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30 頑張るミレイラ
ミレイラは久しぶりに多くの人に誕生日を祝ってもらったが、ジェラスからは何も言われなかった。
彼女自身が「おとうさまが、きづくまでいわないで」とお願いしたからだが、結局、次の日になっても気づかなかった。
フェルリアは娘の誕生日を忘れるなんてと憤慨していたが、ミレイラはジェラスのことなどどうでも良かった。
気になるのはパパが誕生日を覚えてくれているかだ。
ミレイラは自分が望めば、フェルリアとキックスたちと一緒に住めるのだと思い込んでいる。
実際には色々と手続きがあるので、そう簡単なことではないのだが、子供にはわからない。
(パパは覚えてくれているといいなあ)
前日に会ったから、次に会うことがあったら誕生日を祝ってくれるだろうか。
そうドキドキしながら、ミレイラはカウン公爵家に向かう馬車に乗った。
公爵との約束は、そう簡単に取り付けられるものではない。しかし、フェルリアのおかげで、ミレイラはカウン公爵夫妻――キックスの両親に会うことが可能になった。
使用人たちはフェルリアとミレイラの味方のため、カウン公爵邸に向かうことは、ジェラスに知らされていない。
優しいメイドと共に朝から3時間馬車に揺られ、たどり着いた時には昼前になっていた。
「まあ、可愛らしいお客様ね。フェルリアのお友達と聞いたけれど、どんな繋がりなのかしら」
「こ、こんにちは。こーしゃくふじん、おめにかかれて……、こ、ころえい?」
「光栄です」
メイドに耳打ちされ、ミレイラは習ったばかりのカーテシーをする。
「おめにかかれて、こうえいです」
「まあ、なんて可愛いの!」
キックスの母であるカウン公爵夫人は金色の髪に青色の瞳を持つスレンダー体型の美女で、ミレイラにはおとぎ話の悪役に出てくる人に見えた。
しかし、ミレイラを見て満面の笑みを浮かべていることと、カウン公爵がキックスを少し老けさせたような見た目だったこともあり、悪い人たちではないとすぐに警戒心を解いた。
応接室のソファに座らせてもらったミレイラは、一張羅のピンクのドレスを二人に褒めてもらいご満悦だったが、本題を思い出して目を大きく見開いた。
「どうかしたの?」
向かいに座る公爵夫人にミレイラは訴える。
「あの、パパのはなしです」
「「パパ?」」
まさか、ミレイラがキックスのことをパパと呼んでいるとは思いもしない。
公爵夫妻は驚いて同時に聞き返した。
「おとうさまとかには、ないしょっていわれました。ミレイラやママがいやなめにあうかもって」
「……ママっていうのは誰のことかしら」
夫人がテーブルを回り込み、ミレイラの隣に座って優しく問いかけた。
「フェルリア、さんです」
「じゃあ、パパというのはカダマオ公爵のことね?」
「ちがいます! パパはキックスさんです!」
「「ええっ!?」」
爆弾発言に二人は大きな声を上げたが、ミレイラの次の発言で表情が変わる。
「パパはとじこめられてました。めぎつねが、パパをきにいったからって!」
「閉じ込められていた? どうしてそんなことを?」
「おしろのすぐちかくに、くさがいっぱいあるとこ、そこにおうちがあったんです」
「城のすぐ近くといえば森はあるが、建物か……」
公爵が眉間に皺を寄せた時、夫人が夫に向かって叫ぶ。
「王女殿下が猛獣を飼いたいと言って造った建物があるはずよ!」
「そう言えばそうだったな。だが、あれは取り壊されたはずじゃ……、いや。取り壊したと聞いただけで確認はしていないか」
子供の言うことなど、普段ならそう簡単に信じたりはしない。しかし、二人は藁をも掴む思いでキックスの行方を捜している。
「駄目元で調べてみるか」
「ないしょで、おねがいします!」
「もちろんだ。君やフェルリアに嫌な思いをさせたりしない」
呟きを聞いたミレイラが訴えると、公爵は微笑んでうなずいた。
彼女自身が「おとうさまが、きづくまでいわないで」とお願いしたからだが、結局、次の日になっても気づかなかった。
フェルリアは娘の誕生日を忘れるなんてと憤慨していたが、ミレイラはジェラスのことなどどうでも良かった。
気になるのはパパが誕生日を覚えてくれているかだ。
ミレイラは自分が望めば、フェルリアとキックスたちと一緒に住めるのだと思い込んでいる。
実際には色々と手続きがあるので、そう簡単なことではないのだが、子供にはわからない。
(パパは覚えてくれているといいなあ)
前日に会ったから、次に会うことがあったら誕生日を祝ってくれるだろうか。
そうドキドキしながら、ミレイラはカウン公爵家に向かう馬車に乗った。
公爵との約束は、そう簡単に取り付けられるものではない。しかし、フェルリアのおかげで、ミレイラはカウン公爵夫妻――キックスの両親に会うことが可能になった。
使用人たちはフェルリアとミレイラの味方のため、カウン公爵邸に向かうことは、ジェラスに知らされていない。
優しいメイドと共に朝から3時間馬車に揺られ、たどり着いた時には昼前になっていた。
「まあ、可愛らしいお客様ね。フェルリアのお友達と聞いたけれど、どんな繋がりなのかしら」
「こ、こんにちは。こーしゃくふじん、おめにかかれて……、こ、ころえい?」
「光栄です」
メイドに耳打ちされ、ミレイラは習ったばかりのカーテシーをする。
「おめにかかれて、こうえいです」
「まあ、なんて可愛いの!」
キックスの母であるカウン公爵夫人は金色の髪に青色の瞳を持つスレンダー体型の美女で、ミレイラにはおとぎ話の悪役に出てくる人に見えた。
しかし、ミレイラを見て満面の笑みを浮かべていることと、カウン公爵がキックスを少し老けさせたような見た目だったこともあり、悪い人たちではないとすぐに警戒心を解いた。
応接室のソファに座らせてもらったミレイラは、一張羅のピンクのドレスを二人に褒めてもらいご満悦だったが、本題を思い出して目を大きく見開いた。
「どうかしたの?」
向かいに座る公爵夫人にミレイラは訴える。
「あの、パパのはなしです」
「「パパ?」」
まさか、ミレイラがキックスのことをパパと呼んでいるとは思いもしない。
公爵夫妻は驚いて同時に聞き返した。
「おとうさまとかには、ないしょっていわれました。ミレイラやママがいやなめにあうかもって」
「……ママっていうのは誰のことかしら」
夫人がテーブルを回り込み、ミレイラの隣に座って優しく問いかけた。
「フェルリア、さんです」
「じゃあ、パパというのはカダマオ公爵のことね?」
「ちがいます! パパはキックスさんです!」
「「ええっ!?」」
爆弾発言に二人は大きな声を上げたが、ミレイラの次の発言で表情が変わる。
「パパはとじこめられてました。めぎつねが、パパをきにいったからって!」
「閉じ込められていた? どうしてそんなことを?」
「おしろのすぐちかくに、くさがいっぱいあるとこ、そこにおうちがあったんです」
「城のすぐ近くといえば森はあるが、建物か……」
公爵が眉間に皺を寄せた時、夫人が夫に向かって叫ぶ。
「王女殿下が猛獣を飼いたいと言って造った建物があるはずよ!」
「そう言えばそうだったな。だが、あれは取り壊されたはずじゃ……、いや。取り壊したと聞いただけで確認はしていないか」
子供の言うことなど、普段ならそう簡単に信じたりはしない。しかし、二人は藁をも掴む思いでキックスの行方を捜している。
「駄目元で調べてみるか」
「ないしょで、おねがいします!」
「もちろんだ。君やフェルリアに嫌な思いをさせたりしない」
呟きを聞いたミレイラが訴えると、公爵は微笑んでうなずいた。
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