16 / 38
10 落ちこぼれ令嬢、お願いをする
しおりを挟む
ポメラから手紙が届いたと聞いた時は、読まずに送り返そうかと思った。本当の友人ではなかったけれど、一緒にいた時間が長かったから、彼女の性格はよく分かっている。あの子は無駄にポジティブなところがあるから、そんなことをしても私が意地を張っているだけだと思いこむだけのような気もした。
ポメラから手紙が来たという話をジル様にしていたから、話を聞いて、私の部屋に訪ねてきてくれたサーキス殿下に伝える。
「ポメラには返事をするつもりです」
「返事をしたら、また手紙が送られてくるんじゃないのかな」
「その可能性はありますが、こちらからはまずは拒絶の手紙を送るつもりです」
「次に手紙が来た時は読まないってこと?」
「そうです。それから、その時にお願いしたいことがあるんです」
サーキス殿下に頼むのは誠に申し訳ないのだけれど、ポメラからの手紙が送られてこないようにするための一番手っ取り早い方法は、王族の力を借りることだと思った。
「僕にできることなら何でもするよ」
「そう言っていただけると本当にありがたいです」
「で、何をしたらいいのかな?」
「可能であればブツノ王国の国王陛下に、私とポメラは親友などではなく、私が彼女の行動を迷惑に思っていると伝えていただきたいのです」
「そういうことか。君の機嫌を損ねたくないブツノ王国の国王はすぐにポメラ嬢を大人しくさせるだろうね」
サーキス殿下は頷いて話を続ける。
「ポメラ嬢から二通目の手紙が来る前に、父上に頼んでブツノ王国の国王に連絡を入れてもらうよ」
「良いのですか?」
「もちろん。シドロフェス殿下からの手紙もかなりしつこいようだし、そちらについても苦情を入れておくよ」
「そうしていただけると助かります」
座ったまま、私は深々と頭を下げた。シドロフェス殿下は相手が王子ということもあり、強気に出にくいところがあったので、本当に助かるわ。
「シドロフェス殿下は君と再婚約できたら、地下牢から抜け出せるみたいだし、必死なんだろうな」
「たとえ必死であったとしても、私がシドロフェス殿下と再婚約をするわけがないということは考えなくてもわかると思うのですが……」
「ああいう人に普通の人の常識を求めても意味がないと思う」
サーキス殿下は笑顔で私を見つめて言った。
話し合いが通じない相手がいてもおかしくないから、情けをかけても無駄だと言いたいのでしょうね。
「それは私もそう思います。お手数をおかけして申し訳ございませんが、シドロフェス殿下の件とポメラの件はお願いしても良いでしょうか」
「僕にできることなら何でもするって言っただろう? 動くようにするよ」
にこりと笑ってくれたサーキス殿下を見て、何だか落ち着かない気分になった。嫌だとかそういうことではなく、説明がしにくい感情だ。
「……ありがとうございます。よろしくお願いいたします。できる限り、オブラン王国のお役に立てるように頑張ります」
「無理ない程度によろしくね」
今はこんな感情に気を取られている場合ではない。せっかくわかった力を最大限に活用できるように、私も頑張らなくちゃ。
そう決意を新たにした二日後。サーキス殿下やオブラン王国の国王陛下がブツノ王国の国王陛下に親書を送ってくれたのと入れ違いに、私の元にゼッシュがやって来たのだった。
ポメラから手紙が来たという話をジル様にしていたから、話を聞いて、私の部屋に訪ねてきてくれたサーキス殿下に伝える。
「ポメラには返事をするつもりです」
「返事をしたら、また手紙が送られてくるんじゃないのかな」
「その可能性はありますが、こちらからはまずは拒絶の手紙を送るつもりです」
「次に手紙が来た時は読まないってこと?」
「そうです。それから、その時にお願いしたいことがあるんです」
サーキス殿下に頼むのは誠に申し訳ないのだけれど、ポメラからの手紙が送られてこないようにするための一番手っ取り早い方法は、王族の力を借りることだと思った。
「僕にできることなら何でもするよ」
「そう言っていただけると本当にありがたいです」
「で、何をしたらいいのかな?」
「可能であればブツノ王国の国王陛下に、私とポメラは親友などではなく、私が彼女の行動を迷惑に思っていると伝えていただきたいのです」
「そういうことか。君の機嫌を損ねたくないブツノ王国の国王はすぐにポメラ嬢を大人しくさせるだろうね」
サーキス殿下は頷いて話を続ける。
「ポメラ嬢から二通目の手紙が来る前に、父上に頼んでブツノ王国の国王に連絡を入れてもらうよ」
「良いのですか?」
「もちろん。シドロフェス殿下からの手紙もかなりしつこいようだし、そちらについても苦情を入れておくよ」
「そうしていただけると助かります」
座ったまま、私は深々と頭を下げた。シドロフェス殿下は相手が王子ということもあり、強気に出にくいところがあったので、本当に助かるわ。
「シドロフェス殿下は君と再婚約できたら、地下牢から抜け出せるみたいだし、必死なんだろうな」
「たとえ必死であったとしても、私がシドロフェス殿下と再婚約をするわけがないということは考えなくてもわかると思うのですが……」
「ああいう人に普通の人の常識を求めても意味がないと思う」
サーキス殿下は笑顔で私を見つめて言った。
話し合いが通じない相手がいてもおかしくないから、情けをかけても無駄だと言いたいのでしょうね。
「それは私もそう思います。お手数をおかけして申し訳ございませんが、シドロフェス殿下の件とポメラの件はお願いしても良いでしょうか」
「僕にできることなら何でもするって言っただろう? 動くようにするよ」
にこりと笑ってくれたサーキス殿下を見て、何だか落ち着かない気分になった。嫌だとかそういうことではなく、説明がしにくい感情だ。
「……ありがとうございます。よろしくお願いいたします。できる限り、オブラン王国のお役に立てるように頑張ります」
「無理ない程度によろしくね」
今はこんな感情に気を取られている場合ではない。せっかくわかった力を最大限に活用できるように、私も頑張らなくちゃ。
そう決意を新たにした二日後。サーキス殿下やオブラン王国の国王陛下がブツノ王国の国王陛下に親書を送ってくれたのと入れ違いに、私の元にゼッシュがやって来たのだった。
1,129
あなたにおすすめの小説
【完結】欲をかいて婚約破棄した結果、自滅した愚かな婚約者様の話、聞きます?
水月 潮
恋愛
ルシア・ローレル伯爵令嬢はある日、婚約者であるイアン・バルデ伯爵令息から婚約破棄を突きつけられる。
正直に言うとローレル伯爵家にとっては特に旨みのない婚約で、ルシアは父親からも嫌になったら婚約は解消しても良いと言われていた為、それをあっさり承諾する。
その1ヶ月後。
ルシアの母の実家のシャンタル公爵家にて次期公爵家当主就任のお披露目パーティーが主催される。
ルシアは家族と共に出席したが、ルシアが夢にも思わなかったとんでもない出来事が起きる。
※設定は緩いので、物語としてお楽しみ頂けたらと思います
*HOTランキング10位(2021.5.29)
読んで下さった読者の皆様に感謝*.*
HOTランキング1位(2021.5.31)
やめてくれないか?ですって?それは私のセリフです。
あおくん
恋愛
公爵令嬢のエリザベートはとても優秀な女性だった。
そして彼女の婚約者も真面目な性格の王子だった。だけど王子の初めての恋に2人の関係は崩れ去る。
貴族意識高めの主人公による、詰問ストーリーです。
設定に関しては、ゆるゆる設定でふわっと進みます。
(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ?
青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。
チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。
しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは……
これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で
す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦)
それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。
婚約者を奪われた私が悪者扱いされたので、これから何が起きても知りません
天宮有
恋愛
子爵令嬢の私カルラは、妹のミーファに婚約者ザノークを奪われてしまう。
ミーファは全てカルラが悪いと言い出し、束縛侯爵で有名なリックと婚約させたいようだ。
屋敷を追い出されそうになって、私がいなければ領地が大変なことになると説明する。
家族は信じようとしないから――これから何が起きても、私は知りません。
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
(完結)伯爵家嫡男様、あなたの相手はお姉様ではなく私です
青空一夏
恋愛
私はティベリア・ウォーク。ウォーク公爵家の次女で、私にはすごい美貌のお姉様がいる。妖艶な体つきに色っぽくて綺麗な顔立ち。髪は淡いピンクで瞳は鮮やかなグリーン。
目の覚めるようなお姉様の容姿に比べて私の身体は小柄で華奢だ。髪も瞳もありふれたブラウンだし、鼻の頭にはそばかすがたくさん。それでも絵を描くことだけは大好きで、家族は私の絵の才能をとても高く評価してくれていた。
私とお姉様は少しも似ていないけれど仲良しだし、私はお姉様が大好きなの。
ある日、お姉様よりも早く私に婚約者ができた。相手はエルズバー伯爵家を継ぐ予定の嫡男ワイアット様。初めての顔あわせの時のこと。初めは好印象だったワイアット様だけれど、お姉様が途中で同席したらお姉様の顔ばかりをチラチラ見てお姉様にばかり話しかける。まるで私が見えなくなってしまったみたい。
あなたの婚約相手は私なんですけど? 不安になるのを堪えて我慢していたわ。でも、お姉様も曖昧な態度をとり続けて少しもワイアット様を注意してくださらない。
(お姉様は味方だと思っていたのに。もしかしたら敵なの? なぜワイアット様を注意してくれないの? お母様もお父様もどうして笑っているの?)
途中、タグの変更や追加の可能性があります。ファンタジーラブコメディー。
※異世界の物語です。ゆるふわ設定。ご都合主義です。この小説独自の解釈でのファンタジー世界の生き物が出てくる場合があります。他の小説とは異なった性質をもっている場合がありますのでご了承くださいませ。
【完結】「妹が欲しがるのだから与えるべきだ」と貴方は言うけれど……
小笠原 ゆか
恋愛
私の婚約者、アシュフォード侯爵家のエヴァンジェリンは、後妻の産んだ義妹ダルシニアを虐げている――そんな噂があった。次期王子妃として、ひいては次期王妃となるに相応しい振る舞いをするよう毎日叱責するが、エヴァンジェリンは聞き入れない。最後の手段として『婚約解消』を仄めかしても動じることなく彼女は私の下を去っていった。
この作品は『小説家になろう』でも公開中です。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる