【完結】私はあなたの操り人形ではありません

風見ゆうみ

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18 嫌われることしかしない夫 ②

 ミサファーからジェラスとの先日のやり取りを聞いたフェルリアは、ジェラスが自分のことしか考えていない人物だと再度確信した。
 ミサファーがまとめて、ジェラスへの願い事リストを紙でもらったフェルリアが部屋に戻った時には、約束の5分を過ぎてしまっていた。

「おそいです!」
「申し訳ございません!」

 ベッドの上で頬を膨らませるミレイラにはすぐに謝罪し、メイドにはミレイラを見ていてくれた礼を伝えた。

 その後、フェルリアが寝間着に着替えていると、ミレイラが首を傾げて尋ねた。
 
「なんのおはなし?」
「……そうですね。明日、ミサファー様とゼッシュ様が遠くへ行ってしまうというお話でした」

 もっと詳しい話をしたが、ミレイラにとっては難しい話である。だから、すぐにわかることになる事実だけ伝えた。

「えっ?」

 ミレイラは一瞬笑顔を見せたが、すぐに眉尻を下げる。

「おとうさま、おこりそう」 
「ちゃんと許可を取ってから出ていくそうですから、心配しなくて大丈夫ですよ」

 フェルリアが微笑むと、ミレイラはホッとしたように笑った。

 フェルリアも願い事リストをまだしっかりとは、目を通すことができていない。だが、その中の一つにフェルリアとミレイラに拒否された場合は素直に諦めることと書いてあったことだけは明確に覚えている。

 机の上に置いていたリストを手に取り、ぼんやりと見つめながら、ミサファーとの先程の会話を思い返す。

『フェルリア様、ジェラス様は思った以上に面倒な人ですから、お気をつけくださいませ』
『ご忠告ありがとうございます。でも、どうしてこのリストを私に?』
『あなたにもお願いしたいことがあるのです』
『どのようなことでしょうか』
『ジェラス様は自分のことしか考えていません。ということは、用無しになった私たちは邪魔な存在になります。あの人のことですから、私たちを消そうとするでしょう。ですが、そうはさせないように、三十日に一度、あなたと会う約束を取り付けたいのです』

 そう言われて、フェルリアもすぐに納得した。

 約束の場所にミサファーやゼッシュが来なかった場合、どんな理由があったとしても、ジェラスが絡んだことにする。そうなった場合、フェルリアは永遠にジェラスの子を産むことはないと伝えるとのことだった。

 フェルリアは、ジェラスの子供を産む気などさらさらない。ミサファーたちのミレイラへの態度は未だに許せないが、見殺しにするほどでもないため、その話を承諾した。

『ミレイラ様には明日、改めて謝罪だけさせていただきます』

 ミサファーはそこで話を終え、一礼して部屋の扉を開け、フェルリアに廊下に出るよう促した。

「フェルリアさん、どうしたの?」
「フェルリア様、先程のお怪我が痛むのですか?」

 長い間考え事をしていたため、いつの間にかミレイラが足元にやってきていた。フェルリアの白いネグリジェの裾を小さな手で掴んでいる。

「ごめんなさい。考え事をしていました。さあ、もう寝ましょうね。悪いけれど、今日は絵本をあなたが読んであげてくれる?」
「承知いたしました」

 ミレイラを促しながら、メイドに頼んだ。フェルリアがリストを手に取ったのを見ていたメイドは笑顔で頷いた。
 フェルリアはミレイラと共に横になり、メイドが、絵本を読み聞かせる優しい声を聞きながら、リストに目を通した。

 いつしか眠りにつき、太陽が昇り始めた次の日の早朝のことだった。寝間着姿のジェラスがフェルリアたちの部屋に訪ねてきた。

「フェルリア、聞こえるか」

 扉の向こうから聞こえるジェラスの声で目が覚め、フェルリアは薄暗い室内に眉をひそめた。ミレイラを起こさないように体を起こし、サイドテーブルの時計を見ると、朝の5時前だった。

(非常識すぎるでしょう)

 幸い、ミレイラが起きていないので無視して二度寝した。しかし、制止する兵士に命令し、ジェラスは扉を開かせた。

 そして、部屋に入るなりフェルリアたちがいるベッドに向かって叫んだ。

「おはよう、フェルリア、そしてミレイラ! 今日の夜から私もこの部屋に住むことにした」
「ひっ」

 驚いて目を覚ましたミレイラを抱きしめながら、フェルリアはジェラスを睨みつける。

「……まだ夢を見ていらっしゃるようですわね」

 フェルリアに睨まれたジェラスは、焦った顔で訴える。

「ま、待ってくれ。今日はミレイラと一緒に出かけたくて誘いに来たんだ」
「今、何時だと思っているのですか。お帰りください!」

 フェルリアが拒否すると、ジェラスは「そ、そうだな、悪かった。先走った」と呟きながら部屋から出ていく。
 繁華街から離れていることや、準備があるため、彼の中では今からでも用意をして出かけるつもりだったようだ。

「おとうさまと、おでかけ、したくないです。でも、おこられそうで、こわいです」
「安心してください。私が守りますから、行きたくなければ行きたくないと言っていいですからね」
「……はい」

 ミレイラはフェルリアにぎゅっとしがみつくと、温もりが心地好かったのか、再度眠りについたのだった。






 
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