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22 夫の誤算 ①
ミレイラの誕生日前日、朝からフェルリアたちは王城に向かった。王女殿下の命令と言われたため、フェルリアはミレイラに王城の中まで付いていくことができない。そのことがもどかしくて仕方がなかった。
(王女殿下がミレイラ様に何かしなければいいけど……)
不安そうにしているミレイラの背中を撫でながらフェルリアはジェラスに願う。
「ジェラス様、必ずミレイラ様を守ってくださいね」
「わかっているよ」
向かいに座るジェラスが上機嫌なことが、余計に気味が悪かった。
「フェルリアさん」
ガタガタと揺れる道を通り始めた時、ミレイラがフェルリアにしがみついた。
「大丈夫ですか?」
「はい」
うなずいたミレイラを見て安堵していると、ジェラスが口を開く。
「ミレイラ、フェルリアのことをなんと呼べと言ったか覚えているか」
高圧的な言い方にフェルリアが眉をひそめると、ミレイラがフェルリアの手をぎゅっと握った。
「どうしましたか?」
フェルリアが優しく握り返すと、ミレイラはつぶらな目でフェルリアを見つめた。
「あのね」
「何でしょうか」
「おとうさまから、ママってよぶようにいわれました。そう、よんでもいいですか」
「……かまいませんよ」
フェルリアはミレイラを抱きしめて頷いた。そして、ちらりとジェラスに視線を走らせると、彼は満足そうな顔をしてミレイラを見つめていた。
休憩を挟みつつ、一時間ほど走った頃、一行は王城の前に着いた。城壁に隠されていて、フェルリアがいる場所から城は見えないが、白亜色を基調とした城で、中心部には大きな丸い塔が建っている。
(キックスはここで働いていたのよね)
ミレイラを見送るために馬車から降りたフェルリアのスカートの裾をミレイラが引っ張った。
「どうされましたか?」
「あのね」
ジェラスが門兵と話をしている間に、ミレイラは小声で話す。
「ミレイラには、おかあさまとおとうさまがいます」
「そうですね」
「なので、ミレイラのパパは、おとうさまではないです」
「えっと、それはどういう意味でしょうか」
「ママのあいては、パパです。パパはおとうさまじゃないです」
ミレイラは背伸びをして手を上げ、フェルリアのブレスレットに触れた。
「おそろいのをもってるのが、パパです」
「……ミレイラ様、ありがとうございます」
フェルリアはミレイラの気遣いに感極まって涙が出そうになった。
(ジェラス様よりも、ミレイラ様のほうがよっぽど大人だわ)
ブレスレットをお守り代わりにミレイラに預けたかったが、彼女の手につけるには細すぎる。それにジェラスに見つかれば没収される可能性が高い。奪われないようにとミレイラが抵抗してケガをするのも嫌だった。
「おい、ミレイラ、行くぞ」
「はい!」
悩んでいるうちにジェラスに抱えられ、ミレイラは馬車に乗せられた。
今まで乗っていた馬車をジェラスたちが使うため、フェルリアは護衛騎士と共にその場に残された。
城門の前に立ち尽くしていても邪魔になるだけ。
そう考えたフェルリアは、近くにある店に入ってミレイラを待つことにした。
◇◆◇◆◇◆
(ジェラスSide)
向かいに座るピンク色のドレスを着たミレイラは、最愛の妻、ミレイヤを思い出させて苛立ちを覚えた。
先程まで元気そうにしていたミレイラの表情が暗く、身を縮こまらせていることも余計に彼を苛立たせた。
(どうして私を怖がる? 今までだって私は彼女を叱っただけだ。普通の親がすることだろう)
ジェラスはミレイラにそう言いたくなる気持ちをぐっとこらえた。
(駄目だ。ミレイラに納得してもらわなければ、この計画は意味のないものになる)
心を落ち着かせて、ジェラスは笑顔で話しかける。
「ミレイラ、城に着いたらメイドが待っている。その女性と一緒に行くんだ」
「……おとうさまは、どうするんですか?」
「悪いが、少し用事があるんだ」
「わかりました」
普通の子供なら嫌がるところだろう。しかし、ミレイラはジェラスと一緒にいたくないという気持ちが強かった。
ミレイラがうなずくのを見たジェラスは、満足そうな顔をした。
(王女殿下がミレイラ様に何かしなければいいけど……)
不安そうにしているミレイラの背中を撫でながらフェルリアはジェラスに願う。
「ジェラス様、必ずミレイラ様を守ってくださいね」
「わかっているよ」
向かいに座るジェラスが上機嫌なことが、余計に気味が悪かった。
「フェルリアさん」
ガタガタと揺れる道を通り始めた時、ミレイラがフェルリアにしがみついた。
「大丈夫ですか?」
「はい」
うなずいたミレイラを見て安堵していると、ジェラスが口を開く。
「ミレイラ、フェルリアのことをなんと呼べと言ったか覚えているか」
高圧的な言い方にフェルリアが眉をひそめると、ミレイラがフェルリアの手をぎゅっと握った。
「どうしましたか?」
フェルリアが優しく握り返すと、ミレイラはつぶらな目でフェルリアを見つめた。
「あのね」
「何でしょうか」
「おとうさまから、ママってよぶようにいわれました。そう、よんでもいいですか」
「……かまいませんよ」
フェルリアはミレイラを抱きしめて頷いた。そして、ちらりとジェラスに視線を走らせると、彼は満足そうな顔をしてミレイラを見つめていた。
休憩を挟みつつ、一時間ほど走った頃、一行は王城の前に着いた。城壁に隠されていて、フェルリアがいる場所から城は見えないが、白亜色を基調とした城で、中心部には大きな丸い塔が建っている。
(キックスはここで働いていたのよね)
ミレイラを見送るために馬車から降りたフェルリアのスカートの裾をミレイラが引っ張った。
「どうされましたか?」
「あのね」
ジェラスが門兵と話をしている間に、ミレイラは小声で話す。
「ミレイラには、おかあさまとおとうさまがいます」
「そうですね」
「なので、ミレイラのパパは、おとうさまではないです」
「えっと、それはどういう意味でしょうか」
「ママのあいては、パパです。パパはおとうさまじゃないです」
ミレイラは背伸びをして手を上げ、フェルリアのブレスレットに触れた。
「おそろいのをもってるのが、パパです」
「……ミレイラ様、ありがとうございます」
フェルリアはミレイラの気遣いに感極まって涙が出そうになった。
(ジェラス様よりも、ミレイラ様のほうがよっぽど大人だわ)
ブレスレットをお守り代わりにミレイラに預けたかったが、彼女の手につけるには細すぎる。それにジェラスに見つかれば没収される可能性が高い。奪われないようにとミレイラが抵抗してケガをするのも嫌だった。
「おい、ミレイラ、行くぞ」
「はい!」
悩んでいるうちにジェラスに抱えられ、ミレイラは馬車に乗せられた。
今まで乗っていた馬車をジェラスたちが使うため、フェルリアは護衛騎士と共にその場に残された。
城門の前に立ち尽くしていても邪魔になるだけ。
そう考えたフェルリアは、近くにある店に入ってミレイラを待つことにした。
◇◆◇◆◇◆
(ジェラスSide)
向かいに座るピンク色のドレスを着たミレイラは、最愛の妻、ミレイヤを思い出させて苛立ちを覚えた。
先程まで元気そうにしていたミレイラの表情が暗く、身を縮こまらせていることも余計に彼を苛立たせた。
(どうして私を怖がる? 今までだって私は彼女を叱っただけだ。普通の親がすることだろう)
ジェラスはミレイラにそう言いたくなる気持ちをぐっとこらえた。
(駄目だ。ミレイラに納得してもらわなければ、この計画は意味のないものになる)
心を落ち着かせて、ジェラスは笑顔で話しかける。
「ミレイラ、城に着いたらメイドが待っている。その女性と一緒に行くんだ」
「……おとうさまは、どうするんですか?」
「悪いが、少し用事があるんだ」
「わかりました」
普通の子供なら嫌がるところだろう。しかし、ミレイラはジェラスと一緒にいたくないという気持ちが強かった。
ミレイラがうなずくのを見たジェラスは、満足そうな顔をした。
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