28 / 49
27 そうはさせないわ!
リヴェンの予想通り、ノーム男爵は犯罪者予備軍としてブラックリストに載り、強制送還されることになった。
ヒイロ王国は治安が良いとして有名な分、処理はかなり速い。明日にはちょうどイヨブサ王国に出荷予定の牛と共に、荷馬車で運ばれることが決まった。
ノーム男爵の処分が決定した次の日の夜、レナリナはリヴェンと夕食をとりながら話をしていた。
ダンはレナリナの隣の椅子に置かれており、花の部分と少しの葉がテーブルの上で横になっている。
「ノーム男爵夫人は夫の後を追って国に戻るのでしょうか」
「いや、どうやらそうではないらしい。夫人はまだ諦めていないようで、ムーディ氏と共にこの国に残ると言っているそうだ」
「まだ私と婚約できると思っているのでしょうか」
袋を狙っていたことは公になってしまったので、男爵夫人が改めて狙うことはないだろうと、レナリナは考えていた。
となると、ここに残る理由で考えられるとすれば、自分とムーディとの再婚約だろうと思い、レナリナはリヴェンに聞いてみた。
リヴェンは整った眉をひそめて答える。
「そこまでは調べられていないが、その可能性は高いだろう」
「どうしたら再婚約なんてしないとわかってくれるんでしょうか」
「……そうだな。レナリナ嬢が誰かと婚約すれば諦めもつくかもしれない」
「こ、婚約ですか」
レナリナは、玉子スープに映る自分を見つめて呟いた。
レナリナ頭の中では、自分と婚約してくれるような人など誰一人候補が思い浮かばない。
ぐったりしていたはずのダンが、くねくねと軽快に体を動かし、大きなた葉をリヴェンに向けていることにも気づいていなかった。
(婚約者の件はちょっと考えてみましょう。別に相手が貴族じゃなくちゃいけないってわけじゃないんだもの。営業を続けているうちにいい人に出会えるかもしれないし!)
一人で納得したレナリナは、話題を変える。
「ヒイロ王国の宿屋の代金はそう安くはないですよね? それなのに、ムーディ様たちはまだこの国に居座るつもりなんでしょうか」
「宿のサービスに見合った金額にしているから、安いとは言えないのは確かだな。ちなみにムーディ氏たちは宿屋の料金を延滞しているらしい」
「……ということは、強制的に退去させられる可能性がありますね」
玉子スープを一口飲んだあと、レナリナは尋ねた。
「ヒイロ王国の国民は穏やかな人が多いから、しばらくは様子を見るとは思うが、滞納が三十日以上続けば動くだろう」
「今すぐ騎士隊に動いてもらうわけにはいかないんですか?」
「動かしたいのは山々だが、宿側から届け出がないと勝手に動けないんだ」
宿屋内での出来事のため、宿屋側からの要請がない限り、騎士たちの介入は違法になる。
そのことは、ヒイロ王国内での決まりだった。
(この国の人は、国民に良い人ばかりだからあまり人を疑うことをしないのよね。だから、心配だわ)
リヴェンの答えを聞いて、レナリナはため息を吐いた。
人を信じるのはいいことである。しかし、裏切る人もいるのだというリスクがあることを理解していなければならない。
「ヒイロ王国の国民は疑うことよりも、信じて裏切られるほうがいいと思っている人が多いんだ」
「素敵な考えではありますね」
レナリナは微笑んで言った。
(それにしても、どうして料金を支払えないのかしら)
レナリナがそう思った時、リヴェンが同じ疑問を口に出す。
「伯爵令嬢が一緒にいるのだし金に困ることはないと思うんだが、どうして支払えなんだろうな」
「謎ですよね」
そう答えた時、レナリナの脳裏に浮かんだことがあった。
(まさか、私の名前を使ってツケにして、最終的に私に払わせようとしているんじゃないでしょうね! 絶対にそうはさせないわ!)
焦ったレナリナは、明日、宿屋に聞いてほしいことがあると、リヴェンにお願いした。
ヒイロ王国は治安が良いとして有名な分、処理はかなり速い。明日にはちょうどイヨブサ王国に出荷予定の牛と共に、荷馬車で運ばれることが決まった。
ノーム男爵の処分が決定した次の日の夜、レナリナはリヴェンと夕食をとりながら話をしていた。
ダンはレナリナの隣の椅子に置かれており、花の部分と少しの葉がテーブルの上で横になっている。
「ノーム男爵夫人は夫の後を追って国に戻るのでしょうか」
「いや、どうやらそうではないらしい。夫人はまだ諦めていないようで、ムーディ氏と共にこの国に残ると言っているそうだ」
「まだ私と婚約できると思っているのでしょうか」
袋を狙っていたことは公になってしまったので、男爵夫人が改めて狙うことはないだろうと、レナリナは考えていた。
となると、ここに残る理由で考えられるとすれば、自分とムーディとの再婚約だろうと思い、レナリナはリヴェンに聞いてみた。
リヴェンは整った眉をひそめて答える。
「そこまでは調べられていないが、その可能性は高いだろう」
「どうしたら再婚約なんてしないとわかってくれるんでしょうか」
「……そうだな。レナリナ嬢が誰かと婚約すれば諦めもつくかもしれない」
「こ、婚約ですか」
レナリナは、玉子スープに映る自分を見つめて呟いた。
レナリナ頭の中では、自分と婚約してくれるような人など誰一人候補が思い浮かばない。
ぐったりしていたはずのダンが、くねくねと軽快に体を動かし、大きなた葉をリヴェンに向けていることにも気づいていなかった。
(婚約者の件はちょっと考えてみましょう。別に相手が貴族じゃなくちゃいけないってわけじゃないんだもの。営業を続けているうちにいい人に出会えるかもしれないし!)
一人で納得したレナリナは、話題を変える。
「ヒイロ王国の宿屋の代金はそう安くはないですよね? それなのに、ムーディ様たちはまだこの国に居座るつもりなんでしょうか」
「宿のサービスに見合った金額にしているから、安いとは言えないのは確かだな。ちなみにムーディ氏たちは宿屋の料金を延滞しているらしい」
「……ということは、強制的に退去させられる可能性がありますね」
玉子スープを一口飲んだあと、レナリナは尋ねた。
「ヒイロ王国の国民は穏やかな人が多いから、しばらくは様子を見るとは思うが、滞納が三十日以上続けば動くだろう」
「今すぐ騎士隊に動いてもらうわけにはいかないんですか?」
「動かしたいのは山々だが、宿側から届け出がないと勝手に動けないんだ」
宿屋内での出来事のため、宿屋側からの要請がない限り、騎士たちの介入は違法になる。
そのことは、ヒイロ王国内での決まりだった。
(この国の人は、国民に良い人ばかりだからあまり人を疑うことをしないのよね。だから、心配だわ)
リヴェンの答えを聞いて、レナリナはため息を吐いた。
人を信じるのはいいことである。しかし、裏切る人もいるのだというリスクがあることを理解していなければならない。
「ヒイロ王国の国民は疑うことよりも、信じて裏切られるほうがいいと思っている人が多いんだ」
「素敵な考えではありますね」
レナリナは微笑んで言った。
(それにしても、どうして料金を支払えないのかしら)
レナリナがそう思った時、リヴェンが同じ疑問を口に出す。
「伯爵令嬢が一緒にいるのだし金に困ることはないと思うんだが、どうして支払えなんだろうな」
「謎ですよね」
そう答えた時、レナリナの脳裏に浮かんだことがあった。
(まさか、私の名前を使ってツケにして、最終的に私に払わせようとしているんじゃないでしょうね! 絶対にそうはさせないわ!)
焦ったレナリナは、明日、宿屋に聞いてほしいことがあると、リヴェンにお願いした。
あなたにおすすめの小説
「憎悪しか抱けない『お下がり令嬢』は、侍女の真似事でもやっていろ」と私を嫌う夫に言われましたので、素直に従った結果……
ぽんた
恋愛
「おれがおまえの姉ディアーヌといい仲だということは知っているよな?ディアーヌの離縁の決着がついた。だからやっと、彼女を妻に迎えられる。というわけで、おまえはもう用済みだ。そうだな。どうせだから、異母弟のところに行くといい。もともと、あいつはディアーヌと結婚するはずだったんだ。妹のおまえでもかまわないだろう」
この日、リン・オリヴィエは夫であるバロワン王国の第一王子マリユス・ノディエに告げられた。
選択肢のないリンは、「ひきこもり王子」と名高いクロード・ノディエのいる辺境の地へ向かう。
そこで彼女が会ったのは、噂の「ひきこもり王子」とはまったく違う気性が荒く傲慢な将軍だった。
クロードは、幼少の頃から自分や弟を守る為に「ひきこもり王子」を演じていたのである。その彼は、以前リンの姉ディアーヌに手痛い目にあったことがあった。その為、人間不信、とくに女性を敵視している。彼は、ディアーヌの妹であるリンを憎み、侍女扱いする。
しかし、あることがきっかけで二人の距離が急激に狭まる。が、それも束の間、王都が隣国のスパイの工作により、壊滅状態になっているいう報が入る。しかも、そのスパイの正体は、リンの知る人だった。
※全三十九話。ハッピーエンドっぽく完結します。ゆるゆる設定です。ご容赦ください。
〖完結〗旦那様には本命がいるようですので、復讐してからお別れします。
藍川みいな
恋愛
憧れのセイバン・スコフィールド侯爵に嫁いだ伯爵令嬢のレイチェルは、良い妻になろうと努力していた。
だがセイバンには結婚前から付き合っていた女性がいて、レイチェルとの結婚はお金の為だった。
レイチェルには指一本触れることもなく、愛人の家に入り浸るセイバンと離縁を決意したレイチェルだったが、愛人からお金が必要だから離縁はしないでと言われる。
レイチェルは身勝手な愛人とセイバンに、反撃を開始するのだった。
設定はゆるゆるです。
本編10話で完結になります。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。
藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。
学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。
そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。
それなら、婚約を解消いたしましょう。
そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。
妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?
百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」
あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。
で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。
そんな話ある?
「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」
たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。
あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね?
でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する?
「君の妹と、君の婚約者がね」
「そう。薄情でしょう?」
「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」
「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」
イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。
あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。
====================
(他「エブリスタ」様に投稿)
とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです
珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。
令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。
【完】貴方達が出ていかないと言うのなら、私が出て行きます!その後の事は知りませんからね
さこの
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者は伯爵家の次男、ジェラール様。
私の家は侯爵家で男児がいないから家を継ぐのは私です。お婿さんに来てもらい、侯爵家を未来へ繋いでいく、そう思っていました。
全17話です。
執筆済みなので完結保証( ̇ᵕ ̇ )
ホットランキングに入りました。ありがとうございますペコリ(⋆ᵕᴗᵕ⋆).+*
2021/10/04