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第一部
13.作戦が開始されました
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騎士団長に案内され、作戦エリアに向う。
もう間もなく――と言っていた割には、急ぐ様子もなく落ち着いて移動中だ。
冒険者たちは、それぞれのジョブにあった装備を着ている。
見た目は個性豊かで、ゾロゾロと歩く光景は仮装パーティーを彷彿させる。
その中に俺たちもいるのだが……
「ねぇジーク様~」
「何だよユミル」
「このローブ暑苦しいー! 脱いじゃダメなの?」
「駄目に決まってるだろ。ちゃんと話聞いてたのか?」
「聞いてたけどさ~」
ユミルは黒いローブを纏っている。
ローブにはフードもついていて、顔もすっぽり隠せる仕様だ。
これを彼女だけでなく、八人全員が着ている。
周りから見たら異様な光景だ。
「な、なぁ……あれってオクトグラムだよな?」
「ん? ああ、ホントだ! っていうか何で全員真っ黒?」
「やっぱ変だよなあれ」
事実かなり目立っている。
元々有名になった分、視線を集めやすいようだ。
なぜこんな格好をしているのかというと――
「文句を言わないでユミル」
「そうよ。ミゲル様もいらっしゃるみたいだもの」
クロエとミアリスが説得している。
この格好の理由は、一言で表すと正体を隠すためだ。
街の冒険者にではなく、王国に人間に対して。
さっき有名になったとか言ったけど、元々俺たちは王都で有名だった。
主に俺の所為なのだが……そこは考えないようにしている。
「まぁバレた所で、冒険者としての活動には影響はしない……と思う。けど、あの馬鹿兄貴に知られると、余計なもめ事を起こされかねないからな」
「お兄ちゃんとアレ、仲悪いもんね」
「シトナ……アレとか言ってるけど、一応あっちも兄だからな?」
「あんな人知らない」
という感じで、俺だけでなくシトナとも仲が悪い。
そもそもミゲルは、亜人種に対しての偏見も強いから、彼女たちのことも快く思っていない。
出来ることなら、あまり関わりたくない相手だ。
「とにかく! 極力目立たず、騎士団から離れて戦うぞ」
「おぉー!」
何とも言えない決意表明に、小さく拳を突き上げる。
モンスターの大軍勢が迫っているとは思えない緊張感だな。
たぶんこれも、俺の所為なんだろうけど。
大草原と渓谷の狭間。
決戦の地に陣取る騎士団の列。
即席の壁を隔てて、砲台や罠が準備されている。
冒険者一同が到着すると、隊列の中から一人の男が前に出た。
白銀の鎧が目にうるさくて、自己主張と自尊心の激しさを象徴しているようだと感じる。
「ミゲル殿、ただいま戻りました」
「騎士団長か。勤めご苦労だったな」
ミゲルが冒険者たちへ視線を向ける。
「支援要請に応じてくれた冒険者の方々です」
「……そうか」
ミゲルはわざとらしい咳ばらいをする。
それから偉そうな顔をして、大きな声で言う。
「僕は勇者ミゲルだ! 先に断っておくが、君たち冒険者の力など本来は必要ない! 僕の力をもってすれば、魔王軍など取るに足らないのだからな!」
突然おかしなことを言いだした。
騎士団長が動揺している所を見ると、おそらくミゲルの独りの意見なのだろう。
冒険者たちがざわつき始める。
「何言ってんだ? あの白いの……」
「支援要請してきたのはそっちだろ?」
当然の反応だろう。
ただ、ミゲルは止まることなく――
「僕の負担を減らそうという陛下の心遣いには感謝する……だが、君たちのように野蛮で汚い者たちの手を借りるなど、不本意でならない。せめて足手まといにならないようにはしてくれ」
と言い放ち、馬鹿にするような笑みを浮かべてミゲルは去っていく。
その直後の冒険者たちは……
「……は?」
「何だあいつえらっそうに言いやがって!」
ここまで予想通り。
ミゲルのことだから、余計なことを言うだろうとは思っていた。
「つーか誰だよあれ!」
すみません。
一応、俺の実兄なんです。
「腹立つな~ どさくさに紛れて後ろから攻撃してやろうかな」
「やめとけよ。国家権力とかで潰されるぞ? ていうかダッサい鎧だな~」
それは俺も思いました。
奇麗な鎧だけど、奇麗すぎて素人感が否めない。
あと普通に光が反射して眩しい。
「お変わりないようですね」
「ああ……できれば変わっててほしかったよ」
無理だとは思うけど。
そんなことをしていると、パンと大きな音が鳴り響く。
モンスター接近の合図だ。
さっきまでざわついていた冒険者たちは、その知らせを聞いて目の色を変える。
「俺たちも行くぞ」
なるべくミゲルから離れた場所に行く。
集団をスルスルっと抜けて、一番右端にたどり着いた。
即席の壁の隙間から、渓谷が見下ろせる。
渓谷から草原に続く坂には、すでにびっしりとモンスターの群れが集まっていた。
「開戦だ! 皆かかれー!」
合図が響く。
一斉に放たれた砲撃で、第一陣のモンスターは半滅。
残りが坂を上り、草原へと侵攻する。
「いっくよー! ヴォルカニックファイアー!」
ユミルの炎魔法が炸裂する。
業火に焼かれるモンスターと、回避した一部が迫る。
「グレン殿!」
「ああ!」
リガルドとグレンが前に出る。
アックスと刀でモンスターを斬り、粉砕して戦う。
シトナが笛の旋律で攻撃を強化し、敵の攻撃を弱体化させているから、難なく倒すことが出来ている。
加えてミアリスの召喚獣が二人を援護し、華麗な連携を見せていた。
「アカツキちゃんお願い!」
「はい!」
その隙にアカツキがユミルの魔力を回復させる。
彼女たちの護衛は、クロエが務める。
錬金したナイフを投げ、近づいてきたモンスターは斬り倒す。
そして俺は――
「剣の丘よ」
剣を地面に突き刺すと、地面から次々に刃が飛び出る。
剣山はモンスターの群れまで伸びて、問答無用に突き刺していく。
「さて、ほどほどに暴れようか」
もう間もなく――と言っていた割には、急ぐ様子もなく落ち着いて移動中だ。
冒険者たちは、それぞれのジョブにあった装備を着ている。
見た目は個性豊かで、ゾロゾロと歩く光景は仮装パーティーを彷彿させる。
その中に俺たちもいるのだが……
「ねぇジーク様~」
「何だよユミル」
「このローブ暑苦しいー! 脱いじゃダメなの?」
「駄目に決まってるだろ。ちゃんと話聞いてたのか?」
「聞いてたけどさ~」
ユミルは黒いローブを纏っている。
ローブにはフードもついていて、顔もすっぽり隠せる仕様だ。
これを彼女だけでなく、八人全員が着ている。
周りから見たら異様な光景だ。
「な、なぁ……あれってオクトグラムだよな?」
「ん? ああ、ホントだ! っていうか何で全員真っ黒?」
「やっぱ変だよなあれ」
事実かなり目立っている。
元々有名になった分、視線を集めやすいようだ。
なぜこんな格好をしているのかというと――
「文句を言わないでユミル」
「そうよ。ミゲル様もいらっしゃるみたいだもの」
クロエとミアリスが説得している。
この格好の理由は、一言で表すと正体を隠すためだ。
街の冒険者にではなく、王国に人間に対して。
さっき有名になったとか言ったけど、元々俺たちは王都で有名だった。
主に俺の所為なのだが……そこは考えないようにしている。
「まぁバレた所で、冒険者としての活動には影響はしない……と思う。けど、あの馬鹿兄貴に知られると、余計なもめ事を起こされかねないからな」
「お兄ちゃんとアレ、仲悪いもんね」
「シトナ……アレとか言ってるけど、一応あっちも兄だからな?」
「あんな人知らない」
という感じで、俺だけでなくシトナとも仲が悪い。
そもそもミゲルは、亜人種に対しての偏見も強いから、彼女たちのことも快く思っていない。
出来ることなら、あまり関わりたくない相手だ。
「とにかく! 極力目立たず、騎士団から離れて戦うぞ」
「おぉー!」
何とも言えない決意表明に、小さく拳を突き上げる。
モンスターの大軍勢が迫っているとは思えない緊張感だな。
たぶんこれも、俺の所為なんだろうけど。
大草原と渓谷の狭間。
決戦の地に陣取る騎士団の列。
即席の壁を隔てて、砲台や罠が準備されている。
冒険者一同が到着すると、隊列の中から一人の男が前に出た。
白銀の鎧が目にうるさくて、自己主張と自尊心の激しさを象徴しているようだと感じる。
「ミゲル殿、ただいま戻りました」
「騎士団長か。勤めご苦労だったな」
ミゲルが冒険者たちへ視線を向ける。
「支援要請に応じてくれた冒険者の方々です」
「……そうか」
ミゲルはわざとらしい咳ばらいをする。
それから偉そうな顔をして、大きな声で言う。
「僕は勇者ミゲルだ! 先に断っておくが、君たち冒険者の力など本来は必要ない! 僕の力をもってすれば、魔王軍など取るに足らないのだからな!」
突然おかしなことを言いだした。
騎士団長が動揺している所を見ると、おそらくミゲルの独りの意見なのだろう。
冒険者たちがざわつき始める。
「何言ってんだ? あの白いの……」
「支援要請してきたのはそっちだろ?」
当然の反応だろう。
ただ、ミゲルは止まることなく――
「僕の負担を減らそうという陛下の心遣いには感謝する……だが、君たちのように野蛮で汚い者たちの手を借りるなど、不本意でならない。せめて足手まといにならないようにはしてくれ」
と言い放ち、馬鹿にするような笑みを浮かべてミゲルは去っていく。
その直後の冒険者たちは……
「……は?」
「何だあいつえらっそうに言いやがって!」
ここまで予想通り。
ミゲルのことだから、余計なことを言うだろうとは思っていた。
「つーか誰だよあれ!」
すみません。
一応、俺の実兄なんです。
「腹立つな~ どさくさに紛れて後ろから攻撃してやろうかな」
「やめとけよ。国家権力とかで潰されるぞ? ていうかダッサい鎧だな~」
それは俺も思いました。
奇麗な鎧だけど、奇麗すぎて素人感が否めない。
あと普通に光が反射して眩しい。
「お変わりないようですね」
「ああ……できれば変わっててほしかったよ」
無理だとは思うけど。
そんなことをしていると、パンと大きな音が鳴り響く。
モンスター接近の合図だ。
さっきまでざわついていた冒険者たちは、その知らせを聞いて目の色を変える。
「俺たちも行くぞ」
なるべくミゲルから離れた場所に行く。
集団をスルスルっと抜けて、一番右端にたどり着いた。
即席の壁の隙間から、渓谷が見下ろせる。
渓谷から草原に続く坂には、すでにびっしりとモンスターの群れが集まっていた。
「開戦だ! 皆かかれー!」
合図が響く。
一斉に放たれた砲撃で、第一陣のモンスターは半滅。
残りが坂を上り、草原へと侵攻する。
「いっくよー! ヴォルカニックファイアー!」
ユミルの炎魔法が炸裂する。
業火に焼かれるモンスターと、回避した一部が迫る。
「グレン殿!」
「ああ!」
リガルドとグレンが前に出る。
アックスと刀でモンスターを斬り、粉砕して戦う。
シトナが笛の旋律で攻撃を強化し、敵の攻撃を弱体化させているから、難なく倒すことが出来ている。
加えてミアリスの召喚獣が二人を援護し、華麗な連携を見せていた。
「アカツキちゃんお願い!」
「はい!」
その隙にアカツキがユミルの魔力を回復させる。
彼女たちの護衛は、クロエが務める。
錬金したナイフを投げ、近づいてきたモンスターは斬り倒す。
そして俺は――
「剣の丘よ」
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