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39 覚悟があるのでしょうね
ヒウロがワミーをダラネクに売ったことは、すぐにリーアムに伝えられ、彼からアンジェリカに知らされた。
アンジェリカは、ヒウロがワミーを見捨てることは予想していたが、まさかダラネクに押し付けるとまでは考えていなかった。
このままでは、アイヒ伯爵家の金が、ワミーのために使われることになってしまう。もうダラネクに好き勝手させるわけにはいかない。
そう考えたアンジェリカは、父に相談することに決めた。取り返しのつかないよう段階に陥ってから動いても、意味がないからだ。
話を聞いた父も、ダラネクにこのまま代理を任せるわけにはいかないと感じ、体調が戻ってきたこともあり、今、この場に姿を現した。
ダラネクは父が今、どんな状態なのかまったく把握できていなかったが、ここまで元気になっているとは思っていなかった。
「ち、父上、お元気になられたのですか」
「ルズマ公爵領内で療養したら、驚くくらいに速いスピードで回復した。お前には色々とをかけたてすまなかった。……いや、私が元気になって残念か?」
「何をおっしゃっているんですか! 嬉しいに決まっているではないですか!」
近づいてこようとする息子を手を前に突き出して制すると、アイヒ伯爵は続ける。
「今日からは家に戻って仕事をする。今まで代わりを務めてくれていたことには感謝する」
「父上、そんなに急いで復帰する必要はないでしょう? 邸で少しゆっくりしてからでも良いではないですか」
ダラネクにしてみれば、父に知られたくないことがたくさんある。時間を稼いでそれらをもみ消してしまいたかった。だが、そんなことはお見通しだ。
「ダラネク、これからはお前の好きなように金を使わせるわけにはいかない」
「べ、別に好きなように使っていたわけではありません!」
視線を彷徨わせながら答えたダラネクに、アイヒ伯爵はワミーに目を向けて失笑する。
「彼女を保釈しようとしていたようだが、そのお金はどこから出るんだ?」
「それは……」
「答えられないということは、アイヒ伯爵家のお金から出すつもりだったね。それにしても、お兄様がワミーに興味があるなんて知りませんでしたわ」
アンジェリカが話しかけると、ダラネクは表情を歪める。
「婚約を破棄されたんだ。新しい婚約者を探したって問題ないだろう!」
「ええ。そうですわね。ただ、彼女はルズマ公爵に喧嘩を売った相手です。そんな相手を自分の婚約者にしようと思うなんてよっぽどですわ。アイヒ伯爵家から出ていく覚悟があるのでしょうね」
「ど、どうして出ていかないといけないんだ!?」
「アイヒ伯爵家を継がせる男の妻なんだぞ。問題のある人物を認めるわけがないだろう」
アンジェリカではなく、アイヒ伯爵が冷たく答えると、ダラネクは今にも泣き出しそうな顔になった。
「お父様、アイヒ伯爵領の様子を見に、私も久しぶりに実家に戻ろうかと思います。ここは空気が悪いですし、もう帰りませんか」
「そうだな。アンジェの言う通りだ。ここにはもう用はないし帰るとするか」
アンジェリカたちが歩き出すと、ダラネクは慌てて二人を追いかける。
「ま、待ってください! 父上、話を聞いてください! 誤解です! 僕はこんな女を助けたりなんかしませんよ! ちょっとからかっただけです!」
残されたワミーは暫し呆気に取られていたが、慌てて声を上げた。
「ちょっと、どういうことなの!? 助けるって言ったじゃないの! ねえ! 戻ってきなさいよ!」
鉄格子を両手でつかんで叫ぶワミーを見た守衛は、馬鹿にするように鼻で笑い、定位置に戻っていく。
「ねえ! 私はどうなるのよ!? 出して! お願いだからここから出してよ! 騙されない人だっているんだから、騙されたほうが悪いでしょう? 私は悪くない! ティアトレイを買ったお金は私のお金よ!」
ワミーの叫びは、誰の心にも響くことはなかった。
アンジェリカは、ヒウロがワミーを見捨てることは予想していたが、まさかダラネクに押し付けるとまでは考えていなかった。
このままでは、アイヒ伯爵家の金が、ワミーのために使われることになってしまう。もうダラネクに好き勝手させるわけにはいかない。
そう考えたアンジェリカは、父に相談することに決めた。取り返しのつかないよう段階に陥ってから動いても、意味がないからだ。
話を聞いた父も、ダラネクにこのまま代理を任せるわけにはいかないと感じ、体調が戻ってきたこともあり、今、この場に姿を現した。
ダラネクは父が今、どんな状態なのかまったく把握できていなかったが、ここまで元気になっているとは思っていなかった。
「ち、父上、お元気になられたのですか」
「ルズマ公爵領内で療養したら、驚くくらいに速いスピードで回復した。お前には色々とをかけたてすまなかった。……いや、私が元気になって残念か?」
「何をおっしゃっているんですか! 嬉しいに決まっているではないですか!」
近づいてこようとする息子を手を前に突き出して制すると、アイヒ伯爵は続ける。
「今日からは家に戻って仕事をする。今まで代わりを務めてくれていたことには感謝する」
「父上、そんなに急いで復帰する必要はないでしょう? 邸で少しゆっくりしてからでも良いではないですか」
ダラネクにしてみれば、父に知られたくないことがたくさんある。時間を稼いでそれらをもみ消してしまいたかった。だが、そんなことはお見通しだ。
「ダラネク、これからはお前の好きなように金を使わせるわけにはいかない」
「べ、別に好きなように使っていたわけではありません!」
視線を彷徨わせながら答えたダラネクに、アイヒ伯爵はワミーに目を向けて失笑する。
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「それは……」
「答えられないということは、アイヒ伯爵家のお金から出すつもりだったね。それにしても、お兄様がワミーに興味があるなんて知りませんでしたわ」
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「ええ。そうですわね。ただ、彼女はルズマ公爵に喧嘩を売った相手です。そんな相手を自分の婚約者にしようと思うなんてよっぽどですわ。アイヒ伯爵家から出ていく覚悟があるのでしょうね」
「ど、どうして出ていかないといけないんだ!?」
「アイヒ伯爵家を継がせる男の妻なんだぞ。問題のある人物を認めるわけがないだろう」
アンジェリカではなく、アイヒ伯爵が冷たく答えると、ダラネクは今にも泣き出しそうな顔になった。
「お父様、アイヒ伯爵領の様子を見に、私も久しぶりに実家に戻ろうかと思います。ここは空気が悪いですし、もう帰りませんか」
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「ねえ! 私はどうなるのよ!? 出して! お願いだからここから出してよ! 騙されない人だっているんだから、騙されたほうが悪いでしょう? 私は悪くない! ティアトレイを買ったお金は私のお金よ!」
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