に向けて少々準備がありますので一旦失礼します」
「ああ、よろしく頼むよ」
「はい。では皆様も、また後で」
「おう」
さわやかイケメンって感じだな。
別に何かされたわけじゃないけど、生理的に無理な気がする。
「俺あいつ嫌いかも」
「自分よりイケメンだからですか?」
「そうだよ。ってちげーよ!」
あやうく即答しちまったじゃねーか。
断じて認めない!
俺よりイケメンだとしても……あいつの指に指輪はなかった。
つまり未婚、ということは結婚している俺のほうが上。
うん、これだ。
間違いない!
「タクロウ? 一人でなんか楽しそうだな」
「そっとしてあげましょう。あれは非モテ童貞の発作ですから」
「そうなのか……」
「おいこら、俺の嫁に変なことを吹き込むなよ」
カナタと結婚しているんだから非モテじゃないし!
少なくとも一人にはモテてるし!
あと童貞もそろそろ卒業間近だから見とけよこの野郎!
「でもよかったですね! 人が増えるなら見回りもしやすくなりますよ!」
「まぁそうだな。正直この広さ、俺たちだけじゃカバーできないし」
「……」
「ジーナ?」
「あ、いや、すまない。私もそろそろ宿に戻る。また夜にここで」
「ああ、わかった」
ぼーっとしていたジーナに声をかけると、そう言って立ち上がりギルドを後にした。
なんだか避けられたみたいだが、たぶん違う。
落ち込んでいる感じがしたし、焦りみたいなのも感じた。
優秀な姉の教えが、彼女を焦らせているのだろうか。
比べられる気持ちは……少しわかるよ。
例の誘拐事件が起きるわけでもなく、怪しい人物を見つけるわけでもない。
成果はなかったが、抑止力になっているならそれでもいい。
俺たちは翌日、翌々日と見回りを行った。
だが――
「また誘拐事件が起きたんだって?」
「聞いたよ。昨日の夜だろ? マジで物騒になったな」
「でもよ? 確かあの胸のでかい騎士のねーちゃんが見回りしてるんじゃなかったか? 見回りしてんのに事件起きるとか、意味ねーじゃん」
「だな。性獣と一緒らしいし、夜の街で旺盛してんじゃねーの?」
夕刻のギルドで下品な笑い声が響く。
噂話、陰口はしっかりと本人の耳にも届いていた。
「あんまり気にすんなよ」
「……いいや、彼らの意見はもっともだ。見回りをしているのに事件を防げないなんて……」
「そういうこともあるだろ? こんだけ広い街なんだからさ」
「そうですよ! 元気出してください!」
最初はいがみ合っていた俺たちだが、なぜか今は彼女を慰めている。
さすがに可哀想になっていた。
毎晩必死に、真面目に見回りをしている姿を、誰よりも近くで見ているから。
彼女は真面目過ぎて融通が利かないだけで、根は悪い奴じゃない。
きっとこの場にいる俺たち以外は誰も、そのことを知らないだろう。
俺はジーナに提案する。
「見回りのルートを変えたほうがいいんじゃないか?」
「そうだな。事件が起こるようになったのは、私たちの行動を予測しやすくなったからかもしれない。今日から逆のルートで見回ろう」
俺たちが出発しようとすると、一番近くのテーブル席に座っていた男性冒険者が茶々を入れてくる。
「お! 今夜も見回りにいくのか。頼むぜ~ 見回りくらいできないんじゃ、優秀な姉貴に怒られちまうぞぉ~」
「……」
ジーナが悲しそうな表情をする。
あの酔っ払い。
こっちだって真面目に見回りしてるんだぞ?
何もせず酒だけ飲んでヤジ飛ばしてるゴミに言われたくないんだが?
無性に腹が立った俺は身を乗り出す。
「ちょっと文句言ってくる」
「大丈夫だ」
そんな俺の肩をジーナが掴んで止めた。
「彼の意見はもっともだ」
「どこがだよ。お前は頑張ってるじゃないか」
「いいや、結果が出ていないなら意味はない。このままでは姉上を失望させてしまう……それはダメなんだ」
「ジーナ……」
彼女の中で優秀な姉の存在は、どれほど大きいのだろうか。
目標や憧れといったポジティブな存在には、話を聞いていて思えなかった。
どちらかというと……鎖だ。
彼女は姉の存在に縛られている……ような気がする。
「ありがとう。私のために怒ってくれて感謝する」
「べ、別にそんなんじゃねーし」
「何照れてるんですか? 男のそういうのはキモイだけですよ」
「くっ……なぁジーナ、提案なんだが今夜はこの馬鹿を囮に使うのはどうだろう?」
「絶対にダメですよ! 何かあっても見捨てるきじゃないですか!」
さすが、付き合いも長くなって俺の思考がわかるようになったか。
もちろんそのつもりだった。
という感じに場を和ませて、俺たちは今夜も見回りに赴く。
しかし、この日も事件は起きてしまった。
翌日の昼。
作戦会議のために冒険者ギルドに集合した。
ギルドには暇そうな冒険者が昼間から酒を飲んでいる。
「おいおいおい、まーた事件が起こったのかよ! 見回りの目ん玉曇ってんじゃねーか!」
「もしくはついてねーとかな!」
酒に酔った男たちは豪快に悪口を叫んでいた。
もちろん俺たちの耳にも届いている。
昼間から酒を飲むポンコツどもを一発ぶん殴ってやりたい。
そんな俺をいち早く察し、ジーナが制止する。
「いいんだ。事件を未然に防げていないのは事実だから」
「ルート変えたのになぁ。なんでだろ?」
カナタが首をかしげている。
昨夜は初めて、大幅にルートを変えて見回りをした。
決めたのは当日だし、前々からそうする予定だったわけじゃない。
俺たちの考えが見破られていたのか。
それとも、どこかで聞かれていた?
あの話をしたのは冒険者ギルドの中、つまりここだ。
この中に、事件と関わりのある人間がいる……考えたくないな。
「――失礼、少しいいですか」
考えをめぐらせていると、一人の男性が俺たちに声をかけてきた。
高身長で整った顔立ち、服装もどこか清潔感があって、冒険者とは雰囲気が違う。
いわゆるイケメン男性という感じがした。
俺が嫌いなタイプっぽいな……。
視線は俺ではなく、ジーナのほうに向いている。
「何か用か?」
「ジーナさんですね。私はパーク、王国騎士団から派遣された騎士です」
「――騎士?」
「はい。ジーナさんと同じく」
なるほど。
冒険者じゃなくて騎士だったのか。
よく見ると腰に剣を携えていて、いかにも騎士っぽい服装だった。
パークは続けて説明する。
「騎士団の命令により、私も今回の事件捜査に協力させていただきます」
「援軍ということか? 聞いていないぞ」
「そうでしょうね。急遽決定したことですので、伝令が間に合っていないのでしょう。ただ騎士団も、この状況をよくないと考えています。早急に事件を解決するため、僕を派遣したのです」
「……そうか」
ジーナは複雑な表情を見せている。
援軍が来たということは、彼女一人の力では不足だと騎士団が判断したという証明だ。
本当は自分の力で解決したかったのだろう。
「では僕は、夜に向けて少々準備がありますので一旦失礼します」
「ああ、よろしく頼むよ」
「はい。では皆様も、また後で」
「おう」
さわやかイケメンって感じだな。
別に何かされたわけじゃないけど、生理的に無理な気がする。
「俺あいつ嫌いかも」
「自分よりイケメンだからですか?」
「そうだよ。ってちげーよ!」
あやうく即答しちまったじゃねーか。
断じて認めない!
俺よりイケメンだとしても……あいつの指に指輪はなかった。
つまり未婚、ということは結婚している俺のほうが上。
うん、これだ。
間違いない!
「タクロウ? 一人でなんか楽しそうだな」
「そっとしてあげましょう。あれは非モテ童貞の発作ですから」
「そうなのか……」
「おいこら、俺の嫁に変なことを吹き込むなよ」
カナタと結婚しているんだから非モテじゃないし!
少なくとも一人にはモテてるし!
あと童貞もそろそろ卒業間近だから見とけよこの野郎!
「でもよかったですね! 人が増えるなら見回りもしやすくなりますよ!」
「まぁそうだな。正直この広さ、俺たちだけじゃカバーできないし」
「……」
「ジーナ?」
「あ、いや、すまない。私もそろそろ宿に戻る。また夜にここで」
「ああ、わかった」
ぼーっとしていたジーナに声をかけると、そう言って立ち上がりギルドを後にした。
なんだか避けられたみたいだが、たぶん違う。
落ち込んでいる感じがしたし、焦りみたいなのも感じた。
優秀な姉の教えが、彼女を焦らせているのだろうか。
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