【完結】私はあなたの操り人形ではありません

風見ゆうみ

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37 夫の暴走②

 ミレイラをメイドに任せ、フェルリアは急いで別邸に向かった。寝間着の上にショールを羽織ってはいるが、夜は気温が落ちていて少し肌寒い。
 小走りで向かったこともあり、一分ほどで別邸に着き、フェルリアは階段を駆け上がった。
 
「ぎゃああっ!」
「近寄らないで、気持ち悪い!」
「やめろ! 私を誰だと思っているんだ!?」
「いくら公爵であっても婦女暴行は罪ですわ!」

 ベコンベコンという音と共に、ミサファーとジェラスの声が聞こえてきた。

(変な音が聞こえるけど何かしら)

 緊迫感が漂うシーンのはずだが、謎の音で何とも間抜けなものになっている。

 フェルリアが2階に上がると、部屋の前には困ったような顔をした兵士が三人立っていた。フェルリアの姿を見て、一人が近づいてきて報告する。

「私たちが駆けつけた時には、ミサファー様が抵抗してこの状態でした」
「ありがとう」

 部屋の中を見てみると、ベッドの脇に立っているミサファーと床で倒れているジェラスが見えた。

 ミサファーの手には、フェルリアが昨日プレゼントしたティアトレイが握られている。

「ううう、助けてくれ……」

 ジェラスがフェルリアに向かって手を伸ばした。

「何があったのです?」
「ミサファーに……殴られたんだ」

 ジェラスは体を丸めた状態で情けない顔をしている。
 詳しい説明を求めて、フェルリアはミサファーに目を向けた。その視線の意味に気づいたミサファーはため息を吐いてから答える。

「寝ている所を襲われそうになったので、股間に一発蹴りを入れましたが、しぶといのでティアトレイで何発か叩かせていただきました」
「……そうでしたか」

 公爵相手にやり過ぎだと言われそうだが、公になって困るのはジェラスも同じだろう。
 そう思ったフェルリアはため息を吐いてからジェラスに尋ねる。

「怪我はないのですか?」
「痛いと言っているだろう! ミサファー! 絶対に許さないからな!」
「人が眠っている部屋に忍び込んできて襲われそうになったんです。驚いて抵抗することの何がおかしいのですか。あなたが忍び込まなければいいことです」

 ミサファーに正論を返され、ジェラスは身を起こしながら悔しそうな顔をした。そんな彼をフェルリアは憐れんだ目で見つめる。

「ジェラス様、ミサファー様がやり過ぎだということは理解できます。ですが、大事にすればあなたは女性を強姦しようとした人になります。どうされますか?」
「そ、それはっ」
「相手が平民だからといって、何をしてもいいわけではないのです」
「わかった。今回だけは無礼を許してやる!」

 ジェラスは吐き捨てるように答え、勢いよく立ち上がった。

「ミサファー! 二度はないからな!」
「ジェラス様が同じ真似をしなければ、先程のようなことはいたしません!」

 ミサファーにぴしゃりと言い返されたジェラスは、悔しそうな顔をしながらも何も言い返さずに部屋から出ていった。




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