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12 どうでもいいわ
「これはとても高価なものだけど、どうやって手に入れたの?」
アンジェリカに尋ねられたワミーは焦る気持ちを隠して答える。
「知らないわ。メイドが持ってきてくれただけよ」
「そうなの?」
「そうよ。もう、いいでしょう? 自分の部屋に戻ってよ!」
「そうね。戻るようにするわ」
アンジェリカは素直にうなずくと、シルバートレイを持ったまま、部屋を出ようと歩き出す。
「あ、アンジェリカ様! それをどこに持っていくつもりなの!?」
「このシルバートレイはあなたのものではないんでしょう? だから返しておくわ」
「その必要はないわ! だってまだ、私はシルバートレイを使っているもの!」
一瞬、どうしようか迷ったアンジェリカだったが、メイドの中にシルバートレイを持っている人物がいることに気づき、彼女に頼む。
「悪いけれど、ワミーがシルバートレイを必要としているの」
「かしこまりました」
アンジェリカが言い終わらないうちにメイドはうなずくと、部屋に入って、自分の持っていたシルバートレイをサイドテーブルの上に置いた。
「そういう意味じゃないのよ」
「ヒウロ、このシルバートレイを気に入ったから、私のものにしてもいいかしら」
「君までシルバートレイをほしがるのか? 最近の女性は何を考えているのかわからないな」
ブツブツ言いながらも、ヒウロは首を縦に振る。
「かまわない。好きなようにしろよ」
「ありがとう」
「待って! 私もそのシルバートレイを気に入っているのよ! アンジェリカ様なら、それが何かわかっているのでしょう?」
怒りで顔を真っ赤にしているワミーに、アンジェリカは微笑む。
「話題のティアトレイの偽造品なんでしょう? これが本物だとしたなら、莫大な金額だから、ヒウロが知らないわけがないわ」
「そ、それは……っ」
「まさか、家のお金を勝手に使ったの?」
「そういうわけじゃないわ!」
「なら、これにこだわる必要はないわよね?」
問いかけられたワミーには弱々しい演技をする余裕はなく、ただ、悔しそうな顔でアンジェリカを睨むしかなかった。
「では、私は部屋に戻るわ。二人の邪魔をしてごめんなさいね」
「アンジェリカ! 聞いてくれ! 本当に僕とワミーはやましい関係なんかじゃないんだ!」
「どうでもいいわ」
「アンジェ!」
歩き出すアンジェリカの手を掴もうとしたヒウロだったが、ワミーが「酷いわ!」と泣き出したため、手を引っ込める。
「ワミー、シルバートレイくらいで泣くなよ」
「だって! あのシルバートレイは特別なんだもの! アンジェリカ様はわかっていて、私から奪ったのよ!」
「よくわからないが、似たようなものを買ってあげるから機嫌を直してくれ」
「駄目よ! 私はあのシルバートレイがいいの!」
泣きわめくワミーとそれを慰めるヒウロを一瞥したあと、アンジェリカは無言で部屋を出る。
廊下で待っていた側近と執事が静かに扉を閉めた。そして、側近が眉尻を下げて、先程のアンジェリカの質問に答える。
「アンジェリカ様、庇うわけではなく、ヒウロ様とワミー様が男女の関係ではないことは確かです。ですが、お二人が普通の兄と妹の関係には思えません」
「男女の関係ではないと、どうしてわかるの?」
部屋に戻りながら尋ねると、側近は苦笑する。
「ヒウロ様はアンジェリカ様のことを愛していらっしゃるからです」
「……そうとは思えないわ」
アンジェリカは失笑すると、執事に自分の部屋のスペアキー、もしくはマスターキーを持ってくるように伝えた。すると、上着の内ポケットから鍵の束を取り出し、該当のものをアンジェリカに手渡した。
アンジェリカは礼を言ってから、ヒウロが追いかけてこないうちに、急いで部屋の中に入って鍵をかけた。
結局、ワミーとヒウロは浮気をしていたことは認めなかった。だが、ヒウロが誓いを破ったことには間違いはない。彼は何度も謝り「もう一度チャンスをくれ」と訴えてきたが、アンジェリカは首を縦には振らなかった。
アンジェリカに尋ねられたワミーは焦る気持ちを隠して答える。
「知らないわ。メイドが持ってきてくれただけよ」
「そうなの?」
「そうよ。もう、いいでしょう? 自分の部屋に戻ってよ!」
「そうね。戻るようにするわ」
アンジェリカは素直にうなずくと、シルバートレイを持ったまま、部屋を出ようと歩き出す。
「あ、アンジェリカ様! それをどこに持っていくつもりなの!?」
「このシルバートレイはあなたのものではないんでしょう? だから返しておくわ」
「その必要はないわ! だってまだ、私はシルバートレイを使っているもの!」
一瞬、どうしようか迷ったアンジェリカだったが、メイドの中にシルバートレイを持っている人物がいることに気づき、彼女に頼む。
「悪いけれど、ワミーがシルバートレイを必要としているの」
「かしこまりました」
アンジェリカが言い終わらないうちにメイドはうなずくと、部屋に入って、自分の持っていたシルバートレイをサイドテーブルの上に置いた。
「そういう意味じゃないのよ」
「ヒウロ、このシルバートレイを気に入ったから、私のものにしてもいいかしら」
「君までシルバートレイをほしがるのか? 最近の女性は何を考えているのかわからないな」
ブツブツ言いながらも、ヒウロは首を縦に振る。
「かまわない。好きなようにしろよ」
「ありがとう」
「待って! 私もそのシルバートレイを気に入っているのよ! アンジェリカ様なら、それが何かわかっているのでしょう?」
怒りで顔を真っ赤にしているワミーに、アンジェリカは微笑む。
「話題のティアトレイの偽造品なんでしょう? これが本物だとしたなら、莫大な金額だから、ヒウロが知らないわけがないわ」
「そ、それは……っ」
「まさか、家のお金を勝手に使ったの?」
「そういうわけじゃないわ!」
「なら、これにこだわる必要はないわよね?」
問いかけられたワミーには弱々しい演技をする余裕はなく、ただ、悔しそうな顔でアンジェリカを睨むしかなかった。
「では、私は部屋に戻るわ。二人の邪魔をしてごめんなさいね」
「アンジェリカ! 聞いてくれ! 本当に僕とワミーはやましい関係なんかじゃないんだ!」
「どうでもいいわ」
「アンジェ!」
歩き出すアンジェリカの手を掴もうとしたヒウロだったが、ワミーが「酷いわ!」と泣き出したため、手を引っ込める。
「ワミー、シルバートレイくらいで泣くなよ」
「だって! あのシルバートレイは特別なんだもの! アンジェリカ様はわかっていて、私から奪ったのよ!」
「よくわからないが、似たようなものを買ってあげるから機嫌を直してくれ」
「駄目よ! 私はあのシルバートレイがいいの!」
泣きわめくワミーとそれを慰めるヒウロを一瞥したあと、アンジェリカは無言で部屋を出る。
廊下で待っていた側近と執事が静かに扉を閉めた。そして、側近が眉尻を下げて、先程のアンジェリカの質問に答える。
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「男女の関係ではないと、どうしてわかるの?」
部屋に戻りながら尋ねると、側近は苦笑する。
「ヒウロ様はアンジェリカ様のことを愛していらっしゃるからです」
「……そうとは思えないわ」
アンジェリカは失笑すると、執事に自分の部屋のスペアキー、もしくはマスターキーを持ってくるように伝えた。すると、上着の内ポケットから鍵の束を取り出し、該当のものをアンジェリカに手渡した。
アンジェリカは礼を言ってから、ヒウロが追いかけてこないうちに、急いで部屋の中に入って鍵をかけた。
結局、ワミーとヒウロは浮気をしていたことは認めなかった。だが、ヒウロが誓いを破ったことには間違いはない。彼は何度も謝り「もう一度チャンスをくれ」と訴えてきたが、アンジェリカは首を縦には振らなかった。
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