冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ

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 すっかり日が暮れ、私たちは帰路につく。
 
「はぁ……余計に疲れたわ」
「そうか? 俺は楽しかったぞ? 書類仕事ばかりだと、身体が鈍るからな」
「私は楽なほうでいいのよ」

 私は大きくため息をこぼす。
 いきなり木剣を手渡され、実践訓練を始められて二時間弱。
 延々と相掛かり稽古に付き合わされた。
 
「あなた体力お化けすぎるのよ。どういう身体してるわけ?」
「ん? これくらい普通だぞ」
「普通って言葉を本で調べてから使いなさい」
「え……そんなに怒ることか?」
「別に怒ってはいないわよ。単に呆れているだけ」

 あれが普通?
 馬鹿を言ってはいけない。
 これでも女王だったのだから、自国の騎士のレベルは把握している。
 彼らの訓練を観察したり、実戦の場に立ちあったこともある。
 ユーラスティア王国は大きな国だ。
 敵も多いから、自国の軍事力は当然高い。
 騎士一人一人のレベルはもちろん、数も大国に相応しい。
 そんな騎士たちを見慣れている私の眼が、彼を化け物だと認定しているのだ。

「それも聖人だからなのかしら」
「多少は影響しているかもな? けど、毎日走り込みをして、打ち込みで筋肉を鍛えていれば、誰でも体力はつくぞ」
「そういう次元じゃないのよ。あなたは」
「そうか?」

 この男、まさか無自覚なのかしら?
 二時間弱ぶっ続けで剣を振っていたのに、一切表情を変えないどころか、汗一つかいていない。
 呼吸の乱れもなく、剣のブレもない。
 そんな人間、見たことがなかった。
 というかもう人間じゃない。
 私は魔力で無理やり身体を強化して、なんとか食らいついたけど……。

「絶対に明日は筋肉痛ね」

 小さくため息をこぼす。
 これなら一人で逃げ隠れて生活したほうが、マシだったのではないだろうか?
 
「はぁ……」
「そんなにため息つかないでくれ。俺は昔を思い出せて楽しかったぞ」
「それは一方的にボコボコにできたからでしょ」
「ボコボコにはしてないだろ」

 精神的にボコられた気分だ。
 私の剣は一度も彼に当たらなかったし、逆に彼の剣も当たらなかったけど、全部寸止めだったからだ。
 正直、女王になってから剣を握る機会が減ったとはいえ、それなりに自信はあった。
 今でも多少は、その辺の騎士よりはやれるという。
 自信ではなく、うぬぼれであることを自覚させられ、とても憂鬱だ。

「次やるなら魔法もありね」
「え?」
「何よ? それくらいのハンデはあってもいいでしょ?」
「いや、意外だな。もう二度とやりたくない、とか言われると思ったんだが」

 自分でもハッと気づく。
 なぜそう言わなかったのだろうか?
 あんな面倒なことは御免だと、二度とやりたくないと。
 これじゃまるで、次を求めているみたいだ。
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