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エイナざまぁ編
第42話 頭の中はいつだってお花畑(エイナside)
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中庭での一件から、私は何とかあの時、私の悪口を言っていたメイド達を探し出そうと思った。
そして、それは簡単な事だった。
男性使用人にお願いして調べさせれば良いだけだったから。
『意地悪を言われていて悲しい!』
といえば、ほとんどの男性が私の言う事を聞いてくれた。
皆、シシリー様から何かを言われていたみたいだけど、自分の見たものを信じると言ってくれたの。
賢い人が多くて助かったわ。
バトラーなんかは私の言う事に聞く耳も持たないんだもの。
まあ、バトラーはお爺さんだし、私に恋愛感情なんて持てないのかもしれないから、そこはしょうがないわね。
私に恋に落ちてしまったりしたら大変だから、私に関わらない様にしているだけかも。
本当なら一番に侍女長の旦那様を奪ってあげたかったけど、侍女長はもう40を過ぎてるおばさまだし、その旦那様という事は年齢は変わらないか年上でしょうから止めておいてあげた。
子供もいるだろうから、離婚だなんて事になったら大変だもの。
私は慈悲深いところがあるからね。
子供には罪はないもの。
結局、調べてもらったら、ほとんどのメイドが私の悪口を言っていた事がわかった。
どうして自分が悪いのに人のせいにするのかしら。
性格が悪すぎるわ。
だからメイドにしかなれないのよ。
次に調べてもらったのはこのお屋敷の中に恋人がいるメイドがいるかどうかだった。
そして、わかったらその男性に近付いて、私はこう言った。
『私が仕事が出来ていない事はわかります。だけど、陰口を言われるだなんてショックです。私は一生懸命頑張っているんです! ああ、でも、やっぱりそれくらいご迷惑をかけているという事ですし、陰口を叩かれてもしょうがないですわよね? 仕事が出来ない私が悪いんです』
すると、皆、同じ言葉を返してくる。
『頑張っている人の悪口を言うだなんて酷い! エイナ様は頑張っておられます! そんな事もわからない女性と付き合っていただなんて恥ずかしいです!』
怒った男性達は彼女達に別れを告げに行く。
そして、次の日には暗い顔をして仕事をしているの。
私を見たら怒りの表情になったと思ったら泣き出してしまうの。
男性にフラレたくらいでメソメソしないでほしいわ。
新しい恋人を見つけたらいいだけなんだから。
まあ、私みたいに可愛くないから、そう簡単には見つからないかもしれないけれど。
順調に私の下僕を増やして、私の悪口を言っているメイドに仕返しをしていたある日のこと。
シシリー様から服を選んでほしいと言われた。
「エイナ、今日、リリアナ様とアッシュ様と食事をするの。失礼にならないような服を選んでくれない?」
「かまいませんが今から服を買いに行くんですか?」
「いいえ。衣装部屋にある中から選んでちょうだい。エイナは服のセンスがあるのでしょう?」
そう言って、シシリー様がノマを見ると、ノマは私を促して衣装部屋に連れて行ってくれた。
衣装部屋には、たくさんのドレスが置いてあって目移りしたわ。
これだけあるんだし、おねだりしたら1つくらいもらえるかしら?
そんな事を考えながら衣装部屋の中をウロウロして、私が欲しいと思ったドレスは1箇所にかためて、シシリー様に似合いそうな服を探した。
シシリー様に似合う色や、今、流行りのファッションを取り入れたものにしてみたの。
元々、自分で可愛いと思って買っているのだろうから、気に入ってくれるでしょう。
本来なら恥をかかせる様なドレスを選びたいけど、それをする事によって他の人にセンスが無いと思われても嫌なのよね。
アッシュも来るみたいだし、私のファッションセンスの良いところを見せてあげなくちゃ。
きっと、私が可愛いだけじゃないんだって事に気づくはず。
アッシュは女性慣れしていないみたいだし、仲良くなれば、絶対に私の事を好きになるはず!
私にアッシュを奪われて、リリアナ様の悔しそうにしている顔が目に浮かぶわ!
楽しみでしょうがない!
服を選び終えるとシシリー様の部屋に戻り、どのドレスにすれば良いかを教えて差し上げると、彼女は笑顔で礼を言って私が選んだドレスを着て食事に向かわれた。
付いてきても良いと言われたので、私も付いていく事にした。
だって、アッシュの反応が見たいもの。
きっと絶賛してくれるでしょうね。
ダイニングルームにはリリアナ様しかいなくて、私が選んだドレスに対する反応は薄かった。
リリアナ様は田舎の伯爵家の娘だったみたいだから、ファッションに疎いのはしょうがないわね。
いつも寒色系の服ばかり着ていて、大人しそうな顔立ちだわ。
それに対して、私はピンクのドレスを着る事が多い。
華やかな私にはピッタリよね?
寒色系の服は私には似合わないわ。
そんな事を思っていると、シシリー様が言う。
「食事をすると言っているのに、こんな服を選ぶ侍女はエイナくらいしかいませんわよね? ほとんど何も出来ない子ですが、服選びには自信があるというから選ばせたらこれですから、彼女の特技って何なのかしら」
「……酷いです! それに失礼じゃないですか!」
ほとんど何もできないなんて言い方は酷すぎるわ!
そう思って言い返すと、シシリー様は厳しい口調で問いかけてきた。
「エイナ。あなたが私に言われた事で心が傷ついたというのなら謝らせてもらうけれど、あなた、そうではないんでしょう?」
酷い!
本当に酷すぎるわ!
自分のセンスが無いだけなのに、私のせいにするだなんて!
シシリー様には何を言っても無駄ね。
それなら私にだって考えがあるわ。
「私はシシリー様の為を思って選んだんです。それなのに酷いです…」
シシリー様のフットマンの方に目を向けて言うと、入口付近に立っているフットマンは私の事を切ない顔をして見つめた。
そうよね。
私を守りたいけど、立場上無理なのよね?
でも、いいのよ。
あなたは、シシリー様がどんなに嫌な人かはわかってくれたわよね?
「俺が最後かよ」
その時、出入り口の扉が開いてアッシュが中を見回してから呟いた。
待ってたわ!
あなたにも見てもらわなくちゃいけないの!
シシリー様とリリアナ様が2人で私をいじめようとしているところをね!
でも、まずは今日のシシリー様の服を選んだのは私だと知ってもらわないと。
「アッシュ様! 今日のシシリー様の服は素敵だと思いませんか!?」
「は? いつも素敵なんじゃないのか?」
予想していなかった答えが返ってきて、私は頬をふくらませる。
こうすると、男性は私にメロメロになっちゃうのよね。
だけど、アッシュには全く効果がないから、ヒントをあげる。
「今日は特別なはずなんです!」
「正直に言うと、食事がしにくそうな服だとは思うから、特別といえば特別だろうな」
「酷い! 酷すぎます!」
褒めてくれると思っていたのに!
何よ!
アッシュはシシリー様と手を組んでたのね!?
いくらもらってそんな嘘をつこうと思ったのかしら!
お金をもらって嘘をつくなんて最低な男だわ!
アッシュを買ったシシリー様も許せない!
そんな人の侍女なんてしていられないわ!
そう心の中で叫んで、私は部屋を出た。
「エイナ! どこへ行くの!」
他の侍女達が呼ぶ声が聞こえたけれど、振り返る気もならない。
私はもう実家に帰るわ!
ピート兄様は受け入れてくれないかもしれないけれど、お父様とお母様なら家において下さるはずだわ!
そうと決まったら、心がウキウキしてきた。
私が突然いなくなったら、シシリー様も困るだろうし、侍女達も仕事が滞る事になるはず。
私の偉大さに気付くといいわ!
でも、この時の私は気付いていなかったの。
世の中、そう簡単には上手くいかないっていう事を。
そして、それは簡単な事だった。
男性使用人にお願いして調べさせれば良いだけだったから。
『意地悪を言われていて悲しい!』
といえば、ほとんどの男性が私の言う事を聞いてくれた。
皆、シシリー様から何かを言われていたみたいだけど、自分の見たものを信じると言ってくれたの。
賢い人が多くて助かったわ。
バトラーなんかは私の言う事に聞く耳も持たないんだもの。
まあ、バトラーはお爺さんだし、私に恋愛感情なんて持てないのかもしれないから、そこはしょうがないわね。
私に恋に落ちてしまったりしたら大変だから、私に関わらない様にしているだけかも。
本当なら一番に侍女長の旦那様を奪ってあげたかったけど、侍女長はもう40を過ぎてるおばさまだし、その旦那様という事は年齢は変わらないか年上でしょうから止めておいてあげた。
子供もいるだろうから、離婚だなんて事になったら大変だもの。
私は慈悲深いところがあるからね。
子供には罪はないもの。
結局、調べてもらったら、ほとんどのメイドが私の悪口を言っていた事がわかった。
どうして自分が悪いのに人のせいにするのかしら。
性格が悪すぎるわ。
だからメイドにしかなれないのよ。
次に調べてもらったのはこのお屋敷の中に恋人がいるメイドがいるかどうかだった。
そして、わかったらその男性に近付いて、私はこう言った。
『私が仕事が出来ていない事はわかります。だけど、陰口を言われるだなんてショックです。私は一生懸命頑張っているんです! ああ、でも、やっぱりそれくらいご迷惑をかけているという事ですし、陰口を叩かれてもしょうがないですわよね? 仕事が出来ない私が悪いんです』
すると、皆、同じ言葉を返してくる。
『頑張っている人の悪口を言うだなんて酷い! エイナ様は頑張っておられます! そんな事もわからない女性と付き合っていただなんて恥ずかしいです!』
怒った男性達は彼女達に別れを告げに行く。
そして、次の日には暗い顔をして仕事をしているの。
私を見たら怒りの表情になったと思ったら泣き出してしまうの。
男性にフラレたくらいでメソメソしないでほしいわ。
新しい恋人を見つけたらいいだけなんだから。
まあ、私みたいに可愛くないから、そう簡単には見つからないかもしれないけれど。
順調に私の下僕を増やして、私の悪口を言っているメイドに仕返しをしていたある日のこと。
シシリー様から服を選んでほしいと言われた。
「エイナ、今日、リリアナ様とアッシュ様と食事をするの。失礼にならないような服を選んでくれない?」
「かまいませんが今から服を買いに行くんですか?」
「いいえ。衣装部屋にある中から選んでちょうだい。エイナは服のセンスがあるのでしょう?」
そう言って、シシリー様がノマを見ると、ノマは私を促して衣装部屋に連れて行ってくれた。
衣装部屋には、たくさんのドレスが置いてあって目移りしたわ。
これだけあるんだし、おねだりしたら1つくらいもらえるかしら?
そんな事を考えながら衣装部屋の中をウロウロして、私が欲しいと思ったドレスは1箇所にかためて、シシリー様に似合いそうな服を探した。
シシリー様に似合う色や、今、流行りのファッションを取り入れたものにしてみたの。
元々、自分で可愛いと思って買っているのだろうから、気に入ってくれるでしょう。
本来なら恥をかかせる様なドレスを選びたいけど、それをする事によって他の人にセンスが無いと思われても嫌なのよね。
アッシュも来るみたいだし、私のファッションセンスの良いところを見せてあげなくちゃ。
きっと、私が可愛いだけじゃないんだって事に気づくはず。
アッシュは女性慣れしていないみたいだし、仲良くなれば、絶対に私の事を好きになるはず!
私にアッシュを奪われて、リリアナ様の悔しそうにしている顔が目に浮かぶわ!
楽しみでしょうがない!
服を選び終えるとシシリー様の部屋に戻り、どのドレスにすれば良いかを教えて差し上げると、彼女は笑顔で礼を言って私が選んだドレスを着て食事に向かわれた。
付いてきても良いと言われたので、私も付いていく事にした。
だって、アッシュの反応が見たいもの。
きっと絶賛してくれるでしょうね。
ダイニングルームにはリリアナ様しかいなくて、私が選んだドレスに対する反応は薄かった。
リリアナ様は田舎の伯爵家の娘だったみたいだから、ファッションに疎いのはしょうがないわね。
いつも寒色系の服ばかり着ていて、大人しそうな顔立ちだわ。
それに対して、私はピンクのドレスを着る事が多い。
華やかな私にはピッタリよね?
寒色系の服は私には似合わないわ。
そんな事を思っていると、シシリー様が言う。
「食事をすると言っているのに、こんな服を選ぶ侍女はエイナくらいしかいませんわよね? ほとんど何も出来ない子ですが、服選びには自信があるというから選ばせたらこれですから、彼女の特技って何なのかしら」
「……酷いです! それに失礼じゃないですか!」
ほとんど何もできないなんて言い方は酷すぎるわ!
そう思って言い返すと、シシリー様は厳しい口調で問いかけてきた。
「エイナ。あなたが私に言われた事で心が傷ついたというのなら謝らせてもらうけれど、あなた、そうではないんでしょう?」
酷い!
本当に酷すぎるわ!
自分のセンスが無いだけなのに、私のせいにするだなんて!
シシリー様には何を言っても無駄ね。
それなら私にだって考えがあるわ。
「私はシシリー様の為を思って選んだんです。それなのに酷いです…」
シシリー様のフットマンの方に目を向けて言うと、入口付近に立っているフットマンは私の事を切ない顔をして見つめた。
そうよね。
私を守りたいけど、立場上無理なのよね?
でも、いいのよ。
あなたは、シシリー様がどんなに嫌な人かはわかってくれたわよね?
「俺が最後かよ」
その時、出入り口の扉が開いてアッシュが中を見回してから呟いた。
待ってたわ!
あなたにも見てもらわなくちゃいけないの!
シシリー様とリリアナ様が2人で私をいじめようとしているところをね!
でも、まずは今日のシシリー様の服を選んだのは私だと知ってもらわないと。
「アッシュ様! 今日のシシリー様の服は素敵だと思いませんか!?」
「は? いつも素敵なんじゃないのか?」
予想していなかった答えが返ってきて、私は頬をふくらませる。
こうすると、男性は私にメロメロになっちゃうのよね。
だけど、アッシュには全く効果がないから、ヒントをあげる。
「今日は特別なはずなんです!」
「正直に言うと、食事がしにくそうな服だとは思うから、特別といえば特別だろうな」
「酷い! 酷すぎます!」
褒めてくれると思っていたのに!
何よ!
アッシュはシシリー様と手を組んでたのね!?
いくらもらってそんな嘘をつこうと思ったのかしら!
お金をもらって嘘をつくなんて最低な男だわ!
アッシュを買ったシシリー様も許せない!
そんな人の侍女なんてしていられないわ!
そう心の中で叫んで、私は部屋を出た。
「エイナ! どこへ行くの!」
他の侍女達が呼ぶ声が聞こえたけれど、振り返る気もならない。
私はもう実家に帰るわ!
ピート兄様は受け入れてくれないかもしれないけれど、お父様とお母様なら家において下さるはずだわ!
そうと決まったら、心がウキウキしてきた。
私が突然いなくなったら、シシリー様も困るだろうし、侍女達も仕事が滞る事になるはず。
私の偉大さに気付くといいわ!
でも、この時の私は気付いていなかったの。
世の中、そう簡単には上手くいかないっていう事を。
応援ありがとうございます!
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