50 / 80
5-10
しおりを挟む
先輩たちに案内されたのは、学園の建物の裏にある木陰。
人通りはなく、ちょうど授業中だろうから、誰も来ることはないだろう。
ここなら思う存分、遊べるというわけだ。
「へへっ、これからやること、わかってんだろ?」
「……」
「抵抗すんじゃねーぞ? 痛い目みたくなけりゃな」
いやらしい視線で、私に手を伸ばす。
その手が触れる前に、私は口を開く。
「先輩、一つ勝負をしませんか?」
「あ? 勝負だ?」
「はい。勝負の内容はなんでもいいですが、先輩方の得意分野にしましょう」
「……」
「私が勝ったら、二度と私には関わらないと誓ってください」
私は笑顔で提案した。
それが苛立ったのか、先輩の男は低い声で言う。
「……おい、てめぇなめてんのか?」
「いいえ、ただの提案です。代わりに、私がもし負けたら、あなた方に絶対服従を約束しましょう。どんな命令も、どんな願いも聞き入れます」
「へぇ、おいおい、いいのかよ! そんな提案して!」
「構いません。私が負けることはありませんから」
私は笑顔を見せる。
煽りだ。
彼らの怒りを煽り、冷静な判断を鈍らせる。
「なめてやがんな。だったら勝負しようぜ。その身体にいろいろ教えてやるよ」
「では決闘でよろしいですか? 私は皆さん全員が相手でも構いませんよ?」
「っ、相手は俺一人だ!」
リーダーっぽい男が殴り掛かってきた。
まだ勝負開始も言っていないのに、せっかちな男だ。
私はひらりと躱し、足を出して転ばせる。
「がっ!」
「大丈夫ですか? 足元は見ないといけませんよ」
「てめぇ、もう許さねーぞ!」
先輩は左腕の腕輪を見せる。
彼は精霊使いらしい。
だからあの講義を受けていたのか。
「ズタズタにしてやるよ!」
彼が腕輪に宿すのは大気の精霊。
大気を操り、空気の弾を生成し、放つ。
一発目は外れて、隣の木にめり込んだ。
「どうだ? そいつが直撃すれば、骨も簡単に折れるぜ」
「当たらないですよ」
「馬鹿が! さっきのは脅しだ!」
今度は狙ってくる。
けれど、当たらない。
当たる直前、火球を生成して相殺した。
「てめぇ! 精霊術?」
「使えないと思ったんですか? あの講義を受けているのに」
「っ……使えるだけで!」
何度も空気弾を放つが、すべて相殺していく。
遅い攻撃だ。
あの講義と同じで、眠くなってくる。
「もういいので、他の方も一緒にどうぞ」
私は煽る。
それに苛立った男たちが、次々と精霊術を発動させた。
四対一。
しかも全員が精霊使い。
本来ならば絶望的だが、私は彼らをねじ伏せた。
たった一分で。
私の足元に、先輩たちが転がっている。
「勝負は私の勝ちですね」
「なっ……」
(何だこの女……強すぎる。まるで次元が……)
「理解しましたか? あなた方じゃ、私には勝てません。負けたんですから、今後は私に服従してもらいます」
「は、は? そんな約束してねーだろ!」
確かにしていない。
というか、今考え付いた。
二度と関わらないというのもありだけど、せっかくなら手駒にしよう。
一人で魔女を探すのは大変だし、使いやすい人間がいるとはかどると思ったから。
「する前に勝手に始めたんでしょう? 負けたんだから潔く従ってください」
「ふざけんな! 誰がてめぇなんかに!」
「そうですか? じゃあ、いいことを教えます」
私は彼の耳元で囁く。
ここにいる私が、一体誰の命で学園に入ったのか。
その名を聞いて、絶句する。
「う、嘘だろ……」
「嘘ではありませんよ? 必要なら自分で確認してください」
いかに貴族たちと言えど、その上には王族がいる。
私が仕える主は、この国のトップだ。
彼らは逆らえない。
故に――
「これからよろしくお願いしますね? 先輩たち」
「……はい」
都合のいい手駒の完成である。
喧嘩を売る相手は選びましょう。
それが彼らが学ぶべきことだった。
人通りはなく、ちょうど授業中だろうから、誰も来ることはないだろう。
ここなら思う存分、遊べるというわけだ。
「へへっ、これからやること、わかってんだろ?」
「……」
「抵抗すんじゃねーぞ? 痛い目みたくなけりゃな」
いやらしい視線で、私に手を伸ばす。
その手が触れる前に、私は口を開く。
「先輩、一つ勝負をしませんか?」
「あ? 勝負だ?」
「はい。勝負の内容はなんでもいいですが、先輩方の得意分野にしましょう」
「……」
「私が勝ったら、二度と私には関わらないと誓ってください」
私は笑顔で提案した。
それが苛立ったのか、先輩の男は低い声で言う。
「……おい、てめぇなめてんのか?」
「いいえ、ただの提案です。代わりに、私がもし負けたら、あなた方に絶対服従を約束しましょう。どんな命令も、どんな願いも聞き入れます」
「へぇ、おいおい、いいのかよ! そんな提案して!」
「構いません。私が負けることはありませんから」
私は笑顔を見せる。
煽りだ。
彼らの怒りを煽り、冷静な判断を鈍らせる。
「なめてやがんな。だったら勝負しようぜ。その身体にいろいろ教えてやるよ」
「では決闘でよろしいですか? 私は皆さん全員が相手でも構いませんよ?」
「っ、相手は俺一人だ!」
リーダーっぽい男が殴り掛かってきた。
まだ勝負開始も言っていないのに、せっかちな男だ。
私はひらりと躱し、足を出して転ばせる。
「がっ!」
「大丈夫ですか? 足元は見ないといけませんよ」
「てめぇ、もう許さねーぞ!」
先輩は左腕の腕輪を見せる。
彼は精霊使いらしい。
だからあの講義を受けていたのか。
「ズタズタにしてやるよ!」
彼が腕輪に宿すのは大気の精霊。
大気を操り、空気の弾を生成し、放つ。
一発目は外れて、隣の木にめり込んだ。
「どうだ? そいつが直撃すれば、骨も簡単に折れるぜ」
「当たらないですよ」
「馬鹿が! さっきのは脅しだ!」
今度は狙ってくる。
けれど、当たらない。
当たる直前、火球を生成して相殺した。
「てめぇ! 精霊術?」
「使えないと思ったんですか? あの講義を受けているのに」
「っ……使えるだけで!」
何度も空気弾を放つが、すべて相殺していく。
遅い攻撃だ。
あの講義と同じで、眠くなってくる。
「もういいので、他の方も一緒にどうぞ」
私は煽る。
それに苛立った男たちが、次々と精霊術を発動させた。
四対一。
しかも全員が精霊使い。
本来ならば絶望的だが、私は彼らをねじ伏せた。
たった一分で。
私の足元に、先輩たちが転がっている。
「勝負は私の勝ちですね」
「なっ……」
(何だこの女……強すぎる。まるで次元が……)
「理解しましたか? あなた方じゃ、私には勝てません。負けたんですから、今後は私に服従してもらいます」
「は、は? そんな約束してねーだろ!」
確かにしていない。
というか、今考え付いた。
二度と関わらないというのもありだけど、せっかくなら手駒にしよう。
一人で魔女を探すのは大変だし、使いやすい人間がいるとはかどると思ったから。
「する前に勝手に始めたんでしょう? 負けたんだから潔く従ってください」
「ふざけんな! 誰がてめぇなんかに!」
「そうですか? じゃあ、いいことを教えます」
私は彼の耳元で囁く。
ここにいる私が、一体誰の命で学園に入ったのか。
その名を聞いて、絶句する。
「う、嘘だろ……」
「嘘ではありませんよ? 必要なら自分で確認してください」
いかに貴族たちと言えど、その上には王族がいる。
私が仕える主は、この国のトップだ。
彼らは逆らえない。
故に――
「これからよろしくお願いしますね? 先輩たち」
「……はい」
都合のいい手駒の完成である。
喧嘩を売る相手は選びましょう。
それが彼らが学ぶべきことだった。
49
あなたにおすすめの小説
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します
すもも太郎
ファンタジー
伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。
その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。
出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。
そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。
大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。
今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。
※ハッピーエンドです
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します
かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。
追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。
恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。
それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。
やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。
鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。
※小説家になろうにも投稿しています。
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる