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第一部

8.絶賛活躍中です

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 山岳エリア。
 アクトスの北門を出た先に、裸の山々が並んでいる。
 馬車を走らせ一時間。
 クエストを受けた俺たちは、山を登り中腹付近までたどり着いていた。

「情報だとこの辺りだが……」
「あれではないか? 他の岩と色が違うように見える」
「ホントだ! じゃあ一発かましちゃっていいかな?」
「まてユミル」
「周囲の確認が先だと思うけど?」
「シトナの言う通りだ」
「う~ シトナちゃんに負けた~」

 クエストメンバーは俺を入れて五人。
 腰に剣を装備したグレン、背中に大きなアックスを担いだリザルド。
 露出多めの服に黒いローブを纏ったユミルと、白い横笛を持っているシトナ。
 全員がそれぞれのジョブにあった装備を整え、服装が変化している。
 もちろん俺を含めて。

「右にも一つある」
「奥にもたぶんあるな」

 シトナとグレンが見つけた岩は全体的に白っぽい。
 他の転がっている岩は肌色が強くて、地面は茶色に近い。
 視認した俺は頷く。

「あれで間違いなさそうだが、どうする? ジーク」
「う~ん。まっ三体なら大丈夫だろ」
「じゃあ撃って良い?」

 ユミルが目を輝かせて聞いてきた。
 俺は小さくため息をこぼし、頷いてから答える。

「良いぞ。ただし、一体は確実に倒してくれ」
「まっかせて!」

 自信満々に前へ出るユミル。
 俺たちは一歩下がり、彼女を後ろから見守る。

「よーし」

 ユミルは両手をパンと合わせ、続けて前にかざす。
 展開された紫色の魔法陣から、バチバチと音が出てエネルギーが収束する。
 紫色の光は丸く太陽のように輝き、今にもあふれ出しそうだ。

「ブロックバスター!」

 エネルギは前方に放たれ、地と空気をえぐりとる。
 ブロックバスターは爆発系魔法の一つで、極限まで圧縮した魔力エネルギーを放ち、着弾地点に大爆発を起こす。
 直撃を受けた色違いの岩は、激しい爆発音と共に粉々に飛び散った。

「相変わらず凄い威力だな」
「全くだ」

 大爆発を眺めながら、俺とグレンはぼそりと呟いた。
 ユミルのジョブは魔法使い。
 その名の通り、魔法を操ることに長けた才能を持ち、中でも彼女は飛びぬけていた。
 悪魔とのハーフだから、というのも一つの理由だが、彼女自身の才能も大きかったのだろう。
 俺たちの中で、最大の攻撃範囲と威力を誇っている。

「うーん、やっぱり気持ちいいな~」

 若干の破壊フェチになりつつあって、少し心配ではあるが……

「主殿。今の衝撃で二体が」

 リザルドが指をさす。
 色違いの岩がのっそりと形を変えて起き上がる。
 あれが今回のターゲット。
 エレメントゴーレムと言う岩から生まれたモンスターだ。
 普段は大きな岩に擬態していて、近づくと襲ってくる。

「俺が奥をやるから、二人は右の一体を頼む」
「了解」
「承知した」
「シトナは二人を優先で援護。ユミルは次の準備だ」
「うん」
「はーい!」

 全員に指示を出し、俺は先陣を切って駆け出す。
 
「オレたちもいくぞ」
「うむ!」

 グレンとリザルドも前に出る。
 リザルドのジョブは戦士、武器は背負ったグレートアックス。
 リザードマンである彼は、人間を遥かに超える筋力と耐久力を有している。
 百キロあるグレートアックスを扱えるのも、彼がリザードマンであるため。
 故に――

「おおおー!」

 彼の一撃は、容易く岩をも砕く。
 リザルドのアックスがゴーレムの右腕を吹き飛ばした。
 その隙をついて、グレンが斬りこむ。
 彼のジョブは剣士だが、扱う獲物はただの剣ではない。
 その剣は刀と呼ばれ、鋭い斬れ味が得り。
 だが……

「っち! やっぱり硬いか」

 岩を圧縮して出来たゴーレムの身体は、斬撃が通りにくい。
 リザルドのようにパワーで砕けないから、剣士には厳しい相手だ。
 
 そこへ笛の音色が響く。
 音色はグレンの刀に【斬撃強化】を付与。

「助かる!」

 強化された刀は、ゴーレムの左腕を斬り裂く。
 音色を奏でているのは、シトナの横笛だ。
 彼女のジョブは吟遊詩人。
 音を奏でることで、味方を強化したり、敵を弱体化させたりできる支援職。
 元々笛を吹くのは上手かったけど、まさかの才能だった。
 最初は戦わせるつもりもなかったのに、今では主戦力になっている。

 シトナはさらに、ゴーレムへ【防御低下】を付与。
 攻撃はさらに通りやすくなり、二人が削っていく。
 しかし、ゴーレムは周囲の岩を吸収して再生出来てしまう。
 核となるコアを破壊しなければ、本当の意味でのダメージは与えられない。

「みんなー! 準備できたよー!」
「グレン殿」
「ああ、一旦下がるぞ」

 そこを補うのは、火力担当のユミル。
 強力な魔法ほど発動に時間がかかり、一度使うと再使用までインターバルがいる。
 彼らはそれを理解し、時間を稼いでいたに過ぎない。
 準備が整った時点で、彼らの勝ちは確定した。

「いっけー!」

 放たれる紫色のエネルギーが大爆発を起こす。
 四人の華麗な連携で、見事エレメントゴーレムを討伐した。

「主殿は?」
「お兄ちゃんならあっち」

 戦いを終え、四人の視線が俺に向けられる。
 俺は一人で戦っていたわけだが――

「――剣の雨よ」

 降り注ぐ無数の剣が、ゴーレムを削っていく。
 剣士だからゴーレムには不利とか、そういう常識は俺には通じない。
 剣の加護で生成した剣は、通常の剣よりも鋭い。
 それを雨のように降らせれば、いずれコアが露出する。

「見つけた」

 そこを斬れば、ゴーレムは簡単に倒せる。
 というような感じに、俺たちは冒険者として活躍していた。
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