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10 ノボウ伯爵家のメイドの後悔 ③
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「おねえちゃん、どうかしたの?」
人の声で目を覚ましたのか、シドは私の所に駆け寄ってきたが、メイド長がいるとわかると、すぐに私の後ろに隠れた。
彼を見たメイド長は、目を吊り上げて話し始める。
「あなたたちのせいで、私は旦那様からお叱りを受け、メイド長の座から下ろされたのです。ああ、本当に忌々しい!」
「それはお気の毒に。あなたのおかげでシドと会えたから、私はあなたに褒美をあげたいくらいだけどね」
「出会わせたのではありません! 世話をしろと言ったのです! 小屋から出すだけならまだしも、お客様に見られるだなんて!」
「自分が悪いことをしていたという自覚がないのは問題だわ。それに、ただのメイドになったのに、相変わらず偉そうにしてるのね」
子供を小屋に閉じ込めて、食事もろくに与えず、体だって臭いがするまで洗わないなんて信じられない。
私たちが住んでいる国は毎日、体を洗うという習慣の人が多い。貴族は特にそうだ。シドはロロミナ様の子供なんだから、アリドと同じように扱われるべきなのに!
「私はメイド長ではありませんが、あなたよりも上であることは確かです。目障りですから消えなさい」
「私だってあなたの顔なんて見たくない。言われなくても、ここから去るつもりだったわ」
「まあまあ、どうされました?」
ルーミーが笑顔で近寄ってくると、元メイド長に話しかける。
「もうお支払いも済みましたから、わたくしたちは出ていきますよ。それから、ここは大声を出す場所ではないことを覚えておきなさいね」
「ふん。子爵家はお金がないから、こんな年寄りまで働かせているのね」
「いい加減にしなさいよ」
元メイド長の態度に腹が立った私が、彼女に文句を言おうとした時、セオドア様の側近が割って入ってくる。
「この方を馬鹿にするとはいい度胸だな」
「ふん。ただのおばあさんじゃないの」
「なんだと?」
「いいのよ。年寄りであることに間違いはないわ。だけど、フォガード子爵家を悪く言われるのは困ったものね」
側近をなだめたルーミーが、右頬に手を当ててため息を吐いた。すると、殺気立っている側近がルーミーに尋ねる。
「処分いたしますか?」
「子供の前よ。物騒なことを言うのはおやめなさい」
「申し訳ございません」
側近の様子だと、ルーミーはやっぱり偉い人なんだわ。
セオドア様といい、ルーミーといい、私にどうして身分を隠すのかしら。
そう思った時、店の扉が開き、黒のチェスターコートに身を包んだ大柄の男性が入ってきた。男性は入り口付近で足を止め、私たちに声をかけてくる。
「ノボウ伯爵夫人がこの店に来ていると聞いたんだが、いたら手を挙げてくれ」
「……私ですが」
入ってきたのはジンシ侯爵だった。
セオドア様に言われて来てくれたのかしら。
ゆっくり手を挙げると、シドがもう片方の私の手を強く握った。すると、元メイド長が私を指さす。
「ルファラ様を探しに来ただなんて! あなたはジンシ侯爵と恋仲だったのですね!? だから、ロロミナ様は捨てられたんだわ!」
……恋仲なのに、顔を知らないなんてないでしょう。
呆れ返って何も言えないでいると、シドが元メイド長に話しかける。
「ちがうよ。おかあさまがうわきばっかりしているから、あいそをつかしたんだ。ぼくとおにいさまは、おとうさまとちがつなかっていないって、おかあさまからきいたよ。それって、うわきなんだよね?」
「あのアマ」
ジンシ侯爵は整った顔を歪め舌打ちすると、元メイド長に目を向けた。
「ノボウ伯爵夫人とシドに話をする前に、お前に話がある」
「な……なんでございましょうか」
「お前は俺のことを何も知らないよな? それなのに浮気をしていたと決めつけるのか? 間違っていた時の覚悟はできているんだろうな」
「……ち、違うのですか!?」
元メイド長は涙目になって聞き返した。
人の声で目を覚ましたのか、シドは私の所に駆け寄ってきたが、メイド長がいるとわかると、すぐに私の後ろに隠れた。
彼を見たメイド長は、目を吊り上げて話し始める。
「あなたたちのせいで、私は旦那様からお叱りを受け、メイド長の座から下ろされたのです。ああ、本当に忌々しい!」
「それはお気の毒に。あなたのおかげでシドと会えたから、私はあなたに褒美をあげたいくらいだけどね」
「出会わせたのではありません! 世話をしろと言ったのです! 小屋から出すだけならまだしも、お客様に見られるだなんて!」
「自分が悪いことをしていたという自覚がないのは問題だわ。それに、ただのメイドになったのに、相変わらず偉そうにしてるのね」
子供を小屋に閉じ込めて、食事もろくに与えず、体だって臭いがするまで洗わないなんて信じられない。
私たちが住んでいる国は毎日、体を洗うという習慣の人が多い。貴族は特にそうだ。シドはロロミナ様の子供なんだから、アリドと同じように扱われるべきなのに!
「私はメイド長ではありませんが、あなたよりも上であることは確かです。目障りですから消えなさい」
「私だってあなたの顔なんて見たくない。言われなくても、ここから去るつもりだったわ」
「まあまあ、どうされました?」
ルーミーが笑顔で近寄ってくると、元メイド長に話しかける。
「もうお支払いも済みましたから、わたくしたちは出ていきますよ。それから、ここは大声を出す場所ではないことを覚えておきなさいね」
「ふん。子爵家はお金がないから、こんな年寄りまで働かせているのね」
「いい加減にしなさいよ」
元メイド長の態度に腹が立った私が、彼女に文句を言おうとした時、セオドア様の側近が割って入ってくる。
「この方を馬鹿にするとはいい度胸だな」
「ふん。ただのおばあさんじゃないの」
「なんだと?」
「いいのよ。年寄りであることに間違いはないわ。だけど、フォガード子爵家を悪く言われるのは困ったものね」
側近をなだめたルーミーが、右頬に手を当ててため息を吐いた。すると、殺気立っている側近がルーミーに尋ねる。
「処分いたしますか?」
「子供の前よ。物騒なことを言うのはおやめなさい」
「申し訳ございません」
側近の様子だと、ルーミーはやっぱり偉い人なんだわ。
セオドア様といい、ルーミーといい、私にどうして身分を隠すのかしら。
そう思った時、店の扉が開き、黒のチェスターコートに身を包んだ大柄の男性が入ってきた。男性は入り口付近で足を止め、私たちに声をかけてくる。
「ノボウ伯爵夫人がこの店に来ていると聞いたんだが、いたら手を挙げてくれ」
「……私ですが」
入ってきたのはジンシ侯爵だった。
セオドア様に言われて来てくれたのかしら。
ゆっくり手を挙げると、シドがもう片方の私の手を強く握った。すると、元メイド長が私を指さす。
「ルファラ様を探しに来ただなんて! あなたはジンシ侯爵と恋仲だったのですね!? だから、ロロミナ様は捨てられたんだわ!」
……恋仲なのに、顔を知らないなんてないでしょう。
呆れ返って何も言えないでいると、シドが元メイド長に話しかける。
「ちがうよ。おかあさまがうわきばっかりしているから、あいそをつかしたんだ。ぼくとおにいさまは、おとうさまとちがつなかっていないって、おかあさまからきいたよ。それって、うわきなんだよね?」
「あのアマ」
ジンシ侯爵は整った顔を歪め舌打ちすると、元メイド長に目を向けた。
「ノボウ伯爵夫人とシドに話をする前に、お前に話がある」
「な……なんでございましょうか」
「お前は俺のことを何も知らないよな? それなのに浮気をしていたと決めつけるのか? 間違っていた時の覚悟はできているんだろうな」
「……ち、違うのですか!?」
元メイド長は涙目になって聞き返した。
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