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38 信じていいんですか (ヒウロとワミーSide)
※ 前半はヒウロ。後半はワミーです。
リーアムはデイルと自分が同一人物であることを騎士隊の上層部には明かしていた。上層部の命令もあり、騎士隊は疑うことなくワミーを留置場に連れて行った。その後、予定した通り、ライキ伯爵領の騎士隊に身柄が引き渡され、ワミーは取り調べを受けることになった。
ワミーが連れて行かれたことをヒウロが知ったのは、ワミーが捕まってから二日後の朝のことだった。
昨日の晩に帰ってくるはずだったワミーが帰ってこず、裏切ったのかと確認を入れようとした時に騎士隊がやってきた。
困惑するヒウロに、ワミーがライキ伯爵家の金を盗んでいたことが報告された。
「あなたの妹は自分は何もしていないと訴えていますが、状況証拠だけでなく目撃証言などもありますので、労働の役を課せられる可能性が高いでしょう」
「シルバートレイなんかのために罪を犯したのか」
今のヒウロにとって、ワミーは疫病神のようなものである。あんなに可愛がっていたのに、恩を仇で返されたヒウロは、腸が煮えくり返るような思いだった。
そんな彼に騎士が問いかける。
「かなりの金額にはなりますが、保釈金を支払えば解放することも可能です。いかがいたしますか」
「そんなの答えは一つに決まっているだろう。いや、待てよ」
ヒウロは思いついたことがあり、騎士にある人物を訪ねるように頼んだ。
◆◇◆◇◆◇
ワミーは鉄格子と白い石の壁に囲まれた個室の中にいた。硬くて狭いベッドの上で膝を抱えて座り、ヒウロが助けに来るのを待っていた。
ここに来てから二日が経過した。地下にあるこの部屋は窓がないため、食事で時間を何となく把握することしかできない。
(お兄様は何をやっているの? 早く助けに来てよ!)
薄暗くてジメジメしたこの場所がワミーは大嫌いだった。イライラする気持ちを紛らわせるために、暇つぶしに与えられた本を読んでいると、足音が近づいてきた。食事を運んでくる女性でもなく、見回りをしている騎士の足音とも違い、ワミーは慌てて本を閉じると、鉄格子に駆け寄って叫ぶ。
「お兄様! やっと助けに来てくれたのね! 本当に怖かった! ねえ、私は本当に盗んだりしていないわ!」
「残念ながら、僕は君の兄ではない」
ワミーの前に現れたのは、アンジェリカの兄のダラネクだった。
「あ、アイヒ伯爵代理? どうしてあなたがここに?」
「ライキ伯爵は君を見捨てた」
「見捨てた? どうしてですか?」
「君が悪いことをしてきたからだろう。君のような妹はいらないと言っていた」
「そんな……っ」
ワミーは鉄格子から離れ、途方に暮れたようにベッドの上に座った。
「お兄様にまで見捨てられたら、私はどうなるの? 罰を受けるなんて絶対に嫌よ!」
「僕が助けてあげよう」
「……どうしてあなたが私を助けてくれるんですか?」
「君が魅力的だからだよ」
ワミーには溢れ出る色気があった。ダラネクの目的はいやらしいものだが、ワミーはそのことに気づかなかった。
「信じていいんですか?」
「もちろんだ。だが、高い金を払うんだから、僕の言うことをよく聞いてくれよ」
(とにかくここから出ることを考えましょう。どうするかは出てから考えればいいわ)
ワミーの胸に希望の火が灯ったが、すぐにその灯りは消されてしまう。
「お兄様、あなたがそこまで愚かだとは思っていませんでした」
「……アンジェリカ!? そ、それにっどうしてここにあなたがいるんですか!」
ダラネクは焦った顔をして、近づいてくるアンジェリカとその後ろにいる人物を指さした。
「ワミー嬢を助けるだと? ダラネク、その金はどこから出すつもりなんだ?」
そう問いかけたのは、アンジェリカとダラネクの父であるアイヒ伯爵だった。
リーアムはデイルと自分が同一人物であることを騎士隊の上層部には明かしていた。上層部の命令もあり、騎士隊は疑うことなくワミーを留置場に連れて行った。その後、予定した通り、ライキ伯爵領の騎士隊に身柄が引き渡され、ワミーは取り調べを受けることになった。
ワミーが連れて行かれたことをヒウロが知ったのは、ワミーが捕まってから二日後の朝のことだった。
昨日の晩に帰ってくるはずだったワミーが帰ってこず、裏切ったのかと確認を入れようとした時に騎士隊がやってきた。
困惑するヒウロに、ワミーがライキ伯爵家の金を盗んでいたことが報告された。
「あなたの妹は自分は何もしていないと訴えていますが、状況証拠だけでなく目撃証言などもありますので、労働の役を課せられる可能性が高いでしょう」
「シルバートレイなんかのために罪を犯したのか」
今のヒウロにとって、ワミーは疫病神のようなものである。あんなに可愛がっていたのに、恩を仇で返されたヒウロは、腸が煮えくり返るような思いだった。
そんな彼に騎士が問いかける。
「かなりの金額にはなりますが、保釈金を支払えば解放することも可能です。いかがいたしますか」
「そんなの答えは一つに決まっているだろう。いや、待てよ」
ヒウロは思いついたことがあり、騎士にある人物を訪ねるように頼んだ。
◆◇◆◇◆◇
ワミーは鉄格子と白い石の壁に囲まれた個室の中にいた。硬くて狭いベッドの上で膝を抱えて座り、ヒウロが助けに来るのを待っていた。
ここに来てから二日が経過した。地下にあるこの部屋は窓がないため、食事で時間を何となく把握することしかできない。
(お兄様は何をやっているの? 早く助けに来てよ!)
薄暗くてジメジメしたこの場所がワミーは大嫌いだった。イライラする気持ちを紛らわせるために、暇つぶしに与えられた本を読んでいると、足音が近づいてきた。食事を運んでくる女性でもなく、見回りをしている騎士の足音とも違い、ワミーは慌てて本を閉じると、鉄格子に駆け寄って叫ぶ。
「お兄様! やっと助けに来てくれたのね! 本当に怖かった! ねえ、私は本当に盗んだりしていないわ!」
「残念ながら、僕は君の兄ではない」
ワミーの前に現れたのは、アンジェリカの兄のダラネクだった。
「あ、アイヒ伯爵代理? どうしてあなたがここに?」
「ライキ伯爵は君を見捨てた」
「見捨てた? どうしてですか?」
「君が悪いことをしてきたからだろう。君のような妹はいらないと言っていた」
「そんな……っ」
ワミーは鉄格子から離れ、途方に暮れたようにベッドの上に座った。
「お兄様にまで見捨てられたら、私はどうなるの? 罰を受けるなんて絶対に嫌よ!」
「僕が助けてあげよう」
「……どうしてあなたが私を助けてくれるんですか?」
「君が魅力的だからだよ」
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「信じていいんですか?」
「もちろんだ。だが、高い金を払うんだから、僕の言うことをよく聞いてくれよ」
(とにかくここから出ることを考えましょう。どうするかは出てから考えればいいわ)
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「お兄様、あなたがそこまで愚かだとは思っていませんでした」
「……アンジェリカ!? そ、それにっどうしてここにあなたがいるんですか!」
ダラネクは焦った顔をして、近づいてくるアンジェリカとその後ろにいる人物を指さした。
「ワミー嬢を助けるだと? ダラネク、その金はどこから出すつもりなんだ?」
そう問いかけたのは、アンジェリカとダラネクの父であるアイヒ伯爵だった。
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