14 / 56
13 夫の言い訳 ③
「これ以上、話をしても無駄ですわね」
フェルリアはため息を吐いて立ち上がった。
「どこへ行く?」
「あなたと話すことは今のところはありませんから、今日は失礼いたします。私への謝罪については、お気持ちは伝わりましたので、ご心配なく」
(色々な意味でね)
フェルリアが早足で扉の前に来た時、ジェラスが彼女の右手首を掴んだ。
「そんなに急がなくてもいいだろう。もう少し話をしていけばいい」
「私があなたに話したいことと言えば、ミレイラ様のことか仕事の話しかありません。雑談がしたいのであれば、ミサファー様とどうぞ」
「嫉妬しているのか?」
「……あんなにも愛らしいミレイラ様を邪険に扱うような人を、間違っても好きにはなりませんから、ご安心くださいませ」
「違うんだ!」
ジェラスはフェルリアの前に回り込むと、必死に訴える。
「君は当事者じゃないからわからないんだ! あの娘が私から妻を奪ったのに、全く悪びれた様子がないんだ!」
「もう少し成長して、あなたの態度が今と変わらないなら、自分は生まれてこなければ良かったと言い出す可能性があります。あなたは、それで満足かもしれませんが、私はミレイラ様の口からそんな言葉を聞きたくありません!」
「落ち着いてくれ! どうして君はそこまでミレイラに同情できる? 女性だから母性でミレイラを庇っているのかもしれないが後悔するぞ!」
「……奥様には母性はなかったのですか?」
「い、いや、それは……」
ミレイラの母、ミレイヤは亡くなる直前までミレイラのことばかり気にしていた。そのことを思い出し、ジェラスの感情が一気に溢れ出す。
「ミレイラ、ミレイラ、ミレイラって! 私のことよりもミレイラのことばかり考えていた!」
「……それが母性なのでは? 子供を産むことはとても大変なことです。しかも愛する人の子でもあります。だからこそ余計に我が子が愛しいのだと思います。あなたは、ミレイラ様が産まれてきた時、喜びの感情は一つも湧かなかったのですか?」
「……喜んだよ。先輩であるミサファーにいいアドバイスをしてもらうために、二人に仲良くなってもらおうと努力だってした」
「……ミサファー様と奥様を会わせたのですか?」
「そうだ。ミサファーは出産経験者だ。ミレイヤにとっては先輩みたいなものだ」
躊躇うことなく答えたジェラスを見つめ、フェルリアはこめかみを押さえた。
(思いやりがないにも程があるでしょう)
紹介された時のミレイヤの気持ちを思うと、目の前にいるジェラスの頬をひっぱたきたい気持ちでいっぱいになった。
「私は私なりに考えていたんだ。なのに、ミレイラが生まれてからは、私の相手をする時間は減っていった」
ジェラスはフェルリアの腕を離し、涙を流しながらカーペットに膝をついた。
(奥様はジェラス様と過ごすことがストレスになっていたのかもしれない)
どんなに愛している人であっても、してほしくないことを何度もされたら、気持ちが冷めていくこともある。
ジェラスのしていることは、人のためだと言いながらも、自分がこうしようと思ったことをしているだけなのだ。
伝えるべきか迷ったが、逆上して暴力をふるわれては困る。
(理不尽なことで殴られそうになったから殴った……が許される世界ではないものね)
幼い頃はキックスのトレーニングに付き合っていたこともあり、フェルリアは武道の心得もあった。
そのおかげで、ジェラスに何かされそうになっても、返り討ちにすることも可能だ。
だが、今回は下手に感情を揺さぶらないことにした。
(ジェラス様に人の気持ちに寄り添おうとする気持ちがないのなら、私にとって大事なのはミレイラ様だけよ)
「そんなにも妻との時間が大事だったのなら、今はミサファー様やゼッシュ様との時間を大切にしてくださいませ」
床に膝をついたままのジェラスを残し、フェルリアは部屋を出た。
フェルリアはため息を吐いて立ち上がった。
「どこへ行く?」
「あなたと話すことは今のところはありませんから、今日は失礼いたします。私への謝罪については、お気持ちは伝わりましたので、ご心配なく」
(色々な意味でね)
フェルリアが早足で扉の前に来た時、ジェラスが彼女の右手首を掴んだ。
「そんなに急がなくてもいいだろう。もう少し話をしていけばいい」
「私があなたに話したいことと言えば、ミレイラ様のことか仕事の話しかありません。雑談がしたいのであれば、ミサファー様とどうぞ」
「嫉妬しているのか?」
「……あんなにも愛らしいミレイラ様を邪険に扱うような人を、間違っても好きにはなりませんから、ご安心くださいませ」
「違うんだ!」
ジェラスはフェルリアの前に回り込むと、必死に訴える。
「君は当事者じゃないからわからないんだ! あの娘が私から妻を奪ったのに、全く悪びれた様子がないんだ!」
「もう少し成長して、あなたの態度が今と変わらないなら、自分は生まれてこなければ良かったと言い出す可能性があります。あなたは、それで満足かもしれませんが、私はミレイラ様の口からそんな言葉を聞きたくありません!」
「落ち着いてくれ! どうして君はそこまでミレイラに同情できる? 女性だから母性でミレイラを庇っているのかもしれないが後悔するぞ!」
「……奥様には母性はなかったのですか?」
「い、いや、それは……」
ミレイラの母、ミレイヤは亡くなる直前までミレイラのことばかり気にしていた。そのことを思い出し、ジェラスの感情が一気に溢れ出す。
「ミレイラ、ミレイラ、ミレイラって! 私のことよりもミレイラのことばかり考えていた!」
「……それが母性なのでは? 子供を産むことはとても大変なことです。しかも愛する人の子でもあります。だからこそ余計に我が子が愛しいのだと思います。あなたは、ミレイラ様が産まれてきた時、喜びの感情は一つも湧かなかったのですか?」
「……喜んだよ。先輩であるミサファーにいいアドバイスをしてもらうために、二人に仲良くなってもらおうと努力だってした」
「……ミサファー様と奥様を会わせたのですか?」
「そうだ。ミサファーは出産経験者だ。ミレイヤにとっては先輩みたいなものだ」
躊躇うことなく答えたジェラスを見つめ、フェルリアはこめかみを押さえた。
(思いやりがないにも程があるでしょう)
紹介された時のミレイヤの気持ちを思うと、目の前にいるジェラスの頬をひっぱたきたい気持ちでいっぱいになった。
「私は私なりに考えていたんだ。なのに、ミレイラが生まれてからは、私の相手をする時間は減っていった」
ジェラスはフェルリアの腕を離し、涙を流しながらカーペットに膝をついた。
(奥様はジェラス様と過ごすことがストレスになっていたのかもしれない)
どんなに愛している人であっても、してほしくないことを何度もされたら、気持ちが冷めていくこともある。
ジェラスのしていることは、人のためだと言いながらも、自分がこうしようと思ったことをしているだけなのだ。
伝えるべきか迷ったが、逆上して暴力をふるわれては困る。
(理不尽なことで殴られそうになったから殴った……が許される世界ではないものね)
幼い頃はキックスのトレーニングに付き合っていたこともあり、フェルリアは武道の心得もあった。
そのおかげで、ジェラスに何かされそうになっても、返り討ちにすることも可能だ。
だが、今回は下手に感情を揺さぶらないことにした。
(ジェラス様に人の気持ちに寄り添おうとする気持ちがないのなら、私にとって大事なのはミレイラ様だけよ)
「そんなにも妻との時間が大事だったのなら、今はミサファー様やゼッシュ様との時間を大切にしてくださいませ」
床に膝をついたままのジェラスを残し、フェルリアは部屋を出た。
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
【本編完結】初恋のその先で、私は母になる
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。
王宮で12年働き、気づけば28歳。
恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。
優しく守ろうとする彼。
けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。
揺れる想いの中で、彼女が選んだのは――
自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。
これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。
※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
【完結】ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
愛人の娘だった私の結婚
しゃーりん
恋愛
ティアナは自分が父の愛人の娘だと知ったのは10歳のとき。
母の娘ではなかったと知り、落ち込んだティアナの心を軽くしてくれたのは隣に住む9歳年上のアイザック。
以来、アイザックの家をよく訪れるようになった。
アイザックが結婚した相手フルールと二人の子供ルークとも仲良くなるがフルールが亡くなってしまう。
ルークの側にいてあげたいと思ったティアナはアイザックに求婚するも、毎回軽くあしらわれる。
やがて、ティアナは父に従い自分に求婚してきたサイラスに嫁ぐことになった。
しかし、サイラスは愛人の子供をティアナに育てさせるというお話です。
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。