【完結】私はあなたの操り人形ではありません

風見ゆうみ

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26 夫の誤算 ⑤ 〜ミレイラSide〜

 ジェラスはフェルリアと二人きりで話し合えば、心が通じると思っている。だから、どうしてもフェルリアと二人きりにならなければならない。

 急いで王城に戻り、王女に面会を求めた。しかし、王女は「忙しい」と言って拒否した。

「お会いできないのなら、せめて預けたものを返してほしいと伝えてくれ」

 王女からの伝言を伝えに来た侍女に訴える。侍女は一瞬困った顔をしたが「承知いたしました。お伝えしてまいります」と言って戻っていった。

 ジェラスは王城の扉の前で待ち続けた。十分ほどの時間だったが、それ以上長く感じた。
 うろうろと広いエントランスを歩き回っていると扉が開き、メイドが中に入ってきた。
 愛想のないメイドでジェラスに一礼したものの、感情が読み取れない表情だった。


******


 その頃、ミレイラはキックスの監視を命じられている平民の青年たちに可愛がられていた。

「ほら、怖くないよぉ」
「悪い人じゃないからねぇ」

 奥にある鉄格子の扉の前で、ミレイラは満面の笑みを浮かべる青年二人に話しかけられていた。

(わるいひとたち、じゃないのかな。でも、こわい)

 ミレイラが連れてこられた場所は、王女が両親に内緒で建てた監禁用の建物だった。
 現在18歳の王女は、どれだけアタックしても自分に振り向かないキックスに苛立ち、彼を説得するためにこの建物を造った。

 石造りのため寒い時期にはかなり冷える。しかし、暖炉を使わせれば煙でバレてしまう。拷問に近いやり方でキックスを飼い続けていた。

「こんな小さな子をこんな所に連れてこさせるなんてどんな親だよ」

 鉄格子の向こうから聞こえてきた、低くて耳に心地よい声に反応し、ミレイラは奥に目を向けた。

「わあ!」

 鉄格子の前に立った顔立ちの整った青年を見て、ミレイラは思わず声を上げた。
 まるで絵本の中の王子様みたいだと思ったのだ。

 牢に閉じ込められてはいるが、王女は汚いキックスは見たくないと、毎日服を変えさせている。洗濯できるものは先程のメイドが洗濯をして、乾いたらキックスに渡すことになっていた。

「こんにちは」
「……こんにちは!」

 目をキラキラさせてキックスを見つめるミレイラを見て、青年たちは口をとがらせる。

「やっぱり顔か」
「どうして顔なんだよぉ! 大事なのは性格だろぉ!」
「うるさいな。お前たちだって顔は悪くない。ヘラヘラしてるから信頼感が沸かないんだろ」

 キックスに呆れられ、青年たちは真面目な表情をしたが、十秒も経たないうちに、へらりと笑った。

「笑ってないとやってられないんだよな」
「気持ちは分かる。俺のせいだ、悪い」

 一人の青年の言葉に、キックスは眉尻を下げた。すると青年二人が同時に叫ぶ。

「「キッちゃんのせいじゃない。悪いのは女狐だ」」

 一人は母親を、一人は妹を人質にとられている。そうすることで、キックスの監禁を世間に知られることなく見張ることのできる人物を作ったのだ。
 青年二人とメイドや御者以外にも複数人おり、キックスを逃がしたり、居場所を外に漏らせば、全員の家族を殺すと脅されている。
 キックスにも王女は「あなたが逃げたら、証拠を消すために多くの人が死ぬわよ」と脅していた。

「めぎつね、こわい。わるいきつね!」

 ミレイラが呟くと空気が和み、キックスたちの表情も和らいだ。

「いい子だな。お名前は?」

 キックスに尋ねられ、ミレイラは彼の前に立って答える。

「ミレイラです」
「「「ミレイラ?」」」

 男三人が同時に聞き返した。

「はい、ミレイラです」 
「まさか……、姉ちゃんを捨てた男の子供じゃないだろうな」

 一人の青年の話を聞いて、ミレイラは彼の顔を見つめた。

(……だれかに、にてる。だれ? ……あっ!)

「ミサファーさま?」

 ミサファーの姿が重なり、ミレイラは声に出して首を傾げた。




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