落ちこぼれ令嬢ですが新天地で幸せに暮らします!

風見ゆうみ

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10  落ちこぼれ令嬢、お願いをする

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 ポメラから手紙が届いたと聞いた時は、読まずに送り返そうかと思った。本当の友人ではなかったけれど、一緒にいた時間が長かったから、彼女の性格はよく分かっている。あの子は無駄にポジティブなところがあるから、そんなことをしても私が意地を張っているだけだと思いこむだけのような気もした。
 
 ポメラから手紙が来たという話をジル様にしていたから、話を聞いて、私の部屋に訪ねてきてくれたサーキス殿下に伝える。

「ポメラには返事をするつもりです」
「返事をしたら、また手紙が送られてくるんじゃないのかな」
「その可能性はありますが、こちらからはまずは拒絶の手紙を送るつもりです」
「次に手紙が来た時は読まないってこと?」
「そうです。それから、その時にお願いしたいことがあるんです」

 サーキス殿下に頼むのは誠に申し訳ないのだけれど、ポメラからの手紙が送られてこないようにするための一番手っ取り早い方法は、王族の力を借りることだと思った。

「僕にできることなら何でもするよ」
「そう言っていただけると本当にありがたいです」
「で、何をしたらいいのかな?」
「可能であればブツノ王国の国王陛下に、私とポメラは親友などではなく、私が彼女の行動を迷惑に思っていると伝えていただきたいのです」
「そういうことか。君の機嫌を損ねたくないブツノ王国の国王はすぐにポメラ嬢を大人しくさせるだろうね」

 サーキス殿下は頷いて話を続ける。

「ポメラ嬢から二通目の手紙が来る前に、父上に頼んでブツノ王国の国王に連絡を入れてもらうよ」
「良いのですか?」
「もちろん。シドロフェス殿下からの手紙もかなりしつこいようだし、そちらについても苦情を入れておくよ」
「そうしていただけると助かります」

 座ったまま、私は深々と頭を下げた。シドロフェス殿下は相手が王子ということもあり、強気に出にくいところがあったので、本当に助かるわ。

「シドロフェス殿下は君と再婚約できたら、地下牢から抜け出せるみたいだし、必死なんだろうな」
「たとえ必死であったとしても、私がシドロフェス殿下と再婚約をするわけがないということは考えなくてもわかると思うのですが……」
「ああいう人に普通の人の常識を求めても意味がないと思う」

 サーキス殿下は笑顔で私を見つめて言った。
 話し合いが通じない相手がいてもおかしくないから、情けをかけても無駄だと言いたいのでしょうね。

「それは私もそう思います。お手数をおかけして申し訳ございませんが、シドロフェス殿下の件とポメラの件はお願いしても良いでしょうか」
「僕にできることなら何でもするって言っただろう? 動くようにするよ」

 にこりと笑ってくれたサーキス殿下を見て、何だか落ち着かない気分になった。嫌だとかそういうことではなく、説明がしにくい感情だ。

「……ありがとうございます。よろしくお願いいたします。できる限り、オブラン王国のお役に立てるように頑張ります」
「無理ない程度によろしくね」

 今はこんな感情に気を取られている場合ではない。せっかくわかった力を最大限に活用できるように、私も頑張らなくちゃ。

 そう決意を新たにした二日後。サーキス殿下やオブラン王国の国王陛下がブツノ王国の国王陛下に親書を送ってくれたのと入れ違いに、私の元にゼッシュがやって来たのだった。




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