【完結】私はあなたの操り人形ではありません

風見ゆうみ

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27 夫の誤算 ⑥ 〜ミレイラSide〜 

「おい、どういうことだよ」

 仲間に問いかけられ、ミサファーの弟――ズモイは困った顔をした。

「最近、姉ちゃんが息子を連れてカマダオ公爵邸を出たんだ。その時に、今まで話してなかったけど、カマダオ公爵にはミレイラって娘がいるんだって教えてくれたんだ」
「隠し子ってことか」

 キックスは呟くと、きょとんとしているミレイラに尋ねる。

「何歳?」
「あしたで、よんさい」

 ドヤッとミレイラが胸を張ると、キックスたちの頬が緩んだ。

「そうか。教えてくれてありがとう」

 誕生日を早めに祝うことは失礼とされている国である。キックスは誕生日のことには触れず、ズモイに話しかけた。

「姉に詳しい話は聞けそうか」
「一応、守秘義務ってやつがあるらしいから厳しいかな。ミレイラちゃんのことも口を滑らせた感じだったし。しかも、居場所を転々としてるしさ」
「お前の姉は俺がどうなっているか知ってるんだよな?」
「2年前に家族が攫われた時に伝えたきりだよ。その前から姉ちゃんはずっと公爵邸にいたしな。最近会った時は、家族の話しかしてない」

 ミレイラは一生懸命話を聞いていたが、全く理解できなかった。

(なんのはなしかなあ?)

 何度も左右に首を傾けるミレイラを見たキックスは、苦笑して話題を変えた。

「どうして一時預かりでも、この子はここに預けられたんだろうか」
「女狐が気に入ったんじゃねえの」
「ならどうして見に来ない?」
「……そうか。なら、キッちゃんの元婚約者の件と関係しているのかもな」

 ズモイは眉間に皺を寄せて言った。

「何でキッちゃんの元婚約者――フェルリア様が出てくるんだ?」
「姉ちゃんが言うには、公爵はフェルリア様の気の強さがお好みのようだ」
「お前の姉ちゃんも気が強いもんな」
「あれは気が強いんじゃなくて、性格が悪いんだよ」

 話がずれてしまったが、あはははと笑うズモイたちを、キックスは呆れた顔で見つめたあと、ミレイラには笑顔で話しかける。

「わけのわからない話ばかりしてごめんな」
「いいえ」
「ミレイラはいい子だな」

 跪いてミレイラの視線に合わせたキックスの手首に、見覚えのあるものが付いていることに気がついた。

「これ、ママとおなじ」
「……ん?」

 キックスが優しい笑みを浮かべて聞き返すと、ミレイラは彼の左手首に付けられたブレスレットを指さす。

「ママね、これとそっくりなの、もってます。ママのはね、あかいろ」
「……そうか。まだ持っててくれているんだな」

 キックスの表情が悲しそうで、ミレイラは励ます。

「ママはパパのこと、まってます」
「「「パパ?」」」

 キックスたちが驚いた顔をして聞き返した時だった。
 
「大変だ! 女狐がこちらに来るつもりらしい。呼び出しがかかったから行ってくる」

 外で見張りをしていた御者が外から叫んだ。

 キックスは焦った顔でミレイラに頼む。

「ミレイラ、いいか。俺と会ったことは黙っておいてくれ」
「どうして?」
「俺と話したことがバレたら、ミレイラやフェルリアが嫌な目に遭うかもしれない」
 
 さすがに殺されるとは言えず、キックスは言葉を濁した。

「……わかりました」
「キッちゃんの両親に話してくれたらいいんだが、4歳の子には無理だよなあ」

 ズモイはそう呟いたあと、キックスに一声かけて木の扉を閉めた。

(パパのりょうしん。……パパの、おとうさまと
、おかあさまのことかな)

 人一倍賢いミレイラは無言でそんなことを考えた。

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