9 / 38
7 婚約者の言い分 ③
しおりを挟む
昨日、ナレーシャがノヴァとラピートに手紙を送っていたが、彼らのもとに手紙が届くのは約三日後から五日後の予定だった。
だが、これはナレーシャの予想であり、実際はある理由で、その手紙はノヴァたちのもとに届くことがない。
それなのになぜノヴァがこの場にいるかというと、ルリファたちが旅行に行くと聞いて、ラピートと共に二人を驚かせようと、こちらに足を運んでいたからだ。
ナレーシャの両親にはその連絡が入れられていたため、別荘の使用人たちは彼らが来ることを知っていて、段取りも終えていた。
四人で夕食を取りながら、主にナレーシャがコートマとアグリーの件を話した。
話を聞いたノヴァたちがコートマを許せるはずもない。
本当ならばノヴァたちは宿に泊まるつもりでいたが、コートマを待ち受けるために、別荘に宿泊していた。
コートマの弟であるラピートもこの場にいるが、今はわざと姿を隠していた。
「どうして君がここにいる?」
「ナレーシャとルリファが旅行に行くと聞いて、久しぶりに会いたくなったんだよ。だから、二人には何も言わずに近くまで来ていた。僕たちは幼馴染だし、会いたくなることはおかしくないよね」
ノヴァはルリファとコートマの間に立って微笑んだ。
漆黒の艶のある髪に血のような赤色の瞳を持つノヴァは、眉目秀麗ということで女性から人気があるが、婚約者はいない。
選ばれた女性が危害を加えられる可能性があるという理由で決まっていないことになっているが、この理由は建前上のものである。
「ノヴァ、君は相変わらずだな」
「どういう意味?」
「幼い頃からルリファに付きまとって嫌われていたよな」
「それは誤解です。昔は苦手でしたが嫌ってなんていません」
ルリファはコートマの話をすぐに否定した。
幼い頃のノヴァは、素直になれない少年で、気になっていたルリファによくちょっかいをかけていた。
二つ下のルリファには、彼が自分に意地悪をしていると思い、苦手だった時期もあった。
成長していくうちに、ノヴァはたまにからかうことはあっても、ルリファが本当に嫌がることはしなくなった。ルリファも昔の彼の行動が自分のことを嫌っていたからではないとわかるようになった。
だから、今のルリファにはノヴァに対して悪い感情はない。コートマの発言で、彼の二人への興味は、子供の頃で止まっていたのだとわかった。
(手紙にも書いたのですが、ちゃんと読んでくださっていなかったのですね)
「そうか。それは悪かった。でもさ、友人だからといって婚約者で恋人同士である俺たちの話に無理矢理入ってくるのは違うんじゃないか?」
「婚約者で恋人同士? そう思っているなら、どうして浮気しただけじゃなく、子供まで作っているのか知りたいね」
「アグリーが勝手に生んだんだ。俺はおろせって言ったんだけど生んじゃったんだよ。俺には関係ない」
「だから、簡単に縁を切るなんて言えるのか」
「そうだ」
ノヴァの問いに、コートマは微笑んでうなずいた。
(どうしてコートマ様は、自分の発言が非常識なことだとわからないのでしょうか)
ルリファは怒りと恐ろしさを同時に感じながら、コートマに尋ねる。
「コートマ様、昔のあなたは女性は守るべきものだとおっしゃっていました。それなのに、どうしてアグリー様を守ろうとしないのですか?」
「例外があるんだ」
「……例外?」
「アグリーは俺と浮気した。俺の中では、悪いことをする女性は守る必要なんてないんだ。だから、そんな女性が生んだ子も可愛くなんてない」
浮気相手は自分であるにも拘わらず、笑顔で答えたコートマを、ルリファは呆然とした表情で見つめた。
だが、これはナレーシャの予想であり、実際はある理由で、その手紙はノヴァたちのもとに届くことがない。
それなのになぜノヴァがこの場にいるかというと、ルリファたちが旅行に行くと聞いて、ラピートと共に二人を驚かせようと、こちらに足を運んでいたからだ。
ナレーシャの両親にはその連絡が入れられていたため、別荘の使用人たちは彼らが来ることを知っていて、段取りも終えていた。
四人で夕食を取りながら、主にナレーシャがコートマとアグリーの件を話した。
話を聞いたノヴァたちがコートマを許せるはずもない。
本当ならばノヴァたちは宿に泊まるつもりでいたが、コートマを待ち受けるために、別荘に宿泊していた。
コートマの弟であるラピートもこの場にいるが、今はわざと姿を隠していた。
「どうして君がここにいる?」
「ナレーシャとルリファが旅行に行くと聞いて、久しぶりに会いたくなったんだよ。だから、二人には何も言わずに近くまで来ていた。僕たちは幼馴染だし、会いたくなることはおかしくないよね」
ノヴァはルリファとコートマの間に立って微笑んだ。
漆黒の艶のある髪に血のような赤色の瞳を持つノヴァは、眉目秀麗ということで女性から人気があるが、婚約者はいない。
選ばれた女性が危害を加えられる可能性があるという理由で決まっていないことになっているが、この理由は建前上のものである。
「ノヴァ、君は相変わらずだな」
「どういう意味?」
「幼い頃からルリファに付きまとって嫌われていたよな」
「それは誤解です。昔は苦手でしたが嫌ってなんていません」
ルリファはコートマの話をすぐに否定した。
幼い頃のノヴァは、素直になれない少年で、気になっていたルリファによくちょっかいをかけていた。
二つ下のルリファには、彼が自分に意地悪をしていると思い、苦手だった時期もあった。
成長していくうちに、ノヴァはたまにからかうことはあっても、ルリファが本当に嫌がることはしなくなった。ルリファも昔の彼の行動が自分のことを嫌っていたからではないとわかるようになった。
だから、今のルリファにはノヴァに対して悪い感情はない。コートマの発言で、彼の二人への興味は、子供の頃で止まっていたのだとわかった。
(手紙にも書いたのですが、ちゃんと読んでくださっていなかったのですね)
「そうか。それは悪かった。でもさ、友人だからといって婚約者で恋人同士である俺たちの話に無理矢理入ってくるのは違うんじゃないか?」
「婚約者で恋人同士? そう思っているなら、どうして浮気しただけじゃなく、子供まで作っているのか知りたいね」
「アグリーが勝手に生んだんだ。俺はおろせって言ったんだけど生んじゃったんだよ。俺には関係ない」
「だから、簡単に縁を切るなんて言えるのか」
「そうだ」
ノヴァの問いに、コートマは微笑んでうなずいた。
(どうしてコートマ様は、自分の発言が非常識なことだとわからないのでしょうか)
ルリファは怒りと恐ろしさを同時に感じながら、コートマに尋ねる。
「コートマ様、昔のあなたは女性は守るべきものだとおっしゃっていました。それなのに、どうしてアグリー様を守ろうとしないのですか?」
「例外があるんだ」
「……例外?」
「アグリーは俺と浮気した。俺の中では、悪いことをする女性は守る必要なんてないんだ。だから、そんな女性が生んだ子も可愛くなんてない」
浮気相手は自分であるにも拘わらず、笑顔で答えたコートマを、ルリファは呆然とした表情で見つめた。
1,411
あなたにおすすめの小説
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~
ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」
義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。
父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。
けれど――
公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。
王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。
さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。
そして下されたのは――家ごとの褫奪。
一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。
欲しがったのは肩書。
継いだのは責任。
正統は叫びません。
ただ、残るだけ。
これは、婚約を奪われた公爵令嬢が
“本当に継がれるべきもの”を証明する物語。
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜
nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。
「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。
だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。
冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。
そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。
「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」
【完結済】王女に夢中な婚約者様、さようなら 〜自分を取り戻したあとの学園生活は幸せです! 〜
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
王立学園への入学をきっかけに、領地の屋敷から王都のタウンハウスへと引っ越した、ハートリー伯爵家の令嬢ロザリンド。婚約者ルパートとともに始まるはずの学園生活を楽しみにしていた。
けれど現実は、王女殿下のご機嫌を取るための、ルパートからの理不尽な命令の連続。
「かつらと黒縁眼鏡の着用必須」「王女殿下より目立つな」「見目の良い男性、高位貴族の子息らと会話をするな」……。
ルパートから渡された「禁止事項一覧表」に縛られ、ロザリンドは期待とは真逆の、暗黒の学園生活を送ることに。
そんな日々の中での唯一の救いとなったのは、友人となってくれた冷静で聡明な公爵令嬢、ノエリスの存在だった。
学期末、ロザリンドはついにルパートの怒りを買い、婚約破棄を言い渡される。
けれど、深く傷つきながら長期休暇を迎えたロザリンドのもとに届いたのは、兄の友人であり王国騎士団に属する公爵令息クライヴからの婚約の申し出だった。
暗黒の一学期が嘘のように、幸せな長期休暇を過ごしたロザリンド。けれど新学期を迎えると、エメライン王女が接触してきて……。
※10万文字超えそうなので長編に変更します。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?
白雲八鈴
恋愛
我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。
離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?
あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。
私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる