元剣帝、再び異世界に剣を向ける ~千年後の世界で貴族に転生したので、好き勝手やってたら家を追い出されました~

日之影ソラ

文字の大きさ
2 / 26
第一部

2.第二の生は楽しく

しおりを挟む
 千年以上前――
 剣帝ジークフリートという男がいた。
 それが俺の前世で、今回が二度目になる。
 名門貴族エイルワース家の次男として生を受けた俺だったが、どういう理由か、前世の記憶を持っていた。
 せっかく二度目の生を得たんだ。
 もう一度剣の道を極めるため修行を……なんてことはしなかった。
 剣の道を極めた所で、心は何も満たされない。
 それを嫌という程思い知らされていたから。

 だから、今回は好きに生きようと思ったんだ。
 戦いばかりだったあの頃と、千年後の世界は違う。
 貴族の次男として生まれたのも、俺にとっては好都合だった。
 金はあるし、程よく地位もある。
 やりたい放題出来るんだと思うと、面白いくらいに心が躍った。

 ほしい物は手に入れる。
 人でも、物でも、ほしいと思ったら即行動。
 金で手に入るなら馬鹿みたいにつぎ込み、足りなければ地位をふりかざす。
 現代においてのけ者扱いされている亜人種も、関係なく雇ったりした。
 あとは家でのんびりするだけ。
 家督を継ぐのは、基本的には長男の役目だ。
 次男である俺には、大した期待も向けられない。
 勉学もほどほどで済ませて、ぐーたらな毎日を過ごしていた。

 そうすると当然、父上には呆れられた。
 出来損ないだとか、恥知らずなんて罵られたりもしたな。
 実の兄には見下されて、よく陰湿ないじめも受けていたっけ。
 まぁ、そういうのは別にどうでもよかった。
 生きるか死ぬかの時代を知っている俺にとって、その程度は些細なことでしかない。
 まったく気にせず、自分勝手に過ごし続けた結果……
 俺の噂は、国中に広まるまでに至った。

 名門貴族の落ちこぼれ。
 亜人を好き好んで飼いならす変わり者。
 魔法の才能も、剣の才能も持ち合わせていない無能。 
 言われたい放題だよ。
 それも気にしていないけど、王都で生活するには面倒になって、三年ほど前から別荘で暮らしている。
 
「どうかされましたか?」
「ん、いいや」

 廊下の窓を眺めていた。
 穏やかで代り映えしない景色を見つめて、つくづく思う。
 千年で、世界も平和になったのだなと。

 クロエと一緒に廊下を進み、一階に降りて食堂へ向かう。
 すると、すでに俺たち以外の全員が集まっていて、俺が来た途端に視線がこちらを向く。

「おはよう、皆早いな」
「何言ってるんだ? お前がいつも遅いんだよ、ジーク」

 呆れ顔で俺に悪態をつく彼はグレン。
 赤い髪と犬の耳と尻尾、腰には普段刀を装備している。
 亜人の一種、犬の獣人で、俺の護衛役の一人。

「おはようございます! ジーク様」

 その隣に座る元気な女の子はアカツキ。
 グレンの妹で、髪の色は彼よりも薄い赤色。
 一応メイド見習いで、この屋敷の中で最年少だ。

「おっはよ~ ジーク様! また寝坊しちゃったんですかぁ?」
「ユミル、貴方もよ」
「ちょっ、クロエちゃん! 何でバラしちゃうのさ~」
「はははっ、お前が寝坊するのもいつも通りだろ」
「うぅ~ ジーク様には言われたくないよ~」

 彼女はユミル。
 褐色の肌と、濃い紫色の髪が特徴。
 いや、もっとわかりやすい特徴が、背中と腰から生えている。
 悪魔の羽と尻尾……彼女は人間と悪魔の混血だ。
 だからというわけではないが、よく仕事をさぼったりする。
 これも、だからというわけではないが、俺と気が合う。

 ガヤガヤ騒いでいると、隣のキッチンから足音が近づいてくる。
 俺が目を向けると、料理を運ぶ二人の姿があった。

「あらあら」
「主殿、おはようございます」
「おはよう、リガルド。ミアリスも」
「おはようございます。もしかして、お待たせしちゃったかしら?」
「心配いりません。どちらかというと、待たせたのはジーク様です」

 水色のウェーブのかかった長い髪。
 大きな胸と、お淑やかな話し方の彼女はミアリス。
 見た目は奇麗なお姉さんだが、彼女もセイレーンという亜人種。
 
 一緒に現れたリザルドは、見た目で分かる通りただの人間ではない。
 二メートルを超える巨体と、長く伸びる尻尾。
 体中を覆う鱗と、凛々しい顔立ちはリザードマンの特徴だ。
 彼にはグレンと一緒に、俺の護衛役をしてもらっている。

 使用人はこれで全員。
 残る一人はというと――

「お兄ちゃん、こっち」
「ああ」
  
 俺の妹シトナ。
 銀色の奇麗な髪は、まるで妖精のようにキラキラしている。
 妹と言っても腹違い。
 それも妾の子供だったから、本宅に居場所がなく、俺と一緒に暮らしている。
 年はアカツキより一つ上の十四歳、年が近いこともあり、二人は仲よしの友達だ。

 全員が席に着く。
 皆の顔を順番に見てから、手を合わせる。

「いただきます」

 それから、ワイワイとしゃべりながら朝食をとる。
 何気に楽しいひと時だ。
 好きな人たちと毎日一緒にいられて、馬鹿みたいに騒いだり、怒られたり、笑い合ったり。
 そんなの楽しいに決まってる。

 二度目の生を受けて十八年とひと月。
 順調に好き放題人生を満喫できている。
 このまま生きて、納得のいく最後を迎えよう。

 そう、思っていたんだ。
 だけど……

「ジーク、お前を追放する」
「……は?」

 楽しい日々の終わりは、ある日突然やってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

処理中です...