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タイミングが悪すぎます!
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「えっと、変かな?」
無言に耐えられなくて、あたしから口を開くと、
「や、やば」
ユウヤくんはそう言って、口元を手でおさえ横を向いた。
こ、好みじゃなかったのか。
エミリーさん達があんなに頑張ってくれたのにな。
ちょっとショックだけどしょうがない。
ちょっと悲しくなった時、扉がノックされた。
すると、こちらが返事を返す前に勝手に扉が開かれ、ユウマくんが顔を出した。
「ユーニちゃん、リア知らね?」
「あ、えっと」
「ここにいるわよ! っていうか、勝手に扉を開けんなって、何回言われたら、あんたは覚えられるの?!」
「悪かったよ! っつーか、ユーニちゃん?!」
ユウマくんが驚いた表情であたしを見て、言葉を続けた。
「めっちゃ可愛いじゃん。イメチェン?」
「え?」
「ん?」
リアとあたしはユウマくんの言葉をそれぞれ聞き返す。
「あ、入っていいか?」
「どうぞ」
「つーか、ユウヤもいるじゃねぇか。何してんだよ」
部屋に入る許可を出すと、ユウマくんは部屋に入るなり、ユウヤくんを見つけて不思議そうにする。
「ねえ、ユウマくん。ユーニ、可愛いよね?」
「さっきも言ったけど」
「ユウヤくんの好みじゃなかったりする?」
「は?」
リアの質問にユウマくんは眉間にシワを寄せて聞き返したあと、あたしとユウヤくんを交互に見てから、何かに納得したようにしてから、大きなため息を吐いて言った。
「オマエらが気にしてる意味がわかった。ユーニちゃん、コイツ、ユーニちゃんが可愛くて固まってるだけだから」
「え?」
いや、でも、ヤバいって言ってたし。
あまり好みじゃなかったのでは?
「ほんとだ。ユウヤくん、耳まで赤い」
リアがユウヤくんの顔を覗き込んでホッとした表情で言った。
えっと。
ということは、高評価だと、とらえていいんだろうか?
「ユウヤくん、あの、変じゃ、ないかな?」
あたしが恐る恐るそう言うと、ユウヤくんはこちらに顔を向けたかと思うと、すごい勢いで近づいてきた。
「え??」
「すっげー可愛い」
圧がすごかったので、びっくりして後ろに下がろうとすると、腕をひっぱられ抱き寄せられた。
「ユ、ユウヤくん?!」
「めっちゃ可愛くて声が出なかっただけ。つーか、ほんと可愛い。ユウマに見られたのも腹立つ」
「おい」
ユウヤくんかの言葉にユウマくんが素早く突っ込んだ。
何でユウマくんが見たら駄目なんだろ?
というか、この状態は恥ずかしい。
人前だから余計に。
また、リアがニヤニヤしているのが見えるのも、恥ずかしいからかなんだか腹立たしい。
それにしても、ユウヤくんといい、ユウマくんといい、あたしとリアの前では遠慮なく抱きしめてくるな。
でも、可愛いと言ってもらえたのは本当に嬉しい。
「ほんと、世に出したら駄目だろ。今日は部屋でゆっくり」
「しません」
なんとなく言葉の先が読めたので、あたしははっきりと言い放った。
その後、なにかと理由をつけて出かけるのを嫌がるユウヤくんを説き伏せ、なんとか2人で城下へ下りることになった。
やはり城下町だけあり、あたしが今まで住んでいた所とは全然、賑わいが違う。
たくさんの人が行き来していて、出店なども多くある。
今日のユウヤくんは、護衛を連れて行かない代わりに腰に剣を装備してて、なんか全体的にいつもよりもかっこ良く見えてしまう。
「ユウヤくん! あれ! あれ食べたい!」
フルーツが丸ごと飴でコーティングされている出店の近くで、あたしはユウヤくんの袖を引っ張る。
「はしゃいでんなあ」
「だって、お祭りでもないのに、たくさん人もいるし、いっぱいお店もあるんだもん!」
人混みはあまり好きじゃないけど、あたしにとっては物珍しいものが一杯あるから、すごく楽しい!
「帰りに買ってやるから。今は先に服だろ?」
「あたし、朝ごはん、ちゃんと食べれてないんだよ。だからお腹減っちゃって」
「何でだよ」
お腹をさすりながらユウヤくんに言うと、不思議そうな顔をして聞かれた。
「だって、その、今日は一緒にお出かけだから、みんな、気合い入れて頑張ってくれたの」
なんだか言うのが恥ずかしくて、言葉がとぎれとぎれになってしまう。
正直、化けたとは思うけど、ユウヤくんに釣り合えるほど可愛くなんかない。
リアみたいに可愛かったら、隣を歩く自信もあったのかな。
「ユーニ」
「うを?」
名を呼ばれ顔をあげると、道の端に引っ張られ、両頬を軽くつねられた。
「さっきまで普通に飯の話してたくせに、またオマエはいらん事考えてんだろ」
「う」
なんで、わかったんだろ。
ずれそうになった眼鏡を直しながら聞く。
「なんでわかったの?」
「見てりゃわかる。ユウマはさ、リアちゃんがこの世で1番可愛いって言うけどよ」
「え?! そんな話してるの?!」
兄弟でそんな話をしてる事に驚いてしまった。
本当に2人は仲が良いんだなあ。
「そこで食いつくなよ」
ユウヤくんは笑って言葉を続ける。
「オレもリアちゃんは可愛いと思うけど、オレにとっては誰がどう言おうと、オマエが1番可愛く見えんだよ」
「う・・・・・」
まっすぐに見つめられて、ついドキドキして視線をそらしてしまう。
というか、何でそんなセリフを照れる事なく言えるんだ。
でも、ユウヤくんが言ってる意味はわかる。
そんなものなのかな。
そう考え、歩いている人達に視線を送る。
ユウヤくんに目を奪われている女性もいれば、全く目もくれず、恋人らしき男性と楽しそうに話をしている女性もいる。
その人にとっての1番は、やっぱりルックスだけではないし、ルックスにだって好みはある。
「ユウヤくんの好みの顔があたしで良かった」
「なんだよ、それ」
笑って言うと、ユウヤくんはあたしの頬を優しくなでたあと、手を取って歩き出す。
「ストレス発散するんだろ?」
「うん!」
今日は色々とおねだりする事になるし、何かお返しできないかな。
どこかで働けたらいいんだけど。
「ねえ、ユウヤくん」
「ん?」
「働いてお金を稼ぎたいんだけど、あたしにも出来そうなのはあるかな?」
「なんか欲しいもんでもあんのか?」
「というか、今日だってユウヤくんに出してもらうじゃない? そうじゃなくて自分で稼いだお金で、今まで色々としてくれた人にお礼したいな、って。ユウヤくんも含めてね」
あたしの言葉にユウヤくんは苦虫を噛み潰したような顔になってから、言葉を吐き出す。
「そりゃあ色々とあるだろうけど、それだと」
「ん?」
「悪い虫がついたら困る」
「そんなのつきません」
「わかんねぇだろ」
「あたしを過大評価しすぎだよ。そんなにモテません!」
というか、すでに悪い虫というか、面倒な虫?はついてしまっているし。
と、そこへ甘い匂いを感知し、あたしはキョロキョロと辺りを見回した。
そこには美味しそうなクレープが!
しかも、その隣には肉串のお店もあった。
「ユウヤくん、あれも食べたい! あと、あれ! 肉串も! ちょっとずつだけど働いて返すから!」
「わかったわかった」
ぽんぽんと頭を撫でられる。
うう、興奮しすぎたか。
「とりあえず肉串買って来るから、大人しく待てるか?」
肉串の出店の周りには人がたくさんいて、一緒に行くと、もみくちゃにされてしまいそうだし、そうなったら、せっかくのお洒落が無駄になってしまう。
「ありがとう。大丈夫」
あたしは頷いて、人の邪魔にならないように道の端に避けた。
ユウヤくんはそれを確認すると、急いでお店の方に向かっていく。
目で追っていたけれど、ユウヤくんの背中はすぐに人混みにまぎれてしまった。
大人しく待っておこう。
そう決めた時だった。
視線を感じ、そちらに振り返ると、行き交う人の群れの中に、1人だけ動きを止め、立ち止まっている人物がいた。
「ラス様?」
思わず名前を口にしてしまった。
な、なんで、よりによって、こんな時に!!
無言に耐えられなくて、あたしから口を開くと、
「や、やば」
ユウヤくんはそう言って、口元を手でおさえ横を向いた。
こ、好みじゃなかったのか。
エミリーさん達があんなに頑張ってくれたのにな。
ちょっとショックだけどしょうがない。
ちょっと悲しくなった時、扉がノックされた。
すると、こちらが返事を返す前に勝手に扉が開かれ、ユウマくんが顔を出した。
「ユーニちゃん、リア知らね?」
「あ、えっと」
「ここにいるわよ! っていうか、勝手に扉を開けんなって、何回言われたら、あんたは覚えられるの?!」
「悪かったよ! っつーか、ユーニちゃん?!」
ユウマくんが驚いた表情であたしを見て、言葉を続けた。
「めっちゃ可愛いじゃん。イメチェン?」
「え?」
「ん?」
リアとあたしはユウマくんの言葉をそれぞれ聞き返す。
「あ、入っていいか?」
「どうぞ」
「つーか、ユウヤもいるじゃねぇか。何してんだよ」
部屋に入る許可を出すと、ユウマくんは部屋に入るなり、ユウヤくんを見つけて不思議そうにする。
「ねえ、ユウマくん。ユーニ、可愛いよね?」
「さっきも言ったけど」
「ユウヤくんの好みじゃなかったりする?」
「は?」
リアの質問にユウマくんは眉間にシワを寄せて聞き返したあと、あたしとユウヤくんを交互に見てから、何かに納得したようにしてから、大きなため息を吐いて言った。
「オマエらが気にしてる意味がわかった。ユーニちゃん、コイツ、ユーニちゃんが可愛くて固まってるだけだから」
「え?」
いや、でも、ヤバいって言ってたし。
あまり好みじゃなかったのでは?
「ほんとだ。ユウヤくん、耳まで赤い」
リアがユウヤくんの顔を覗き込んでホッとした表情で言った。
えっと。
ということは、高評価だと、とらえていいんだろうか?
「ユウヤくん、あの、変じゃ、ないかな?」
あたしが恐る恐るそう言うと、ユウヤくんはこちらに顔を向けたかと思うと、すごい勢いで近づいてきた。
「え??」
「すっげー可愛い」
圧がすごかったので、びっくりして後ろに下がろうとすると、腕をひっぱられ抱き寄せられた。
「ユ、ユウヤくん?!」
「めっちゃ可愛くて声が出なかっただけ。つーか、ほんと可愛い。ユウマに見られたのも腹立つ」
「おい」
ユウヤくんかの言葉にユウマくんが素早く突っ込んだ。
何でユウマくんが見たら駄目なんだろ?
というか、この状態は恥ずかしい。
人前だから余計に。
また、リアがニヤニヤしているのが見えるのも、恥ずかしいからかなんだか腹立たしい。
それにしても、ユウヤくんといい、ユウマくんといい、あたしとリアの前では遠慮なく抱きしめてくるな。
でも、可愛いと言ってもらえたのは本当に嬉しい。
「ほんと、世に出したら駄目だろ。今日は部屋でゆっくり」
「しません」
なんとなく言葉の先が読めたので、あたしははっきりと言い放った。
その後、なにかと理由をつけて出かけるのを嫌がるユウヤくんを説き伏せ、なんとか2人で城下へ下りることになった。
やはり城下町だけあり、あたしが今まで住んでいた所とは全然、賑わいが違う。
たくさんの人が行き来していて、出店なども多くある。
今日のユウヤくんは、護衛を連れて行かない代わりに腰に剣を装備してて、なんか全体的にいつもよりもかっこ良く見えてしまう。
「ユウヤくん! あれ! あれ食べたい!」
フルーツが丸ごと飴でコーティングされている出店の近くで、あたしはユウヤくんの袖を引っ張る。
「はしゃいでんなあ」
「だって、お祭りでもないのに、たくさん人もいるし、いっぱいお店もあるんだもん!」
人混みはあまり好きじゃないけど、あたしにとっては物珍しいものが一杯あるから、すごく楽しい!
「帰りに買ってやるから。今は先に服だろ?」
「あたし、朝ごはん、ちゃんと食べれてないんだよ。だからお腹減っちゃって」
「何でだよ」
お腹をさすりながらユウヤくんに言うと、不思議そうな顔をして聞かれた。
「だって、その、今日は一緒にお出かけだから、みんな、気合い入れて頑張ってくれたの」
なんだか言うのが恥ずかしくて、言葉がとぎれとぎれになってしまう。
正直、化けたとは思うけど、ユウヤくんに釣り合えるほど可愛くなんかない。
リアみたいに可愛かったら、隣を歩く自信もあったのかな。
「ユーニ」
「うを?」
名を呼ばれ顔をあげると、道の端に引っ張られ、両頬を軽くつねられた。
「さっきまで普通に飯の話してたくせに、またオマエはいらん事考えてんだろ」
「う」
なんで、わかったんだろ。
ずれそうになった眼鏡を直しながら聞く。
「なんでわかったの?」
「見てりゃわかる。ユウマはさ、リアちゃんがこの世で1番可愛いって言うけどよ」
「え?! そんな話してるの?!」
兄弟でそんな話をしてる事に驚いてしまった。
本当に2人は仲が良いんだなあ。
「そこで食いつくなよ」
ユウヤくんは笑って言葉を続ける。
「オレもリアちゃんは可愛いと思うけど、オレにとっては誰がどう言おうと、オマエが1番可愛く見えんだよ」
「う・・・・・」
まっすぐに見つめられて、ついドキドキして視線をそらしてしまう。
というか、何でそんなセリフを照れる事なく言えるんだ。
でも、ユウヤくんが言ってる意味はわかる。
そんなものなのかな。
そう考え、歩いている人達に視線を送る。
ユウヤくんに目を奪われている女性もいれば、全く目もくれず、恋人らしき男性と楽しそうに話をしている女性もいる。
その人にとっての1番は、やっぱりルックスだけではないし、ルックスにだって好みはある。
「ユウヤくんの好みの顔があたしで良かった」
「なんだよ、それ」
笑って言うと、ユウヤくんはあたしの頬を優しくなでたあと、手を取って歩き出す。
「ストレス発散するんだろ?」
「うん!」
今日は色々とおねだりする事になるし、何かお返しできないかな。
どこかで働けたらいいんだけど。
「ねえ、ユウヤくん」
「ん?」
「働いてお金を稼ぎたいんだけど、あたしにも出来そうなのはあるかな?」
「なんか欲しいもんでもあんのか?」
「というか、今日だってユウヤくんに出してもらうじゃない? そうじゃなくて自分で稼いだお金で、今まで色々としてくれた人にお礼したいな、って。ユウヤくんも含めてね」
あたしの言葉にユウヤくんは苦虫を噛み潰したような顔になってから、言葉を吐き出す。
「そりゃあ色々とあるだろうけど、それだと」
「ん?」
「悪い虫がついたら困る」
「そんなのつきません」
「わかんねぇだろ」
「あたしを過大評価しすぎだよ。そんなにモテません!」
というか、すでに悪い虫というか、面倒な虫?はついてしまっているし。
と、そこへ甘い匂いを感知し、あたしはキョロキョロと辺りを見回した。
そこには美味しそうなクレープが!
しかも、その隣には肉串のお店もあった。
「ユウヤくん、あれも食べたい! あと、あれ! 肉串も! ちょっとずつだけど働いて返すから!」
「わかったわかった」
ぽんぽんと頭を撫でられる。
うう、興奮しすぎたか。
「とりあえず肉串買って来るから、大人しく待てるか?」
肉串の出店の周りには人がたくさんいて、一緒に行くと、もみくちゃにされてしまいそうだし、そうなったら、せっかくのお洒落が無駄になってしまう。
「ありがとう。大丈夫」
あたしは頷いて、人の邪魔にならないように道の端に避けた。
ユウヤくんはそれを確認すると、急いでお店の方に向かっていく。
目で追っていたけれど、ユウヤくんの背中はすぐに人混みにまぎれてしまった。
大人しく待っておこう。
そう決めた時だった。
視線を感じ、そちらに振り返ると、行き交う人の群れの中に、1人だけ動きを止め、立ち止まっている人物がいた。
「ラス様?」
思わず名前を口にしてしまった。
な、なんで、よりによって、こんな時に!!
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