【完結】愛しているなら忘れてください

風見ゆうみ

文字の大きさ
26 / 49

25 もうおやめくださいね

 シーノが文句を言っている背後で、ノーム男爵夫妻はレナリナの持っている袋に注目していた。
 袋の中には複数の種が入っており、その種があれば自分たちも儲けることができると考えた。
 実際はレナリナの魔力に反応して種が増えるだけなのだが、男爵夫妻はそのことを知らない。
 どうすればレナリナから袋を奪えるか考えていた。
 ムーディのほうは、ここでレナリナを助ければ自分の名誉挽回になるのではと思い、シーノに話しかける。

「今日のところはもう帰ろう。他の人に迷惑だよ。それにレナリナだって困っている」
「何を言っているの? 彼女が嘘をついているのよ!」
「嘘かどうかはわからないだろ。レナリナ、安心してくれ。ちゃんと僕が連れて帰るから」

 ムーディは爽やかな笑みを浮かべて、レナリナを見つめた。

(どういう風の吹き回しかしら)

 レナリナは怪しく思いながらも、帰ってほしいことは確かなので頭を下げる。

「よろしくお願いします。そして、もう二度と私の前に現れないでくださいませ。遠くから、お二人の幸せを願っております」
「い、いや、そういう意味じゃ……」

 焦ったムーディを男爵夫妻が急かす。

「おい、ムーディ、今日のところは帰ろう」
「そうよ。ご迷惑のようだから帰りましょう」
「二人共、一体どうしたんですか!?」

 ついさっきまでは、レナリナと復縁しろと言っていた二人が急に意見を変えたことに、ムーディは驚いていた。
 しかし、両親の考えがコロコロ変わるのは、今に始まったことではないと思って諦める。

「レナリナ、シーノを帰らせるから、もう一度、僕に会ってくれないか?」
「条件付きだとおっしゃるなら、護衛に頼んで排除してもらいますが?」
「排除ですって!? レナリナ! あなたが貴族の私に向かって失礼すぎるわ!」

 すごい剣幕で怒り始めたシーノに、レナリナは椅子から立ち上がって謝罪する。

「無礼な発言についてはお詫びいたします。ですが、これ以上ここに居座るとおっしゃるのであれば、騎士を呼び、あなたを営業妨害で捕まえてもらいます」
「そ、そんな……っ」

 騎士に捕まった場合、罰を受けるか保釈金を払わないと解放してもらうことができない。
 保釈金を払うとなると、両親に頼まねばならない上に、社交界でも噂が広がってしまう。
 さすがにまずいと思ったシーノは、怒りを鎮めてレナリナに背を向けた。

「今日のところは許してあげるわ」
「ありがとうございます。お互いに不快な思いをしないよう、私の所へ足を運ぶのはもうおやめくださいね」
「ええ、そうね! リヴェン様の所に通わせてもらうわ!」

 シーノはふんっと鼻を鳴らして歩き出した。ムーディは名残惜しそうにしながらも、シーノを追っていく。
 ノーム男爵夫妻も後を追ったが、去っていく際にもう一度、レナリナの袋に目を向けていた。

(普通の人なら奪おうだなんて考えない。だけど、ノーム男爵夫妻は金の亡者だから、盗んででも手に入れようとするでしょうね)

 レナリナはダミーの袋を手に載せて苦笑した。
感想 42

あなたにおすすめの小説

「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……

ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」 この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。 選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。 そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。 クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。 しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。 ※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。

藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。 だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。 レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。 レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。 設定はゆるゆるです。 本編10話で完結になります。

〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。 学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。 そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。 それなら、婚約を解消いたしましょう。 そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。

妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?

百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」 あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。 で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。 そんな話ある? 「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」 たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。 あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね? でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する? 「君の妹と、君の婚約者がね」 「そう。薄情でしょう?」 「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」 「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」 イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。 あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。 ==================== (他「エブリスタ」様に投稿)

今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから

毛蟹
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。 ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。 彼女は別れろ。と、一方的に迫り。 最後には暴言を吐いた。 「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」  洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。 「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」 彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。 ちゃんと、別れ話をしようと。 ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。