【完結】愛しているなら忘れてください

風見ゆうみ

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27 そうはさせないわ!

 リヴェンの予想通り、ノーム男爵は犯罪者予備軍としてブラックリストに載り、強制送還されることになった。
 ヒイロ王国は治安が良いとして有名な分、処理はかなり速い。明日にはちょうどイヨブサ王国に出荷予定の牛と共に、荷馬車で運ばれることが決まった。

 ノーム男爵の処分が決定した次の日の夜、レナリナはリヴェンと夕食をとりながら話をしていた。
 ダンはレナリナの隣の椅子に置かれており、花の部分と少しの葉がテーブルの上で横になっている。

「ノーム男爵夫人は夫の後を追って国に戻るのでしょうか」
「いや、どうやらそうではないらしい。夫人はまだ諦めていないようで、ムーディ氏と共にこの国に残ると言っているそうだ」
「まだ私と婚約できると思っているのでしょうか」

 袋を狙っていたことは公になってしまったので、男爵夫人が改めて狙うことはないだろうと、レナリナは考えていた。
 となると、ここに残る理由で考えられるとすれば、自分とムーディとの再婚約だろうと思い、レナリナはリヴェンに聞いてみた。
 リヴェンは整った眉をひそめて答える。

「そこまでは調べられていないが、その可能性は高いだろう」
「どうしたら再婚約なんてしないとわかってくれるんでしょうか」
「……そうだな。レナリナ嬢が誰かと婚約すれば諦めもつくかもしれない」
「こ、婚約ですか」

 レナリナは、玉子スープに映る自分を見つめて呟いた。

 レナリナ頭の中では、自分と婚約してくれるような人など誰一人候補が思い浮かばない。
 ぐったりしていたはずのダンが、くねくねと軽快に体を動かし、大きなた葉をリヴェンに向けていることにも気づいていなかった。

(婚約者の件はちょっと考えてみましょう。別に相手が貴族じゃなくちゃいけないってわけじゃないんだもの。営業を続けているうちにいい人に出会えるかもしれないし!)

 一人で納得したレナリナは、話題を変える。

「ヒイロ王国の宿屋の代金はそう安くはないですよね? それなのに、ムーディ様たちはまだこの国に居座るつもりなんでしょうか」
「宿のサービスに見合った金額にしているから、安いとは言えないのは確かだな。ちなみにムーディ氏たちは宿屋の料金を延滞しているらしい」
「……ということは、強制的に退去させられる可能性がありますね」

 玉子スープを一口飲んだあと、レナリナは尋ねた。

「ヒイロ王国の国民は穏やかな人が多いから、しばらくは様子を見るとは思うが、滞納が三十日以上続けば動くだろう」
「今すぐ騎士隊に動いてもらうわけにはいかないんですか?」
「動かしたいのは山々だが、宿側から届け出がないと勝手に動けないんだ」

 宿屋内での出来事のため、宿屋側からの要請がない限り、騎士たちの介入は違法になる。
 そのことは、ヒイロ王国内での決まりだった。

(この国の人は、国民に良い人ばかりだからあまり人を疑うことをしないのよね。だから、心配だわ)

 リヴェンの答えを聞いて、レナリナはため息を吐いた。

 人を信じるのはいいことである。しかし、裏切る人もいるのだというリスクがあることを理解していなければならない。

「ヒイロ王国の国民は疑うことよりも、信じて裏切られるほうがいいと思っている人が多いんだ」
「素敵な考えではありますね」

 レナリナは微笑んで言った。

(それにしても、どうして料金を支払えないのかしら)

 レナリナがそう思った時、リヴェンが同じ疑問を口に出す。

「伯爵令嬢が一緒にいるのだし金に困ることはないと思うんだが、どうして支払えなんだろうな」
「謎ですよね」

 そう答えた時、レナリナの脳裏に浮かんだことがあった。

(まさか、私の名前を使ってツケにして、最終的に私に払わせようとしているんじゃないでしょうね! 絶対にそうはさせないわ!)

 焦ったレナリナは、明日、宿屋に聞いてほしいことがあると、リヴェンにお願いした。





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