28 / 56
27 夫の誤算 ⑥ 〜ミレイラSide〜
「おい、どういうことだよ」
仲間に問いかけられ、ミサファーの弟――ズモイは困った顔をした。
「最近、姉ちゃんが息子を連れてカマダオ公爵邸を出たんだ。その時に、今まで話してなかったけど、カマダオ公爵にはミレイラって娘がいるんだって教えてくれたんだ」
「隠し子ってことか」
キックスは呟くと、きょとんとしているミレイラに尋ねる。
「何歳?」
「あしたで、よんさい」
ドヤッとミレイラが胸を張ると、キックスたちの頬が緩んだ。
「そうか。教えてくれてありがとう」
誕生日を早めに祝うことは失礼とされている国である。キックスは誕生日のことには触れず、ズモイに話しかけた。
「姉に詳しい話は聞けそうか」
「一応、守秘義務ってやつがあるらしいから厳しいかな。ミレイラちゃんのことも口を滑らせた感じだったし。しかも、居場所を転々としてるしさ」
「お前の姉は俺がどうなっているか知ってるんだよな?」
「2年前に家族が攫われた時に伝えたきりだよ。その前から姉ちゃんはずっと公爵邸にいたしな。最近会った時は、家族の話しかしてない」
ミレイラは一生懸命話を聞いていたが、全く理解できなかった。
(なんのはなしかなあ?)
何度も左右に首を傾けるミレイラを見たキックスは、苦笑して話題を変えた。
「どうして一時預かりでも、この子はここに預けられたんだろうか」
「女狐が気に入ったんじゃねえの」
「ならどうして見に来ない?」
「……そうか。なら、キッちゃんの元婚約者の件と関係しているのかもな」
ズモイは眉間に皺を寄せて言った。
「何でキッちゃんの元婚約者――フェルリア様が出てくるんだ?」
「姉ちゃんが言うには、公爵はフェルリア様の気の強さがお好みのようだ」
「お前の姉ちゃんも気が強いもんな」
「あれは気が強いんじゃなくて、性格が悪いんだよ」
話がずれてしまったが、あはははと笑うズモイたちを、キックスは呆れた顔で見つめたあと、ミレイラには笑顔で話しかける。
「わけのわからない話ばかりしてごめんな」
「いいえ」
「ミレイラはいい子だな」
跪いてミレイラの視線に合わせたキックスの手首に、見覚えのあるものが付いていることに気がついた。
「これ、ママとおなじ」
「……ん?」
キックスが優しい笑みを浮かべて聞き返すと、ミレイラは彼の左手首に付けられたブレスレットを指さす。
「ママね、これとそっくりなの、もってます。ママのはね、あかいろ」
「……そうか。まだ持っててくれているんだな」
キックスの表情が悲しそうで、ミレイラは励ます。
「ママはパパのこと、まってます」
「「「パパ?」」」
キックスたちが驚いた顔をして聞き返した時だった。
「大変だ! 女狐がこちらに来るつもりらしい。呼び出しがかかったから行ってくる」
外で見張りをしていた御者が外から叫んだ。
キックスは焦った顔でミレイラに頼む。
「ミレイラ、いいか。俺と会ったことは黙っておいてくれ」
「どうして?」
「俺と話したことがバレたら、ミレイラやフェルリアが嫌な目に遭うかもしれない」
さすがに殺されるとは言えず、キックスは言葉を濁した。
「……わかりました」
「キッちゃんの両親に話してくれたらいいんだが、4歳の子には無理だよなあ」
ズモイはそう呟いたあと、キックスに一声かけて木の扉を閉めた。
(パパのりょうしん。……パパの、おとうさまと
、おかあさまのことかな)
人一倍賢いミレイラは無言でそんなことを考えた。
仲間に問いかけられ、ミサファーの弟――ズモイは困った顔をした。
「最近、姉ちゃんが息子を連れてカマダオ公爵邸を出たんだ。その時に、今まで話してなかったけど、カマダオ公爵にはミレイラって娘がいるんだって教えてくれたんだ」
「隠し子ってことか」
キックスは呟くと、きょとんとしているミレイラに尋ねる。
「何歳?」
「あしたで、よんさい」
ドヤッとミレイラが胸を張ると、キックスたちの頬が緩んだ。
「そうか。教えてくれてありがとう」
誕生日を早めに祝うことは失礼とされている国である。キックスは誕生日のことには触れず、ズモイに話しかけた。
「姉に詳しい話は聞けそうか」
「一応、守秘義務ってやつがあるらしいから厳しいかな。ミレイラちゃんのことも口を滑らせた感じだったし。しかも、居場所を転々としてるしさ」
「お前の姉は俺がどうなっているか知ってるんだよな?」
「2年前に家族が攫われた時に伝えたきりだよ。その前から姉ちゃんはずっと公爵邸にいたしな。最近会った時は、家族の話しかしてない」
ミレイラは一生懸命話を聞いていたが、全く理解できなかった。
(なんのはなしかなあ?)
何度も左右に首を傾けるミレイラを見たキックスは、苦笑して話題を変えた。
「どうして一時預かりでも、この子はここに預けられたんだろうか」
「女狐が気に入ったんじゃねえの」
「ならどうして見に来ない?」
「……そうか。なら、キッちゃんの元婚約者の件と関係しているのかもな」
ズモイは眉間に皺を寄せて言った。
「何でキッちゃんの元婚約者――フェルリア様が出てくるんだ?」
「姉ちゃんが言うには、公爵はフェルリア様の気の強さがお好みのようだ」
「お前の姉ちゃんも気が強いもんな」
「あれは気が強いんじゃなくて、性格が悪いんだよ」
話がずれてしまったが、あはははと笑うズモイたちを、キックスは呆れた顔で見つめたあと、ミレイラには笑顔で話しかける。
「わけのわからない話ばかりしてごめんな」
「いいえ」
「ミレイラはいい子だな」
跪いてミレイラの視線に合わせたキックスの手首に、見覚えのあるものが付いていることに気がついた。
「これ、ママとおなじ」
「……ん?」
キックスが優しい笑みを浮かべて聞き返すと、ミレイラは彼の左手首に付けられたブレスレットを指さす。
「ママね、これとそっくりなの、もってます。ママのはね、あかいろ」
「……そうか。まだ持っててくれているんだな」
キックスの表情が悲しそうで、ミレイラは励ます。
「ママはパパのこと、まってます」
「「「パパ?」」」
キックスたちが驚いた顔をして聞き返した時だった。
「大変だ! 女狐がこちらに来るつもりらしい。呼び出しがかかったから行ってくる」
外で見張りをしていた御者が外から叫んだ。
キックスは焦った顔でミレイラに頼む。
「ミレイラ、いいか。俺と会ったことは黙っておいてくれ」
「どうして?」
「俺と話したことがバレたら、ミレイラやフェルリアが嫌な目に遭うかもしれない」
さすがに殺されるとは言えず、キックスは言葉を濁した。
「……わかりました」
「キッちゃんの両親に話してくれたらいいんだが、4歳の子には無理だよなあ」
ズモイはそう呟いたあと、キックスに一声かけて木の扉を閉めた。
(パパのりょうしん。……パパの、おとうさまと
、おかあさまのことかな)
人一倍賢いミレイラは無言でそんなことを考えた。
あなたにおすすめの小説
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです
藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。
理由は単純。
愛などなくても、仕事に支障はないからだという。
──そうですか。
それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。
王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。
夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。
離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。
気づいたときにはもう遅い。
積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。
一方で私は、王妃のもとへ。
今さら引き止められても、遅いのです。
【本編完結】初恋のその先で、私は母になる
妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。
王宮で12年働き、気づけば28歳。
恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。
優しく守ろうとする彼。
けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。
揺れる想いの中で、彼女が選んだのは――
自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。
これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。
※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。過激ざまぁタグあります。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
「離縁状の印が乾く前に、王太子殿下から花束が届きました」〜五年間「置物」と呼ばれた侯爵夫人、夫が青ざめるのは王家との縁が切れてからでした〜
まさき
恋愛
侯爵夫人として過ごした五年間、夫に名前を呼ばれたことが一度もなかった。
愛人を夜会に連れてきた翌朝、私は離縁状を置いて屋敷を出た。
夫は「すぐ戻る」と思っていたらしい。
でも届いたのは、王太子殿下からの白薔薇だった。
「五年、待ちすぎました。今度こそ私の隣に」
幼馴染の殿下は、いつも私を「アメリア」と呼んでくれた。
ただそれだけで、五年分の何かが、ほどけていった。
夫が全てを失うのはこれからの話。
私が本当の笑顔を取り戻すのも、これからの話。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
愛人の娘だった私の結婚
しゃーりん
恋愛
ティアナは自分が父の愛人の娘だと知ったのは10歳のとき。
母の娘ではなかったと知り、落ち込んだティアナの心を軽くしてくれたのは隣に住む9歳年上のアイザック。
以来、アイザックの家をよく訪れるようになった。
アイザックが結婚した相手フルールと二人の子供ルークとも仲良くなるがフルールが亡くなってしまう。
ルークの側にいてあげたいと思ったティアナはアイザックに求婚するも、毎回軽くあしらわれる。
やがて、ティアナは父に従い自分に求婚してきたサイラスに嫁ぐことになった。
しかし、サイラスは愛人の子供をティアナに育てさせるというお話です。